上 下
24 / 31
本編

24、僕たちの日常

しおりを挟む
 
 あれから楓とは普通に大学生活を送っている。つがいになったことで一応は楓の中でも安心要素が出来たみたいで、僕があまりに拒絶するから結婚のことはゆっくり進めると言ってくれた。そして大学内では運命のつがいカップルとして有名になっていた。

 いつでも一緒にいて、登下校も送り迎えはあたりまえ、僕の家に居座り祖母と一緒に三人で過ごすことが多かった。二人きりで過ごさないのには理由があった。


 ***

「え……」
「だから、次の発情期までお触り禁止です」
「な、なんで。やっとつがいになったのに」
「やっとって、出会って五日でつがいにした人が言うセリフ!?」

 僕はやはり、強制的に発情させられたことに怒りは収まっていなかった。つがいになるのは楓しかいないし、彼が大好きだったからつがい自体は問題ないけれど、これから一生を過ごすなら一か月待って自然に発情期にロマンティックにつがいになるってので良かったじゃん!!

 ということで、発情期まではエッチ禁止にした。

 出会ってからずっとヤリっぱってのもおかしいと思うし、もし今後僕が妊娠でもしたら、楓の精力はどうやって消化するわけ!? 一か月も待てが出来ない人と将来子供を作るのは難しいと言ったら、なんとか待てが出来るようになった。だけどマンションで二人きりになると抱きたくなるからと、あえて祖母を交えての時間が増えたわけだった。

 祖母にも楓を知って貰う良い機会だったから、僕は嬉しいしかなかった。もちろん大学に行けばずっと二人で過ごせるし、二人きりの時間がないわけではない。

 相変わらず独占欲だとか、執着欲だとかは、僕が予想しない時にいきなりやってくる。

 それでも僕は楓が一番で、大好きだから嫉妬してくれるのは嬉しいってその都度、愛を伝えればしゅんってすぐにその変な怒りは収まるから、ちょっとおもしろい。

 最近ではわざと嫉妬をちらつかせる行為をしては、怒らせて、仲直りというのを楽しんでしていた。

「桐谷君、久しぶりだねぇ」
「由香里ちゃん、ついに人のつがいになってしまった」
「人のつがいって……でも僕とはお友達でしょ、また同じ授業一緒にがんばろうね!」
「由香里ちゃん!! つがいがいても俺、由香里ちゃんのこと……」

 そこでタイミング良すぎる登場の、僕の彼氏が僕を後ろから抱きしめる。

「楓っ!」
「由香里、堂々と他の男とお友達宣言? そんなの俺、許さないよ」

 桐谷君を睨みながら、言葉は僕に向けている。ほんと嫉妬深いし、レーダーが半端ないよ。

「そこの君さぁ、俺の由香里といつまでも友達でいられると思っている? えっと桐谷の御曹司さんだったかな? あまり由香里にちょっかい出すと、うちとの取引……」
「すいませんでしたぁ! 由香里ちゃん、お幸せにね」
「あっ、桐谷君」

 楓は酷いなぁ、桐谷君のお家のこと調べたの? これ脅しだよね。僕の友達は陽子と梨々花だけしか認めないってこの間言われたんだった。まぁ、僕にとって二人を認めてくれるならもうそれでいいんだけどね。

「由香里、俺の言いつけ忘れた?」
「そんなことないよ? 桐谷君とは同じ授業もあるし仲悪くしたら勉強にならないでしょ? あくまでもクラスの中だけの仲って意味だよ? もう、楓ほんと可愛いなぁ、僕のことそんなに好き?」
「ああ、たまらなく好き。お仕置きさせて?」
「ふふっ、なんのお仕置きなの? 僕は楓の言う通り友達はオメガの二人だけだし、楓が桐谷君に嫉妬してくれるのを嬉しいとしか思わないのに、これじゃご褒美だよ?」

 楓が破顔した。

 ほらね、ヤンデレなんてこんなもん。僕が全てを認めたら、それはただの溺愛だからね! 簡単でしょ。

「もう、俺由香里を抱けてなくて限界なのに、そうやって俺をまた喜ばせるんだよなぁ――。あぁまたチャンスが消えた、お仕置きという名目で抱き潰そうとしたのにな、それ言われたら俺また待てするしかない」
「待てが出来る楓が好きっ。僕を尊重してくれてありがとう! 次の発情期が本当に楽しみだね」
「う――可憐な由香里が、たまに小悪魔に見えるのは何故だろう」
「じゃあ、特別に僕からご褒美、ちゅっ」

 キスすら禁止していたのに、僕から軽めのキスをした。校内だけど気にしない、僕の男に誰も手を出さないでねって意味を込めて、あえて人が多いこの場所でキスをした。

「由香里、ありがとう」

 楓も喜んでくれている、僕はこんな普通の日常が送れて幸せを噛み締めながら、二人で手を繋いで大学を後にした。

しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版)

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

処理中です...