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本編

11、出会いから三日目

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 翌日大学に行くと、また楓は校舎の前で待っていた。周りに女の子をはべらせて。

 僕はその光景を見て、ああこれがこの人の当たり前なんだなって思った。まだ出会って三日目だけど僕はある意味余裕だった、だって他の女の子に見せている顔を僕は知らない、僕の楓はあんな顔をしない、僕の前では屈託なく笑う、あんな作り笑顔をまだ見たことない、だから僕は楓の特別なんだって自信を持てる。

 ほら、こっちに気づいた瞬間、顔が変わった。

「由香里!! 会いたかった」

 慌てて僕の方に駆け寄り、抱きしめられた。その瞬間楓の強いフェロモンが僕の鼻腔に入る、周りにも楓の香りが届いているみたいで、僕達の抱擁を見るしかなかったオメガ女子たちが、楓のフェロモンにうっとりした顔を見せている。

「楓、そのフェロモンしまって」
「あっ、ごめん。つい由香里を見たら嬉しくて」
「それは嬉しいけど、僕以外のオメガにも楓の香りが届いている。楓の匂い他の人に嗅がせないで」

 僕は可愛げなく、ムスっとなってしまった。そしたら楓はキョトンとした顔で僕を見ると破顔した。

「由香里、もう嫉妬してくれるの? すげぇ嬉しい!! 俺由香里に愛されているんだな。マジで嬉しすぎてむしろフェロモンしまえない、どうしよう?」
「ぶふっ! もう笑わせないでよ! 怒りがたどっかいっちゃった!! 楓、今日も好きだよ」
「俺は愛している」
「ふふっ」

 そして、今日も校門でキスをする。今日こそはきちんと授業に出るからと言って、お昼に学食で会う約束をして午前の授業はお互いに出ることを約束して別れた。

 僕が受ける授業の部屋まで楓と手を繋いで歩いた。僕の彼氏ってことになったみたいで、なんだかくすぐったい。まわりのカップルたちを眺めていいなと思う日々だったけれど、こんな僕にもこんな日がくるなんて思いもしなかった。僕は結婚が決まっていたし彼氏を作る日なんて絶対来ないはずだったから。今はこの楽しい時に浸りたかった。

 講堂に着くと、楓が僕のこめかみにキスをして、またお昼にと言って楓はその場を去った。その時、凄い視線を感じると周りが僕を見ていた。恥ずかしい、恥ずかしすぎて固まっていると梨々花がそこに来た。

「由香里――朝から熱かったね、なるほどね、なるほど」
「ちょっと、なにその含みを込めたセリフは」
「由香里が本当に大人になってしまったんだなって感慨深いのよ、気にしないで。さあ席にいこう、あっち空いている!」

 梨々花の笑顔に救われて僕は席に着いた。そして授業が終わると違う授業を受けていた陽子が合流して次のクラスにと移動する時に少し話をした。

「あれは本気というか、あんな上條先輩は見たことない、クールで女の子がくっついて来ても自分から人前であんな抱擁する人じゃなかったはず。由香里を逃す気は一ミリもないね」
「え――! 私も見たかった!! 梨々花だけずるい」
「でも美しすぎて、周りはうっとりでさ。たとえ見ても話しかけられなかったよ、うん」
「由香里が相手じゃそうだよね、でもさ、セフレたちとはどうなったんだろ。由香里と上條先輩が付き合っているかもという噂は少しずつ流れているけど、あの上條先輩だよ、きっと由香里レベルもセフレにしたんだっていう話も出ないこともないかも……」

 なんか僕の彼氏、極悪人みたいじゃん! 二人の考察を聞いていると僕は後ろから誰かに腕をひかれた。

「由香里ちゃん!! どういうこと、あの上條のセフレになったって!!」
「き、桐谷君? びっくりしたぁ」
「俺の誘いには全然乗ってくれないのに、なんで上條なんだよ、あいつはオメガと真面目に付き合うような奴じゃないのに、セフレが欲しかったなら、俺にしなよ。由香里ちゃんと付き合いたいけど体だけでも我慢するよ」
「ちょ、ちょっと、セフレなんていらないよ。彼とはそういうんじゃないから」

 先を行く二人も、僕が桐谷君に捕まったのに気が付いた。彼は最近僕にアプローチしてきた同学年のアルファ、でもがっついてくる感じがちょっと引いちゃって、告白はすぐに断ったんだよね。僕が困っていたら、梨々花が助けに来た。

「ちょっとぉ!! 桐谷、由香里を離しなさいよ!!」
「あんたこないだ振られたでしょ! たとえ由香里がセフレを求めていても桐谷君は望みないから諦めて」

 すかさず陽子が参戦。いい友達をもって僕は幸せだなぁって、一人のアルファと二人のオメガ女子を見ながらしみじみ思っていた。

 それにしても酷くない!? 僕処女を失うつもりでアルファをひっかけた過去はあってもセフレは求めていませんから!? 

「なんだよ、俺があんなにアプローチしたのに!! いきなりあんな上級アルファに由香里ちゃんが手籠てごめにされるのなんて見ていられっかよ!!」
「手籠めって。桐谷君落ち着いてよ、僕はセフレとかはいらないし、楓とは遊びじゃないから、でも気にしてくれてありがとうね」
「下の名前で呼ぶ仲なの!? 由香里ちゃ――ん」
「ちょっと、桐谷君泣かないでよ。僕の心配してくれて嬉しかったよ、じゃあもう次のクラス行かなきゃだから、またね」

 僕たちはそそくさとその場を去った。

「ほら、遊び人の上條先輩と噂になるから、ああいうダメアルファをひきつけちゃうんだよ。由香里もあんな甘い顔しないでもっとしっかりと、気持ち悪いんだよ、僕に近づくな! くらい言わないと。そうやって天使対応しているといつか悪い奴につかまっちゃうよ?」
「天使対応かなぁ? でも二人とも助けてくれてありがとう!! あと楓は遊び人だったかもしれないけど、かなり僕のこと好きだよ。さすがにもう遊ばないと思うんだけどな」
「なにそれ、運命ヤバ――い!」
「絶大な信頼感キタ――」

 僕たちはいつも通りきゃぴきゃぴと、会話を楽しみながら二限目もしっかりと真面目に授業を受けた。
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