運命を知らないアルファ

riiko

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本編

25、人生初めての告白

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 正樹は俺との関係を体だけと思ったみたいだった。たしかに付き合ってほしいと言って拒絶されるのが怖くて、まずは友達だと言ったのは俺だ、なのに正樹が流されてくれるからって体を手に入れた。俺は最低なことをした。

「セフレなんて思ってない。それに友達だけど、恋人、俺と付き合おう?」
「えっ? なんで……」
「なんでって、正樹が好きだからだよ、散々言っているだろう」

 やはり俺を最低の下半身野郎と思っていたらしい、そんなに驚くなんて、正樹には俺の恋心は全く届いていなかったようだ。

「でも、司、オメガ嫌いじゃ」
「正樹は好きだ。正樹と出会って、オメガが嫌いなんじゃなくて、正樹以外のオメガが嫌いだって気がついたよ」
「な、なんだよそれ、でも……」
「正樹は? 俺のことどう思っている? 体の相性は相当いいはずだし、それに正樹だって俺を好きなんじゃ無いの?」

 俺の願望だけど、でも夢の中といった世界で俺は正樹に告白されたんだ。それこそ正樹の根底の本当の思いだろう?
 
「そんなに悩むところ? もうお互い両想いなんだから、素直に受け入れたらいいのに、何が不安?」

 正樹が戸惑っているのがわかったから、それをほどくように顔中にキスをした。どうして不安みたいな顔するの? もしかしてキスしすぎて気持ち悪かった? どうしよう、俺、犬みたいにぺろぺろしまくっちゃったよ。そしたら正樹がぼそっと全く予想していなかった言葉を言った。

「司、俺みたいなオメガらしくもない、ただの男にそんなことを言ってくれるのはありがたいけど……」
「けどの先は聞かない。イエス以外の言葉は却下だ。俺と正樹は両思いで恋人、いいよね?」

 気持ち悪いって言われなくて良かったぁ‼ ねぇお願い、そんな困った顔をしないで、俺を受け入れてよ。

「いいよねって、だってっ。今更だけどさ、そもそも司はどうして最初に会った時、俺の名前を普通に言っていたの? いつから、俺を知っていたの?」

 そうだった、俺は肝心なことを言っていなかった。明らかに初対面だというところで俺は馴れ馴れしく、正樹と呼んだ。櫻井でなく初対面のはずの俺をあの時は受け入れてくれたから、正樹がそこを疑問に思っているなんてことすら頭になかった。

「最初に会ったのは、櫻井から助けた時じゃない」
「えっ」
「正樹が放課後に、一人で初めてのヒートを迎えた時あっただろう? 朝に会った俺の友達の光輝、あいつ生徒会役員していて、俺はあの時そいつに仕事を押し付けられて一人で生徒会室にいたんだ。それでお前のヒートに気がついた。抑制剤を持っていったのは俺だよ。だから正樹を知った」

 正樹は誰に助けられたのか知らなかった。だからあの時のやつが俺だって知って驚いている。

「あの時は俺一人で本当に良かった。他のアルファがいたらどうなっていたかと思うと……」
「で、でも! 俺の初めてのヒートの時、俺から逃げた、なのに、なんで今更」

 えっ、まさかあの時、逃げたアルファがいたという風に思って、それがトラウマにでもなった? それでオメガとしてアルファを受け入れられないようになったのか? いつもオメガの自分がアルファの俺のそばにいるのを気にしていたのは、そんな俺の浅はかな行動が原因だった? 

 俺はそんな傷を正樹に……。

 それに発情に苦しむオメガに対して酷い言葉を浴びせたと、正樹の抗う姿を見て一瞬で後悔した記憶もある。

「逃げたって……、あのまま襲われたかったの? 俺はフェロモンに負けてレイプするような、そんな卑劣な男じゃない、耐えた俺を褒めて欲しいくらいだよ」
「俺のフェロモンって、耐えられるくらいのもの?」
「それで怒っているの? 俺は抑制剤ずっと飲んでいるからな、それでも他のオメガに惹かれることなんてなかった、でも正樹の匂いは正直くらっときたよ」

 いや、正直あれはやばかった。

 襲いたくて仕方なかった、本当にあの時の自分、グッジョブ。そんなことしていたら正樹と今みたいな関係は生まれなかった。正樹は正義感の強い男だから、始まりが強姦など許すはずがない。

「俺は、ヒートに乗じてアルファに乗ってくるオメガしか知らなかったから。あのヒートに耐えた正樹の強さに驚いたし、同時にその強さに惹かれた。あれから目で追う日が増えて、心の中でずっと正樹を呼んでいた、自然と正樹に恋をしていたんだ」
「恋……」

 俺が正樹に恋をした、その事実もいまだよくわかっていないみたいだった。どうして? 正樹みたいな男に惚れないわけないのに、どうしてそんなに戸惑うの?

「わかった? 俺の恋人になるしかないって」
「強引なんだな」
「いつか正樹からも俺を好きだと聞かせて、今はまだ流されていていいから、好きだよ」

 俺の想いは伝えた。正樹は受け入れていないかもしれないが、拒絶もしていない。でも俺が抱こうとしたら、素直に受け入れる、体はもう受け入れてくれている、心だって受け入れているはず。

 告白に対して断られなかった、そう思いたい、そう思って俺はもう俺の気持ちを正樹にも周りにも隠さない。というか隠していなかったけど、これで改めて俺は正樹を好きな男としての地位を得た。

 え、得たよな?
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