オメガの復讐

riiko

文字の大きさ
4 / 4

番外編

しおりを挟む
 
「君をもう片時も離さない」
「ふふ、僕も離れないよ」

 胸に愛しいオメガを抱いて思う――あの時の選択を間違えなくて良かったと。

 本当なら出会ったその日に抱いてつがいにしたかった。しかし、そんなことを提案できるような状況ではなく、彼は七年間、復讐のためだけに生きてきた。そして自分の人生の楽しみなど何もなく、復讐を終えたら罪を償う。そこまで考えていた。

 こんなに小さい体で、十代をずっと人を恨み生きてきた。

 僕が解放してあげるのは簡単だけど、きっと彼は自分の手でそれを成し遂げなければならない。彼の強い瞳を見て、決意を聞いた時そう思い協力した。
 
 正直あのアルファに抱かれている彼を思うと、僕の半年も試練だったが、彼との約束を守りキス一つで半年を乗り切った。

「洋二さん、大好きです」
「僕もだよ、巧。愛してる」
 
 そう言って、何度も何度も巧を抱いた。



 * * *

「気分はどう?」
「お前はっ、俺の巧を!」

 気分は乗らないが、今日は拘置所に来ている。

 巧の中で復讐は終わったというけれど、僕の中では終わっていない。僕のオメガを三回抱いた男。

 三回というのは、つがいになってから巧に聞いた。どんなふうに抱かれて、何を思ったか。すべてを口に出して言わせた。

 あの半年がトラウマにならないように、アルファに抱かれた記憶を僕で書き直す必要があったからだ。相当辛い経験だったようで「上書きしてくれてありがとう」と言って、泣きながら僕に抱かれた。

「因果応報って知ってる? まさにそれだよね」

 僕を睨み、アルファは冷静な口調で言葉を紡ぐ。

「なぜあの日、法案が可決されすぐ俺のもとに警察が駆け付けたのか……お前、まさか巧のこと知って、俺のことを調べて、むりやり巧を手に入れたのか?」
「無理やりじゃないのは君も見ていただろう? 君とはしなかったディープキスを自分から僕にしてきた巧の姿。巧はキスが好きで、起きた瞬間、出かける前、あっ目が合っただけで舌を絡めてくるキスをするんだよ。可愛いからキスだけで終わらなくて巧を毎晩疲れさせて申し訳ないけど、巧はその疲れが嬉しいって言うんだ。君はそんなエロい巧、知らないんだってね」
「なんでそんなことっ、お前がっ!」

 目を見開く驚くアルファ。

 愛されていなかったんだから、この当たり前の巧がする行動をこの男は知らない。

「ねぇ、因果応報って知ってる?」

 僕はまた聞いた。

「何が言いたい」
「君は巧に捨てられたんだ。君が巧のお兄さんを捨てたように、簡単にポイっとね」
「……え? 今、なんて言った」

 今しがた透明な仕切りを殴りそうなほど興奮していた男は、僕の言葉にきょとんとする。

「あれ? 被害者家族から被害届が出て君が今ここにいるんだけど」
「被害者家族って……」
「君が最初につがいにした男は、巧の実の兄だ」
「な、まさかっ!」

 と驚くものの、思い当たる節があるような顔をする。

「君って本当にアルファなの? 巧のお兄さんの写真を見せてもらったけど、すごく似ていた。それにフェロモンも同じ香りなんだってね」
「あ、そ、そんな」

 ようやく自分が最初の本当に愛したオメガを求めていたと気付いたようだ。

 巧から聞いていた――運命に惹かれたけれど、きっとあの男は兄を愛していた。だから自分は初めからすんなり彼に近づけた。僕はただ兄の真似をしただけ。そう微笑む巧は、ようやく本当の自分をだせると言って、僕の胸に頭を預けて泣いていた。

「だから君は初めから巧に惹かれたらしいけど。兄を殺した男を、巧が許すと思う? はじめから巧はあんたを殺すため近づいたんだ。それは僕が阻止したけどね」

 ひゅっと、息を吸う音が聞き取れた。

 愛したオメガに殺される予定だった。そんなことも知らずに、この男はいつか現れる巧の運命に怯えていた。なんて無様なんだろう。

「じゃあ、巧は最初から俺を愛していなかった?」
「そうだよ、君と付き合って、安心させて、寝てるところを刺すつもりだったらしいよ。でも僕に出会った。だから君を社会的に殺すように導いたんだ。愛しいつがいをこんな小汚いところに入れたくないからね。なにより塀の中じゃ彼を抱けない」

 これが僕の復讐――僕のつがいを三度も抱いた男への。そしてアルファは何かを悟ったように話す。

「そうか、俺は一番愛するあいつを殺した。死んでから気付くなんて本当にバカだった。虚無感がずっとあったけど、巧に出会って久しぶりに高揚したのは、そうか。あいつの弟だったから……その弟の巧に殺されるのが一番幸せだったかもな。お前が俺の幸せを奪った」

 驚いた。

 そうか……二度もつがいに死なれたアルファはこうなるのか。

「最後の幸せ、味わえなくて残念だね」
「お前は巧の復讐を成し遂げて、巧に受け入れられたんだな。知っていて俺に抱かせたとは」
「もちろん君が巧を抱いてると知って苦しかったけれど、巧の苦しみはこんなものじゃないから。あとね、君を殺させないようにしたのは、死ぬなんて簡単に終わることじゃ許せなかったから。きっと殺した巧のほうがずっと苦しむ。だから君が生きて苦しむ方法が復讐だと教えてあげたかったんだ。じゃあ、残りの人生ずっと懺悔してね」

 そうして僕は硬いパイプ椅子から立ち上がろうとすると。

「巧は、巧は今、幸せか?」
「……え、ああ、幸せだよ。あれからすぐに式を挙げて、今彼のお腹には僕の子どもがいる。巧のお兄さんの名前――未来みくをもらうことにしてる。彼は僕たちの中でずっと生き続ける」

 そこでアルファの泣き声が響いた。

 大きな男のアルファが本気で泣いている。未来みく未来みくっとひたすら言葉を紡ぐ。その姿を見て哀れに思った。

 そして僕の復讐は終わり、愛しいつがいのもとに帰っていく。

 最近はよく笑う、可愛い巧を抱きしめて「ただいま」と言ってキスをする。すると巧は僕の背中に手をまわして嬉しそうにキスの続きをおねだりする。

「お帰り、あ、洋二さん! 今日ね、お腹蹴ったの」
「わぁ、僕も見たかったな。きっと元気な子が生まれるね」
「うん!」

 僕たちの復讐は終わり、過去を終わらせて今未来へと進みだした。

 これから家族三人で生きていく。


 ――番外編 fin――



しおりを挟む
感想 16

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(16件)

ひろくま
2025.11.20 ひろくま

コメント失礼します。おすすめで出てきて読ませていただきました。
お兄さんがあまりにも可哀想すぎて読んでいる私まで悲しくなりました。巧くん、辛いのに頑張った。そして運命の番の洋二さんにも出会い、惹かれ合うはずなのに我慢しての復讐。赤ちゃんの名前をお兄さんの未来…嬉しいですね。
二人が幸せになれてよかったです。

2025.11.27 riiko

ひろくまさま
コメントありがとうございます!
最近こちらのサイトに来てなくて…
気づくのが遅くなりもうしわけありません(*´ο`*)
一年ほどなにも連載してないのですが、オススメに⁉︎そんな機能のおかげで読んでいただけて嬉しいです!
短編とてつもなく苦手なので、サクッと復讐してしまいました(๑˃̵ᴗ˂̵)
主人公に辛いことがあっても最後は幸せと感じる人生を作るのが好きなんです。
久しぶりに感想いただけて舞い上がりました〜やる気でてきました!
ありがとうございます^^

解除
BLACK無糖
2025.06.17 BLACK無糖

このクズ、番にゴミみたいな仕打ちしたクセに慰謝料100万とかなめすぎだろ、最低でも1億払えや・・・みみっちいアルファだな。
日頃からケチ臭そう、それもあって友人に嘲笑されたんじゃないの。
番解除を知っていたのは主人公達の仕込みな気も。

番解除の弊害を絡めた人権意識の話はよく見るけど、番解除で殺人罪は初めて見たな、でもそれが当然だわ。
そうでもしないと100万円とかいうケチ臭い金額で終わらせるクズが湧くし。

運命にコロっと逝ったクセに死んだら元番を愛してたのに〜とほざくクズ、愛じゃなくてただの独占欲と支配欲だろ寝言は寝て言えクズ。
こんなクズを税金で生かすのも勿体ないから人体実験に回したら良いと思う。
運命(笑)にコロっと逝かない薬を開発する為の尊い犠牲になれるなら喜びそう。

慈悲深い受けちゃん、何やかんや絆されるお優しい受けちゃんに辟易していたから復讐全振りな主人公は良かった。
ちゃんと復讐した上で幸せになったしね。

2025.09.16 riiko

BLACK無糖さま
しばらくサイトにきていなかったんです( .. )気づくのがとてつもなく遅くなってしまい申し訳ありません💦
感想とても嬉しいです!!
みみっちいアルファですよね( ˃ ⌑ ˂ഃ )
そんな奴は殺人犯で片付けちゃいました!復讐して幸せになる。しかもオメガバースらしく、ちゃんと運命での復讐できました〜!
えへへ(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑

解除
キース
2024.12.05 キース
ネタバレ含む
2024.12.06 riiko

ご感想ありがとうございます٩(ˊᗜˋ*)و
オメガバースって闇ありますよね~!そこが書いてて面白いところなんですがw
ただの幸せだけのお話や、洗脳をひっくるめた闇のお話までなんでも書けちゃうから好きです!
辛いことを乗り越えての幸せがどうしても好きなので、こんな話が出来上がってしまいました。
久しぶりに感想いただけて嬉しかったです!!
ありがとうございます( *´꒳`*)

解除

あなたにおすすめの小説

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

鳥籠の夢

hina
BL
広大な帝国の属国になった小国の第七王子は帝国の若き皇帝に輿入れすることになる。

記憶の代償

槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」 ーダウト。 彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。 そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。 だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。 昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。 いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。 こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

祝福を授かりましたが、まるで呪いです。

めっちゃ抹茶
BL
異世界に生まれ変わって出会った、一組の運命の番であるαとΩの話。 ※ご都合主義があります ※オメガバースの知識がある人向け/作中で説明は一切ありません ※主人公が可哀想、ハッピーエンドではありません 主人公目線、あまり悲壮感はありませんがタグをご確認のうえ以上の事を念頭に、大丈夫な方のみお進み下さい。

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない

天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。 ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。 運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった―――― ※他サイトにも掲載中 ★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★  「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」  が、レジーナブックスさまより発売中です。  どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

αとβじゃ番えない

庄野 一吹
BL
社交界を牽引する3つの家。2つの家の跡取り達は美しいαだが、残る1つの家の長男は悲しいほどに平凡だった。第二の性で分類されるこの世界で、平凡とはβであることを示す。 愛を囁く二人のαと、やめてほしい平凡の話。

やっぱり、すき。

朏猫(ミカヅキネコ)
BL
ぼくとゆうちゃんは幼馴染みで、小さいときから両思いだった。そんなゆうちゃんは、やっぱりαだった。βのぼくがそばいいていい相手じゃない。だからぼくは逃げることにしたんだ――ゆうちゃんの未来のために、これ以上ぼく自身が傷つかないために。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。