桜の樹

Estrella

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桜の5歳

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白桜国 「桜泉樹」の守り神  桜


守り神となったきっかけは、5歳の時に見た夢で内容を話した瞬間に両親は私を王城へ連れていった。

小さい私はその時守り神のことも「桜泉樹」のことも何が何だか分からないまま、それきり家族と会うことは無かった。

守り神は、守り神と決められた瞬間から「桜泉樹」から無闇に出ることを禁じられる。
特別な理由なしに出てはならず、人の接触も然り。

桜はそれでも、「桜泉樹」から聞こえる声に心をよせた。

この声は嘘をつかない。



「あなたは誰ですか?」

(君は私の声がもう聞こえるんだね?)

「?」

(普通はね。もっと大きくなってから聞こえるんだ。最初はもっと泣いてたりするものなんだけど…)

「??」

(君は今までの子達とは違うのかもね。)

「わたしは桜です。」

(そう。知ってるよ。桜。今世の守り神。)

「まもりがみ?」

(そうだよ。君は選ばれたんだ。選ばれてしまった。今世も。この世界を守りために。)

「ほかにもいるんですか?」

(今は君だけ。1人でなんでも出来ないと困るね。)

その声の人が少し笑った気がした。

「わたしはまだなにもできないです。」

(これからさ。これから覚えて。私が教えてあげるから。)

不思議な人だった。

「あなたのおなまえはなんですか?」

(……名前はもう忘れたんだ。)

「あなたはかみさまですか?」

(違うよ。君と変わらない存在さ。)

「???」

(時期にわかるよ。桜、まずは家事を覚えないとね?)

クスクスとはっきり笑って私を見ていると言った。

ずっと一緒だと言っていた。

貴方はきっと私と同じだったんですね…
だから知っていた。
全部。何もかも。

私は貴方みたいになるのでしょうか?

顔も知らない声だけの人。

でも、教えて貰ってもう人に会えない覚悟をもてたのは、貴方のおかげだった。

寂しくないように、ずっと話しかけてくれた。

私はもうずっと自分で生きているよ。

ありがとう。

また時々話しかけてね。
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