桜の樹

Estrella

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バルク国へ行く前

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それは、桜がバルク国へ行く前の話。

青『バルク国に乗り込む!?』

桜「はい!」

朱『何を言っておる!危険ではないか!』

桜「ですが、魔法使いなど人の気配もないのであれば、闇に染まった麒麟様を助けられるのは、私だけでしょう?」

玄『だけど!乗り込むって物騒だぞ!』

青『そうよ!国王に任せた方が!』

桜「わかっているはずです。許しの印があってもあの儀式ができるのは私だけです。」

青玄『???あの儀式???』

朱『名を与えるのか!』

桜「はい!それしか戻せません。天海界に戻ることは不可能に近いです。それならばこの国へ連れてきた方が暮らしやすいはず。」

青『名を与えてこの国へ?』

玄『確かに確実かもな…』

朱『勝てる見込みはあるのか?』

桜「神獣様を、侮辱したヤツらに負ける気などありませんよ。」

その瞳は冷酷。

朱玄青『……怒っているな。』

青『陛下には伝えていくの?』

桜「事後報告で構いません。一刻を争います。」

玄『そんなにか?』

桜「富を狙うのであれば、ヴォルク陛下もいるこの国を真っ先に狙ってもおかしくはありません。」

朱『なるほど。一石二鳥を狙うと…』

桜「あと、あそこの王馬鹿なので。」辛辣。

神獣様御三方がゾクゾクするほど恐怖に満ちていた。

朱『我から陛下には伝えておこう。』

桜「はい。お願いします。」

そう言って、桜はバルク国へと瞬間移動して前話の経緯となる。

今までにない桜の顔を見れた神獣様は良かったのか悪かったのか…

朱『さて、ハクオウ陛下よ。聞こえるか?』

王「!?通信か?」

朱『そんなところだ。今しがた、主がバルク国へ飛んで行った。』

王「え!?守り神殿が!?」

朱『今までにないくらい怒って、闇の麒麟に名を与えて戻ってくると言っていた。』

王「それは、いいことでいいんでしょうか…?」

国王陛下さえ疑問形になるほどである。

朱『恐らく、あちらにはもう力というものは残っていないし、神獣は主を自然と守り神と理解する。問題はないだろう。』

王「そうですか…」  

朱『心配か?』ニヤ

王「!?まぁ、守り神殿に何かあってからでは遅い。しかし、怒っているとはまた珍しい。」

朱『ああ。感情を大きくは出さないからな。それほど許しがたかったんだろう。』

王「闇の麒麟というが、朱凰様とは関係があるのか?」

朱『さて。会ってみないことにはなんとも言えないが。麒麟と言っても天海界では何体もいるし、知り合いでないのももちろんいるからな。』

王「そうなんですね。天海界か。初めて聞いたがなんだか想像できないな。」

朱『人はそこでは生きられないからな。』

王「そうか。まさに神獣様の世界。すごいな。」

朱『とりあえず、また主が戻り次第伝えよう。』

王「わかった。頼む。」

こうして、国王陛下と神獣御三方のハラハラした気持ちは桜が帰ってくるまで続いた。
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