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第二章 学園生活
27、殿下と学園で
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今日からレイは婚約のこととかで忙しくなるとかで、少しの間だけど実家に帰ってしまった。レイの家は王都から離れていたので、彼も俺と同じようにこの宿舎で生活をしていた。レイはいいところのお坊ちゃんだから侍従も一緒に生活をして、いろんなことを自分でする必要がないから、俺と全く同じ境遇とはいえなかったけど。
俺は話す程度の友達はいても、レイほど親しくしている友達がいないので、少し寂しかった。放課後が暇になってしまったので、せっかくだから部屋に戻って勉強をしようと思い、たくさんの本を持っていたら呼び止められた。
「シン君!」
「あっ、ダイス様」
「うわっ、重そうだね。手伝うよ」
そう、殿下の騎士のダイスが俺に話しかけてきた。さすが鍛え上げた騎士だけあるし、貴族の男だ。俺の持っている本を自然な流れで持ってくれた……紳士だ。
「ありがとうございます」
「いいって、それよりダイス様はちょっとな。呼び捨てでいいのに」
「そういうわけにはいきませんよ。俺……じゃなかった、僕は身分が低いんですから」
「俺って言ってもいいよ? 学園じゃ、他の人にはそう言って自然にしてるでしょ」
おっと、俺の学園での過ごし方を知っているのか? いや、そんなはずはない。俺とこの男のような殿下のすぐ側に仕える上流階級に接点はない。学園はオメガとアルファを離す処置をしているから、アルファとは触れ合う機会もない。なおさら俺のことを知らないはず。
「いや、その、オヤジ、じゃなかった父にアルファの方の前ではお淑やか風にしろと言われていますので」
「はは、お淑やか風って……アルファってだけで差別されるとこたえるな」
「いや、そういうわけでは……」
「殿下も、もっと親しくなりたいって思っていると思うよ」
「ちょっ、こんなところで!」
俺は殿下という言葉を聞いた瞬間、周りを見てダイスの口を自分の手で塞いだ。ダイスは驚いた顔をしている。
「あっ、口元に触ってしまって申し訳ありません。その、自分の立場は秘密と言われたので……」
「いや、こっちこそごめん。君は慎重でいい子だね」
ダイスは本を持ってない手で俺の手を握って、自分の口元から離した。そしてほほ笑みながらしゃべるその顔は怒ってはいなかった。穏やかな男なのだろうなと思った。
ダイスは殿下と同じくらいの身長で、俺より頭一つ分は高いし、体は騎士だけあってごつい。俺は挙げている手を掴まれているから、捕獲されたオメガっていう風に見えなくもないような、間抜けな格好をしている。
「何をしている」
そこで最近よく怒っている相手の声が聞こえてきた。そう、そんなところにまたしても会ってはいけない人が来てしまった。
「殿下、偶然シン君に会ったので、話していただけですよ」
おおおおーい、おまい、なんで殿下に俺の名前出してるんだよ。殿下は俺を知らない設定なんだから! と心の中で暴れていたら――
「じゃあ、なぜお前がシンに触れているんだ」
殿下ぁぁぁー? あなた、俺と知り合い設定じゃだめなんですよ? はっきり今、名前言っちゃったよ。俺はこの状況にもっと慌ててしまうと、今度はそれに対してダイスが一言。
「ああ、スキンシップ?」
普通に返すダイスに、俺は固まる。ここ学園、廊下、人はまばらに歩いている。そして、殿下と側近騎士、最下位身分の俺の三人。おかしいでしょう。
「すいません、失礼いたしました!」
俺はダイスの持っている本を受け取って、その場を去ろうとしてダイスの腕を触ると、また怒られた。
「シン、男に触れるなとこの間話したばかりだが、学習していないの?」
「あっ、いや。その、本を持っていただいたので、返してもらおうと……」
「ダイス、その本を持って執務室へ行くぞ」
「はっ!」
ダイスはいい声で返事をした。殿下はそう言うと颯爽と歩いて行ってしまった。周りは何事かという感じだったが、殿下の人を寄せ付けない雰囲気に、その場にいる通行人は、目をそらした。そしてダイスは俺に笑いかけた。
「行くよ、シン君」
「へっ」
「ついておいで」
なんだか断れない雰囲気だったので、後ろをついていった。
俺は話す程度の友達はいても、レイほど親しくしている友達がいないので、少し寂しかった。放課後が暇になってしまったので、せっかくだから部屋に戻って勉強をしようと思い、たくさんの本を持っていたら呼び止められた。
「シン君!」
「あっ、ダイス様」
「うわっ、重そうだね。手伝うよ」
そう、殿下の騎士のダイスが俺に話しかけてきた。さすが鍛え上げた騎士だけあるし、貴族の男だ。俺の持っている本を自然な流れで持ってくれた……紳士だ。
「ありがとうございます」
「いいって、それよりダイス様はちょっとな。呼び捨てでいいのに」
「そういうわけにはいきませんよ。俺……じゃなかった、僕は身分が低いんですから」
「俺って言ってもいいよ? 学園じゃ、他の人にはそう言って自然にしてるでしょ」
おっと、俺の学園での過ごし方を知っているのか? いや、そんなはずはない。俺とこの男のような殿下のすぐ側に仕える上流階級に接点はない。学園はオメガとアルファを離す処置をしているから、アルファとは触れ合う機会もない。なおさら俺のことを知らないはず。
「いや、その、オヤジ、じゃなかった父にアルファの方の前ではお淑やか風にしろと言われていますので」
「はは、お淑やか風って……アルファってだけで差別されるとこたえるな」
「いや、そういうわけでは……」
「殿下も、もっと親しくなりたいって思っていると思うよ」
「ちょっ、こんなところで!」
俺は殿下という言葉を聞いた瞬間、周りを見てダイスの口を自分の手で塞いだ。ダイスは驚いた顔をしている。
「あっ、口元に触ってしまって申し訳ありません。その、自分の立場は秘密と言われたので……」
「いや、こっちこそごめん。君は慎重でいい子だね」
ダイスは本を持ってない手で俺の手を握って、自分の口元から離した。そしてほほ笑みながらしゃべるその顔は怒ってはいなかった。穏やかな男なのだろうなと思った。
ダイスは殿下と同じくらいの身長で、俺より頭一つ分は高いし、体は騎士だけあってごつい。俺は挙げている手を掴まれているから、捕獲されたオメガっていう風に見えなくもないような、間抜けな格好をしている。
「何をしている」
そこで最近よく怒っている相手の声が聞こえてきた。そう、そんなところにまたしても会ってはいけない人が来てしまった。
「殿下、偶然シン君に会ったので、話していただけですよ」
おおおおーい、おまい、なんで殿下に俺の名前出してるんだよ。殿下は俺を知らない設定なんだから! と心の中で暴れていたら――
「じゃあ、なぜお前がシンに触れているんだ」
殿下ぁぁぁー? あなた、俺と知り合い設定じゃだめなんですよ? はっきり今、名前言っちゃったよ。俺はこの状況にもっと慌ててしまうと、今度はそれに対してダイスが一言。
「ああ、スキンシップ?」
普通に返すダイスに、俺は固まる。ここ学園、廊下、人はまばらに歩いている。そして、殿下と側近騎士、最下位身分の俺の三人。おかしいでしょう。
「すいません、失礼いたしました!」
俺はダイスの持っている本を受け取って、その場を去ろうとしてダイスの腕を触ると、また怒られた。
「シン、男に触れるなとこの間話したばかりだが、学習していないの?」
「あっ、いや。その、本を持っていただいたので、返してもらおうと……」
「ダイス、その本を持って執務室へ行くぞ」
「はっ!」
ダイスはいい声で返事をした。殿下はそう言うと颯爽と歩いて行ってしまった。周りは何事かという感じだったが、殿下の人を寄せ付けない雰囲気に、その場にいる通行人は、目をそらした。そしてダイスは俺に笑いかけた。
「行くよ、シン君」
「へっ」
「ついておいで」
なんだか断れない雰囲気だったので、後ろをついていった。
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