運命を知らないアルファ

riiko

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本編

3、煩わしいオメガ

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 高校に入学してすぐ、二年のオメガの女が俺に話しかけてきた。わざわざ人気のいないところを選んできたところを見ると、いつものパターンだ。

「西条君!」
「……何?」

 オメガは嫌いだが、それはオメガという性を見せる奴が嫌いなだけで、別に俺も誰彼構わず煙たがるわけではない、一応な。人としての最低限のマナーは待ち合わせている。

 普通にクラスメイトがバース関係なく話しかけてくる分には問題ない……はずだけど。そんな日は来たことなく、オメガが俺に話しかけるのはいつだって、俺がアルファだからだった。

 それでもどんな意図で話しかけてくるのか、最初はわからないから微笑みはしないが、睨みもしない。普通に人付き合いが苦手なキャラとして、答えるだけ。

「私、西条君が好きです! こんなに強いオーラ持つアルファは初めてで。私と付き合って欲しいな」
「断る」

 その女は驚いた顔をしていた。

 よっぽど自分に自信があるのだろう。この女は昨日の女か? 昨日、光輝と歩いていたところ俺を凝視するオメガの女がいると言われて、チラッと女と目が合ってしまった。その時アルファと腕を組んで一緒にいた。

 凄い目で見られた記憶もまだ浅かったから、鮮明に覚えている。こんなギラギラしたハンターの眼をする女がこの学校にはいるのか、厄介だなと。そして早速来た。

「えっ、でも私、優良物件だよ。西条君ほどの人の隣に居られるくらいの美貌もあるし!」
「それが何?」

 この女、俺のこと知らない? 俺がオメガを嫌いということ、そしてオメガとは絶対に付き合わないということも。

 手を出そうとするオメガには容赦無いと噂が立っていたはずなのに、女は高校から入ってきたのかもしれないな。内部から高校に上がるオメガは、もう俺に近づこうとしない。

「えっ! 私可愛いでしょ、すごくモテるんだよ。私が隣にいたら西条君も見栄えが良くなるし、なにより私、あっちも上手いから」
「あんた男いるだろ。そいつとその力を発揮しろよ」

 まだ食いつくのか? 面倒臭いな。というかこのレベルくらいの女なんて山ほどいる。男がいるくせに、他の男にも声をかける時点でレベルが低いのが丸わかりだ。

「私のこと知っていてくれたの? 嬉しい!! でもそれなら大丈夫! 西条君に一目惚れしちゃったから、別れたし。それ心配してくれたの? 優しいね」
「……」

 俺に声をかける女は、なんていうか。やばい奴しかいない。それはオメガに限ったことではない。だから俺は、好きと言ってきた女は選ばない。

 なんとなく目があって、ヤレる雰囲気になったらこれといった言葉を交わさずに、ホテルへ行くか聞く。体だけでいいという女じゃなければ付き合わない。そこでまずは付き合いたいという女には、期待を持たせても悪いから縁がないと言って断る。

 酷い男と罵られたこともあるが、むしろいい人だと思う。騙して体だけもらうわけじゃない。始めから俺は体だけしか欲してないと言ってあげるのだから。

 それで納得したはずなのに、俺が飽きた時には縋りついて泣く女がいた。それこそ酷い女じゃないか? 俺は付き合いたいなど言ったこともないのに、捨てるなんて酷いと。捨てたも何も拾ってもいないだろうと言いたい。面倒臭くなって、体だけの女もそれから厳選することとなった。アルファで俺と同じようにただ性欲を満たしたいだけの女に。

 アルファは男も女も性欲が強い。だからこそ性に奔走なオメガを相手にするが、オメガの相手を簡単にするにはリスクも高い。執着されてつがいにしろと言われても面倒なので、アルファの女が一番楽だった。
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