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番外編 2
桜の小道 1
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俺たちが付き合って二年目の春が来た。
高校生活最初の一年は、人生で一番苦労したと思う。なんせ、番契約というオメガの一生を動かすことをしたんだからな。
苦しい恋もした。
そして友達を巻き込んで、俺は最愛の番を見つけた。そんな激しかった高校一年とは違って、俺たちの最終学年は穏やかに始まっていた。
始業式、桜が満ちている道を俺と司は歩いている。
「そんでな、明がもうやばくてさっ」
「あの二人は……まったく」
呆れた顔の司だけど、友達たちの話を聞いて楽しそうにしていた。
司はアルファの友達はいても、ベータの友達は初めてだって言っていた。俺の友達ってことで司も友達になったんだけど。明と近藤はそんな司を受け入れてくれて、よく四人でつるんでいた。俺があの二人といると、司が別のクラスから俺に会いに来て結局四人で絡むことになったことがきっかけ。もう友達と呼べるほど親しくなっている。
それを見てると俺、なんだか嬉しいんだよな。彼氏と友達が仲良くしてるって……彼氏って言うの、なんかいまだに恥ずかしいぜ! そんな思考をかき消すように、昨日やらかした明のことを笑ってやった。
「な、笑っちゃうだろ」
「お前たち何やってんだよ」
俺の頭をがしゃっと触って、微笑む司が今日もかっこいいぜ!
「だって、司ゲーム苦手じゃん! 俺たちはまだ高校生なんだから、十代らしいことしたいんだよ」
「まぁ、俺の仕事中に、いつもはあいつらが正樹を見てくれるのはありがたいからいいんだけどさぁ」
「俺は高3だ! 保護者必要案件にするな、こらぁ!」
「だって、正樹は放置したらなんだか危なっかしいからな。前例もあるでしょ?」
「うっ、それは……」
俺はいつの間にか、やらかしちゃんみたいに言われていたが、まぁ、よくやらかすので間違いない。司は、あの二人とつるむか、両親の所に俺がいると安心して仕事ができるって言うから、仕方ないわ。将来の旦那が気持ち良く仕事をする環境つくりも大切だからな!
いつもの通学路、付き合いだしてから司は俺の家にお抱え運転手さんの車で朝から迎えにきて、二人で通学をするのが日課になっていた。司は始業式の前の日の昨日は、実家のホテル事業の仕事をしていた。高校生なのに忙しい奴だよ、ほんと。
そんな忙しい男なのに、通学は一緒にしたいとかわけわかんないこと言って、毎朝うちまで車で迎えに来ては、わざわざ俺と電車通学している。高校生活を俺との思い出で満たしたいとか老人みたいなことを言って……こいつ本当に俺と同じ歳なのか? と時々思う。いや常に思ってる。
大人顔負けの男前な顔と、アルファとしての自信。俺を片時も離さない執着と包容力。ちょっとはちゃめちゃだけど、そういうところは子供っぽい気がする。
毎日が楽しいし、特に今年は司とこの桜ロードを歩く最後の年だから、今だけのこの幸せな瞬間を味わっていたくていつも以上に、ただの通学路が楽しかった。
そんな時、パシャっとカメラ音が響く。なんだろうと思って後ろを振り向くと、さっき話してた友人の近藤と明が楽しそうに笑ってる。
「おはよー! お二人さん」
「はよっ、朝からお前ら爽やかなんだか、熱いんだかわかんねー距離感だな」
二人が笑いながら朝の挨拶をしてくる。ここは学校に入る前の道なので、この時間に通るのは同じ高校の奴らだった。
「ん? おはよ。っつか、お前今俺たちのコト撮らなかったか?」
「なんだ、お前ら。俺の正樹を盗撮か?」
司は朝の挨拶「おはよう」も言わずに、イラっとした顔を見せる。
「あはっ、お前ら朝から相変わらず仲がいいな。怒るなよ~西条。お前、二人の自然な写真がほしいって言ってたろ。だから今撮ってやったぞ!」
近藤が、そっち送ったからと言ってスマホをかざして見せた。すると司がポケットからスマホを取り出す。そして嬉しそうに笑った。その顔が高校生らしく、俺にはいつもの余裕な魔王司ではなく、可愛く見えてキュンってしちゃったよ。
「あ、ああ。これは確かにいい写真だ。ありがとう近藤」
「いいってことよ」
そして明。
「ほんとっ、一緒の学校に恋人いるのって羨ましいわ。お前らようやく余裕な感じ出てきたと思ったら、西条だせぇの! 近藤相手にマジ切れしそうなの笑える!」
「こらこら、俺の司をからかうな。こいつはいつでも一生懸命なだけなの!」
そこで司が俺の腰を抱き寄せ、頭にキスをして「できた嫁だ」と言ってる。ああ、嬉しいんだなって思った。俺ったら思わず「俺の司」って言っちゃったぜ! でも朝から司が喜ぶなら、まっいっか。そう思って俺は司の頭をよしよしした。
そして俺と司、少し後ろ斜めの位置に明と近藤が歩く。
「なぁ知ってるか? この道の桜、今年で終わりなんだって」
「ん? どういうこと?」
近藤が後ろから話しかけてくるので、司に腰を抱かれながら俺は顔だけ後ろを振り向いた。これは楽だわ。後ろ向きながら歩いても司が支えてくれるから躓くことないわぁ、などとくだらないことを考えながら近藤に聞き返していた。
「ほら、この学校の周りにショッピングモール建設してるだろ? ここがそこの敷地の一部になるから、通学路が来年から変わるんだって」
「えええ! そうなの?」
「ああ、だから見納めだな」
「そうなんだ……寂しいな。俺、この道好きだったし、こうやってお前らと歩くの結構楽しかったのに」
俺がしょんぼりすると、司がぎゅっと抱きしめてきた。
高校生活最初の一年は、人生で一番苦労したと思う。なんせ、番契約というオメガの一生を動かすことをしたんだからな。
苦しい恋もした。
そして友達を巻き込んで、俺は最愛の番を見つけた。そんな激しかった高校一年とは違って、俺たちの最終学年は穏やかに始まっていた。
始業式、桜が満ちている道を俺と司は歩いている。
「そんでな、明がもうやばくてさっ」
「あの二人は……まったく」
呆れた顔の司だけど、友達たちの話を聞いて楽しそうにしていた。
司はアルファの友達はいても、ベータの友達は初めてだって言っていた。俺の友達ってことで司も友達になったんだけど。明と近藤はそんな司を受け入れてくれて、よく四人でつるんでいた。俺があの二人といると、司が別のクラスから俺に会いに来て結局四人で絡むことになったことがきっかけ。もう友達と呼べるほど親しくなっている。
それを見てると俺、なんだか嬉しいんだよな。彼氏と友達が仲良くしてるって……彼氏って言うの、なんかいまだに恥ずかしいぜ! そんな思考をかき消すように、昨日やらかした明のことを笑ってやった。
「な、笑っちゃうだろ」
「お前たち何やってんだよ」
俺の頭をがしゃっと触って、微笑む司が今日もかっこいいぜ!
「だって、司ゲーム苦手じゃん! 俺たちはまだ高校生なんだから、十代らしいことしたいんだよ」
「まぁ、俺の仕事中に、いつもはあいつらが正樹を見てくれるのはありがたいからいいんだけどさぁ」
「俺は高3だ! 保護者必要案件にするな、こらぁ!」
「だって、正樹は放置したらなんだか危なっかしいからな。前例もあるでしょ?」
「うっ、それは……」
俺はいつの間にか、やらかしちゃんみたいに言われていたが、まぁ、よくやらかすので間違いない。司は、あの二人とつるむか、両親の所に俺がいると安心して仕事ができるって言うから、仕方ないわ。将来の旦那が気持ち良く仕事をする環境つくりも大切だからな!
いつもの通学路、付き合いだしてから司は俺の家にお抱え運転手さんの車で朝から迎えにきて、二人で通学をするのが日課になっていた。司は始業式の前の日の昨日は、実家のホテル事業の仕事をしていた。高校生なのに忙しい奴だよ、ほんと。
そんな忙しい男なのに、通学は一緒にしたいとかわけわかんないこと言って、毎朝うちまで車で迎えに来ては、わざわざ俺と電車通学している。高校生活を俺との思い出で満たしたいとか老人みたいなことを言って……こいつ本当に俺と同じ歳なのか? と時々思う。いや常に思ってる。
大人顔負けの男前な顔と、アルファとしての自信。俺を片時も離さない執着と包容力。ちょっとはちゃめちゃだけど、そういうところは子供っぽい気がする。
毎日が楽しいし、特に今年は司とこの桜ロードを歩く最後の年だから、今だけのこの幸せな瞬間を味わっていたくていつも以上に、ただの通学路が楽しかった。
そんな時、パシャっとカメラ音が響く。なんだろうと思って後ろを振り向くと、さっき話してた友人の近藤と明が楽しそうに笑ってる。
「おはよー! お二人さん」
「はよっ、朝からお前ら爽やかなんだか、熱いんだかわかんねー距離感だな」
二人が笑いながら朝の挨拶をしてくる。ここは学校に入る前の道なので、この時間に通るのは同じ高校の奴らだった。
「ん? おはよ。っつか、お前今俺たちのコト撮らなかったか?」
「なんだ、お前ら。俺の正樹を盗撮か?」
司は朝の挨拶「おはよう」も言わずに、イラっとした顔を見せる。
「あはっ、お前ら朝から相変わらず仲がいいな。怒るなよ~西条。お前、二人の自然な写真がほしいって言ってたろ。だから今撮ってやったぞ!」
近藤が、そっち送ったからと言ってスマホをかざして見せた。すると司がポケットからスマホを取り出す。そして嬉しそうに笑った。その顔が高校生らしく、俺にはいつもの余裕な魔王司ではなく、可愛く見えてキュンってしちゃったよ。
「あ、ああ。これは確かにいい写真だ。ありがとう近藤」
「いいってことよ」
そして明。
「ほんとっ、一緒の学校に恋人いるのって羨ましいわ。お前らようやく余裕な感じ出てきたと思ったら、西条だせぇの! 近藤相手にマジ切れしそうなの笑える!」
「こらこら、俺の司をからかうな。こいつはいつでも一生懸命なだけなの!」
そこで司が俺の腰を抱き寄せ、頭にキスをして「できた嫁だ」と言ってる。ああ、嬉しいんだなって思った。俺ったら思わず「俺の司」って言っちゃったぜ! でも朝から司が喜ぶなら、まっいっか。そう思って俺は司の頭をよしよしした。
そして俺と司、少し後ろ斜めの位置に明と近藤が歩く。
「なぁ知ってるか? この道の桜、今年で終わりなんだって」
「ん? どういうこと?」
近藤が後ろから話しかけてくるので、司に腰を抱かれながら俺は顔だけ後ろを振り向いた。これは楽だわ。後ろ向きながら歩いても司が支えてくれるから躓くことないわぁ、などとくだらないことを考えながら近藤に聞き返していた。
「ほら、この学校の周りにショッピングモール建設してるだろ? ここがそこの敷地の一部になるから、通学路が来年から変わるんだって」
「えええ! そうなの?」
「ああ、だから見納めだな」
「そうなんだ……寂しいな。俺、この道好きだったし、こうやってお前らと歩くの結構楽しかったのに」
俺がしょんぼりすると、司がぎゅっと抱きしめてきた。
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