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イギリス編
10、撮影
しおりを挟むビリーはこんなものを用意していたなんて。
数ヶ月前にオメガ用首輪の撮影をした時と、ほぼお揃いで宝石を散りばめた細身のブレスレット、言葉に表せないほどに素敵だった。
「これ、綺麗……」
「撮影終わったら、君にプレゼントしようと思っていたんだ。プライベートでも身につけて宣伝して歩いてくれたら助かるよ」
「助かるって、こんな高価なもの身につけるのは怖いよ、いったいいくらするの!? 僕のお給料の比じゃないよね」
「まぁ、気にするな。美人にはプレゼントが付き物だからね」
ビリーは僕にウィンクをした。
「このブレスレットは、オメガというよりkaiをイメージして作ったんだ。本当はこの新作発表で出すつもりは無かったんだけど、ルイとのツーショットを見たら、kaiの魅力を最大限に引き出せるのは彼しかいないと思って、今回出すことにしたんだ」
「そんなに、僕とルイはしっくりくるもの?」
「まるで失くしていたピースが埋まった感じ」
「それ、オメガが言われたら喜ぶセリフだろうね」
「ふふっ、運命の番というやつだね‼ そうだ、そのコンセプトを追加しよう、kaiはいつも僕をいいアイデアへと導いてくれる」
僕は驚いた、ビリーの中ではそこまでしっくりきていたのか。
『運命の二人』それが今回のアルファ×オメガの時計と宝石のタイトルとなった。
「運命……」
「運命」
僕と類はほぼ同時にその言葉を発した。ビリーは類に向き合った。
「ルイ、まだ過去に悩まされている?」
「違う、そんなことはない。俺はもうきちんと過去を精算しているから、大丈夫だ」
類はそう言うけれど、ちょっと苦しそうな顔をした。
「ビリー、まだ撮影まで時間あるよね? 僕これからルイとランチ行ってこようかな、いい?」
「ああ。美味しいもの食べておいで」
「うん、ルイ、行こう」
なんとなく類をこの場から連れ去りたかった。スタジオ近くのよく行くカフェに入り、二人で軽食を頼んだ。
「カイ、ごめん。また気を遣わせたね」
「そんなことないよ、ビリーってたまにああいう物言いするよね、気にすることないよ」
「ありがとう、でも本当に過去のことはもう向き合って、自分の中では綺麗な過去になっているんだ」
「綺麗な過去? そんな辛い体験がっ!?」
むしろそれは無い、絶対ないはず。僕は今でも夢に出てくる、あの二人のむつみ合う声が。類は僕を驚いた顔で見た。
「あっ、ごめん。僕こそ失礼なこと言ったね」
「カイ、気分悪くした? ベータには運命の番とか、フェロモンで人が動くとか、そういうのはわからない感覚だったよね、こっちこそごめん」
「ううん、そうじゃないけど、でも類は運命の相手に付き合っていたオメガを取られたんでしょ? なんでそれなのに、綺麗な過去になるの」
「話、長くなるけど聞く?」
「類が話してもいいっていうなら、聞きたい」
また撮影に響くといけないから、今夜、撮影が終わった後にまた話をすることが決まった。
そして二人でスタジオに戻り、僕はシャワーを浴びてから体を綺麗にして、ラノキリアの最高傑作の宝石たちを身に着けた。オメガ用の首輪をはじめ、厳重な警備のもと僕の肌に一つ一つ着用させられる。この瞬間はいつも緊張する、なにせ宝石でも桁の違うものを身に着けるので、警備員に囲まれての撮影になるから。
準備を終えた僕がスタジオに入ると一瞬空気が固まった。そして、すぐにスタッフたちの声が響いてきた。
「うわっ」
「すげぇ――」
「綺麗」
宝石を身につけて、コワモテの警備を引き連れて歩く僕をスタッフたちは見ている。思わず一言漏れてしまうのは仕方ない、だって僕だって思う。この宝石たちは最高級なんだって。
「お待たせ」
「さすが、kaiだ。美しい」
「ありがとう、でもさすがに今回は緊張するよ、首輪だけでも身が引き締まる思いなのに、今回はもっといろいろと僕に付けるものだから、ちょっと震える。ビリー、僕がこのまま誘拐されないようにしっかり守ってね」
「ははっ、もちろんだよ」
僕の体は今、総額何億になるのだろう。首輪とブレスレットだけじゃなかったのか? 改めて凄く着飾らされて驚いた、それほどの重みのある輝きが主張している。ビリーは相変わらず軽いノリだった。
下半身だけ薄い布のようなスカートを履き、首輪・ネックレス、そして首輪から繋がる細いチェーンは僕のお腹に巻いている宝石であしらったベルトへと繋がっている。裸にベルトってすでに意味をなしていないから、僕の体はさしずめラノキリアの宝石を見せるためのキャンパスだった。
そして今回メインであるブレスレットと、お揃いのアンクレット。
「うわっ、凄いな。こんなkaiを抱きしめる俺の身にもなってよ、ビリー」
「役得だろ?」
「むしろ、周りの目が怖いね。最高級の人を前に後光がさしてる」
「ルイはまだ若いけど、これから世の中をしょって立つアルファなんだ、これくらいでビビってはいけない。kaiに勉強させてもらいなさい」
ビリーはウィンクして、お茶目に言ったけれど、類はきっと将来ビリーと並ぶようなアルファになるのだろう。世の中をしょって立つアルファ、ビリーが勉強のためにこんなことさせるなんてよっぽどの家の子なのかもしれない。他のアルファ同様、僕を踏み台にするといい、そう思って僕は笑顔で類に向き合った。
「よろしくね、ルイ」
「よろしく、kai」
二人で向き合うと、ビリーがぱんぱんって手を叩いて、始めるぞという声とともにスタジオが緊張しだした。そして僕はいつもの通り、役に入り込む。すう――っと空気を吸うとそこはもうさっきまでの和やかなスタジオではなく、最高級の職人たちの世界になった。
美しく宝石をまとった僕を後ろから抱きしめて熱い目でみる類、僕はそんな視線の意味を知らず、着飾られただけのオメガ。そういう風に演技をしろと言われた。パシャパシャとカメラのシャッター音が響く。
「kai、こっち見て、そう。ルイはkaiのうなじを見るんだ、いいね」
ビリーがカメラを構えるアマンダの横で指示を出す、類の視線をうなじに感じて熱くなってきた。なんだろう、アルファと絡む撮影なんて多々あるけど、なんだかいつもと違う。
「kai、今日はそんなに色気は必要ないよ、もう少し抑えて」
「抑えてって……出してるつもりないけど」
僕はしれっと、類の手を外して、ちょっと休憩って言って水を飲んだ。それが少し喉にしたたり首元を濡らした。
「あっ、待って。拭かないで。それいい‼」
「ん?」
「ちょっと濡れた場所を、ルイ舐めて」
「え!?」
僕の乳首に滴る水を舐めろと? 色気を出すなという割には結構なことを言うし、ルイが赤い顔をして僕の乳首を見ている。
「わかったよ、ちょっと待って」
そう言って僕は水をわざとこぼすように飲んで肌に垂らした。
「ルイ、おいで」
「えっと?」
その間もパシャパシャとシャッター音はする。
「大丈夫、ちょっと僕の首元から胸まで舐めればいいだけだから、あとはカメラマンが勝手に撮るから自然に動いて?」
「い、いいの?」
「もおぅ、撮影早く終わらせたくないの?」
類がしどろもどろしていると、アマンダが声をかけてきた。
「kai、そのままルイにキスしてみて」
「は――い」
僕は類を引き寄せて唇にキスした。軽めのフレンチキス。類は驚いた顔をしたけれど、そこから類の目が変わった。
「ん、んんん」
「んはっ、くちゅつ、ちゅっ」
「ふえっ、ちょっ、ま、んんん」
僕たちはみんなが見守る前でディープキスをしていた。そして銀糸をまとい唇が離れるとそこから類は僕の首を舐めた。
「ひゃ、あっ」
「そんな可愛い声、出さないでっ」
「んっ、だって、類がっ、ああ」
そして僕の乳首を咥えた。
「あああ」
「カット、カットォ――」
撮影終了の合図。おわった、僕の胸は感じやすいからそんなふうにされるとみんなの前だというのに声がでちゃったよ、恥ずかしいっ。
「ちょっとルイやりすぎだから‼ 今日は軽めって言ったでしょ。ほら、kaiがこんな顔になっちゃってもう無理だよ」
「あっ、ごめんなさいっ、俺つい」
そこにビリーが笑って登場した。
「ははっ、ルイはまだまだアルファとしてはヒヨッコだからな。こんな美人を前にしたら抑えられないさっ、でもいいのが撮れたから、これはこれでオッケーだよ」
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