運命を知らないアルファ

riiko

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番外編

10、ハッピーエンドのその先 1

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 俺たちは順調に交際をして、二人とも大学生になりちょっと忙しくなったけど、その頃には真山家を二世帯住宅に建て替えてもらって、同棲ならぬ、ご両親と同居をしていた。

 その頃には、俺は百合子さんを百合ちゃんと呼ぶようになり、和樹さんのことはお義父さん……とはまだ呼ばせてもらえないので和樹さんのままだったが、真山家にすっかり溶け込んでいた。

「百合ちゃん、行ってきま――す!!」
「母さん行ってくるぜ!」

 俺と正樹は二人で仲良く手を繋いで、玄関を出た。玄関では百合ちゃんが花に水をあげていた。ここはメルヘンの国のようだった。朝から幸せだ。

「は――い! 二人とも気を付けてね!」
「あっ、百合ちゃん、今日は俺たち西条の家に行くから、残念だけど夕飯は食べられないんだ」

 今日は正樹を連れて西条家へのお泊りだった。最近頻繁に日本に滞在している両親は、隙あれば正樹とこっそりと会いにくるから、正々堂々と俺が正樹を本宅へ連れて行く。

「ああ、そうだったわね。ご両親によろしくお伝えしてね、正樹っ、つきちゃんに迷惑かけないようにね、きちんとお土産も買っていくのよ」
「わかっているよ! じゃあね、母さんも父さんと二人で羽目を外すなよ」
「やだわ、もう。羽目なんてはずしまくりだわ。ゆっくりしてきてね、パパとの時間邪魔したら怒るからね!」

 真山家は相変わらず愛であふれていた。

 二世帯住宅という名の家では、ほぼ毎日一緒に過ごしているから、週末だけは俺は正樹をホテルに連れていったり西条家に連れていったりと、外へのお泊りが許されていた。そうすることで両夫婦が仲良く円満にいくだろうと、和樹さんがむしろノリノリだった。正樹がいる手前、百合ちゃんとイチャつくのは少し我慢していたって、ぽつりと俺に言って来た時は驚いた。

 正樹はそんな二人のひめゴトなど、興味がないのか知らないのか気にしていなかったが、子供の手が離れた今、あの夫婦はますますラブ度が増したとは、正樹も言っていた。

 羨ましいな。いくつになっても、子供につがいができても、ずっと仲良しなんて。俺と正樹の未来を見ているようで、年を重ねるのも今からすごく楽しみになってきた。

 そして大学が終わると、西条の家へと車でやってきた。俺は大学に上がる前に免許を取り、自分の車で正樹をいつもエスコートできる喜びを感じていた。高校の時は登下校を西条家のドライバーに任せていたけど、それだと正樹といちゃつくことができない。正樹が恥じらいを感じて、許してくれないからな。

 でもマイカーの中で二人きりだと、信号待ちにキスはしても怒らないし、ハンドル片手に、もう片手は正樹の可愛い太ももに置いていても大丈夫だ、むしろその上にいつも正樹は自分の手を重ねてきてくれる。

 俺、幸せ過ぎて死ぬんじゃないかなって、時々思うんだよね。

 うちの両親は長期の海外出張の都合で、正樹とのつがいの報告は済ませたものの、対面したのはそれから半年経ってからだった。やっと海外事業が落ち着いて、二人そろって日本に拠点を戻すために帰ってきたので、正樹との初対面を果たした。いや、真山家と西条家の初顔合わせをうちのホテルでおこなった。

 アルファ同士の夫婦で、お互い仕事が生きがいの戦友みたいな間柄だったが、それでも夫婦仲がいいのでアルファ同士では珍しいが、いつも一緒にいた。子供の俺は、ほとんど家政婦や執事に育てられたようなものだったが、決して愛情がなかったわけではなく、自由にさせてもらっていた。

 そんな感じでアルファ家系だが、特に厳しいこともない家庭だった。

 だけど俺がつがいができたと報告をした時は、ついにフェロモンレイプという犯罪に巻き込まれてしまったのかと、心配させた。相手のオメガをいかなる手を使っても訴えてやるってまくしたてていたなぁ。

 俺のオメガ嫌いの根本を知っている二人は、まさか俺が望んでオメガと契約をしたなど夢にも思っていなかったようだった。

 詳しいことを話すと、両親は泣いて喜んでくれた。実は相当な心配をかけていたと、その時ようやく気が付いた。真山家ほどの愛情はない家庭だとは思っていたが、一人息子として相当愛されていたんだなって、ちょっと感動した。これも真山家での愛にあふれる日常を見せてもらったからこそ、親の愛情に気が付けたんだと思う。

 俺も成長したな。

 そんな感じで、両親は正樹に感謝しかなった。息子は一生オメガがダメで、アルファとしての弱点になるのをいつ世間にばれておとしいれられてしまうのかと、両親は常に俺を心配してくれていた。それを救ってくれたのが正樹だったからな! 真山家同様、西条家からも正樹は溺愛されているのであった。

 もちろん初対面の時の、正樹の素直でいい子なところと、百合ちゃんの可愛いところがうちの親、特に母親が気に入ってしまって、大変だった。

 それ以来、俺たちのお互いの母親は、名前で呼びあって、週に一回はお茶をしている。真山家に帰ると母さんがいることもたびたびあった。そして父親同士は共通の趣味が将棋という、まさかの共通点がわかり、そちらも母たち同様仲良くなり、西条家に帰るとたびたび和樹さんと一緒に、将棋をすことが増えた。

 まさしく家族ぐるみの付き合いになっていった。
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