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第二章 学園生活
11、後宮での確認
しおりを挟むそろそろ新生活に慣れただろうということで、改めて後宮に呼ばれた。
「シン君、どう? 王立学園に入ってお友達はできた?」
「はぁ、まあそれなりに」
「分かっていると思うけど、好きな人なんて作ってないよね? 異性と触れ合いもしてないよね?」
後宮の医師である、ムスタフ伯爵夫人というオメガ男性が変なことを聞いてきた。この医師は閨担当の心のケアまで受け持っているらしい。こうやって面接して王太子に不利になるようなことは働いていないか、吟味するのだろう。とにかく節操を守れということを言うために呼ばれたのかもしれない。
「していませんよ。そもそも俺のクラスの女の子、だいたい相手いるんですよ」
「いやいや。君の場合、対象は女の子だけに限らないでしょ、男ならみんな君を抱けるよ」
「……」
なんの話だ。
「シン君は自然あふれる領地で育って、あまり貴族と触れ合うことなく、領民と近い位置で仲良くしてたって聞いたよ。だけどここは王都だよ、その距離感では相手が勘違いしてしまうこともある」
「そうですか? でも俺ですよ。田舎くさくてガサツなだけの、なぜか性別だけオメガな俺ですよ、誰もそんな勘違いしないですよ」
医師は呆れた顔をした。
「ぅ――ん。君はオメガとしての自覚が薄いよね。育った環境がそうさせたのかな。君がガサツかどうかは付き合ってみなければ分からないし、見た目からは見抜けない。しゃべればまあ、それなりに残念な子に見えないこともないけど、黙っていたら美しいオメガだ」
「それ、けなしています?」
「違うよ。それなりの服で夜会にでも出たら君はたちまち声を掛けられるくらいには、美しい顔をしている。肌が日に焼けているから、王都には居ないタイプだけどそれすらも健康的で若々しくて、好きな人は一定数いると思うんだ。だから心配なんだよ、誰かが君を好きになって、それで君も舞いあがって相思相愛にでもなったら……」
この美人男性医師はなんて心配をするのだろうか。俺に限ってそれは絶対に無いだろう。この人は生まれた時からオメガとして、恋をすることこそが自然とそう思って育ったのだろう。オメガだからって誰もがそうとは限らない。
「大丈夫ですよ、契約中は絶対そんなことないから。俺の行動一つで領民にも家族にも迷惑かかるのに、恋愛なんかするわけないでしょ、そもそもそういうの、興味ないんで」
「そう。興味ないんだ?」
「俺、先生が言う通り、自分がオメガだって自覚も薄いんです。今回こんな役目をもらいましたけど、本来なら一番縁遠い人種です。きっと王太子殿下もそれにすぐ気が付いて途中で契約解除ですよ」
後宮医がニヤっと笑った。
「それは無いから! 殿下ノリノリだったじゃない」
「ノリノリ……ですか?」
「うん、まぁ僕からは特別なこと言えないけど、君はそろそろ覚悟した方がいいよ。学園に慣れるまでは殿下が君を呼ばないって言っていたけど、今日の話によると、もう君は学園生活も大丈夫そうだし、なによりもいろんなことに適応力がすぐれている。すぐにでも殿下の閨に呼ばれそうだね」
「へ、へぇ――。万が一そうなっても、その時は殿下にお任せしますよ」
殿下が処女を抱くにあたり、俺側は何もしない。予備知識もつけるなと言われているから実際、閨がどういうことをするのか分からない。いや、分かる。ヤルんだろ。でもそれだけだ、だから俺は尻を殿下に捧げるだけだ。ちょっと痛い思いを我慢するだけで、こんなに快適な生活ができる、ありがたいくらいの気持ちだ。
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