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番外編【隆二視点】
愛する妻
しおりを挟む爽と番になって、加賀美や麗香さんとの全てが終わった。そして僕と爽は無事にみんなに見守られる中、結婚した。
そんな僕たちは穏やかに暮らしていた。
そしてバー御影に二人で遊びにきた時、相原とみかげ君と話していたら、なんとなく過去の話の流れになったので、改めて僕の真実の全てを細かく話した。
「へぇ、あの時の社員が隆二だったんだ?」
「覚えているの? 番契約したときは覚えてないって言ってなかった?」
爽がうーんという声をだしてから、応える。
「あんま覚えてないけど、その詳しい話聞いたら何となく思い出した! すっげぇくたびれたスーツ着たベータ社員が来たことは記憶にあるよ? 本社って社畜っていう人種がいるんだなぁって、若干引いたもん」
「え、引いてたの?」
「はは、嘘だよ、でも仕事好きな人なんだろうなって好感持てたのは覚えているけど、まさか隆二だとはね。しかも丈さん、大丈夫なの? 丈さんってもっとキラキラしていたけど、そんな社畜だったんだ」
僕よりも丈君について考えている爽を見て、むすっとした。
「おっ、なんだよ。その顔は!」
「いちゃい、ひゃめてぇ」
僕の顔を見て、爽が笑いながら、頬をつねってきた。こういうところ本当に可愛いな、僕の番は。
「僕はひとつひとつ、ゆっくりと爽に恋をしていったんだ。あの時すでに君に夢中になっていたのは間違いないけどね、でも会う度にどんどん惹かれていったよ」
「そうかよ」
爽が照れながら、つねっていた手を離した。
「次に会った時は、御影で爽をナンパ。まさかあの日に爽を抱くことになるとは思わなかったけど、あの時はもう爽を逃がすつもりはなかった。誰にも、たとえ運命にも渡さないって思っていた」
「はは、怖いな。なんだっけ……相原さんが俺を保護してくれた時に確信したんだっけ?」
「そう、それで、爽にとっては、初めての出会いになるあの日に賭けた」
爽は微笑んで、俺の頬を両手で包んだ。
「俺は、幸せだよ。初めから隆二に見つけてもらえて」
「僕は心配でたまらなかったけどね、真面目に付き合う気も無い素振りするし、しまいには妊娠目的だとか言うから、ああ、この子はすでに運命を知っていて回避するつもりで頑張っていたんだと、初めて爽の強い想いに触れて、君の強さにもっと惹かれたよ。ますます逃がせられなかった」
「はは、そうか、隆二はあの時すでに俺の本当の目的に気づいていたんだな」
爽がそっとキスをしてきた。そして僕もそれを受け取る。
「隆二、大好きだよ」
「爽、僕こそ、運命なんかより、ずっと君が運命だって思えるくらい、愛してる」
「ふふ、俺たち遠回りしたけど、これからはずっと……んん」
話している側からキスをまた仕掛けた。もう言葉なんていらない。僕たちはこれからずっと、愛を体で、心で、香りで、全てでわかり合える。
それが、番なんだ。
「ごほごほ、ごっほん!」
そこでわざとらしい咳が聞こえてくる。みかげ君が僕と爽のキスの邪魔をしてきた。なぜ?
「ちょっとみかげ君、今いいところなんだからさ、邪魔しないでよ」
「うちにはまだ出会いを求めてやってくるお客さんもくるんだからね、イチャラブするなら営業時間外にしてよね!」
そうだ! ここは相原の番、みかげ君のお店だった。話し込んでいたらいつの間にか爽と二人だけの世界にいたみたい。爽も同じだったようで赤い顔をして俯いてしまった。あぁ本当に可愛い!
「こらみかげ。こいつらはやっとのことで本心から向き合えて、今が一番安心できる時間なんだから、その辺にしてやれ」
相原が妻を諌めるが、顔は笑っていた。どちらかというと、僕の過去を改めて聞いておかしかったのだろう。
「みかげさん、なんかすいません。俺、最近、隆二のこと、もっと求めるようになっちゃって、お恥ずかしいデス」
可愛い爽が控えめに恥ずかしがる。でも正直に話すところが最高! あぁ、早く帰って爽を愛そう! そう思っているとみかげ君が何か気づいたような顔をした。
「ねぇ、もしかして爽君、妊娠してない?」
「「えっ!」」
僕と相原がみかげ君の発言に驚く。
「だって、妊娠中ってアルファの旦那をもっともっと欲しくなっちゃうって言うよ!」
僕はすぐに爽を見た。すると爽はみかげ君の話す内容に心当たりがある様子……可愛く微笑み、お腹を大事そうにさすり僕を見つめる。
「隆二、俺たちの子ども……今度こそここにきたよ」
「爽!」
勢いよく爽を抱きしめた僕の瞳からは、涙が溢れていた。
「隆二、大好き! この子と三人でこれからもたくさん、俺を愛して!」
「もちろんだよ爽、ありがとう。愛してる」
抱き合う僕たちを、相原もみかげ君も静かに見守ってくれた。
――fin――
追加の番外編、お読みくださりありがとうございました!!!
riiko
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