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イギリス編
1、プロローグ
しおりを挟む「ねぇ、あの二人あれじゃない?」
「まさか目の前でこんな光景見られるなんてね」
近くの人が、公衆の面前で恥じらいもなく抱き合っている若いカップルを見てそう言った。
「素敵だなぁ、生きていて初めて運命の出会い見た‼ こっちまでフェロモン届いてくるし。ベータの私まで二人の圧がわかるなんて、よっぽどの相性だね。二人の世界でまるで周りは見えていないみたい」
「すごっ、やっぱアルファとオメガはロマンティック」
そう、この世には男女の他にバースという三つの性別がある。アルファ、ベータ、オメガ。僕はいわゆる普通の人間、ベータ。
アルファとは生まれながらに頂点に君臨する能力がずば抜けて高い人種。オメガとは能力は低いが唯一男でも妊娠可能で、アルファというただひとりの人を番にできる。
その中でもこの世には一人だけ存在すると言われる、運命の番と呼ばれる人がアルファとオメガには存在する。
一生に出会えるかどうかもわからないと言われる、都市伝説と言われるそれ。でも僕はそれが都市伝説ではないことを、身をもって知っている。
だって今、目の前で繰り広げられる「運命の出会い」これを目撃するのは人生で二度目。
そしていつだって、それは僕を苦しめる。知りたくなかった……運命なんて。ベータの僕には無縁のはずの運命なんて、見せないで欲しかった。
あんなに愛を誓いあったのに、やっぱりベータには叶わない世界があるんだ。またその事実に、僕は傷つけられる。そして遠くで抱き合う二人を見て、僕はそっとその場を去ることにした。
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