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本編
22、首輪
しおりを挟む先程の風呂では、俺の精神も体力もケツも限界を迎えて、軽く意識を失った。
西条が水を飲ませてくれて、少し休んでから唐突にめちゃくちゃ高そうな首輪を見せてきた。
「これ着けて」
「これって……」
俺はそれを見て思わず絶句した。
これは番防止の首輪だ。番の居ないオメガなら当たり前にするもの、オメガは首を噛まれてしまえば一生が決まる。だからたとえレイプに遭遇しようとも首だけは守る為に着ける、いわば鎖だ。
貞操帯ともいうのか?
俺は見た目は普通の男、身長もあるし、オメガなイメージもないくらい健康的に焼けた肌で、どう見てもベータだからそんなの着けようとも思わなかった。
高校に入ってからは周りからオメガと認識されていると知って残念な気持ちになったけど、周りの友人たちは俺をオメガとして扱わなかったので、すっかりオメガという事実は忘れていたくらいだった。
司と出会ったことや、そして今回の櫻井のことで、オメガなんだなって実感したけど。
でも、だからって首輪なんてごめんだ。こんなの着けたら『俺、オメガだよぉ! エッチ大好き!』なんてアピールになっちゃったりしないか?
沙也加ちゃんみたいなきちんとした可愛いオメガもいるけれど、男オメガは基本奔放な奴が多く性に軽いと思われがちらしい(母親調べ)
高校入学の日、しつこく母さんに言われた。本物のスパダリは淫らなオメガより、オメガと見えないくらいの掘り出し物を求めるのよと。一体なんのこと? 男なら、誘うより誘われろと。
だから、一体なんの話?
まぁ、そんな親子の会話からオメガには見えないように、首輪も着けなかった。
というか、俺日本人男子平均身長、顔普通、オメガらしさのかけらもない。そんなやつに首輪が着いていたらビビるよね? そんなアピールしなくてもお前みたいなオメガ襲わねぇからなって言われそう。
そんな俺、わざわざ気づいてない人にオメガアピールする意味がわからない。
「なんかいろいろ考えが巡っているようだけど、これ着けてくれないと家には帰せないし、学校にも行かせられない」
「な、なんで? こんなの着けたら、俺はオメガってみんなに言って歩いているようなものだ、可愛い女の子ならまだしも、俺みたいな男が恥ずかしいだろ? それに他人から性的な目で見られたくない」
司は面倒くさそうにふぅっと、息をはいた。
あっ、もしかして。これは司が間違えて俺のうなじを噛まない予防? 今は目の前で管理しているけど、ここから出してもし不意に発情して誘ってしまったら、こんどこそ間違えて噛んでしまう、番にしてしまうかもしれない、そう思って強制してきたんだ。
俺は悲しくて仕方ない。
「そんな顔するな。正樹がそう望んでも、オメガであることは周知で隠せていない。だったら俺の渡した首輪をすることで、保護ができる。誰も俺のオメガに手を出そうとしないから、むしろ性的な目で見られない予防策だ」
俺は急に顔が熱くなった。
えっ? 俺のオメガ、そう言わなかったか? 俺がポワーンとしていると司は最高にカッコいい笑顔を向けて話を続けた。
「それに正樹はそこら辺の女とは比べ物にならない。正樹は女特有の甘ったるい空気がないし、オメガ独特の滑稽さも無い。そんな正樹の良さに気づいたアルファをこれ以上増やしたくない、そういう意味でもこの首輪は役に立つ」
司の言っている意味はわからなかったが、褒めてくれたのか?
でも司はたまたま助けてくれた俺を放っとけないだけなのかもしれない。もしくはセフレにしてくれようとしているのかな? 自分の所有物を人と共用したくないとか? あぁダメだ! 俺は司を諦めなければいけない、こんな物質にすがっていてはいけないんだ。
「だったら、なおさら着けられない。今回は助けてくれて本当にありがたかったけど、司と俺は今後もう話すこともないんだから、俺と司にこんな接点があったらおかしいよ、気持ちだけ受け取っておくから、必要なら自分で用意する」
司が一瞬、怖い顔をした。
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