桜の樹

最初

何千年。
何万年。
どのくらいの時が過ぎたのか、もう覚えていない。

いつの世代の頃か人は皆、家同士の付き合いで結婚をし子孫を残し繰り返される世界に見飽きた神がいた。

強欲の神。
それはひとつ狂わせば人々の心を壊せる力を持つ。

ある時、1組の男女がいた。
珍しく力を持ち互いに惹かれあってるのがすぐにわかった。

人の付き合いに飽き飽きしていた神は、女性の方にある術をかけた。
次に目に付いた人を好きになる。
誘惑の魔法。
なんとも摩訶不思議な魔法。
惹かれあっていた2人はすぐに別れ、女は目が合った異国の人と出会う。

その男は綺麗な髪色をしていて、お忍びで来ていた王子だった。
王子も急に話しかけてきたこの女を気に入り、2人は後に婚約することになる。

力を持った女は神のイタズラに気づかなかったが、別れた男はすぐに気づいた。
人離れした力を持つ男は、強欲の神の仕業と気づき王子へ抗議した。

しかし神の存在など誰も信じない世界だった…
唯一似た力を持つ女は神の力により、自身の思考を奪われていた。

男は呪った。
王子を女をしかし、ふと我に返り力を押さえ込もうとした。
だがその力は収まらず、自分に跳ね返り男は闇に落ちてしまった。

男は闇に落ち怨みに恨んで、このことを忘れまいと転生し記憶を受け継がせた。
やがて男は巨大な力と共に、魔王となった。


一方女は、男の邪悪な力を感じ国と王子と自分に魔法をかけた。
王子は王となる力を持ち転生し、女は国を守る力を持ち転生し、
国を守るため力を持った樹を植えた。

そう。女は聖女と呼ばれていて後に守り神と呼ばれる。
王子は王となり守り神を愛し国と共に守る存在。
国は大樹となった樹を要に力をつけ他国から守る存在となり、王と守り神は結ばれる。

強欲の神は、こう作りかえたのだ。
力のある男と女を引き離し、世界をかき乱すために。

記憶を受け継がない王と守り神は魔王のことを忘れ、記憶を受け継ぐ魔王はなんとしてでも守り神となった女を取り戻そうとする。


何千年何万年と続いたこの戦いに、最後と言わんばかりに愛する守り神に魔法をかけた。

黒い薔薇が咲きその肌に印が出れば…

「何があっても守り神は私のものだ。」

黒い薔薇は一体誰のものだろうか…


何故悲劇は繰り返されるものなのか。



血の誓約は破れない。