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第一章 運命の番を知る
2 運命の出会い
しおりを挟む高校三年生の夏、友人たちと服を買いに行くため、目当てのショップ前で待ち合わせをした。友人を待っている時、道路の向こう側にいる長身の男が気になった。なぜかはわからないけど、なんとなく気になって彼を見ていた。
大きな道路は車の通行が多く、バカみたいに熱い夏のせいで、蜃気楼さえも見えそうな、そんなもわっとした空気があった。だから明確に彼の顔が見えたわけではない、それなのに、他の人は目に入らないのに、その人だけがクリアに見えた気がした。
ふと彼がこちらのほうを見た。いや、わからない。実際には、ただ顔の位置が道路の向こうに向いただけで、目が合ったかは定かではない。その時、急に心臓がドクンと鳴った。
ずくん、ずくんと、ありえない音をたてて心臓が高鳴り出す。
な、な、なんだ、これっ。感じたこともない自分の鼓動に困惑していた。そして、息が急にあがりはじめた。
「はっ、はぁっ、は」
なに、これ、熱いっ。
周囲がざわついているのが気配でわかるが、その場に立っていられなくなり、崩れ落ちた。どうしてか、道路の向こうにいた男に縋りたくなって見上げた。車も多く通る道路の向こうだから、相手が気付いてないのは当たり前だ。それでもその男を目で追った。そしてその男の近くに、偶然にも自分の姉が見えた。
「ねえちゃん? ねえちゃん……助けてっ」
大きな道路を挟んだ向こう側で、その男と話している姉を見て助けを求めてしまった。こんな場所からでは声が届くはずも無いのに、世界で一番信頼している姉だから、助けを求めたらこちらを見てくれると思った。しかしこちらには一切気がつかずに、その男と楽しそうに話しているのが見えた、二人は知り合い?
ダメだ……あれは、俺の男、俺のアルファだ。
なぜか熱い体がそう語りかけていた。自分はオメガで、あの男はアルファ。あのアルファが欲しい……細胞がそう言っていた。大好きな姉のはずなのに、姉の、あの男に向ける笑顔を見た途端、嫉妬で狂いそうになった。
そんな本能の声は向こう側に届くはずもなく、それでもこちらに気が付いていない男に縋ろうと必死で息を切らせているところで後ろから友人に抱き抱えられ、その場を離れることとなった。
「爽っ! しっかりしろ。今、運ぶから」
「爽ちゃんっ! すぐに僕の緊急抑制剤打つからねっ、チクっとするけど我慢して」
二人の友人が何か言っている。あまり思考がはっきりしなくてとにかく心臓がうるさい。
「えっ、緊急……っ、はぁ、うっ」
「爽、もう黙れ。ほら、これで少し落ち着くだろ。急いで家に連れて帰るからな、安心しろ」
太ももに何かがチクっと刺さった痛みを感じると、熱い心臓は少し音が静かになった。そして次に気が付いたら自分の部屋のベッドで、初めての発情期を迎えていた。
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