王太子専属閨係の見る夢は

riiko

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第三章 恋とは

53、秘密

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 あの突発的なヒートの後、後宮でフィオナと数日を過ごした。

 学園を少し休んで、心を休ませるようにとムスタフ伯爵夫人から言われたからだった。オメガはデリケートな部分も多いから、ストレスは発情期を乱す原因になるらしい。医者として俺のことを心配して、ディーから少し離れる処置をしてくれたんだと思う。

 守秘義務は守るから俺の生活リズムやストレス具合など、医師として知る必要があると言われたので、俺は聞かれたことに素直に答えた。

 俺は、つくづく嘘や秘密ごとができない人種だなって思ったが、先生は信頼しても大丈夫だと思ったから、そこは素直に従った。人を見る目だけはある方だから、俺が信じた人なら悪い人はいないはずだ!

 そして二人は体を繋げてないなら、どこまでしているのかと聞かれたから、素直にしている行為のことを話した。エッチ以外の戯れをしていると知った先生は、真っ赤な顔してしまった。ある意味、体を繋げるより凄いねって言われて、恥ずかしくなった。

 そういうこともしばらくお休みする必要があるということで、俺とフィオナは同時に後宮でお休み期間として過ごしていた。なぜフィオナまで? よく分からないけど、医師に診断結果としてディーには伝えられて、ディーは後宮への立ち入りを禁止されてしまったようだ。

 ディー、なんか、ごめんな? フィオナとの触れ合いまで俺のせいでダメにさせてしまったよ。

 俺は話したことで、なんとなくスッキリした。なによりもフィオナという強い心の味方がいることで、もう一度この閨係を遂行する決意をした。もう抱かれないことに関しては、仕方ないし、そこは諦めることにした。

 ディーは今まで散々オメガを抱いてきた。だからそういうことは、フィオナひとりだけで十分なのかもしれないと思ったら、ディーの衝撃の真実を知ることになった。

 実は、ディーは閨については積極的ではなくて、この間盗み見てしまったフィオナとディーの会話は、後宮を騙すための演技だったと、フィオナから聞かされてかなり驚いた。

 今回の閨期間はもうオメガを抱くつもりはないと、フィオナはディーから最初の日に言われたらしい。性欲が衰えた王太子という噂がたっては、どこで足元をすくわれるか分からないから、協力してくれと頼まれて、閨日以外も積極的な王子というイメージづくりのための、ああいった事後の会話の協力だったと言った。

 フィオナも抱かれていないとのことだった。

 俺はそこに驚きだったが、フィオナが絶対に内緒にしてねって強く言うから、ディーにも誰にもフィオナから聞いたことは言わないと誓った。

 その話を聞いたからか、俺の心が軽くなった。

 初めはフィオナに嫉妬して、フィオナだけ抱かれて、でもフィオナには愛するアストンがいる中、好きじゃないディーに抱かれていることに、俺が罪悪感を抱いてしまった。俺が抱かれていたら、フィオナの負担も減るのにって、そのことを俺は必死にフィオナに謝ったら、フィオナが気まずそうに真実を語った。

「本当はね、これは絶対に言ったらいけないことだったんだ。殿下は僕を信頼して下さって、そのようなお話を持ち掛けてくれたから。でも僕はこれ以上、シン君の心を苦しめたくなくて、今まで黙っていて本当にごめんね」
「いや、俺こそごめん。言ったらいけないことを俺のために……俺は絶対に誰にもそのこと言わないから!」

 フィオナを、俺はずっと苦しめていた。泣きながらも、ディーと交わした約束の話を打ち明けてくれた。

 フィオナはいろんな事情が重なる中、この閨係に挑んだはずだ。それでディーと秘密を共有して、俺を騙していると苦しんだ。きっとアストンをも騙して苦しんでいるはずだ。それなのに、俺のために、ディーとの約束を破ってしまった。

「うん、ありがとう。僕こそ、ごめんね。好きな人以外に抱かれることがどれだけ辛いかなんて、語って。僕はアストンしか……愛する人としか経験のない幸せなオメガなのに。あんな演技をして、本当にごめんなさい」
「いや、それはもういいから。あれはあれで良かったよ。ああ言ってもらえたから、俺は人を見た目だけで判断する事がいけないって学べた。人の裏の事情を考えないで人を罵倒していいわけがない。見えている部分だけが全てじゃないってことは、これから先も必ず自分にとって、人と関わる上で大切なことだから、気づかせてくれたフィオナには感謝しているよ」
「シン君……」

 俺たちは一緒に過ごしている中で沢山のことを話した。

 だいたいはくだらないことだったけれども、オメガという人種は自分とは分かり合えないと思っていた過去が嘘のように、昔からの友達みたいにフィオナとは仲良くなった。

 フィオナとアストンの話は、とても素敵で羨ましかったけれども、二人の過去はやはり壮絶で、とても苦労してやっと結ばれたって分かった。だからこの仕事が終える日が楽しみで仕方ないって、フィオナは嬉しそうに話していた。

 いつか、俺も愛する人のことを、そんな顔で誰かに話してみたい。

「ところでさ、ディーって、その……不能なのかな?」
「え? シン君といろいろしていたとき、殿下は兆してなかった?」
「ああ、たしかにデカくなってた」
「そ、そう」

 フィオナは赤い顔した。

 俺は全部正直に相談というか話していたから、学園の執務室でのこととか話して、あんなになって抱かない男ってどうなんだって、アストンでもそういうことあるかと聞いた。アストンとは、そういう日もあったって言っていた。元夫にばれないように、時間の無い中の二人での逢瀬のときは二人で欲望を握り合い、挿入はしないとか? 友達のそんな事情を聞いたのは俺だったけれど、聞いていて恥ずかしくなった。

 フィオナも俺とディーの情事の内容を聞いたときは、真っ赤な顔をしていたから、こういうことは他人と共有するべきことじゃないなと、そのとき理解した。

 俺とディーは最後までしないだけで、結構なことをしてるねって指摘された。

「不能……ではないんじゃないかな?」
「じゃあなんで、フィオナみたいな極上なオメガがいるのに、抱かないって決めたんだろう」
「それは、僕には殿下の事情までをお話することはできないんだ。ごめんね」
「そうだよな。でもさ、フィオナには話したのに、なんで俺には言ってくれないんだろう? 初めから後宮を騙すって俺にも言ってくれたら、俺もこんなに何度も抱いてって迫らなかったのに……」
「迫ったの!? それは、殿下もお辛かっただろうね」

 フィオナが驚いた顔をした。

「そうだよな。抱かないって決めてるのに、何度もどうしてだって聞かれてうざかったと思うよ」
「いや、そうじゃなくて。それも含めて、いつかシン君に真実を言ってくれると思うから、その時を待って差し上げたらどうかな?」
「いつかって、俺たちの期限は決まってるのに、そんな日が来るかな」
「来るよ、ゼッタイ!」
「そ、そうか」

 フィオナが鼻息荒く、俺に自信満々にそう言い切るから、なんとなくそんな日が来るかもしれないって思った。
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