運命を知らないアルファ

riiko

文字の大きさ
上 下
31 / 67
本編

31、楽しい日常

しおりを挟む

「正樹、昨日はどこに行っていたの?」

 朝一番、学校で正樹を捕まえた。

「ちょっと! お前どういうことだよ、親になんてこと抜かしてくれたんだ!」
「なんてことって、正樹をくださいってお願いしただけだよ? 結局曖昧にされてしまったけど、今日は送るから一緒にお願いしよう」
「な、なんでっ、俺、お前とつがいになるなんて言ってない、そういうのやめろよ」

 なんだと? 俺とつがいにならない!? おもわずムッとしてしまった。

「正樹、俺のこと好きだって言ってキスしたじゃないか、あの流れでそれはつがいになるのをオッケーしたってことじゃなかったのか?」
「んなわけあるか!! 俺はつがいにはならない、なんなら司とも付き合ってない、だからこれ以上勝手なことするならもう、んんんっ」

 えっ、付き合っていないってどういうこと!?

 そんなぁ、そんなぁ、そんなまさかぁ!! 

 俺は泣きそうになったが、それを隠す為に有無を言わさず正樹の唇を奪った。

「ひゃ、や、っめ、ここがっこ、んんんっ」

 ほら、正樹はキスするとすぐにとろけた顔をする。それに口の中は抵抗せず俺の舌を受け入れてきている。行動と言動が伴ってなさすぎで、お前が心配になるよ。人を騙すことができないって、そんな人間見たことなかったから、驚きの連続だった。

「こんなとろけた顔して、何言っているの? 正樹はもう俺の恋人で、つがいになる人だ。正樹も俺が好きなくせになんでそんなに頑ななの? いい加減、可愛くないよ」

 嘘です、可愛すぎですからぁ!!

「はっ!? 可愛くなくて結構だよ、ってか男に可愛いってなんだよ、ムカつくな! 恋人うんぬんってのも司が勝手に言っているだけで俺、一言もそれに関しては了承してない」
 
 言ってやったぜって顔をしている。可愛いな、クソッ。

「セックスしているのに? 正樹はセフレはやなんだろ? じゃあ俺たちの関係は何? なんて名前になるの?」
「っ、そ、れは。だから、もうしない、司とはやらないしつがいにもならない、それで終了」

 このやりとりじゃ埒が明かない。ホテルに連れてって、思いっきり贅沢をさせてやろう。

 今までの女たちは大抵、家のホテルに連れて行くと喜ぶ。それだけのランクのホテルにたかがセックスで来られることに感動するみたいだ。使えるものなら何でも使う、正樹が少しでも俺になびいてくれるなら。

 そうだ、正樹の好きなところに連れていけばもっと喜ぶかもしれない、あそこしかないな。

 とにかく俺は必死だ。この男を手に入れたい、手に入れたと思っていたら俺の勘違いだったなんて、だめだ! もう正樹以外考えられない。正樹を抱えて学校をあとにした。

 言葉では抵抗するも、いつも俺の言いなりになってくれるのでそのまま連れ去った。

「おろせっ!!」

 正樹、必死な姿も可愛い。もう何を言っても何をしても可愛いしかない。

「こらっ、学校はどうすんだよ! 何勝手なこと、」
「別にサボるくらいどうってことない、それより正樹は誰のものなのか、また一から教え直さなくちゃならなくなったからな。出せ」

 何かあった時のためにうちの車を待機させていた。いつ何時、正樹を抱きたくなるかわからないし、いつ何時、正樹が俺におねだりをしてくるかわからないから、準備だけはいつも万全だ! 

 これアルファの常識。

「司、俺はお前のものじゃない! いい加減にしろ。こんなの犯罪だぞ、櫻井とやっていること同じだ」
「俺をあんなやつと一緒にするのか? 恋人が駄々をこねているんだ、それをしつけ直すのも恋人の役目だろ? 櫻井はただのなんの関係もないレイプ魔だ、俺たちはもう繋がっている、これは痴話喧嘩だろ?」

 そうだ、俺達は付き合っている。これは痴話喧嘩だよね? 楽しいな。

 正樹とはぽんぽんと会話が進む、これこそ恋人っていう間柄だからだよな? 俺、真剣交際は初めてだから、楽しすぎてたまらないよぉ、まさきぃ! 

 好きダァぁぁぁぁぁぁ!!
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

運命を知っているオメガ

riiko
BL
初めてのヒートで運命の番を知ってしまった正樹。相手は気が付かないどころか、オメガ嫌いで有名なアルファだった。 自分だけが運命の相手を知っている。 オメガ嫌いのアルファに、自分が運命の番だとバレたら大変なことになる!? 幻滅されたくないけど近くにいたい。 運命を悟られないために、斜め上の努力をする鈍感オメガの物語。 オメガ嫌い御曹司α×ベータとして育った平凡Ω 『運命を知っているアルファ』というアルファ側のお話もあります、アルファ側の思考を見たい時はそちらも合わせてお楽しみくださいませ。 どちらかを先に読むことでお話は全てネタバレになりますので、先にお好みの視点(オメガ側orアルファ側)をお選びくださいませ。片方だけでも物語は分かるようになっております。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます、ご注意くださいませ。 物語、お楽しみいただけたら幸いです。 コメント欄ネタバレ全解除につき、物語の展開を知りたくない方はご注意くださいませ。 表紙のイラストはデビュー同期の「派遣Ωは社長の抱き枕~エリートαを寝かしつけるお仕事~」著者grottaさんに描いていただきました!

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子

葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。 幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。 一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。 やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。 ※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。

巣作りΩと優しいα

伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。 そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……

【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜

MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね? 前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです! 後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛 ※独自のオメガバース設定有り

処理中です...