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番外編
愛妻家上條楓の日常 2 ※
しおりを挟む今日は桜の中学の入学式だった。小学校時代は家からの通学だったが、中学からは少し離れた場所での全寮制の生活になる。
ここは幼稚舎からの一貫教育、幼い頃から国の最高峰の学園に入学させた。代々名のある家の子息たちが通う名門中の名門。
入学には財力と家柄も重視されるので、少し偏った世界観ではあるだろうが、親としても安心の場だった。
「ぐすっ、ぐすんっ、」
「由香里、もう泣き止んで。そんな可愛い顔を世の中のアルファたちに見せられない」
「うっ、うう、楓酷いよ。僕が桜を大好きなのを知っているのに、こんなところに桜を入れるなんて」
「こんなところって……入りたくても誰もが入れる学園じゃない、最高の教育を桜に受けさせたくないの? それに俺の卒業した学校だし、ここなら桜を守れる。親元にいつまでもいたら成長出来ないだろ?」
それは本当、財閥やら会社トップの家の子供は大体ここに入学する。一般社会とはまた違うけれども、ここではもうすでに競争社会が始まる。早くから身につければ大人になって苦労することもない。
一応幼稚舎から入れている学校、小学生までは通いだったから忘れたのか? エスカレーター式の同じ学園だけど……。
「ぐすんっ、でもぉっ、ぐすっ」
「ほら、桜出てきたぞ。首席だったな、俺らの優秀な息子をちゃんと見てあげよう。由香里が泣いていたら桜が悲しむだろう。あいつだって勉強頑張ったからこそ、あんなに晴れ晴れしく舞台に上がれているんだ。息子の晴れの舞台を見ないでどうする?」
「あっ、桜!! ほんと自慢の息子だね、ぐすっ、カッコいい!! 桜の新入生代表の挨拶聞けるなんて、今日はすごく悲しいけど嬉しいっ!!」
由香里は泣き止んで、今度は目を輝かさせて桜を見ている。俺以外にそんな目を向けるのは大変遺憾だが、仕方ない。今日は許す、許すけど、他の男どもに由香里の泣き顔を見せたのは許さない、家に帰ったらお仕置きだ。今夜からは桜もいない、二人きりの性活が始まる。やっとだ、やっときた由香里との二人きりの生活。
結婚して新婚ヤリまくり生活は、実はこなかった。一年付き合って、やっと結婚して新婚生活と思ったら妊娠させてしまった。それは嬉しいし結婚初の発情期は燃えた、由香里がピルを飲みたくないと泣いたからお互い望んだ妊娠だが、考えが甘かった。
妊娠、出産と疲れきった由香里をどれだけ我慢したか。桜を産んでもしばらくは抱かなかったが、いい加減に俺にも限界がきた。
プロが子供を育てるのは上條家では当たり前なのだが、由香里は自分で全てを頑張って母乳で育てると言い張った。だが由香里も慣れない子育てで参っていたのは分かったし、俺のおっぱいを息子とはいえ与えることにイラッとして、早めにミルクに切り替えさせ、プロのベビーシッターを数人体制で雇い桜を育てた。
とはいえ子供がいるので新婚ヤリまくり生活はままならなかったが、子供のいる生活は楽しい毎日だった。
桜が中学生になり家を出た。さすがにもういいだろう? 有給を二週間とった。今日帰ってから由香里と二人、遅れてきたハネムーンに行くんだぃ!! 家族旅行はたくさん行ったけど、夫夫旅行は実はそんなに無い。出張に連れて行くくらいで、子供がいるからまとまった長期の二人きりの旅行をしたことないんだ。
だから今日、俺たちはプライベートリゾートで思いっきりヤリまくり生活をする。発情期ではないただのヤリまくり!! 楽しみで仕方ない。
そんなことを思っていたら、入学式も無事に済み桜と今日から入る寮にやってきた。
「うわっ、広いね。ここなら不自由なさそう。でも桜、寂しくない? お母さんと離れるの。今ならまだ他の学校に転校してもいいよ。ねっ、楓、やっぱりまだこんなに幼くて可愛い子を一人でなんて良くないよ、桜も家に帰りたいでしょ? やっぱり帰ろうよ」
「……」
桜が、俺にどうにかしろという目をした。
「由香里、いい加減にしろ。桜も困っているだろう、息子を困らせてどうする? 桜の挨拶聞いてもなおそんなことを言うなんて、お前は酷い母親だな。桜がイキイキしているのがそんなに許せないのか? お前の元じゃなきゃ桜は楽しく生きたらいけないのか? それこそ親のエゴだろ」
「あっ、そんな、そんなつもりじゃ」
可哀想だけどここまで言わないと分からない、心を鬼にして俺は滅多に叱らない由香里に苦言した。
さすがに由香里も反省して、言葉を詰まらせると、言い過ぎだと俺を睨んだ息子が由香里をなだめる。
「お母さん、大丈夫。俺はお父さんみたいに立派な大人になるためにここに来たから。だからお母さんも安心して。夏休みには帰るから、それまではお父さんをよろしくね」
「夏休み!? 夏休みまで会えないの? どうして、ゴールデンウィークは? そこは毎年の家族旅行だよね?」
「あっ、それは」
また由香里が泣き出した。
桜に縋っているのを見て、ちょっと哀れになった。桜はやっと母親から解放されるのを実は楽しみにしていたのを俺は知っている。息子がマザコンじゃなくて良かった。
桜からは、学園から出なければいけない長期の休み以外は帰らないと事前に宣言されていた。それは由香里に納得させとけよという意味がこもっていたがしかし! 数日前から由香里のテンションがだだ下がりで、そんなこと言える雰囲気じゃなかったんだぞ!!
「由香里、桜だってここに慣れなければいけないんだから、そんな貴重な時に家に帰れないだろう。夏休みは必ず寮を出なければいけないんだから、そこまで我慢しような」
「うあ――んっ、酷いっ、酷すぎるっ!! 林間学校で五日間、小学生の時のサマースクールで一ヶ月、そして今度は夏休みまで三ヶ月以上も離れるの!? 僕のあの一ヶ月がどんなに辛かったか、二人はもう忘れたの!? もう僕耐えられないっ。僕っ、この寮で寮母の募集あるか聞いてくる!! そしたら住み込みで働けば毎日桜に会えるし」
俺と桜は唖然として、お互い目を合わせた。これはまずいっ、さすがにまずいっ。ここまでの暴走になるとは思わなかった。溺愛にも程があるだろう!?
俺がオドオドしてしまったら、桜が俺を見てため息をついて、笑顔で由香里に向き合った。
「お母さん、俺のことそこまで思ってくれてありがとう。やっぱり寂しいからゴールデンウィークには一日、家に帰るよ。お母さんの顔見たいし」
「桜ぁ――ありがとう!! お母さんのこと考えてくれて」
由香里に抱きしめられた桜が、俺を笑顔で睨んだ。
怖いな、我が息子ながら怖いっ。オメガの操縦くらいなんとかしろよという目だった。お前だって番が出来たら分かるんだからな!!
そんな目で俺を見られるのも今のうちだ、上條の血を舐めるな、お前は俺以上に執着ヤバ目のアルファになるのは間違いない。サラッとした性格の息子だが、そこは絶対そうなると俺は自信を持ってそう言える。
とにかく優秀な息子のお陰で、由香里が笑顔で俺と家に帰ることが出来たので良かった。
***
「あ、あん、ああ、こんな、ところでっ!」
「由香里、いやらしいな。いつも桜のためにご飯を作っているキッチンでこんな格好なんて」
「楓が、させたんでしょっ、ああっ、いい!! そこっ!!」
「くっ、お前ほんとエロいな、どんな由香里も愛してるよ」
俺の腰を存分に振ると、由香里が鳴いた。
「ぼ、僕もっ、あああ!! イクっ、あああんっ」
二人同時に吐き出した。
裸エプロン、男の夢、キッチンの至るところが俺と由香里の出したモノで汚れているし、香りも凄いことになっていた。ヒートでもないのに、キッチンはローズの香りで充満していた。我が家なのに息子に気を遣って今まで我慢していたんだ。
部屋以外では、由香里の残り香を桜に嗅がせてしまう恐れがあるので、今までできなかったシチュエーションを存分に楽しんでいた。
家に帰った瞬間、お仕置きの始まりに由香里は桜と離れた寂しさなど感じることなく、感じまくっていた。あまりのハメの外し方で、五日間家から出られず、バカンスの日数は減ってしまったが、我が家の至る所で息子を気にすることなく致せたのは快感だった。
最終的に二人の生活も悪くないねって、由香里は照れながら言った。
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