王太子専属閨係の見る夢は

riiko

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第三章 恋とは

36、ついに初めての ※

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 俺がじっと動かないでいるとディーが笑った。

「ほら、シン。せっかくお披露目したんだから、今日はコレを使うよ」
「え、あ、うん」

 ディーは、自分のブツを手にとって見せた。改めてそう言われて、俺は赤くなって答えた。見慣れたブツ……ではないアルファの本気を見て、戸惑った。俺のモノとは同じはずなのに大きさも色も全然違う。使い込まれるとこうなるの? ここから、どうしたことか。俺はうんと言ったものの、固まって動けなくなってしまった。決しておじけづいたわけではない。ただ、経験の無さからナニをどうしていいか分からなかった。すると、ディーが言う。

「ごめん、もう待てないから」
「えっ、あ」

 ディーに抱きしめられた。お互いに初めて裸で肌が触れ合う。なんだか気持ちいいし、ずっとこうやって肌と肌をくっつけていたい。嬉しくて、それでいて、ソノサキをどうしたらいいのか分からずに戸惑って、でも強い力でディーを抱きしめ返した。

 ディーは俺を引き離して、唇を落としてきた。俺は自然に瞳と閉じて、それをそっと受け取る。キスはいつもしているし、慣れているはずなのに、まるで初めてしたかのような感覚におちいった。

 心臓に音楽隊が入ってきたかのだろうか? 心の中では、大きな音が鳴り響く。心拍はドラムでも仕込まれているように、ずっしりとした音が俺の鼓膜に入り込む。いや、そう感じただけだと思うが、自分の中の騒がしさと、この行動の先への戸惑いで、キスが終わっても瞳を開くことができなかった。

 自分でも驚くくらい、自分の心臓が自由にならない。俺以外の指揮者に乗っ取られた体。取り戻せないくらい勝手にフェロモンが暴れだす。もう自分を操縦することを諦めて、そっとまぶたを開くと、そこには初めて見るディーの表情があった。

「うっ、シン、なんて香りを出してっ」
「ご、ごめん」

 蒸気した顔。アルファのフェロモンがいつも以上にディーから溢れ出ていたから、この部屋に満ちているのは俺だけの香りじゃないはず。それって……俺と同様にディーも戸惑っている? 

「私がいつもシンの裸の前で、どれほど興奮しているか分かってくれた? シンの美しさと妖艶さの前ではフェロモンを抑えるのが必死で、いつも大変なんだよ。今日はさすがに耐えられない」
「そ、そうなの?」

 いっこうに俺を抱かないディーはいつも余裕で、俺だけが必死になっているのだと思っていたけど、違った? 体が反応していたのは知っている。時々ディーの硬さは服の上から触れることがあったから。だけど、ここまでの男らしいフェロモンは初めてかもしれない。

 ディーが言うとおり、余裕がない。そんな感じに思えた。それを見てますます興奮した。俺で余裕をなくすアルファを見たい。そう思うと少し冷静になって、自分の中に勝手に入りこんできた音楽隊の演奏を止めることができた。

「ディー、今日こそ、抱いて」
「シン!」

 止まることなくディーを押し倒して、裸のディーの上に乗った。そして俺からキスをした。いつもはされっぱなしで、待っているだけだったけど――もう無理だった。

 俺はこの男が欲しい。そう思ったら、つたないながらも、ディーの口内を隙間なくすべてを味わった。

 ディーが困惑していて、俺にされるままになっていた。いつも余裕な男が、戸惑っているのは気持ちがいい。ここまできたら、もう不敬などという考えはなくなった。いつも最低限の立場を考えて行動していたが、アルファとオメガが裸で、キスをして、フェロモンが混ざったら――

 俺の理性はそこでなくなった。

 ディーの唇を散々むさぼったあとは、ディーの胸、お腹、下腹、順に口づけを落とし舐めた。アルファの筋肉を舐める日がくるなんて思いもしなかったが、ディーの体のすべてにキスをしたい。いつもディーが俺にやってくれていることを真似ただけだけど、どうしてディーが丁寧に俺の体にキスをするのかが、今なんとなくだけど分かった。

 すべてを愛したい。

 ディーは、毎回俺の体に所有印を残す。その跡が生ナマしく残る体を見て、風呂の世話をする後宮の侍女は嬉しそうに、仲がよろしくて何よりですって言う。侍女に、抱いているという証拠として残すためだけにするなんの意味もない行為だと、そう思っていたけど、もしかしたらディーも今の俺と同じ気持ちになっていたのかな?

 俺だってこの男に、俺の残した跡を残したい――そう思ってしまった。

「シン、好きだ、シン、気持ちいいよ」

 こんなふうにただキスを残すだけが、気持ちいいわけ無いだろうけど、ディーは俺が舐めるのを止めないし、許してくれている。フィオナにもこういうことをされて、この行為に慣れているのかもしれない。頭を撫でる優しい手が、他のオメガにもしていると思うとそれだけで心が苦しくなった。だからこそ、ディーの体に他のオメガの所有印が見えないからこそ、俺こそがそれを付けたくて、俺の痕跡を少しでも残したくてたまらなかった。

「ディー、俺も跡を残してもいい?」
「跡? ああ、つけてくれ」
「うん!」

 まさか許可が出ると思わなかった。そしてディーがいつもするように、一生懸命に吸うけれど、なかなか跡がつかなくて、涙が出てきた。

「シン、泣かなくてもいい。そこより首元につけてくれないか? ここならうまく付くと思うよ」
「うっ、ぐすっ、うん、ディー」
「ほら、こっちおいで」

 ディーは上に乗っている俺を引き上げて、また裸で抱き合う形になった。そしてキスをくれてから、ディーの首元にキスをして、思いっきりディーの香りを吸って、堪能した。

「あれ? シンの所有印を付けてくれるんじゃなかったの?」
「あ、あまりにディーの香りが気持ちよくて、忘れてた、ふふ」
「ああ、本当に可愛いな」
「ディーの香り、好き」
「香りだけ?」
「すべてを言わせないで」
「ふふ、私はシンのすべてが愛おしい。シン、続きは私がしてもいいか?」

 ついにお遊びの時間は終わりみたいだ。俺の子供みたいな愛撫じゃなくて、ここからは大人の触れ合いが始まる。俺は期待を込めて頷いた。

 ディーの言う、ソノサキをついに経験できる。そう思うと、フィオナに嫉妬していた自分のことはすっかり忘れて舞い上がった。
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