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日本編
5、ラット後
しおりを挟む翌朝、目が覚めると類が僕の目の上に冷たいタオルをのせていた。
「おはよう、海斗愛しているよ」
「おはよう、何しているの?」
「目が少し腫れているから、冷やしている」
「ん、ありがとう。気持ちいい」
この腫れは、爽のことで泣いたからではなくて、昨夜の類が執拗に僕を責め立てたからだった。泣く理由が他の男ということが許せなかった類は、セックスで僕を泣かせた。そして涙の理由を類にさせたかったって翌朝言った。
僕のアルファは最上級にかっこいいのに、可愛い。昨日の爽に向かう類は年下なんて思えないくらい頼りがいがあって、また惚れ直した。
昨夜の行為は流石に辛かったけれど、でも愛があるから許せた。前のラットくらいの勢いで、壊れるんじゃないかという程に抱かれた。だけど気持ちよさは半端なくて、僕からも何度も強請った。結局僕は、類がしてくれることならなんでも嬉しい。
「さすがに家への挨拶はやめるか、立てないんじゃない?」
「う――ん。たしかに動けなさそう」
体を少し動かすだけで筋肉痛が酷い、無理な体制は確かに体に響いていた。
「余裕もって日本に来て良かった」
「ふふ、なんの余裕の予定? まさか日本でも抱きつぶされるなんて思ってもなかった」
「日本での思い出も全て俺にしたいから、だからこれは予定内のことだよ」
まるで類が僕を番のオメガみたいに扱うのが、くすぐったくて嫌じゃなかった。
「もし僕が日本で暮らすことを選んだら、類に監禁させられそう」
「しないよ‼ 俺は自由にしているカイが好きだから。カイとしての仕事も俺は応援している。さすがに昨日は、怖かったよね? ごめん、反省している。昔の男がいまだに海斗を好きだとか言うのに腹が立って」
確かに、なんの前触れもなく、ラットが起きて驚いた。だけどオメガじゃない僕に、そこまでになってくれることの方が嬉しい。
最後は気を失ってあまり覚えてないけれど、途中目が覚めても類が情熱をはらむ目で僕を見ては、腰を振っていた。そしてまた僕は快楽に上り、意識が飛ぶ。途中、お風呂で僕の中を綺麗にしていた類もいた。
僕こんなに記憶飛んで大丈夫かな。でも、気が付けばそこにいつも類がいるから、全てを安心して任せていたのは確かだった。
どれだけセックスしたんだろう。
「昨夜の激しい類も好きだよ。怖いくらいのアルファの執着が見られて嬉しかった。類、愛してる。僕はたとえ監禁されてもいいよ、類と過ごせるならなんでもいい」
「海斗は俺に甘い」
「本心言っただけだよ、執着される程に僕は嬉しいんだ、変態かな、はは」
また二人キスをした。
その日は流石にもう体は悲鳴をあげていたので、キスだけして過ごしていた。ただひたすら類に甘えてくっついて、猫みたいな一日だったけれど、充足感は半端なかった。類は僕のためにマッサージの人を部屋に呼んでくれて、翌朝には体も楽になっていた。もちろんマッサージの最中は類が隣で座ってくつろいでいた。自分の婚約者が、自分の目の届かないところで人に触られるのはダメだって言って。僕は本当にとても愛されている。
世間はこれを重いとか、信頼されてないとかいう人もいるかもしれない。だけど僕はこの愛され方が一番嬉しくて、日本に来てからも一層、心も体も類だけを求めていった。
首がかゆくなって触ると不自然なものがあった。
「あれ?」
「ん、どうした?」
「なんで僕の首に、ガーゼが貼ってあるの? 心なしか、ずきずきする」
「ああ……」
類が気まずそうに、なる。 ん? なんだろ? そういえば類も腕にガーゼが貼ってある。二人して風呂場で転んだのかな?
「噛んだ」
「え?」
「だから、うなじ噛んだ」
「ええ‼ 僕オメガじゃないよ?」
「知っている、だけど抑えきれなくて」
驚いた、ラットの時に僕を噛むことはあるけど、それは胸とか肩とか、でも僕も噛まれるとそれだけで達しちゃうという変態さんだけど。でもさすがに首は、オメガでもない限り危なくない?
「痛い?」
「あ、ううん。なんか痒くて、ちょっとずきずきするけど平気かな? 類の、その腕はどうしたの?」
「噛んだ、海斗を噛みたくなってまずは自分を噛んだ。そしたら海斗が噛んでって言って、それで俺、がぶっと」
「ええ!? 僕がそんなことを? なんか……ごめん」
全く記憶にございません。というか、昨夜のことは記憶にないことの方が多いかな。こんなの初めてだった。まるでお酒に酔った時のような感覚。
「海斗わりと飛んでいて、すげぇ可愛くて、赤ちゃんみたいな言葉とか出てくるし、俺興奮が止まらなくて、それで」
「僕、そんな痴態を……」
「いや、可愛かった。リュイ、チュキって言われた時、俺の理性も飛んだ」
「もう止めて、恥ずかしすぎるっ」
類が僕を抱きしめて、キスをする。僕もそれに自然に答えるけど、でも顔の赤さは引かない。
「海斗、いろいろ慣れてそうなのに、そうやってたまに初心な反応されると、俺やばいわ」
「もう止めて、これ以上僕を辱めないでよぉ。それに類とは初めてのことが多すぎて、僕の今までの経験値なんか当に越しているからね!」
「それは嬉しいね、海斗、まるでオメガの発情期みたいだった」
「ん? なんでオメガの発情期を知っているの? 類は僕しか知らないはずだよね!?」
僕が一瞬で、不機嫌になると、類が慌てて誤解を解いた。
「もちろん知らない、俺は海斗しか知らない。オメガの発情期は、前に運命の番っていうドラマを日本でやっていて、それに詳しく発情期のシーンが出てきたから、その時の感じに海斗が似ていただけで」
「ふ――ん。そのドラマ、チェックするよ?」
僕が日本に居なかったのをいいことに、嘘ついてもわかるんだからね、という気持ちを込めて言った。
「ああ、してよ。というか、一緒に見よう。でもそれ見たら海斗こそ、恥ずかしい思いするよ? まるで昨夜はそのシーンの再現だったからね。また今度俺がラットになった時は、海斗の痴態を撮影するよ。俺の身の潔白のためにね」
くだらない会話をして、類がその動画をネットで探して見せてくれた。それを見て、僕は昨夜の自分の痴態を知ることとなった。
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