運命の番は姉の婚約者

riiko

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第二章 男を誘う

24 子供が欲しい

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「俺は結婚もしないし、交際もしない。欲しいのは初めから一つ、子種だけだから。それができるなら相手は隆二でもいいけど、無理だろう? 子種だけもらって父親としての権利を主張しないとか都合よすぎるだろ?」
「どうしても、それ必要なの?」
「それって?」
「だから、子供を産むってこと」
「さっきからそう言っているだろう。俺、家族が欲しいんだ。夫じゃなくて子供っていう家族が」

 自分で言っていておかしいとは思ったけど、今のセリフはなぜかしっくりきた。俺はきっと一生アルファとつがいになれない、なぜなら俺のアルファは姉の男ひとりだから。かといって、ベータとだって結婚するつもりはない、俺はきっとあの彼をずっと思って生きていく人生しか見えないから。そんな俺みたいな相手が妻になるなんて、将来の旦那がかわいそうすぎる。でも子供はほしい。自分の遺伝子をこの世に残したいというのは、オメガの本能なのかもしれない。

 誰ともこの先結婚できないなら、せめて自分の子供だけは、自分の家族を欲しがってもいいじゃないか。

「そんな泣きそうな顔で、言わなくてもいいよ。きっと爽にはいろんな事情があるんだね」
「え?」

 俺の頭をなでながら、隆二はそう言った。

「いいよ、僕が子供の種をあげる」
「え、いいの?」
「ああ、だから、今後一切他の男と関係を持とうとしないで。生でするのに、他の男を受け入れている人とするのは、リスクしかないから。僕も爽を生で抱く以上、誰とも寝ないって約束する。それを約束してくれたら爽のこの小さなお腹に僕の種を溢れるほど注ぐ」

 隆二は、俺の腹をさすってそう言った。

 そうか、そういうリスク管理も必要になるのか、誰でもいいと言って誰とでも生ですることは、病気になることも考えないといけない。だったら、子供の親になる人はひとりだけの方がいいというのも、安全策として必要なことだ。

「あ、りがとう」
「どういたしまして」

 いったいどういった心境の変化なのかはわからないが、隆二がそう言うのなら縋るしかなかった。

 男を漁ることが、どれだけリスキーで大変かをほんの数回しかしていないけど、わかった。一回は酒を飲まされ、次は金で買おうという男を釣ってしまった。そして二回も保険証を寝ている間に見られていた。相原という分別ある大人と、目の前にいる隆二という男だったのが幸いだったけれど。

 しかし、隆二を信用はできない。俺の身元は知られてしまったし、変に抗って親になにか言われても困る。だったら、隆二に寄り添って人となりを見て判断するしかない。とにかく自分の要望は言ったし、これで付き合いを始めるとは思われないだろう。さきほど自分からセフレと言っていたし。

「する?」
「いきなり、そういうこと」
「だって、俺に子種くれるんだろ? そしたら俺が隆二と一緒にいるときにすることは一つだけだと思うんだけど? 今日気分が乗らないなら、後日でもいいよ。でもなるべく早く妊娠したいから、あまり先でも困るかな」
「僕は、こういう経験は初めてだから、慎重にいきたい」
「ただ、やるだけだろ?」

 隆二が、真剣な顔をして向き合ってきた。ただエッチするだけなのに、何をそんなに。面倒臭い男だったら、やはり面倒臭いなあ。

「そうじゃなくて、爽に僕の子供を産んでもらうってことでしょ」
「そんな真剣に考えられても困るんだけど、俺別に相手は隆二じゃなくてもいいって思ってるどうしようもないオメガだよ? ただベータの男ならそれでいいっていうだけの条件なのに」
「え、ベータだけが爽の対象なの?」

 そこで驚いた顔をした隆二。

「なにそこで驚いてるんだよ、アルファなんて絶対嫌だね。俺、アルファのフェロモン嗅ぐと気持ち悪くなるんだよね、だからアルファは問題外」
「オメガなのに?」
「ベータの隆二は、オメガのことなんてわからないだろ? フェロモンで誘われるなんて最悪でしかないね。隆二がアルファだったら、絶対にこんな誘いしないし乗らなかった。相原さんが、ベータしか来ないから安心って言ったからみかげさんのところに行ったんだ」
「そうなんだ……」

 隆二はまた考えるような顔をした。

「ねぇ、面倒くさかったら、やっぱりやめよう。妊娠はするつもりだったけど、種明かしするつもりはなかったから。なんか重い話でごめん。な? 今日はただエッチを楽しもうよ、相性のいいっていう体で俺を楽しませてよ?」
「爽! 僕は爽を手放すつもりはない。だから爽のここに入るのはこれから先僕だけだ」

 隆二は俺の腹をさすった。

「そうなの?」
「そうなの!」
「じゃあ、する?」
「そうだね、爽は今それしか考えられないみたいだから、とろとろにさせてあげるよ」

 そして隆二はキスをしようとしてきた。それを俺は手で止めた。俺の手にキスをした隆二は、あっけにとられていた。

「この手はなに?」
「あ、なんか、これ以上キスはだめな気がする。やっぱり少し話しよう」
「なんの話? 僕と真剣に交際する気になった?」

 隆二は微笑む。

「そうじゃなくて! 俺、本当に子供が欲しいだけで、彼氏が欲しいわけじゃない。だからセフレってことでいいんだよね? 俺たちは体だけの関係。そして、俺が孕むまでは隆二以外に体を開かないって約束するから、生でしてくれるんでしょ?」
「そう言ったね」
「だから、恋人みたいな真似はよして。ただ体の快楽のためだけに俺を使ってよ、キスとか、そういうのなしで」
「ふぅん。爽はへんなところで、変な常識があるみたいだけど、セフレだってキス位するし、キスした方が気持ちいいんだよ。気持ちいいことするのに、そこだけなしなんてひどいと思わない。セックスには雰囲気も大切なんだよ」

 たしかに、そうか。そうなのか、それじゃぁ仕方ない。キスは気持ちいいし、入れられているときに口の中もぐちゃぐちゃにされるのは、とても気持ち良かった経験を思い出した。

「それじゃ、エッチのときだけな」
「ああ、わかったよ。じゃあ、いいね」
「うん」

 そうして隆二は俺にキスをして、手慣れた手順で次々と俺をとろけさせてくれた。

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