王太子専属閨係の見る夢は

riiko

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第二章 学園生活

12、王太子と一回目

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 そしてついに呼び出された! 殿下と会うなりいきなり抱きしめられ、ひとしきり抱擁が終わると、殿下はやっと離してくれた。

「シン、会いたかった」
「そ……う、ですか?」

 後宮の一部屋に、俺と殿下が二人でいる。いや、正式には侍女がお茶を出してくれているので二人きりではない。抱擁を解いたあとは、向かいにも椅子があるのに、なぜか隣に座っている状況だ。

 俺の頬に手を触れて、太ももがくっついている。いたたまれない、なぜか殿下からはとてもいい香りがするし。その匂いが近くてそわそわしてしょうがない。会いたかったと言われても、俺からしたらなんの返事もしようがない。

「ふふ、そう緊張するな。シンを取って食うわけではない」
「食べないんですか?」
「ぐふっ」

 殿下は飲んでいたお茶を噴いた。きたねぇな、王族なのにこんなんでいいのかよ。仕方ないからポケットからハンカチを出して殿下の口元を拭いた。

「まさか……シンは私に食べてもらいたいの?」
「いえ、そうではなくて。俺、いや僕をここに呼んだのはそういう意味でしかないから……」

 殿下が俺を凝視する。あっ、勝手に王太子の顔にハンカチあてるとかまずかった? 領地では、いつも泥だらけになって畑仕事しているから、自分の顔も汚れるし、つい人の顔を拭くのも癖になっていたんだよな。

「シンは、いつも人とこんなに距離が近いの?」
「えっ」
「それとも、私だから?」

 殿下の頬に触れている俺の手を握られた。そうして顔がまじかになり、一瞬で唇が殿下の唇でふさがれた。

「ん……」

 このあいだと同様、すぐさま唇で俺の口を開かれて、中身を根こそぎ舐められる。ああ、俺の処女はついに今日卒業式を迎えるのか。それにしてもすぐ口づけをするなんて、行動が早すぎて驚いた。

「シン、キスをしている時に考え事?」
「あっ、申し訳ありませ……んんっ、ぷはっ」

 殿下から聞いてきたのに、答える隙は与えない。キスは続き頭がぼうっとしてきた。口の中が気持ちいい。

「ふふ、シンの香りはとても可愛い」
「ふっ、ん」

 キスをされて、俺のフェロモンが少し出たらしい。自分では分からないし、むしろ殿下のいい匂いが唇や鼻から俺の中に入ってきて、体がかっと熱くなった。

「今日はこんなことするつもりじゃなかったのに、我慢できなくてごめんね」
「えっ、いえ。殿下が我慢をされる必要はありません」

 そういえばキスに夢中だったけど、いつの間にかこの部屋には二人きりになっていた。侍女はこのような状況にもすぐさま対応して、部屋を出たらしい。さすがエロ殿下の侍女だ、空気を読めるらしい。ちなみに俺は空気を吸うことしかできなかった。殿下のキスのテクニックに昇天しそうだったからな。合間に吸わないと死んでしまう。

「学園は慣れたみたいだね」
「おかげさまで」

 もうキスは終わり? いきなり普通の会話が始まった。ちょっと残念に思って素っ気なく答えてしまった。

「でも、あの男と距離が近すぎだった。シンは私のものだよね?」
「あの男……ですか? 誰だろう」
「そんなに当てはまる男がいるのか!?」

 なんの話か分からないが、急に殿下が怒った。

「も、申し訳ありません」
「何に、謝る? シンは誰彼構わず肌が近いことか?」
「……そんなつもりはなかったのですが、誤解を与えたことお詫びいたします」
「そんなつもりはない? シンはこうやって顔を近づけたら凄く物欲しそうな顔をする、だから相手は勘違いする。私だって勘違いしてしまう」

 ちゅっと軽いキスをされた。

「んっ」
「これでも近くないと言う?」

 押し倒された。初めて殿下に会った時と同じ状況だ。というか近いよ、近いでしょ。キスして、押し倒されているし。

「だって、それは殿下がキスをするから……」
「他の者とはキスをしてないからいいと? でもこんな風にシンは伯爵子息に乗っかっていたな。今の私と同じだ」
「あっ」

 もしかして、レイにタックルした時?

「そして、こうやって髪をいじられた」
「それはっ」
「美しい髪だ、赤茶色がこのように美しいとは思わなかった。いつまでも撫でていたい」

 レイはこんな丁寧に、いやらしく触ってない。ワシャワシャしただけだった。全然違う。以前父親から泣かれて、頼むから髪だけは伸ばしてくれと言われて切ることを禁止されていたので、髪は背中まで伸びている。学園では邪魔だから後ろに一つ結んでいたが、今はおろしていた。その髪を今、殿下は嬉しそうに撫でている。もしかしてアルファは長い髪が好きなのか? クソオヤジ! 俺を将来アルファに嫁がせる作戦は、髪を伸ばせと言ったときから始まってたのか。

「そしてこの距離なら、簡単に唇を奪える」
「んん」

 殿下から何度目か分からない濃厚なキスがきて、俺はもう返す言葉も見つからず、キスの心地良さに酔っていた。

「こんないやらしい顔、他の男に見せないでくれ」
「こんな顔は、殿下にだけです……」
「くっ、それは計算か? まさかこんなトラップに私がひっかかるなんて」

 なんのトラップに引っかかったというのだろうか。とにかくキスが気持ちよくてもう少し長くしてもらいたかった。それなのに殿下はこうやって途中途中で会話を挟んでくる。他のことは求めてはだめだけど、エロイ雰囲気の時はおねだりしていいって、後宮の人、言ってたよね?

 俺は初めてのこういった種類の快楽のとりこになってしまった。話なんかよりも気持ちいいことがしたい。

「殿下、続き、ほしい……です」

 俺は殿下の唇を舐めた。殿下の目がたちまち獣をとらえるかのような、獰猛なものへと変わった。

「シン!」
「あっ、あっ、んん」

 気持ちいい。

 殿下はこれまで以上に大きな口を開けて、口内をむさぼると、キスを口だけではなくて、目元、耳、耳の中、そして首元に嘗め回すようなキスをしてきた。どこに触られても気持ちが良くてふわふわする。特に、耳に殿下の吐息と口づけの水音が鳴り響くと、たまらなくぞくっとした。
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