運命を知っているオメガ

riiko

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本編

25、オメガ扱い

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 オメガ君。

 アルファはそうやって人を性別で判断するものなのか? アルファは櫻井しか知らないし、司……俺の唯一のアルファの殿はちょっとご乱心ぎみだから判断がつかない。

 俺がムスっとしたのに気がついたコウが、また馴れ馴れしく触ってくる。そして司はコウをぽかんと殴った。

「イテッ! ごめんごめん! こいつと恋愛とかキモいっ。俺はこのわがままキングの唯一の親友。こいつ結構変わっているアルファだからなかなか面倒くさいんだけど、子供の頃からの腐れ縁なんだ、司のことはなんでも聞いて」

 俺は手を払って、そっけなく答えた。

「そうなんだ、別に知りたいこと無いから大丈夫だ」
「うわっ、つれない! もしやツンデレさん? そういうのも良いな」

 イラってする。

「司、俺もう行っていい?」
「あ、ああ、教室まで送るよ」

 ますますイラッとした。

「やめろよ、俺を女扱いするな」

 俺の手を握ろうとしたから、ぺしっと叩いた。

「女だなんて思ってない、お前は男でオメガだ」
「だから、オメガ扱いするな! ついてくんなよ!」

 コウはそのやり取りをみて大声で笑った。

「おいおい! 二人の世界入りすぎだし、ケンカップルかよ、男同士ってそういうのいいよね、俺も男オメガのつがい作ろうかな」

 ますますイラついた。

 つがい作ろうかなって、アルファにとってつがいはそんな簡単な理由でできるかもしれないが、オメガには一生ものの鎖だ。

「カップルじゃない! 俺そういう話は聞きたく無い。じゃあ、ってちょっと!」

 腕をぐっと掴まれて、司に有無を言わずに連行された。しかたないから抵抗せずに従った。

「ねぇ手を離して、司には世話になったけどもう大丈夫だから、俺にもう構わないでくれない?」
「なんで?」

 真顔で質問するなよ。

「なんでって、俺がオメガで司がアルファだから」
「だから、それが何?」

 そこが一番何? だよ。

 俺がオメガな限り、やっぱり友人なんて無理だ。現に司の親友に変な誤解をされた。そんなことが度々あったら、司はその都度否定することになり、やはり俺を面倒くさい案件だと思うに違いない。

「何って、オメガ嫌いなんだろう? だからもう関わらないほうがいい、俺はフェロモンも自由に扱えないし、いつまた不快な匂いをさせるかわからないから」
「それなら大丈夫、俺は正樹の香りを不快だとは思わない。いわゆるオメガ特有のあまったるい匂いじゃないし、どっちかっていうとアルファに近いような、力強いスッキリしたハーブ調だな。それにオメガは嫌いでも正樹は嫌いじゃないから」

 なんだ、それ、矛盾しまくり。

 あれから聞いてはないけど、もしかしたら俺を運命とは気がついてないのか? 運命だったらその場でつがいにするだろうし、友人とはっきり言われた。

 でも、結局俺はオメガに見えないから、オメガ嫌いでも大丈夫ってことなのか? 抱いたことはノーカン?

「正樹はアルファに襲われたばかりだから、少し警戒したほうがいい」
「だから! 俺を女扱い、オメガ扱いか! それやめろよ、不愉快なんだよ、俺は男だ。喧嘩だってできるんだから深窓の令嬢みたいな感じで接するな」

 司が、にやってした。

「令嬢ねえ、それいいな。正樹に似合っている」
「ばっ、な、なに言ってんだよ、俺を辱めるのが目的? もう十分恥ずかしいから目的達成でいいよ」

 急に俺の手を引いて抱き寄せて、そして顔を近づけてきてキスをされた。

「んっ? んんっ、な、なにしやがる!」

 俺はぱっと離れて濡れた唇を腕で拭うと、また司は引き寄せて強引なキスをしてくる。瞬時のことでもさすがに連続で仕掛けてくるとか、なんだよ! 全然腕外れないし、舌まで入れてきやがった! 

 しかも気持ちいいのがたまらなく悔しい。

「んっ、ふっ、んん!」
「ふふ、ほら、そんな鼻息荒くしないで、唇もっと開けてよ?」
「ふあっ、あっ、や」

 余裕な表情の司は、一通り俺の口の中を楽しんだみたいで、満足した顔で唇が離れた。なんなんだよ!

「これでもアルファから逃げられるって言える? 喧嘩にもなってない。正樹ならあっという間に服も脱がされていると思うけど」
「今のは! 不意打ちだから、それに司がまたそんなことするなんて思ってなかったから!」

 司が真面目な顔をした。

「オメガを襲おうとする奴が、いかにも襲いますって襲ってくれると思っているの? 隙をついて騙して、自分のものにする、アルファってそういうものだって櫻井に襲われた時に学ばなかった?」
「そ、それはっ」

 辛辣なことを言うけど、本当のことだから俺はなんとも言えなかった。そしたら司が真剣な顔を解いて笑った。

「だからしばらくは俺が正樹を守るから、せっかく守ったオメガがまた襲われたら俺辛いし、それでいいな?」
「……お、せわになります」
「ああ、これからの登下校はずっと一緒に過ごせるな」

 司は俺の言葉に満足したのか、頭をぽんぽんと良くできましたって風に触ってきて満面の笑みを浮かべた。その微笑みに、司の手の温度に俺はまたクラクラしてきた。

 司の目的がわからない。
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