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日本編
12、お外デート
しおりを挟む類のお友達の結婚式までは日本を存分に楽しむ予定が、家のこととかでバタバタしていたので、やっとカフェに行ったり、買い物したり、ホテルで過ごしたりとダラダラすることができた。
昼間カフェでランチをして、何もせずただ過ごしていた。結局ビリーの話も、類の家の話もまだ何もまとまらずに、とりあえず少しゆっくり二人の時間を過ごすことにしたんだ。
「改めて、日本も良いね。イギリスももちろん好きだけど、日本語に囲まれているのは落ち着くな」
「はは、そう? でも海斗とっさに英語出るよね? 特に寝起きに何時って聞くやつ、あんなとっさにあの言葉が英語って、どれだけ寝起きに男たちに聞いたセリフなんだよって、いまだに嫉妬するんだけど?」
初耳だった。そんなこと英語で聞いていた?
「へっ。そんなこと言った? 多分それはセフレじゃなくて、僕スタジオで昼寝をよくしていたから、近くにいるスタッフに寝起きに聞いていたんだと思うよ」
「そうだったの?」
「だいたい、あまりお泊りは好きじゃない。一人寝の方が好きだったから、誰かと朝を迎えることはめったになかった」
セフレと心の繋がりはいらなかったから、朝まで過ごすなんてありえない。一人で寝る方がずっと落ち着いて好きだったのも本当。
「え‼ 一人寝が好きなの!? 俺とずっと寝ているじゃん」
「ああ、間違えた。類と寝るのが好きで、類以外とは朝までなんて耐えられないから一人で寝たほうが良いってことかな? 類と付き合ってからわかった事みたいだよ?」
類がちょっと嬉しそう、だけどまだ引かなかった。
「だって、あいつとは三年、寮で一緒に過ごしていたって……」
「今さらその話? 寮も二人部屋だよ。基本シングルが二つだから、二人寝は狭いからいつも一緒に寝ていたわけじゃないし、あの頃も考えてみたら一人寝の方が好きだったな。だから類が特別なんだろうね」
僕が笑ってそう伝えると、類も笑った。
「海斗、俺を喜ばせるの、ほんとに上手だよ」
「僕は真実だけを伝えているのに、でも喜んでくれるなら、僕の過去も救われるね」
そんなイチャイチャした話を、昼間からしていた。今夜また両親と会って、食事をする約束をしていた。今度こそ親子水入らずの食事をしてきたらと、類が手配してくれた。
類の伝手で予約を取ってもらった高級割烹、両親は普通の会社員だからきっとそういうところを利用することがない。僕はせめて日本にいる間は親孝行をしたいという想いもあって、ご馳走するということが決まった。
今夜の場所を確認しようと思って、スマホを取り出すとそこには母からの着信が残っていた。
「あれ? お母さんから着信があった」
「すぐに折り返したら?」
「うん」
着信だけで、メッセージもないからどうしたんだろうと思ってかけなおすと、そこは後ろが騒がしかった。サイレンの音と、急患ですという女性の声も聞こえる。えっ、なに!?
「もしもし‼ お母さん!?」
僕の慌てた声に類が驚いてこちらを見た。すると電話口から母の声が帰ってきた。
『……っ、海斗!? ごめんちょっと待って。……あの子…助かるんで…か』
「えっ、なに? 何があったの?」
『……そんなっ、ああ』
「お母さん? 今どこ?」
なんだろう、何があったんだろう。緊急っぽい声だけが伝わってくる。類が僕の手を握る。
『もしもしお電話変わりました、私は看護師ですが、あなたは飯田さんのご家族の方ですか?』
「はい! 母に何かあったんですか?」
『この方はお母様? ではあなたは陸斗さんのご兄弟でしょうか?』
「……はい、陸斗は僕の弟です」
類が驚いた顔で僕を見た。まさか電話口で陸斗の名前を聞くと思わなかったみたいだ。
『陸斗さんが今緊急オペに入っています、お母様が駆け付けたのですが、貧血で倒れてしまって、お母様は、こちらで処置しますので大丈夫です。お父様にご連絡はつきますか? 病院の住所は……』
僕は用件を聞いて、すぐさま父に連絡をした。そして類は緊急性を理解して、すぐに僕とその病院へと向かってくれた。
病院に着くと、母は泣き顔を隠さないままに僕に抱きついてきた。
「ああ、海斗、ごめんなさい、あなたに連絡するつもりはなかったの。ただ今夜の食事はいけないって連絡するだけだったのに」
「そんなのいいよ、それより陸斗はどうなっているの?」
「あの子、いつの間にか妊娠していたみたいで。危ない状態で運び込まれたって、全然知らなくて、お医者様には番には連絡するなって言われたの。こちらで二人は番解除の治療中だから、個人情報を番に教えることはできなくて、妊娠のことも陸斗だけが抱えていたってっ、うう」
「そんなことが……」
類も僕を支えた。そして今は処置中で、しばらく時間がかかるということで、陸斗の主治医という人が説明にきた。
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