上 下
3 / 31
本編

3、すごいアルファ

しおりを挟む

 せめて処女だけは失いたい。初めての相手があれじゃやっぱり嫌だ!! オメガなんて発情期には勝手に濡れて受け入れるんだから、処女かどうかなんて分からない。

 そこで僕はそこそこのアルファを捕まえてはデートしているんだけど、みんなその場になると……うっとりしだして気絶しちゃうんだよね。どういうこと!? 

 しかも前後を覚えていないらしく、いつの間にか僕とヤって最高に気持ちよかったという話でまとまっていた。

 いやいや、あなた達ヤる前に勝手に気絶したよね? って言いたい。

 大学に入ると、僕の美貌とフェロモンがバラということで高貴なイメージが勝手についてまわり『高嶺たかねのオメガ』と陰で言われるようになった。高額取引されたオメガだから、本当は『高値たかねのオメガ』なんだけどね、その呼び名を聞いた時は笑った。うまく作ったねって思ってさ。

 僕の祖母の亜香里も僕の産みの母の香里奈もとても綺麗な人だった。僕は男だけどその二人の遺伝子が強く出ていてオメガとして最上級の美しさと、代々薔薇のフェロモンを受け継いでいた。

 祖母に聞いたところ、祖母の家系のオメガは昔からオメガ性が強くその辺のアルファでは相手ができないフェロモンを持っていると言っていた。

 なに……それ。

 よっぽどの強いアルファではないと発情フェロモンに堪えられないから、襲われる心配はないわよって言われたことがあったけれど、いざ自分がそういうことをしようと思った時に、これか!? と思った。

 僕って迷惑フェロモン野郎じゃないか!! 

 それよりも、そんな強いフェロモンに耐えられるアルファってどこにいるのぉ!?

 そんな美しさと、発情さえしなければ普通にいい香りのするオメガであった僕は噂の的になり『高嶺のオメガ』をデートに誘う男は後を絶たなかった。そして僕の処女を捧げる相手は慎重に選びたいから、デートは程よく断っていると本当の意味で高嶺の華と呼ばれるようになった。


 ***

「でも相手がフェロモンで気絶するなんて、由香里、結婚したところで相手と関係持てないんじゃない?」
「そう、それ! 僕も気になっていたんだけど、それならそれでラッキーって思うことにした。むこうは勝手に初夜を過ごしたと思うわけでしょ。嬉しいしかない発見だった!」
「だったら、なおさらもう男漁りはやめたら?」
「それでも、オメガなら一度は経験したいじゃん! 結婚してから誰かと関係持つなんて不貞になってしまうでしょ。だから後腐れなく遊び人のアルファ探しているのにさ、みんな役に立たない」

 二人は呆れた顔をした。

「あっ!! それならピッタリの人がいる」
「陽子、それって……もしかして上條先輩?」
「梨々花も分かる!? あの人なら由香里のフェロモンにも耐えられるし、遊び人だし、セフレが多いから一回相手してもらうだけで、望まなければその場だけで済むはず」

 二人が知っている人? 誰だろう、僕達まだ大学に入学してそんなに経ってないけれど、オメガ女子の情報は流石だ。にしてもそんな最低な人種がいるんだ、大学って凄いな。

「遊び人はともかく、フェロモンに堪えられるってどういうこと?」
「あの人アルファの中のアルファ、上位種じょういしゅって知っている? 珍しいから見たことないと思うけど、とにかく優秀な遺伝子のアルファ! だから大抵のフェロモンには耐性があるみたい。私の友達は発情期に相手してもらったって言っていたよ。首輪を外しても絶対に噛まないって! 凄くない?」
「へぇ、それは凄い」

 上位種アルファ……。

 たまに聞く話だけど実際に見たことはない。アルファとはただでさえ上位にいる人種だけれども、アルファの中にも階級がある、その中でとびきり凄い能力を持ったりする家系、そうか上條……たしかにアルファとしては一流企業で有名な家だった。

「でも、流石にそんな上位に近づくのは難しくない?」
「えっ、由香里なら問題ないでしょ」
「どういうこと?」
「だってあの人、寝る相手は顔で選んでいるって有名だから! もちろんオメガなら男も相手にしているみたいだし」

 それは興味深いな。

「それでその人って、どんな人? どこで会えるの?」
「えっと、あっ大学内のアルファ専用ラウンジにはよくいるよ。上條先輩目当ての子はその近くで待機しているからすぐ分かると思う。でもそんな肉食女子の中に、由香里がいるのは想像つかないなあ、まぁまずは由香里の好みに合うか見てみよう!」
「梨々花、そこは大丈夫じゃない? 上條先輩は最上級アルファだよ、メッチャかっこいいし由香里絶対に気に入るから!」
「確かに、陽子はこないだ遠目で見て、失神する――って言ってたくらいだもんね」
「いやいや、マジであのレベルはそこらにはいないからね」

 目の超えた二人が言うなら間違いない。二人ともすでにアルファの彼氏持ちで、たまに僕も会うけれどかなりのイケメンだった。
 
「そう、それは楽しみだな、よし! 明日そこに行ってみよう!」
「「おお――!!」」

 二人は高校からの大事な友人だからこそ、僕の事情をよく理解して協力をしてくれる。というか楽しんでいるだけっていうふうにも見えるけどね。

「あっ、いけない! もうこんな時間だ」
「そっか、今日顔合わせだったね。おつ!」
「由香里、頑張れ!」

しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版)

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る

112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。 ★本編で出てこない世界観  男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。

処理中です...