桜の樹

Estrella

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バルク国

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ここは、闇の気が漂うバルク国。

バルク国の王ルイス・ロナ・バルク。
ぽっちゃりとしたいかにも悪い顔の国王。
圧政で独裁国家となっているバルク国は、自然など無いに等しく、富を得たいばかりに他国を襲おうと、禁術に手を出した。

宰相はこの国の滅亡しかない未来に何を言っても無駄だろうと諦めていた。

宰「陛下。此度の神獣様召喚は禁術です。直ぐに他国の者がお気づきになられます。どうなされるので?」

オドオドと話し説得力の欠けらも無い宰相は、少しでもあった神聖な気がなくなり闇の気が漂うこの国で、民が苦しむ姿を何度も見た。
それゆえ、宰相は自分もあんなことにはなりたくないと、陛下に逆らうのを止めた臆病者である。

ル「ふん。他国のものを滅ぼすのに使うというのに、他国の者に気づかれたからと言ってなんだと言うのだ。」

宰「ですが、ヴォルク国も国王自ら白桜国に向かったと、情報が入りました。白桜国と言えば、神獣様と守り神が居る強豪国です!」

ル「だからどうしたのだ。白桜国を狙う前にヴォルク国をと思ったが、白桜国を先に潰した方がいいかのう。」

宰「!?白桜国をですか…!?」

ル「当たり前だ!あの自然豊かな国こそ、私にふさわしいというもの!」

宰「ですが、守り神の力も計り知れないのに…」

ル「ああ。そういえば守り神は大層美人とか。私の嫁にしてもいいな。」

宰「陛下!?なりません!国が滅びますぞ!」

ル「黙れ!滅びないようにするのが宰相!国王は国の顔!貴様は私に逆らうのか!」

宰「滅相もございません!どうかお気を鎮めてください!」

王が住まう城だと言うのに、謁見の間にいるのはこの2人だけ。  
城の使用人も、10人程度。
これだけの圧政なら当然の結果であった。
民は飢え、疫病が流行り、自然の木1つもまともに生えていない。

闇の麒麟は、鎖で繋がれ召喚に犠牲になった魔法使いは30人。
残った10人程度の魔法使いで何とか闇の麒麟を抑えていた。

ル「ええい!今すぐ白桜国を攻めろ!闇の麒麟はもうこの国にいるのだ!滅ぼせ!」

宰「陛下!?」

ル「あの、シュナイゼンの顔をへし折ってやる!守り神を独り占めしおって!」

『グオオオオオオオオオ』

ル「!?なんだ!何事だ!」

宰「陛下!闇の麒麟が暴走を始めました!」

ル「なんだと!?早く捕まえろ!」

宰「ですが、残っていた魔法使いは皆疲労困憊です!動けません!」

ル「この愚図共が!何故動けない!?魔法使いであろうが!」

闇の麒麟は城を破壊し始めた。
その暴れっぷりは、この国の者では最早誰も止められない。

ル「くそ!」

ルイス・ロナ・バルクは逃げ出した。

宰「陛下!?」

ル「お前の責任だ!お前がどうにかしろ!」

宰「なっ!?貴方の命令でやったことですぞ!」

ル「うるさい!早くしろよ!」


2人が逃げながらギャーギャーと揉めていると、突如眩い光が差し込んだ。

光る銀の髪薄紫の瞳
羽衣を身に纏い天女と称される女性

宰「まさか!何故今ここに!?」

ル「おい!あれは誰だ!人間なのか!?」

宰「何をおっしゃいます!あれは、かの白桜国の守り神ですぞ!」

ル「なっ!?何故ここに今いるのだ!?」

宰「分かりませんよ!」



桜「うるさいですね。神聖な麒麟様をこんなふうにしておいて、何もしないとは、どこまで私の怒りを買いたいのでしょう?」

今までに見せたことも無い怒りを見せる桜の姿は角が生えた天女の様で、バルク王と宰相はその恐ろしさから、その場でへたり込み汗や涙や尿を漏らしながら気絶した。

桜「なんの力も無いものが、浅はかなことを…」

『グオオオオオオオオオ』

桜「大丈夫ですよ。さぁ」

「世界の守護  永遠なる我らの光 共にこの地を この国を 未知なる未来を 闇を打ち払いし者 あなたの光とならん」

桜が唱えると、麒麟と額を合わせ桜はまた唱える。

「そなたの名は白凰。私は守り神桜。ここに名を与えよう。」

唱え終わると、目も開けていられないほどの光が差し、あたりは緑と土と水が蘇った。
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