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第三章 恋とは
44、フィオナの婚約者
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フィオナと約束の日、俺はあのサロンの前に来ていた。
そしてサロンの給仕に案内された部屋に行くと、まるで一枚の絵のような雰囲気を醸し出した、お互いを愛おしいという目で見つめ合う二人がいた。
部屋には午後の木漏れ日が入り込み、テーブルセットの豪華なもてなしなど、その場の背景のように彼らにはテーブルも椅子も必要ない。背の高い男が胸にすっぽりと入り込む華奢なフィオナを抱きしめて、そして二人無言で見つめ合う、でも口元や目元は優しく微笑み、穏やかな雰囲気のまるで番のような二人だった。
愛し合う二人、そんな感じだった。
「失礼いたします。お連れ様をご案内いたしました」
給仕係の言葉に、アルファと思われる男がこちらを見た。
「ああ、ありがとう。君がフィオナの同僚の方だな。話は聞いてるよ、さあ入って」
話は聞いている? フィオナの同僚? フィオナはまさか、この男に閨のことを話したのか……でもこれは絶対に言ってはいけない契約だったはず。
「シン君、お休みの日にわざわざごめんね。僕の婚約者を紹介するね」
「あ、ああ」
そして可愛らしい雰囲気のフィオナに、導かれるままに椅子へと誘導された。フィオナの顔はいつものように穏やかで、この間の怒りはもうなかった。今まで見たこともないような優しい顔をして、男を見つめていたフィオナ。これが好きな人への態度なのか。ディーへ向ける雰囲気とは全く違った。目の前の男を本当に愛している、そんな目だった。彼らは本気の愛しあう二人だって、鈍い俺でも分かるくらい。
「シン君、彼は僕の婚約者のアストンだよ。君と同じ十八歳で、これから実家の爵位を継ぐんだ。爵位の継承が終わったら、僕をお嫁さんにしてくれる約束なの」
「爵位を……その若さで?」
「うん、そうなんだ。彼はね、僕の元夫のお孫さんなの。話したよね? 前の旦那様の話。もう亡くなったんだけど、いろいろと手続きが大変で、それで爵位を継承するのに時間がかかってね」
「へ、へえ」
まさかの元旦那の孫と? 驚きだった。
「アストン、この子はシン君で僕の同僚だよ。二人とも王宮で働いていて、守秘義務で言えないけど、エライ人のお世話係を二人でしてるんだ。シン君は学生さんだからお仕事と両立してる凄い人なんだよ」
「ぶぼっ」
俺は思わず飲んでいたお茶を噴き出した。そこでフィオナが俺の驚きに動じずに、声掛けをしてくる。
「えっ、大丈夫?」
「お、おおお。大丈夫、すまない」
フィオナが普通に俺の紹介をしたと思ったら、偉い人のお世話係。たしかに間違いない。そうだよな、さすがに閨係とは言えないよな。後宮との契約を守っていたことに安心したような拍子抜けしたような、感じだった。
「俺はアストンだ。俺達同じ年だし、フィオナから、君は畏まった対応は好きじゃないと聞いているから、気安く失礼するよ。俺もあまり貴族社会に馴染めていないからさ、お前も俺のこと呼びすてで言ってくれ。シンのことはいつも色々楽しく聞かせてもらってる」
「あ、ああ。アストン、よろしく」
アストンというアルファは、フィオナの言葉に何の疑いがないようだった。そしてこの男に俺のことを話しているらしいけど、いったいどこまで話しているのだろうか。
「俺とフィオナは、俺のじいさんのところに嫁に来た時、すでにお互いに惹かれ合っていたんだ。この話ってフィオナから聞いていたか?」
「えっ、詳しいことは何も」
「そうか。とにかく、あのジジイは死んで、やっとフィオナを嫁にできるってなった時に、フィオナのダメ親父がまた違う貴族との縁談を持ってきたんだ。だから俺が爵位を継ぐまでの間、王宮での期間限定の仕事をもらって、嫁に行かせないようしたんだ」
「えっ!?」
「アストン!」
そこでフィオナがアストンの袖を引いて、言葉を遮った。アストンは驚いた顔をするも、すぐにフィオナに甘い雰囲気になった。
「どうした? フィオナ」
「アストンもお茶を飲もうよ、僕が淹れてあげるから」
「ああ、ありがとう。フィオナが淹れてくれるお茶を飲めるなんて俺は幸せ者だよ」
そう言って、にこにこと笑ってフィオナのお茶を淹れる仕草を見て幸せそうにしていた。アストンというアルファは、なんていうか、フィオナのことを相当大事にしているみたいだった。
「シン君も、おかわりのお茶は僕が淹れさせてもらうね。あまり他の人に、アストンと会っているところを見られるわけにいかなくて。僕の家の事情で、アストンと会っていることは知られてはいけないんだ。だからこんなふうに個室でひっそりと会うことしかできなくて」
「家の事情……」
それは王太子の閨係だから他の男との逢瀬は禁止されているという話か? アストンは、フィオナがディーに抱かれていることをなんとも思っていない? でもこの溺愛具合から見て、怒りそうだけど……。
「僕の父親はとてもお金遣いが荒くてね、僕を商品としてしか見ていなかったんだ。それで僕が十八の歳に、アストンのおじい様に売られたの。二年間、僕はアストンを愛して耐えた。それで元夫が亡くなって喪が明けると、今度はまた違う家の後妻にって話を父がもってきてね」
「えっ」
「まだアストンは爵位を継げていなくて、でも爵位さえ継げば僕を嫁にできるって二人で話していたんだ。そんな時、王宮で高貴な方のお世話にオメガが欲しいという話が舞い込んできて、父はそっちの方が後妻よりもお金になるって判断して、僕は王宮での仕事を一年することになったんだ」
フィオナの話は、こうだった。
その一年、高貴な方の世話をするオメガとして王宮で仕事をしたら、王家が望む相手を用意してくれる。そこで、フィオナは父親を騙すために仕事を引き受けて、王宮には結婚したい相手としてアストンとの仲介を頼んだとか。王宮が連れてきた貴族なら、フィオナの父親も文句は言えないだろうと。だから仕事が終わるその時まで、相手がアストンであると父親に知られるわけにはいかないそうだ。フィオナの父親なら、伯爵クラスくらいのアルファを望むだろうからと。
ちなみに、アストンは子爵家のアルファだった。
そして話の流れでなんとなく分かったが、アストンはフィオナが閨係をしていることを知らないみたいだ。高貴な人が王太子であることも知らないようで、きっと高貴なオメガのお世話として、オメガのフィオナや俺が求められたと思っているのだろう。アストンをも騙して、フィオナはひとりであの仕事に耐えているんだって思ったら、俺の浅はかな言葉でフィオナを傷つけたことを今さらながら後悔した。
アストンとは俺と同じ年ということで、話は盛り上がった。少し俺と同じ匂いがした……貴族仕事よりも土仕事みたいな泥臭い方が好きだってところとか、やんちゃっぽい乱雑なところとか。俺と似ているってフィオナも言っていた。だから俺と仲良くなりたかったって、顔を赤らめて話すフィオナを見て、アストンはまたデレていて、こっちまではずかしくなったぞ!
フィオナの仕事のことは王宮内のことで秘密が多いと知っているからか、そんな話にはならずに、ただ日常の話で終わり、帰り際、アストンがフィオナを抱きしめた。
「シン、フィオナのこと頼むな。こいつはひとりで抱えて頑張り過ぎるところがあるから、俺は心配なんだけど、俺も結婚のために今は領地でやるべきことが多くって。なかなか王都まで会いに来てやれないんだ」
「ああ、フィオナのことは俺が守るから、アストンは早くフィオナを迎える準備をするといいよ」
俺の言葉にアストンは目を丸くした。そして大声で笑う。
「はは、お前は頼もしいオメガだな。そういえば、お前も恋人か婚約者いるんだよな? あんな道端で熱い口づけを交わすなんてな、あのアルファも相当な執着臭がしたけど、お前こそ気を付けろよ」
「な、アストンこそ! 秘密の関係なのに、よくあんなところで破廉恥なことをフィオナにしやがって! お前らの結婚前にフィオナの父親にばれたら大変なんじゃないのかよ!」
その前にディーや後宮にばれたら大変だろうよ。こいつは俺のこと認識して、あの時わざとフィオナとのキスシーンを見せてきたんだな、今分かったぞ。
「スリルを楽しむのも恋愛の要素だ。お前こそ同じことやってるじゃないか……説得力ないぞ」
「うるせえ、人の情事を見るんじゃねぇよ」
「いやいやいや、見せるんじゃねぇよ?」
フィオナは俺とアストンのやり取りを見て、笑っていた。とても楽しそうに笑うフィオナを初めて見た。王宮では美しいお淑やかなオメガだったが、本来はこんなふうに屈託なく笑う可愛いオメガなんだって、今日初めて知った。
そしてアストンを見送ると二人になった。
そしてサロンの給仕に案内された部屋に行くと、まるで一枚の絵のような雰囲気を醸し出した、お互いを愛おしいという目で見つめ合う二人がいた。
部屋には午後の木漏れ日が入り込み、テーブルセットの豪華なもてなしなど、その場の背景のように彼らにはテーブルも椅子も必要ない。背の高い男が胸にすっぽりと入り込む華奢なフィオナを抱きしめて、そして二人無言で見つめ合う、でも口元や目元は優しく微笑み、穏やかな雰囲気のまるで番のような二人だった。
愛し合う二人、そんな感じだった。
「失礼いたします。お連れ様をご案内いたしました」
給仕係の言葉に、アルファと思われる男がこちらを見た。
「ああ、ありがとう。君がフィオナの同僚の方だな。話は聞いてるよ、さあ入って」
話は聞いている? フィオナの同僚? フィオナはまさか、この男に閨のことを話したのか……でもこれは絶対に言ってはいけない契約だったはず。
「シン君、お休みの日にわざわざごめんね。僕の婚約者を紹介するね」
「あ、ああ」
そして可愛らしい雰囲気のフィオナに、導かれるままに椅子へと誘導された。フィオナの顔はいつものように穏やかで、この間の怒りはもうなかった。今まで見たこともないような優しい顔をして、男を見つめていたフィオナ。これが好きな人への態度なのか。ディーへ向ける雰囲気とは全く違った。目の前の男を本当に愛している、そんな目だった。彼らは本気の愛しあう二人だって、鈍い俺でも分かるくらい。
「シン君、彼は僕の婚約者のアストンだよ。君と同じ十八歳で、これから実家の爵位を継ぐんだ。爵位の継承が終わったら、僕をお嫁さんにしてくれる約束なの」
「爵位を……その若さで?」
「うん、そうなんだ。彼はね、僕の元夫のお孫さんなの。話したよね? 前の旦那様の話。もう亡くなったんだけど、いろいろと手続きが大変で、それで爵位を継承するのに時間がかかってね」
「へ、へえ」
まさかの元旦那の孫と? 驚きだった。
「アストン、この子はシン君で僕の同僚だよ。二人とも王宮で働いていて、守秘義務で言えないけど、エライ人のお世話係を二人でしてるんだ。シン君は学生さんだからお仕事と両立してる凄い人なんだよ」
「ぶぼっ」
俺は思わず飲んでいたお茶を噴き出した。そこでフィオナが俺の驚きに動じずに、声掛けをしてくる。
「えっ、大丈夫?」
「お、おおお。大丈夫、すまない」
フィオナが普通に俺の紹介をしたと思ったら、偉い人のお世話係。たしかに間違いない。そうだよな、さすがに閨係とは言えないよな。後宮との契約を守っていたことに安心したような拍子抜けしたような、感じだった。
「俺はアストンだ。俺達同じ年だし、フィオナから、君は畏まった対応は好きじゃないと聞いているから、気安く失礼するよ。俺もあまり貴族社会に馴染めていないからさ、お前も俺のこと呼びすてで言ってくれ。シンのことはいつも色々楽しく聞かせてもらってる」
「あ、ああ。アストン、よろしく」
アストンというアルファは、フィオナの言葉に何の疑いがないようだった。そしてこの男に俺のことを話しているらしいけど、いったいどこまで話しているのだろうか。
「俺とフィオナは、俺のじいさんのところに嫁に来た時、すでにお互いに惹かれ合っていたんだ。この話ってフィオナから聞いていたか?」
「えっ、詳しいことは何も」
「そうか。とにかく、あのジジイは死んで、やっとフィオナを嫁にできるってなった時に、フィオナのダメ親父がまた違う貴族との縁談を持ってきたんだ。だから俺が爵位を継ぐまでの間、王宮での期間限定の仕事をもらって、嫁に行かせないようしたんだ」
「えっ!?」
「アストン!」
そこでフィオナがアストンの袖を引いて、言葉を遮った。アストンは驚いた顔をするも、すぐにフィオナに甘い雰囲気になった。
「どうした? フィオナ」
「アストンもお茶を飲もうよ、僕が淹れてあげるから」
「ああ、ありがとう。フィオナが淹れてくれるお茶を飲めるなんて俺は幸せ者だよ」
そう言って、にこにこと笑ってフィオナのお茶を淹れる仕草を見て幸せそうにしていた。アストンというアルファは、なんていうか、フィオナのことを相当大事にしているみたいだった。
「シン君も、おかわりのお茶は僕が淹れさせてもらうね。あまり他の人に、アストンと会っているところを見られるわけにいかなくて。僕の家の事情で、アストンと会っていることは知られてはいけないんだ。だからこんなふうに個室でひっそりと会うことしかできなくて」
「家の事情……」
それは王太子の閨係だから他の男との逢瀬は禁止されているという話か? アストンは、フィオナがディーに抱かれていることをなんとも思っていない? でもこの溺愛具合から見て、怒りそうだけど……。
「僕の父親はとてもお金遣いが荒くてね、僕を商品としてしか見ていなかったんだ。それで僕が十八の歳に、アストンのおじい様に売られたの。二年間、僕はアストンを愛して耐えた。それで元夫が亡くなって喪が明けると、今度はまた違う家の後妻にって話を父がもってきてね」
「えっ」
「まだアストンは爵位を継げていなくて、でも爵位さえ継げば僕を嫁にできるって二人で話していたんだ。そんな時、王宮で高貴な方のお世話にオメガが欲しいという話が舞い込んできて、父はそっちの方が後妻よりもお金になるって判断して、僕は王宮での仕事を一年することになったんだ」
フィオナの話は、こうだった。
その一年、高貴な方の世話をするオメガとして王宮で仕事をしたら、王家が望む相手を用意してくれる。そこで、フィオナは父親を騙すために仕事を引き受けて、王宮には結婚したい相手としてアストンとの仲介を頼んだとか。王宮が連れてきた貴族なら、フィオナの父親も文句は言えないだろうと。だから仕事が終わるその時まで、相手がアストンであると父親に知られるわけにはいかないそうだ。フィオナの父親なら、伯爵クラスくらいのアルファを望むだろうからと。
ちなみに、アストンは子爵家のアルファだった。
そして話の流れでなんとなく分かったが、アストンはフィオナが閨係をしていることを知らないみたいだ。高貴な人が王太子であることも知らないようで、きっと高貴なオメガのお世話として、オメガのフィオナや俺が求められたと思っているのだろう。アストンをも騙して、フィオナはひとりであの仕事に耐えているんだって思ったら、俺の浅はかな言葉でフィオナを傷つけたことを今さらながら後悔した。
アストンとは俺と同じ年ということで、話は盛り上がった。少し俺と同じ匂いがした……貴族仕事よりも土仕事みたいな泥臭い方が好きだってところとか、やんちゃっぽい乱雑なところとか。俺と似ているってフィオナも言っていた。だから俺と仲良くなりたかったって、顔を赤らめて話すフィオナを見て、アストンはまたデレていて、こっちまではずかしくなったぞ!
フィオナの仕事のことは王宮内のことで秘密が多いと知っているからか、そんな話にはならずに、ただ日常の話で終わり、帰り際、アストンがフィオナを抱きしめた。
「シン、フィオナのこと頼むな。こいつはひとりで抱えて頑張り過ぎるところがあるから、俺は心配なんだけど、俺も結婚のために今は領地でやるべきことが多くって。なかなか王都まで会いに来てやれないんだ」
「ああ、フィオナのことは俺が守るから、アストンは早くフィオナを迎える準備をするといいよ」
俺の言葉にアストンは目を丸くした。そして大声で笑う。
「はは、お前は頼もしいオメガだな。そういえば、お前も恋人か婚約者いるんだよな? あんな道端で熱い口づけを交わすなんてな、あのアルファも相当な執着臭がしたけど、お前こそ気を付けろよ」
「な、アストンこそ! 秘密の関係なのに、よくあんなところで破廉恥なことをフィオナにしやがって! お前らの結婚前にフィオナの父親にばれたら大変なんじゃないのかよ!」
その前にディーや後宮にばれたら大変だろうよ。こいつは俺のこと認識して、あの時わざとフィオナとのキスシーンを見せてきたんだな、今分かったぞ。
「スリルを楽しむのも恋愛の要素だ。お前こそ同じことやってるじゃないか……説得力ないぞ」
「うるせえ、人の情事を見るんじゃねぇよ」
「いやいやいや、見せるんじゃねぇよ?」
フィオナは俺とアストンのやり取りを見て、笑っていた。とても楽しそうに笑うフィオナを初めて見た。王宮では美しいお淑やかなオメガだったが、本来はこんなふうに屈託なく笑う可愛いオメガなんだって、今日初めて知った。
そしてアストンを見送ると二人になった。
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