王太子専属閨係の見る夢は

riiko

文字の大きさ
上 下
17 / 102
第二章 学園生活

17、友人の秘密

しおりを挟む
 処女を……失わなかった。

 あの後、殿下と風呂に入って体を綺麗にされた。初めてお互いに裸になったわけだけど、殿下のアレを見ることなく終わった。介護のような手際の良さで、俺が出して汚した部分を洗ってくれただけだった。いいや、違う。風呂の中で後ろから抱きつかれて、俺のブツはしごかれ、何回かイカされた。

 なんだ、あの男は。抱きつかれたときに分かったけど、殿下は興奮していた。アルファの香りはいつもより強くなって、なにより触れ合った俺の肌には硬いブツの大きさを感じた……見てないけど。

 初めてはロマンティックにって言っていたから、昨日は最後までするのかと思った。

 だって、普段の後宮から離れて高級な宿屋で部屋をとったってことは、そういうことじゃなかったの? 約束もしていなかった二人が出会い、キスを始めた。その先は自然と初めての交わりになるって、誰もが思うよな? 

 俺は悩む。仕事はいつどこで始まるのだろうか。全く分からない。王族の考えることなど、分かるはずもないとは思うものの、ここまで俺の置かれている状況に悩むとは思わなかった。

 まるで俺ばかりが、いたしたいと思っているかのようじゃないか! そんなことはない。やらないで済むならそれにこしたことはない。金は返さないけどな! というか返す金がもうすでに無い。案の定、オヤジは金を最速で使っていた。

 俺は拒んでいないから、問題があるなら殿下の方だ。いや、待てよ。殿下のブツは反応していた。だから、身体的問題はないし、俺相手にっているなら、俺に問題があるわけでもなさそうだ。

 じゃあ、どうして……。

 そういえば、閨係はもうひとりいた。規則で閨係は二人いる。もしかしたらあっちの方が気に入っていて、抱く相手はあいつだけでいいと思っているのかもしれない。二人いるのにひとりしか相手にしていないことを知られるわけにはいかない殿下は、俺を抱く気はないけれど、抱いているぞっていうのを後宮にアピールするつもりで俺を呼んでいるのか? そうだ、それが正しい解釈だ! だったら俺からその先を強請ねだる必要はない。むしろ強請ねだってはいけないのだ! 俺はただ殿下とおしゃべりをして楽しむ閨カモフラージュの相手でいればいいってことか。なんて楽な仕事だ。

 ああ、これで解決だな。後宮医師は閨係同士の交流はしてもいいって言っていたな。じゃあ今度あのもうひとりのオメガにお礼を言おう。ひとりで性欲の強いアルファの相手をしてくれているんだ。感謝しかない。

 真実が分かったのならば、殿下が抱かない問題は解決だ! 悩みが解決してスッキリしたそれからの俺は、いつもどおりの日常を過ごしていた。

 学園では相変わらずレイと一緒にいる。一応、殿下に他の男との肌を触れ合うな的なことを言われたから、俺はレイと体の距離を取るようにした。頭をワシャワシャされそうになった時に、俺はニヤって笑った。レイの手を取り、得意の護身術をかけてひっくり返してやったら、レイは怒るどころか、もっとやってくれとなんとも変態発言をして……ひいた。

 いい男でも変態はいただけないぞ。友達としてもちょっと嫌だ。

「お前、投げられて喜ぶって、どういう変態だよ!」
「いや、シンはやっぱり凄いなって感動して。その技がオメガから出るとは思わなかったし、宙を浮いてスゲぇ楽しかった!」

 俺はアトラクションですか?

「お前は、なんていうか。本当に伯爵家の息子?」
「ああ、三男だけど息子だ。でも俺、学園を卒業したら公爵家の人間になるんだった」
「えっ、どういうこと?」

 伯爵家の自由な三男坊が公爵家って?

「俺、この間ついにエリザベスと婚約したからさ。エリザベスは長女で妹しかいないから、俺が婿入りして俺は将来の公爵夫になるわけだ」
「うわっ、まじか! お前の彼女、公爵令嬢だったの?」

 驚きだよ。レイの彼女は嫉妬深いくせに、俺におそろいの衣装を揃える余裕のある女。どんな人だと思ったら、公爵家の人間か。懐がデカイはずだ。公爵家は最上級爵位。俺なんかが見たことない人種だった。確か王族の血筋が入っているとかなんとか? よく分からないけど。

 ああ、それよりも最上級の貴族の上に立つ人を知っていた。この国の王子様と俺はキスをする仲だ。まあ、殿下との仲は非公式だから、実際の殿下は貴族の前じゃ、あそこまで気安くないかもしれないけど。そんなことを思っていたら、目の前の垂れ目の女タラシみたいな顔の親友はシレっと言った。

「あれ、言ってなかった?」
「聞いてない!」

 間抜けな顔で「あれぇ、おかしいなぁ」とレイは言い、もうそんなことはどうでもいいかのように話を続ける。

「そうそう。彼女がシンに会いたがっているからさ、これから会いに行かない?」
「おい、いきなりだな!」
「夫の親友まで把握しときたいんだって、可愛いだろう? でも俺いつもシンのこと話しているから、だいたい知っているけどな」

 だいたいって何を知っているんだよ。こいつはご令嬢に何を話したんだ?

「えっ、でも俺なんかが会える身分じゃないだろう。さすがに公爵令嬢は……」
「そんなの気にするな。俺だって伯爵子息様だぞ」

 バカみたいな自慢をしてきた。

「えっ、でもお前はお前じゃん」
「あはは、そういうところエリザベスが気に入っているんだ。さ、行くぞ!」

 俺は強引にレイに連れて行かれて、馬車に乘せられた。
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

処理中です...