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再建 と 不穏
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王太子。
白桜国の国王陛下の息子と名乗っているが、実の所は、国王陛下が捨て子であった赤子を王太子として育てているのである。
そもそもな話、年の差を考えれば変だと気づくものも多い。
不可解な点といえば、容姿がよく似ていることだろうか。
国王陛下は恐らく先王が残した子なのではと、引き取り育てたらしいが、なんせ母親がこれまでに子に会いに来たことがないため、真相が分からずじまい。
唯一方法があるとすれば、麒麟の神獣様の朱凰様の時の力を使って時を遡ることが必要だが、朱凰様は王太子のことを良くは思っていない。
力を使わしてくれるとは思えなかった。
王太子 エレン・ウォル・ハクオウ
齢20にして、頭脳明晰で少々腹黒だが基本優しい王太子として、国民の人気があり言わずもがなの容姿端麗である。
ちなみに名前は、国王陛下がつけた。
国王陛下が結婚を未だにしていないのは周知の事実で、王太子の親のことは誰も触れてはならないのが暗黙の了解。
実質王太子は実力で国民の支持を得ていることになり、出自を気にするものもいなかった。
隣国の国王というか、ヴォルク国の王アルゼン陛下が、王太子を気に入っていて最初は守り神である桜と結婚させようとしていたのはこの王様である。
しかし、計画を立てているうちにアルゼン陛下が桜に惚れてしまい、国を挙げての求婚騒動となった。
王太子自身は、自分が年下であり守り神の桜の眼中に入っていないのが明白なので、早々に諦めた。
そして、父として育ててくれた国王陛下と桜を婚約させようと、密かに計画を練っていた。
のだが…
太子「バルク国が滅んで国全体が自然溢れる森みたいになったところを、神獣様の玄凰様と再建して欲しいとは…また急すぎて整理が追いつかないのですが…何がどうしてそうなったんですか?陛下。」
王「はは。話せば長いのだが…」
☆バルク国での件を報告中☆
太子「…つまり、守り神殿が国を一つ滅ぼして神獣様が増えて…ってなんですかそれ。。」
王「だよな…アルゼンの奴になんて報告をしたらいいのか…」
太子「…そういえば、アルゼン陛下はどこいったんですか?」
王「勝手に帰っていたな。置き手紙があった。だがすぐ戻ってきそうだ…」
太子「アルゼン陛下の場合は、突然ですからね…」
王「ああ。急に隠居したくなってきたなぁ。」
太子「やめてください。僕が困ります。」
王「お前なら大丈夫だ!うん!」
太子「何を根拠にそんなこと言ってるんですか…国民の皆さんだって、まだまだ陛下が現役でやれるの知ってますからね。今隠居したら、サボってるのがバレるだけですよ。」
王「うむ。厳しいなぁ。」
太子「普通です。」
王「お前も厳しく言うようになったなぁ。」
太子「陛下が結婚もせず、皆の心配も組み取らないのがいけないんですよ。」
王「結婚かぁ。もう世継ぎはいるからなぁ。」
太子「王妃の公務もあるでしょうに。全て陛下一人でやっていては、本当に体持ちませんよ。」
王「その時は、お前が嫁を迎えさせて私は隠居しよう!」
太子「おかしいです。その結論。」
王「まぁ、この話は置いといて。すぐにでも玄凰様と再建の方に向かって欲しい。他の国にかすめ取られたんじゃ、守り神殿に動いてもらった意味がなくなってしまう。」
太子「ご安心ください。任されたからには、みすみす他の国に渡したりはしませんよ。」
王太子は席を立つ。
王「相変わらず頼もしいな。何か必要なものがあれば、全て揃えて不便なく人が住めるように。」
太子「はい。それでは失礼します。」
王「玄凰様は、おひとりで旧バルク国まで行かれる。玄凰様の力はあくまで最終手段。それと、都の名前でも考えておいてくれ。」
太子「承りました。」
こうして、王太子は旧バルク国へと向かった。
王「さて。アルゼンの対策でも練るか。」
王は険しい顔をして、執務室へ戻っていった。
旧バルク国。
王太子が到着すると、そこは大森林と言っていい程の木々で溢れていた。
もちろん川もあり池もあり滝もあり、自然界と言っていい世界だった。
太子「バルク国の面影もないな…綺麗な場所になった。」
何せ守り神が力を出した場所である。
太子「資源を心配する必要は無さそうだが、本当に誰もいないのだろうか?」
兵「殿下。先遣隊によればこの国に住んでいたものたちはほとんどがヴォルク国へと逃げ延び、残っていたのは数人の魔法使いと旧バルク国の国王と宰相だけだったそうです。ですが、1連の事件で皆死亡したと。遺体は既にないそうです。」
太子「そうか。恐らく守り神殿であろうな。それでは好き勝手やっても問題ないということだ。」
兵「はっ。殿下の思うままに。」
太子「何を言う。民が暮らすのだ、ここはひとつ国の狭間の役目を負う場所にしてもいいかもしれんが、まずは住みやすいようにしよう。この地の地図を新しくするために、しかし自然をなるべく壊さずに。」
兵「はっ。」
太子「森で囲むように道を作れ。水を満遍なく行き渡らせ、住める家を作るのだ。」
兵「はっ。この国のために!」
王太子はすぐさま兵士を増員し、道を作らせ伐採した木で家や砦お店になりそうな建物などを作っていった。
玄『へぇ~驚く速さでやってんな。心配ないくらいだ。しかし、どんな都になるかね。』
玄凰様は、こっそり様子を伺っていた。
その頃のアルゼン陛下。
ア「バルク国を滅ぼした守り神ねぇ。意外と好戦的なのな。ますます欲しくなってきた。」
守り神である桜が国を滅ぼしたことまでしっかり把握済みであるアルゼン陛下は、怪しい顔をしながら何かを考えていた。
そこへアルゼン陛下の側近のイヴェルトが現れた。
亻「いいんですか?奪いに行かなくて。」
ア「ああ。国を奪うよりもよぉ…守り神を奪った方が面白くなりそうじゃないか?イヴェルト。」
亻「本気ですか?守り神があの国から居なくなれば神獣様がどうなるか…」
ア「もちろん。神獣様がいれば守り神もついてくるだろ?」
亻「…は?」
ア「守り神と神獣様はセットだ。そう考えれば同じような住処をこの国でも作れば奪える。そうだろ?イヴェルトよ。お前、先に白桜国にいって伝えてこい。アルゼン国は白桜国の守り神と神獣様を奪いに来たってな。」
亻「…本気ですか?」
ア「俺がこの話で嘘を言ったことがあるか?」
亻「ないから改めて聞いたんですよ…」
ア「くくく。だって欲しいだろ?そんな強い力。」
亻「貴方を敵に回したことを向こうが後悔しないといいですね…」
ア「しろしろ。後悔して挫けてるイル陛下見てみたいぜ~」
亻「いつからそんな親しくなったんです?」
ア「楽しいぞ。あいつで遊ぶのは。」
亻「国を挙げての一大事を楽しまないでください。」
ア「まぁ。そういうことだから、早く行ってこい。イヴェルト、命令だ。」
亻「アルゼン陛下の御心のままに。」
イヴェルトはさりげなくため息をひとつついて、その場を後にした。
ア「待ってろよ、桜。お前は俺のものだ。あいつにはやらねぇよ。絶対にな。」
白桜国の国王陛下の息子と名乗っているが、実の所は、国王陛下が捨て子であった赤子を王太子として育てているのである。
そもそもな話、年の差を考えれば変だと気づくものも多い。
不可解な点といえば、容姿がよく似ていることだろうか。
国王陛下は恐らく先王が残した子なのではと、引き取り育てたらしいが、なんせ母親がこれまでに子に会いに来たことがないため、真相が分からずじまい。
唯一方法があるとすれば、麒麟の神獣様の朱凰様の時の力を使って時を遡ることが必要だが、朱凰様は王太子のことを良くは思っていない。
力を使わしてくれるとは思えなかった。
王太子 エレン・ウォル・ハクオウ
齢20にして、頭脳明晰で少々腹黒だが基本優しい王太子として、国民の人気があり言わずもがなの容姿端麗である。
ちなみに名前は、国王陛下がつけた。
国王陛下が結婚を未だにしていないのは周知の事実で、王太子の親のことは誰も触れてはならないのが暗黙の了解。
実質王太子は実力で国民の支持を得ていることになり、出自を気にするものもいなかった。
隣国の国王というか、ヴォルク国の王アルゼン陛下が、王太子を気に入っていて最初は守り神である桜と結婚させようとしていたのはこの王様である。
しかし、計画を立てているうちにアルゼン陛下が桜に惚れてしまい、国を挙げての求婚騒動となった。
王太子自身は、自分が年下であり守り神の桜の眼中に入っていないのが明白なので、早々に諦めた。
そして、父として育ててくれた国王陛下と桜を婚約させようと、密かに計画を練っていた。
のだが…
太子「バルク国が滅んで国全体が自然溢れる森みたいになったところを、神獣様の玄凰様と再建して欲しいとは…また急すぎて整理が追いつかないのですが…何がどうしてそうなったんですか?陛下。」
王「はは。話せば長いのだが…」
☆バルク国での件を報告中☆
太子「…つまり、守り神殿が国を一つ滅ぼして神獣様が増えて…ってなんですかそれ。。」
王「だよな…アルゼンの奴になんて報告をしたらいいのか…」
太子「…そういえば、アルゼン陛下はどこいったんですか?」
王「勝手に帰っていたな。置き手紙があった。だがすぐ戻ってきそうだ…」
太子「アルゼン陛下の場合は、突然ですからね…」
王「ああ。急に隠居したくなってきたなぁ。」
太子「やめてください。僕が困ります。」
王「お前なら大丈夫だ!うん!」
太子「何を根拠にそんなこと言ってるんですか…国民の皆さんだって、まだまだ陛下が現役でやれるの知ってますからね。今隠居したら、サボってるのがバレるだけですよ。」
王「うむ。厳しいなぁ。」
太子「普通です。」
王「お前も厳しく言うようになったなぁ。」
太子「陛下が結婚もせず、皆の心配も組み取らないのがいけないんですよ。」
王「結婚かぁ。もう世継ぎはいるからなぁ。」
太子「王妃の公務もあるでしょうに。全て陛下一人でやっていては、本当に体持ちませんよ。」
王「その時は、お前が嫁を迎えさせて私は隠居しよう!」
太子「おかしいです。その結論。」
王「まぁ、この話は置いといて。すぐにでも玄凰様と再建の方に向かって欲しい。他の国にかすめ取られたんじゃ、守り神殿に動いてもらった意味がなくなってしまう。」
太子「ご安心ください。任されたからには、みすみす他の国に渡したりはしませんよ。」
王太子は席を立つ。
王「相変わらず頼もしいな。何か必要なものがあれば、全て揃えて不便なく人が住めるように。」
太子「はい。それでは失礼します。」
王「玄凰様は、おひとりで旧バルク国まで行かれる。玄凰様の力はあくまで最終手段。それと、都の名前でも考えておいてくれ。」
太子「承りました。」
こうして、王太子は旧バルク国へと向かった。
王「さて。アルゼンの対策でも練るか。」
王は険しい顔をして、執務室へ戻っていった。
旧バルク国。
王太子が到着すると、そこは大森林と言っていい程の木々で溢れていた。
もちろん川もあり池もあり滝もあり、自然界と言っていい世界だった。
太子「バルク国の面影もないな…綺麗な場所になった。」
何せ守り神が力を出した場所である。
太子「資源を心配する必要は無さそうだが、本当に誰もいないのだろうか?」
兵「殿下。先遣隊によればこの国に住んでいたものたちはほとんどがヴォルク国へと逃げ延び、残っていたのは数人の魔法使いと旧バルク国の国王と宰相だけだったそうです。ですが、1連の事件で皆死亡したと。遺体は既にないそうです。」
太子「そうか。恐らく守り神殿であろうな。それでは好き勝手やっても問題ないということだ。」
兵「はっ。殿下の思うままに。」
太子「何を言う。民が暮らすのだ、ここはひとつ国の狭間の役目を負う場所にしてもいいかもしれんが、まずは住みやすいようにしよう。この地の地図を新しくするために、しかし自然をなるべく壊さずに。」
兵「はっ。」
太子「森で囲むように道を作れ。水を満遍なく行き渡らせ、住める家を作るのだ。」
兵「はっ。この国のために!」
王太子はすぐさま兵士を増員し、道を作らせ伐採した木で家や砦お店になりそうな建物などを作っていった。
玄『へぇ~驚く速さでやってんな。心配ないくらいだ。しかし、どんな都になるかね。』
玄凰様は、こっそり様子を伺っていた。
その頃のアルゼン陛下。
ア「バルク国を滅ぼした守り神ねぇ。意外と好戦的なのな。ますます欲しくなってきた。」
守り神である桜が国を滅ぼしたことまでしっかり把握済みであるアルゼン陛下は、怪しい顔をしながら何かを考えていた。
そこへアルゼン陛下の側近のイヴェルトが現れた。
亻「いいんですか?奪いに行かなくて。」
ア「ああ。国を奪うよりもよぉ…守り神を奪った方が面白くなりそうじゃないか?イヴェルト。」
亻「本気ですか?守り神があの国から居なくなれば神獣様がどうなるか…」
ア「もちろん。神獣様がいれば守り神もついてくるだろ?」
亻「…は?」
ア「守り神と神獣様はセットだ。そう考えれば同じような住処をこの国でも作れば奪える。そうだろ?イヴェルトよ。お前、先に白桜国にいって伝えてこい。アルゼン国は白桜国の守り神と神獣様を奪いに来たってな。」
亻「…本気ですか?」
ア「俺がこの話で嘘を言ったことがあるか?」
亻「ないから改めて聞いたんですよ…」
ア「くくく。だって欲しいだろ?そんな強い力。」
亻「貴方を敵に回したことを向こうが後悔しないといいですね…」
ア「しろしろ。後悔して挫けてるイル陛下見てみたいぜ~」
亻「いつからそんな親しくなったんです?」
ア「楽しいぞ。あいつで遊ぶのは。」
亻「国を挙げての一大事を楽しまないでください。」
ア「まぁ。そういうことだから、早く行ってこい。イヴェルト、命令だ。」
亻「アルゼン陛下の御心のままに。」
イヴェルトはさりげなくため息をひとつついて、その場を後にした。
ア「待ってろよ、桜。お前は俺のものだ。あいつにはやらねぇよ。絶対にな。」
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