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第二章 学園生活
15、捕獲
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「シン君! 君がここにいるって聞いたんだ。良かった、間に合って」
「え」
俺に声を掛けてきたのは、殿下の護衛騎士兼親友のダイス卿だった。
「俺のことは覚えている? 王宮で会っただろう。俺達の父親が今ちょうど食事をしていて、せっかくなら君も連れてきてほしいって頼まれたんだ」
「え、え?」
俺もレイも驚く。というか、驚きすぎて意味が分からなくなって、言葉も出ない。この人が、なんで今俺に声をかけてきているのだろう。いつも殿下の後ろに控えているから、誰もがこの男を知っているはず。そんな人が、絶対交流があると知られてはいけない俺――閨係に話しかけてきていいはずないのに……。
「ああ、友達と一緒だったんだね。すまないがシン君をお借りしてもいいかな? 俺とシン君の父親同士が王宮で仕事をしていて、それでこの間、シン君と会ったんだ。これから仕事の話をするからシン君の意見も聞きたいって言われて」
レイはダイスに話しかけられて、なぜか納得というか、少し興奮しながら俺に向きあった。
「すごいな、シン。お前の父親はそういう仕事してるの? どうぞ、あなたなら安心ですね。シンをよろしくお願いします」
「え、え、え?」
俺は訳が分からず、友人とこの男の会話を聞いても突っ込めなかった。そうこうしている内に、彼にエスコートされて馬車に乗り込んだ。
この人は殿下の騎士だったはず。それに俺のオヤジがこの人の父親と仕事の話なんてあるわけがない。なんで俺はこの人に、訳の分からないことを言われて、更には当たり前のようにこの人の馬車に乗っているのだろう。
「驚いた? 俺は殿下の側近で、この間会ったけど、覚えている?」
「は、はい。ダイス様でしたよね」
馬車の中でダイスに話しかけられる。
ダイスは、殿下よりも少し背が高くて体格もいい見た目騎士。短めな赤い髪と、少し小さめの茶色の瞳。殿下が王子様という見た目なら、この人はまんま騎士と言う見た目。どちらにしてもかっこいい人だった。俺はまだ殿下とこのダイスしかアルファは見ていないけど、とてつもなく見た目がいい。というか俺の友達のレイもかっこいいから、王都には美形しかいないのか? と思ってしまったが、ちゃんと普通の人もいるのでそこは安心した。
「ダイス様なんて、いいよ、ダイスで。俺たち同じ年だよ、学園も一緒。俺こそ、これからシン様って言わなければいけなくなりそうだ」
「やめてください。僕は男爵家の人間で、僕こそ呼び捨てで構いません」
殿下の側近なら、高い爵位に決まっている。
そんな人を呼び捨てでなんてできるはずが無い。俺はやんちゃに育ってきたけれど、一応母親の教育は厳しかったので、貴族の何たるかは知っているし、身についている。目上の人に対する態度だって、学園ではしないけど、殿下の前では精一杯やっているつもりだ。だからまだ殿下やダイスには俺がやんちゃだってことはバレていないはず。
学園では殿下たちのようなアルファともクラスは離れているので会った事も無いから、俺のことも知らないはず。
「まさか、殿下の想い人を呼び捨てでなんて言えるわけないよ」
「想い人……そんな不敬なことを言ってはなりません」
「不敬って、はは」
閨係とは、いくらなんでも馬車の中でさえ言えないから、だから想い人? それはそれで不敬だろう。だがダイスは笑っただけだった。
「あの、これからどこへ向かうのですか? オレ、いえ、僕の父が来てるってどうして」
「ああ、君のお父さんは来ていないよ。あの彼から君を離すには、そう言ったほうが都合いいかと思ってね」
レイから引き離すとは? 俺がきょとんとしていると、ダイスが真剣な顔で言う。
「ああ、シン君。あまり殿下以外の男とあんな風に密着してはいけないよ。役目を忘れえたわけじゃないでしょ? 今日は殿下もあの会場にいて、君を見てしまったんだよ。ちょっと機嫌悪いから気を付けてね」
「え?」
そして馬車が停まると、豪華な宿屋に到着した。先に馬車を降りたダイスに手を取られて、エスコートされるままに一つの部屋に案内されえた。
その部屋に入るようダイスに言われ、俺ひとり入って行ったら、そこには殿下がいた。
「あ、あの……」
「シン!」
「うわっ」
勢いよく抱きつかれた。そして俺の匂いをクンクンと嗅いでくる。
「シン、その服は?」
「えっと、これは友人が用意してくれて」
俺の服を見て、殿下は嫌そうな顔をした。
「あの伯爵子息とお揃いだったね、彼はシンのなんなの? お揃いの衣装を着る意味知っている?」
どういう意味だろう?
「あ、彼は友人で、今日は相手役を頼まれたので」
「相手役って、恋人ってこと? シンは頼まれれば誰の恋人にもなるの? 私の相手なのに?」
苛立っている? 殿下は、ダイスの言う通り機嫌が悪いみたいだ。まだ親しくも無い関係で、殿下のことを全く分からないし、会うといつもニコニコしているのに、というかまだ二回しかあったことないけど……。そんな相手とどう接していいのか分からない、いや分かる。相手が俺のオヤジなら理不尽なことを言われたらこちらも罵倒を返すだけだけど、相手はこの国の王子だ。王子様相手に喧嘩していいわけがない。どうしたらいいのだろうか。
「え」
俺に声を掛けてきたのは、殿下の護衛騎士兼親友のダイス卿だった。
「俺のことは覚えている? 王宮で会っただろう。俺達の父親が今ちょうど食事をしていて、せっかくなら君も連れてきてほしいって頼まれたんだ」
「え、え?」
俺もレイも驚く。というか、驚きすぎて意味が分からなくなって、言葉も出ない。この人が、なんで今俺に声をかけてきているのだろう。いつも殿下の後ろに控えているから、誰もがこの男を知っているはず。そんな人が、絶対交流があると知られてはいけない俺――閨係に話しかけてきていいはずないのに……。
「ああ、友達と一緒だったんだね。すまないがシン君をお借りしてもいいかな? 俺とシン君の父親同士が王宮で仕事をしていて、それでこの間、シン君と会ったんだ。これから仕事の話をするからシン君の意見も聞きたいって言われて」
レイはダイスに話しかけられて、なぜか納得というか、少し興奮しながら俺に向きあった。
「すごいな、シン。お前の父親はそういう仕事してるの? どうぞ、あなたなら安心ですね。シンをよろしくお願いします」
「え、え、え?」
俺は訳が分からず、友人とこの男の会話を聞いても突っ込めなかった。そうこうしている内に、彼にエスコートされて馬車に乗り込んだ。
この人は殿下の騎士だったはず。それに俺のオヤジがこの人の父親と仕事の話なんてあるわけがない。なんで俺はこの人に、訳の分からないことを言われて、更には当たり前のようにこの人の馬車に乗っているのだろう。
「驚いた? 俺は殿下の側近で、この間会ったけど、覚えている?」
「は、はい。ダイス様でしたよね」
馬車の中でダイスに話しかけられる。
ダイスは、殿下よりも少し背が高くて体格もいい見た目騎士。短めな赤い髪と、少し小さめの茶色の瞳。殿下が王子様という見た目なら、この人はまんま騎士と言う見た目。どちらにしてもかっこいい人だった。俺はまだ殿下とこのダイスしかアルファは見ていないけど、とてつもなく見た目がいい。というか俺の友達のレイもかっこいいから、王都には美形しかいないのか? と思ってしまったが、ちゃんと普通の人もいるのでそこは安心した。
「ダイス様なんて、いいよ、ダイスで。俺たち同じ年だよ、学園も一緒。俺こそ、これからシン様って言わなければいけなくなりそうだ」
「やめてください。僕は男爵家の人間で、僕こそ呼び捨てで構いません」
殿下の側近なら、高い爵位に決まっている。
そんな人を呼び捨てでなんてできるはずが無い。俺はやんちゃに育ってきたけれど、一応母親の教育は厳しかったので、貴族の何たるかは知っているし、身についている。目上の人に対する態度だって、学園ではしないけど、殿下の前では精一杯やっているつもりだ。だからまだ殿下やダイスには俺がやんちゃだってことはバレていないはず。
学園では殿下たちのようなアルファともクラスは離れているので会った事も無いから、俺のことも知らないはず。
「まさか、殿下の想い人を呼び捨てでなんて言えるわけないよ」
「想い人……そんな不敬なことを言ってはなりません」
「不敬って、はは」
閨係とは、いくらなんでも馬車の中でさえ言えないから、だから想い人? それはそれで不敬だろう。だがダイスは笑っただけだった。
「あの、これからどこへ向かうのですか? オレ、いえ、僕の父が来てるってどうして」
「ああ、君のお父さんは来ていないよ。あの彼から君を離すには、そう言ったほうが都合いいかと思ってね」
レイから引き離すとは? 俺がきょとんとしていると、ダイスが真剣な顔で言う。
「ああ、シン君。あまり殿下以外の男とあんな風に密着してはいけないよ。役目を忘れえたわけじゃないでしょ? 今日は殿下もあの会場にいて、君を見てしまったんだよ。ちょっと機嫌悪いから気を付けてね」
「え?」
そして馬車が停まると、豪華な宿屋に到着した。先に馬車を降りたダイスに手を取られて、エスコートされるままに一つの部屋に案内されえた。
その部屋に入るようダイスに言われ、俺ひとり入って行ったら、そこには殿下がいた。
「あ、あの……」
「シン!」
「うわっ」
勢いよく抱きつかれた。そして俺の匂いをクンクンと嗅いでくる。
「シン、その服は?」
「えっと、これは友人が用意してくれて」
俺の服を見て、殿下は嫌そうな顔をした。
「あの伯爵子息とお揃いだったね、彼はシンのなんなの? お揃いの衣装を着る意味知っている?」
どういう意味だろう?
「あ、彼は友人で、今日は相手役を頼まれたので」
「相手役って、恋人ってこと? シンは頼まれれば誰の恋人にもなるの? 私の相手なのに?」
苛立っている? 殿下は、ダイスの言う通り機嫌が悪いみたいだ。まだ親しくも無い関係で、殿下のことを全く分からないし、会うといつもニコニコしているのに、というかまだ二回しかあったことないけど……。そんな相手とどう接していいのか分からない、いや分かる。相手が俺のオヤジなら理不尽なことを言われたらこちらも罵倒を返すだけだけど、相手はこの国の王子だ。王子様相手に喧嘩していいわけがない。どうしたらいいのだろうか。
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