運命を知らないアルファ

riiko

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39、俺のオメガ

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 俺は意識がどうかしていた気がするが、このオメガを、いや正樹をここで逃してはいけないと本能から体が勝手に動いていた。

「えっ!!」

 正樹の戸惑う声が聞こえたが、俺は正樹が抱きつくはずの櫻井を勢い良く殴った。そして正樹の手は行き場を無くした。

「櫻井っ、ああっ、なんてことしてくれるんだよ、俺のアルファに! 司っ、はやく出ていけ!!」

 俺のアルファ……だと? お前のアルファはそれじゃない、俺が、俺こそがお前の、正樹のアルファだ!!

 櫻井に駆け寄ろうとする正樹の腕を引き寄せて、そのまま抱きしめた。

 俺の、俺の、俺のオメガ! 

 俺のだ!! 俺の為だけに、いやお前の為だけに存在するアルファは俺だ!! 正樹の最上の香りを鼻腔に入れて酔いしれた。抵抗する正樹をこれでもかってくらいの力で抱きしめ続けた。鼻には芳しい俺のオメガの香りが入ってくる。たまらない、たまらないよ、正樹。

 愛している、愛している、愛おしい、どんな言葉も足りないくらいの感情が一気にあふれ出した。とにかくずっとこの香りに酔いしれたい、ずっと嗅いでいたい。くんくんと鼻息を隠さず、本能のまま香りを堪能していた。

「はな、っせ!」
「正樹!!」

 正樹は必死にあらがうも無駄だった。だって、俺めがけてどんどん強くなる香りが物語る。こいつも俺を本能では求めているはず。

「お前のアルファは、俺だ」

 鼻息が荒くし、首をクンクンと嗅いで舐めてみた。そしたら俺の細胞がまた更に進化したようだった、息子はさっきから主張していたが、もう何もしなくてもすぐにコトを起こせるくらいには張り詰めてきた。抱きたい、抱きたい、抱きたい。挿入したい。わざとでかくなったモノを正樹の腹に押し付けた。

 俺は、お前というオメガの前ではこんなになるんだよ。

 前からそうだったけど、本能も理性も両方で正樹を求めている。こんなに求めている。恋をして、体を交えて、心も通い合わせて、そしてついにはアルファの根底までもを正樹は揺るがした。

 首輪の無いうなじ……唇をあてて、鼻をあてて、目で見て、心で感じて、触って、五感の全てで確認した。ここは俺の為の場所。

「ひっ、や、めっ」
「俺の、俺のオメガっ」
「司っ、正気に戻れ、お前のオメガじゃない!! 俺はお前がつがいにできない運命の相手だ、はなせっ、あっひゃんんっ!!!」

 つがいにできない運命の相手……もしかして、正樹は俺が前に言った言葉をずっと、そんな風にとらえていた?

「くそっ、正樹をはなせっ、俺のオメガになるんだ!!」
「あっ櫻井っ、助けてっ」

 櫻井がもがくがそれだけだ、でも正樹のその言葉……他の男に助けを求めたことだけは許せなかった。正樹は、お前は、お前は……!!

「俺のオメガだ!」

 正樹は目を見開いて俺を睨む。

「ふざけるなっ!! 俺はこれから櫻井につがいにしてもらうんだ、お前っ、でてけっ」

 そんなことは絶対にさせない! もう、こんなところでやり取りしても埒が明かない。

 「くそっっ」

 どうしてこんなにもすれ違ったんだ? 何を間違えた? 俺は、正樹は、いったいどこからそんな思い違いをしたまま進んでいたんだ。確かに俺たちは愛し合っていた、だから話せば解決できたはずなのに、そこに櫻井が付け込んだに違いない、正樹は櫻井に騙されたと思いたい……。

 櫻井は腹を抱えて起き上がってこない。言葉だけは威勢がいいが、俺のパンチを食らったらしばらくは無理だろう。襲われることが多いので、護身術は幼いころから習わされていた、普段ならもっと力を抜くが、正樹が関わっているから俺もそんな余力は残せなかった。

 俺は正樹を抱きしめたまま、外にいる護衛達に電話をして中に入るように伝えた。そして正樹を保護したから、櫻井を回収して手当を頼むというと、すぐに扉は開き、部下と支配人が入ってきてコトを収めてくれた。

 やっと二人きりだ。

 ヒートを迎えたオメガと、そのオメガを愛するラットを迎えたアルファ。

 やることは一つだった。
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