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日本編
7、飯田家
しおりを挟む類の家の車が用意されていたので、それに乗せてもらいホテルまで帰った。
部屋に着くなり類は僕にキスをして、抱きしめてきた。僕は類の背中をぽんぽんって叩いた。なんだか類は年相応に、親と喧嘩する子供みたいで可愛かった。その原因が僕と言うのが申し訳ないような、嬉しいような。
「海斗、ごめんね。親があんなこと言って」
「ううん、別に結婚を反対されたわけじゃないんだから、僕は何とも思ってないよ。むしろ今まで通りバース性を秘密にすれば類と結婚できるんだよ。だからそこまで怒らなくても」
「俺は‼ 俺は海斗に自由に生きて欲しい。俺の両親のせいで海斗が何かを我慢するなんて嫌だ。もともと結婚を機にバースを公表するって言っていたじゃないか、俺と出会えて本当の自分でいられるって、俺それ凄く嬉しくて早くベータの海斗を嫁にしたって、世界に言いたいのに。バースなんか関係なく、俺はこの人を愛しているって」
「……類」
この人は、本当にまっすぐだった。僕はそんな人に結婚を申し込まれているなんて、幸せ過ぎてどうにかなりそうだった。
「類、大好き」
「海斗?」
「僕のことをそこまで想ってくれているって、嬉しいな」
「俺は、俺のことより海斗のことを一番に想っている」
「ふふ、僕も。僕の一番は類」
その日はこれ以上話すことなく、ベッドに入った。類の両親のことは、多分大丈夫だと思う。だって、僕はなんとしても類を手に入れたいから、バースを隠すなんて大した問題じゃない。でも今はそれを言うと類が泣いちゃいそうだったから、少し落ち着いたら櫻井家のことは話すことにしようかなと思って、その日は穏やかに手を繋いで眠った。
そして翌日はいよいよ、僕の家。
結局、陸斗のことは何も知らないまま、家に行くことになった。爽と破局しているのなら陸斗は今、実家にいるのだろうか。なんとなく会うのはおっくうだったけれど、でもあれはもう過去のこと、そのことがあったから今は最愛の人が隣にいる人生を送れているんだ。
「海斗、大丈夫?」
「えっ」
「なんか、海斗の緊張が俺まで伝わってきた」
「はは、確かに僕、昨日よりも緊張しているかも」
実家に彼氏を連れていくのは二度目、しかもまた弟がいるのかもしれないと思って、警戒している自分がいる。
「大丈夫だよ、もし弟がいても俺が守ってあげる」
「守るって、僕よりもか弱いオメガだよ」
「海斗を傷つけられるくらいの、あざといオメガだろう?」
あざといオメガ、はたしてそうなのだろうか? あの時は運命の番に出会えた喜びで、僕を陥れたことになんの戸惑いも罪悪感もなく、ただただ純粋な子だと思うことにした。
だけど中学生でも、それなりに人の気持ちはわかる年齢なはず。それなのにその後も爽という運命が自分を選ぶのは当たり前で、結婚の約束をしていたとしても自分という存在がいるのだから兄は捨てられて当然という態度だった。
「ふふ、弟に婚約者を紹介するのは二度目だな。もう一度目のようにはならないと思うけど、僕以外のオメガに惹かれないでね」
「そんなの、気にしているの? 俺は運命さえも堕ちなかった男だよ、まあ海斗という運命には墜ちたけどね」
類ほどの強いアルファなら、大丈夫か。なんとなくだけど、たとえ弟がヒートになろうとも、類は自制できる人だとそう思った。
「じゃあ、いきますか!」
「俺こそ、緊張する。こんな十代の男を海斗のご両親が認めてくれるか不安だよ」
「そこは大丈夫じゃない? 電話では喜んでいたし、日本で結構報道されたみたいで、そんな凄いアルファと付き合っていたのかって驚かれたくらいで、反対されなかったから」
「俺、凄いアルファでもなんでもないのに、なんかガッカリされたら怖いな」
可愛い、やっぱり十代の男の子だ。
「たとえ両親にガッカリされても問題ないでしょ? 類は誰を嫁にするの?」
「海斗です」
「じゃあ、僕以外の人がどう思おうと関係ないよね?」
「……うん、海斗すき」
家の前でうだうだしていると、うるさかったのか家のドアがそうっと開いた。そこには懐かしい顔があった。
「おかあ……さん」
「海斗、海斗っ、ああ立派になって、会いたかった」
母親は脇目もふらずに、僕に抱きついて泣き出した。少し小さくなったような気もしなくない母親を、僕は抱きしめた。
「ごめんね、お母さん。ただいま」
「うん、うん、お帰りっ」
そこに父親も出てきて僕を母ごと抱きしめた。
「海斗っ、良く帰ってきた」
「うん、お父さん。ただいま、ただいま……っ」
僕は号泣した、久しぶりに僕は子供に返った。
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