魔法の呪文は愛のコトバ

riiko

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17 魔法の呪文

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 ラミラス様から愛の告白を受けて、そしていろいろ話した。外だと言うのに、僕と話して、キスして、話して、キスしての繰り返しで、ラミラス様は兆していた。キスだけで終わったのは、陸斗の教育の賜物? 

 愛の告白を受けて、僕はなんだかホワホワしていて、ラミラス様がキスすれば僕も受け止めた。外と言っても河のほとりには、僕たちと二頭の馬だけ。キスはし放題だった。

「リク、愛してる」
「ふっ、んん、あ、ラミラ、スさ、ま」
「リク、リクっ、」

 やっぱり僕はラミラス様のキスがとても好きだった。

 そして、そんなに熱い目で見られて愛の告白までされたら。やはり、好きになってしまう。よくわからない。もともと女性とも付き合ったこともないし、でも僕は妻で夫が僕を好きだと言ってくれるなら、これほど円満なことはない。やはり、僕は少し舞い上がっていた。

 しかも、僕の好きなリリテラスの花をわざわざ苗木を買い集めて、僕を手に入れると決めた日から庭の整備を始めて、僕が嫁ぐ頃には満開になるように、長期の計画だったっていうから、驚き。確かに彼を戦場近くで見たのは随分前だったから、そんな頃から僕のことを知っていて好きになってくれていたなんて、驚きを通り越して愛おしくなってしまった。

 僕からも、何度もキスを強請った。これって、もう相思相愛? だめだ、わからない、帰ったら陸斗に聞いてみよう。もしラミラス様を僕が好きになったとしても、夜の問題は別だ。あんな痛いことはやはり嫌だった。

 その日はずっとラミラス様と一緒にいた。

 キスを止めて馬に乗り、沢山走った。体を動かすのは気持ちいいし、キスも気持ち良かったし、今日は気持ちいいしかない。はぁ、これって幸せっていうのかな?

 夜になり、ラミラス様が一度書斎に行ってしまった。僕は陸斗に話しかけた。

「陸斗、陸斗、いる?」
「ああ、いるよぉ。どうした? 今夜は早いな」
「うん、ラミラス様はお仕事に行っていないからね。一日僕と遊んでくれたから、今は少し書斎にこもってるけど」
「そうか、楽しかったか?」
「う、うん。あのね、僕、告白された」
「おおお! あのヘタレ、告白できたのか!」

 陸斗が鏡の中で楽しそうにしていた。

「それで、お前は?」
「僕は、その、恋をしたことがないからよくわからなくて」
「じゃ、お前からは何も返してないってこと?」
「う、うん? 言葉では……」
「まさか、体で返した?」
「ち、ちがうよ、でもキスは僕からも強請った……かも」
「ふはっ、それだけかよ。でも、自分からキスしたいと思える相手って、好きなんだろうな」
「や、やっぱりそうだよね」
「じゃあ、ハピエンで問題ないじゃん、俺もういらない?」
「え、困る! ラミラス様を心で受け入れたとしても、体はまだ……痛いのはやっぱり怖いよ」

 そう今思えば、むしろ心は初めからラミラス様を受け入れていた。たとえ愛されていなくても、尊敬はしていたし、嫁いできたからには彼の役に立つことをしたかった。それがあんなに僕を好きでいてくれたなんて。むしろ嬉しいかもしれない。だから、問題は当初から体だけな気がする。

「ふ――ん、じゃあもう最終段階いく?」
「え?」
「だから、俺がラミラスと寝ても良いってことだろ? だって俺が受け入れて気持ち良くなってからお前にラミラスを返すんだろう」
「え、あ、うん、そうだね」

 あれ? なぜかもやもやする。なんでだろう。その時、扉が開いた。夫が部屋に入ってきたところだった。やはり、素敵な筋肉美を見せつけたガウン姿。愛の告白を受けてからだと、その姿にもドキドキが止まらない。

「リク、一緒に気持ち良くなろう。いいか?」
「あ、あ、はい」
「ふふ、昼のリクも夜のリクもとても可愛い」
「僕は、むしろ一般的なただの男で、そばかすだらけで可愛くなんてないですよ」

 そしてラミラス様は僕の隣に腰を掛けて、僕の頬を撫でる。

「いや、そういうんじゃなくてだな。仕草というか、すべてが愛おしんだ。昼にアイシャ殿のことを言っていたが、私の好みはリクだよ。素直で、一生懸命で、仕事熱心で、自分のことを顧みずに目的を果たすために奮闘する姿に私は心から惹かれる。そうすると、このそばかすもとても愛おしいものに思えてくる」
「そばかすが、愛おしい……」

 言っている意味がわからなかった。ラミラス様はうっとりする目で僕を見る。戦場に居すぎて、美しいモノを見る目がどうかしちゃったのかもしれない。でも、僕としてはラッキーだ。夫にそばかすさえも愛おしいなんて言われるなんて、夫夫円満の未来しか想像できない。

 そして自然とお互いに唇が重なった。

 口内を混ぜ合わせる水音が部屋に響く。僕はラミラス様に夢中になって、彼に縋りついた。そこで、脳内に響く咳込む声

(ごっほ、ごほっ、俺が見てるの忘れてねぇ?)
「あ、ごめん!」
「ん? リク、どうした?」
「あ、ラミラス様じゃなくて、あ、その、すいません」

 ラミラス様から少し離れた。ラミラス様は不思議な顔で僕を見た。夢中になってキスをしていたのに、僕が離れたことに不安を感じたようだ。

「リク、あなたが許さない限り、後ろは触らないし、許可がでるまであなたに入らない。だからそんなに距離を取らないでほしい。ただキスして寝るだけでもいいんだ。愛してる」
「あ……」

 僕の顔が熱くなる。こんな官能的な夜の時間に、愛を囁かれるともうだめだ。

(わ――ぉ。いいじゃん、添い寝)
(り、陸斗、でも、旦那様は昼も兆していたのを我慢してたし、やっぱり陸斗が彼を喜ばせてあげることできないからな? 僕はまだ技術も何も無いし彼を喜ばせてあげられない……)
(そんなの、リクが仰向けに無防備になっただけで、そいつ喜ぶと思うけどな)
(でも、)
(ああ、もう、わかったよ、じゃあ口にだして呪文言ってそしたら俺入れ替わるから)
(え、今、旦那様の前で?)
(そうだよ、呪文は口にだすもんだ。そして一番無防備になる、それが魔法使いの弱点だな)

「リク、一緒に夜を過ごすだけでもだめか?」
「あ、違います。一緒に過ごしたい、だから少し待っていただけますか?」
「ああ、いくらでも待つよ」

 そして僕はラミラス様に抱き着いて、彼の後ろにある大きな姿見の向こうにいる陸斗を見た。

(陸斗、お願いね!)
(おう、任せとけ。お前とラミラス二人を教育してやるから、お前は目を見開いて俺の行動を見とけよ!)

 僕は頷いて、ラミラス様の耳もとで呪文を唱えた。

「ラミラスラミラスちゅちゅちゅちゅちゅ――ん」

 ラミラス様の背中が固まるのを感じた。そして、やはりラミラス様は興奮された。

「リクりゅん、りくりゅん、ちゅちゅちゅちゅ!」
「ん、あん、あ、あ、あああって、やめろ!」

 謎のリクりゅん発言の時はすでに陸斗だった。そして僕の体のそこら中にキスを落としていたラミラス様は、陸斗に怒られた。

 なんか、ごめんなさい?


 
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