運命の番は姉の婚約者

riiko

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第二章 男を誘う

13 初ターゲット

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 エレベーターを降りて、目的の部屋に到着していた。そして部屋に入ると同時に、隆二がキスをしてきた。初めてしたキスは、なんだか頭がぼうっとした。唇って柔らかいんだ、知らなかった。そして嫌な気もしなかった。優しく触れてきたと思ったら、ついばんで、そして大きく食べられるような口づけに変わっていった。

「う、ちょ、ちょっと待って! んんっ、んちゅ」
「ん? どうしたの?」

 いきなりのディープキスに焦った。

「それは、もういいから。早くベッドに……」
「はは、せっかちだね」

 キスを終わらせると、隆二は言った。

「ちょっと、待ってて。シャワー浴びてくるから」
「別に、いいのに」
「そういうわけにはいかないよ、一緒に浴びる?」
「ううん、後でいいよ」

 ベッドのマナーなど知らない俺は、隆二が体を清めたいというならそう従った。きっと俺の体も清めた方がいいだろう。隆二はバスルームに入っていった。

 部屋を見渡すと、夜景の見える窓があった。無意識に窓の方にいくと、凄い景色だった。

「うわっ、すげっ!」

 窓からは東京のネオンがキラキラと綺麗に見下ろすことができた。とてもよく夜景が見える。こういうのを味わえるのは勝ち組と呼ばれる男たちなのだろう。無縁の世界。実家は一般家庭、テーブルマナーは一通り学んだものの外食なんてたまにだし、こんな高級なホテルも泊まったことない。あたりまえだが、東京に住んでいて、都内のホテルに泊まるという意味のないことはしたことがない。

 中学を卒業するまでは家族四人で仲良く年二回は家族旅行に行っていた。温泉とか山とか海とかだから、高級ホテルとかよりも旅館とかしか経験ない。

 ここ何階だろうか。エレベーターでは隆二を誘うのに精一杯で、階数まで確認しなかったが、相当高いことはわかる。

 ただのベッドがあるだけの想像したホテルとは違って、ここはとても広かった。リビングのような大きな部屋にテレビとソファ、そしてとてつもなく大きいベッド。

 ここで隆二はいったい何をしているのだろう? もしやバーに行ったら、毎回オメガや女をお持ち帰りしているのだろうか。こんな景色を見せられて、高級な部屋に案内されたら誰でも落ちるだろう。しかも背も高くて体もしっかりと逞しそうだし、それでいてイケメンだ。金持ち、イケメン、一夜の相手、そして極めつけがベータ! 後腐れなさ過ぎてまさに望まれる相手ナンバーワンじゃないか! 

 俺、最初から凄いのをひっかけることができた。

 面倒くさい相手選びも今夜を、最初で最後にしたい。あとは、隆二の子種が強いことを祈ろう。一回で妊娠できたら、最高の相手だけど……。まぁそればかりはうまくいくかわからない。頑張るしかない。精一杯奥の奥で隆二の精液を貰えるように、なんとか頑張って受け入れるしかない! 男は度胸だ‼

「爽、怖い顔してどうしたの? やっぱりやめたい?」
「え……」

 そこにはいつの間にかシャワーを終えて、腰にタオルを巻いただけの少し濡れた隆二がいた。上半身、胸や腹筋が目についた。やはり想像通りだ、逞しい体。スーツを着ているだけでは見えなかったが、無駄のない肉体だと思った。

「ううん、やりたい」
「はは、あからさまなこと言うね」

 隆二がその言葉に笑った。

「あ、ごめん。なんかもう少し恥ずかしそうにした方が良かった?」
「いや、そんなことないよ」

 会話をしながらも、そっと近づいてくる。なんだか、急に逃げたくなった。

「じゃ、じゃあ、俺もシャワー浴びるね」
「爽はそのままでいい」
「え?」

 もう目の前に隆二は来て、俺の頬を撫でた。

「爽の香りを楽しみたい」
「何言ってるの? 隆二はベータでしょ、匂いなんて関係ないだろ、んんんっ」

 話をしていた最中に口を塞がれた。話を遮るキスなんて、お前は少女漫画か!? スキルの高い技術は女ならうっとりするかもしれないが、さっき初めてキスを経験したばかりの初心者。呼吸のタイミングもわからないから、呼吸困難になる!

「このままベッドに行こう」
「うわっ!」

 ベッドに行こうと言うのと行動が同じタイミング。いきなりお姫様抱っこされた。驚いて隆二にしがみつくと、隆二は耳もとで囁いた。

「早く爽を味わいたい」
「……」

 スキルが高すぎる……手練れのオメガだと勘違いするなよ! 

 そういう雰囲気を全く知らない、なんなら無知オメガ。もしや隆二は慣れたオメガだと思って、こんな上級者向けのことをしているのだろうか。ここで慣れてないなんて知られたら、やめてしまうかもしれない。それは困るから、大きく高鳴る心臓を無視して、手練れオメガを装った。

「俺も、早く隆二に食べてもらいたい」

 隆二は俺を寝室へ運び、ベッドに寝かせるとすぐにキスをしてきた。キスは気持ち良かったが、無遠慮に動く隆二の舌にどう動いていいのかわからず、溢れる唾液が唇を伝って垂れてきた。

「キ、キスは、したくない、んん」

 思わずそう言ってしまった。これ以上したら、手練れオメガではないことがばれてしまうからだ。それでも隆二はちゅうちゅうとついばむように、唇、唇の横、唇と順番にキスを落としていく。

「ちゅっ、なんで? こんなに気持ちよさそうなのに」
「それより、早く隆二の、挿れて?」

 慣れていないことを知られて、やっぱり初モノは無理と言われても困る。だから次のステップに進むために、隆二のモノを触った。しっかりと硬くなっていることに安心した。こんなオメガにちゃんと反応するんだ……。遊び慣れていそうだから、もっと凄いテクニックの持ち主にしか反応しなかったらどうしようと不安だった。

 ノーテクニックの俺に反応するとは……逆に、さすが遊び人だ。

 俺の行動に、隆二の目が大きく見開いた。

 あれ? やっぱりダメだった? 作法を間違えたのだろうか。いきなりは挿入じゃない? 

 隆二は俺の濡れた唇と、あごを舐めた。そして最後に唇をちゅうと吸われた。くそっ、キスは止めろと言ったのに!

「んんっ、んっちゅっ、ん」
「そんな誘い方は、後悔することになるよ。僕をいきなり本気にさせないで。爽を傷つけたくないから」
「な、なんで? 俺は傷つかないよ」
「だって、爽、経験ないでしょ?」

 まさかの、バレていた!!

「そ、そんなことっ……」
「キス下手だし」
「……た、たまたま?」

 必死に手練れオメガを装おうとしたけど、言いわけが苦しくなってきた。

「心臓の音、うるさいし」
「……」

 はい! もう無理でした――。手練れ度まったくなし。

「触った時の、反応がいちいち可愛いから」
「か、かわっ?」

 もう止めてくれ、辱めるのは。言葉では手練れのフリをしても、所詮体は初モノだからずっとドキドキしていた。心臓の音は、隆二にも聞こえていたらしい。そしてキスが下手なのは最初からバレていた。

「抱く気……なくなった? 面倒くさい?」
「いや、初めてを貰えるの、嬉しいよ」

 なんだよ、ビビらせるなよ。あぁ――良かった、こいつも初モノ好きだったのか。手練れしか相手にしない男かと勝手に判断していたけれど、初モノもいけるらしい。助かった。

「良かった、嬉しい! 隆二ありがとう」

 俺は安心して隆二に抱きついた。

「爽、ほんと、やめて。僕の心臓が持たないよ、こんな可愛い君を抱けるだけじゃなくて、初めてを貰えるなんて。でも、本当にいいの?」
「うん! 隆二が欲しい」
「一生大切にするよ」

 そんなこと言わなくてもいいのに、どうせ一夜の関係だろう。でもやり逃げしますとは言えないのはお互い様。いいよ、その恋愛モード付き合ってあげる。

「俺も隆二に貰ってもらえるの、凄くラッキーだよ。ね、続き、しよ」
「くそっ、煽らないで。初めては優しくしたいから」

 初めては、というか。初めてだけだからね、君が俺を抱くのは。でも隆二がノリノリになってくれているのが知れて嬉しかった。このまま処女喪失……かーらーのー、ご懐妊まで今晩一晩でなんとかオネシャス‼





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