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番外編
3、番になったご挨拶 3
しおりを挟む「正樹、今回のこと、俺は怒っている」
「……はい」
どういうこと!? 番にしちゃったよ、俺、番だよね? だって和樹さんあの時、いいって言ったじゃん!! どういうことだぁ――。
親子の空気感に入り込めず、俺はじっと見守った。正樹も親に怒られているからか、しゅんとしていつものおふざけはない、そして百合ちゃんもいつになく真剣な顔で何も言わない。そのまま流れをじっと見ることにした。
「何を怒っているかわかるか?」
「番契約したこと……ですか?」
正樹が敬語使った、めちゃくちゃ貴重な一瞬。親子で敬語って、何? 昭和!?
「はぁ、正樹は何もわかっていない。お前の一生を左右することだから最後はお前が判断するのが正しいけど、仮にもお前は未成年で俺に養ってもらっているのを忘れたのか、その俺になんの相談もなく契約しようとした。そしてその相手が、お前を陥れたあの櫻井君だったんだろ。俺はその話を聞いた時ぞっとした、結局は司君と契約したから良かったものを」
「う……」
「もし仮にお前がそこまで櫻井君を好きになっていたのなら、周りを騙して番になるんじゃなくて、俺たち親をまずは説得するくらいの本気を見せるべきだった、まぁ本気じゃなくてくだらない逃げからくる理由だったみたいだけどな」
俺が、俺が運命を拒絶したから、正樹はその結末を選んだ。全て俺の責任だ!!
「か、和樹さん!! それは俺が、俺のせいなんです」
「君は黙っていなさい。これは親として息子を教育しているんだ、君の話は君から前に聞いた。でもおかしいと思わないか? 正樹自身のことを正樹以外の人から聞くなんて。俺たち親子はそんな軽薄な関係だったのか!?」
「ご、ごめんなさい!! 俺、あの時どうかしていた。どうしても司と離れたくなくて、あの時は番ができたら、このまま司の側に友達としてでもずっと、一緒にいられるってそればっかり思っていて、その時ちょうど櫻井が契約してくれるって言ったから、それに甘えて。でも父さんたちに言ったら反対されると思ったし、説得する時間も無くて……」
バチ――ン!!
「ま、正樹っ!!」
ええ!! 俺の正樹の頬が、俺の正樹の父親の手でぶたれた!? どうしよう、どうしよう。俺はすぐに正樹を抱えて持っていた冷えタオルをほほにあてた。
正樹は呆然としていたが、すぐに俺を見た。
「大丈夫だ、司。ありがとう」
「でもっ」
「父さん、母さん、本当にごめんなさい。俺は二人を裏切ったし、司も裏切った。それなのに司は諦めずに俺を番にしてくれました。事後報告で申し訳ありませんが、二人を認めてください!! お願いします!」
正樹が和樹さんに頭を下げた。俺もすかさず正樹を抱えて頭を下げた。
「二人とも頭をあげなさい、その件に関しては認めているんだよ。俺は今そのことを言っているんじゃない。お前がお前の利益だけを考えた結果、一人の若者を傷つけた。それがどういうことかわかるね?」
「あ……」
「櫻井君は初めこそ卑怯な真似をしてお前を陥れた。もちろんそのことは俺の中で何の解決もしていないし、どんなに謝罪されても許される行為じゃなかった。でも、今回はお前が卑怯な真似をして彼を利用したんだ。あの子だってお前たちと同じ16歳の子供だよ、そんな子に一生を誓わせて、それで直前で裏切ったんだ。その罪の重さをお前はもっと真剣に考えるべきだった」
「……はい」
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