桜の樹

Estrella

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急な訪問

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いつものように桜は、神獣様御三方を起こすため「桜樹泉」の中の住処へと歩いていると、この国のものでは無い、他国の者の気を感じた。

「…今日他国のものが来る予定はあったかな?」

ポツリと呟き、はて?と思いながらも自分が会うことはないかと、謎の納得をしてこの時は気にもしなかった。

「おはようございます~皆さん朝ですよ~」

朱『おはよう。主。』

玄『はよ~』

「……あれ?青凰様はまだですか?」

玄『ん?』

皆で辺りを見ても、青凰様だけいない。

「どうしたのでしょう?玄凰様よりはいつも早く起きますのに…」

玄『今軽く、悪口言わなかったか?』  

「気の所為ですよ。」

朱『そういえば、今日は違う者の気があるな。』

「多分他国の人が急に来たんだと思いますよ?」

玄『なんだ。まさか、アルゼンのやつでも来たか?』

「えー?あの青凰様がお嫌いなあの方ですか?」

玄『ああ。似たような気だと思ってな。』

朱『それで住処に籠ってるのか?青凰は。』

「アルゼン様ですか…あの人中々面倒事を持ってくるんですよね…」


アルゼン・エド・ヴォルク
ヴォルク国の国王陛下でこの方もお若い陛下として名が高い、30歳の隣国の国王陛下である。
以前白桜国に訪れた際、青凰様と会いその感動のあまり、青凰様に突っ込んでしまい青凰様の羽を少し傷つけてしまった。
その時は、青凰様の寛大なお心で国際問題まではならず、3年は出禁になった。

それと…

玄『あいつは桜を見初めて、求婚してきたんだよな…』

「ああ。忘れていたのに…」

朱『まさか、今回もここへ来るつもりか?』

「どうでしょう。前回は森に不法侵入して迷子になって仕方なく青凰様が助けたんですけど…」

朱『…玄凰はその時どうしたんだ?』 

玄『隠れてるに決まってるだろ。』

朱『なんてどうしようもないやつ…』

「ふふっ!」

玄『なんか言ったか?』

朱『いや、お前が少しでも青凰といたらなにか違ったかもな。』

玄『俺は羽を傷つけられて黙ってないけどいいのか?』

(優しく言ってるけど、めちゃくちゃ暴れる案件)

「それは困りますね…とはいえ玄凰様は青凰様のこと実は好きだから、守りますよね?いざって時は!」  ニコニコ

玄『ん?あー。守るだろうが…って好きではないからな!』

「玄凰様もう手遅れです。」ニマニマ

朱『そうかそうか。好きなのか。』

玄『おい!違うって言ってるだろ!』

「でも玄凰様は嘘つくとしっぽがテシテシ動くんですよね。」

玄『テシテシ?』

見るとしっぽがテシテシ動いていた…

玄『はっ!?これは!』

朱『ほほう。テシテシな。』

「クスクス。正直ものですからね。」

玄『お前らバカにしてるだろ?』

朱『そんなことないぞ?』

「可愛いですよ。」

玄凰様をからかっていると、桜がはっと何かに気づく。


「今誰か結界の中に入りましたね。」 

ピクッと朱凰様と玄凰様は態度を一変。

朱『侵入か?例のアルゼンとやら。』

玄『2回もか?』

「見てきましょう。数人感じます。迷わないとなると、陛下が一緒かもしれません。」

玄『気をつけろよ。』

朱『陛下のためにもな。』

「?はい。御二方は住処の方へ言ってください。」

桜は1人気を感じる近くまで瞬間移動した。



「おお!これはまた驚いた!」 

桜がピクッと反応する。

桜「やはりというか、何をしてるんですか?アルゼン様。」

ア「はは。そう怒るな。今日は陛下と一緒だぜ?」

桜「…でなければ、迷子ですからね。」

ア「ああ。許しの印、あいつは与えられたんだろう?」

桜「それを知ってから来たのですか?この国へ。」

ア「そんな細かいことはいいだろ!今日は話があってきたんだから!」

桜「…話?」

ア「そうだろ?シュナイゼン・イル・ハクオウ陛下?」

桜「そうなのですか?陛下。」

王「…ああ。どうもきな臭くてね。天願をしてもらいたいんだ。」

桜「…青凰様にですか…」

王「急なことになったのは申し訳ない。それと、前回のようなことはしないと誓おう。」

ア「まぁ、ターゲットは1つだ。」

桜「バルク国ですか?」

ア「!ったく、本当に怖いねぇ。当たりだよ。」

王「なにか感じたのか?」

桜「いえ、少し…気になるだけです。」

ア「というわけだから、頼むぜ。」

(それが頼む態度か?)

王「青凰様は、まだお気にされているのか?」

桜「今日は1度も住処から出ておりません。」

王「そうか。どうしたものか。」

桜「私の方から状況を話して参りますので、屋敷でお待ちください。」

王「わかった。行きますよ。ヴォルク陛下。」

ア「はいはい。」



桜は再び青凰様のもとへ移動した。

桜「青凰様?大丈夫ですか?」

青『……ふぅ。少し落ち着いた。あいつが来てるのね?』

桜「はい。バルク国について天願したいそうです。」

青『天願ねぇ。まぁいいわ。今回は不法侵入でもないし。馬鹿な発言もなかったから。』

桜「あはは。。」


天願
ペガサスである、青凰様が天眼と呼ばれる第3の目で世界の全てを見る祈りのこと。
正式な理由…この国に対する危機がある時などに使う。
守り神はこの時青凰様の周りに結界を張りその身を守り邪気が入らないようにする。


青『…!バルク国…これは!』

バチン!
突如大きな音がした。

桜「これは!?」

青凰様がすぐ様朱凰様の住処へ行く。

桜「青凰様!?どちらに?」

青『朱凰のとこ!』

桜も後を追う。

青『朱凰起きなさい!』

朱『…なんだ。終わったのか?』

青『バルク国のあの闇は何?』

朱『闇?』

朱凰様が険しい顔をする。

青『見えたのよ!闇に染った麒麟を!』

桜「麒麟!?」

朱『…闇の麒麟…まさか…』

青『そのまさかよ!まさかあの国無理やりあれをしたってことよ!』

桜「あれとは…なんですか?」

朱『……この世界の禁術。神獣を無理やり天海界から連れてくることだ。』

桜「無理やり!?神獣様方は、神聖な気がないと生きれないのにですか?」

青『…何年か前にもあったわ。無理やり天海界から召喚する術があるの。でも、無理やりやるということは、それなりの人の犠牲があり、300年前には禁術になって、滅多に起こらないことにはなったんだけど…』

朱『無理やりというのがやはり問題でな。闇のっと言ったが、あれは無理やり召喚されることで闇へと染まり災いをもたらす元凶となるのだ。』

桜「そんな…!」

青『あのバカ王達に言っておきなさい。今回の件しっかり片付けなかったら、引きちぎるって。』

朱『……』

桜「すぐ伝えに行きます。」

桜は、屋敷へ戻り王へ進言した。

ア「闇の神獣ね…麒麟とはまた偉いものを…」

王「こればかりは、黙ってるわけにもいかないな。守り神殿、青凰様へと負担はないか?それと…」

国王陛下が桜の手を握る。

桜「え?」

ギュウ。

桜「いっ!」

王「手を怪我しているのに、ちゃんと治療しなかったのかい?」

桜「…出来れば言ってもらうだけで大丈夫です。」

王「それにしても闇の神獣を扱うのに、守り神殿のような存在でもバルク国にいるのか?」

ア「そんな話は聞かないがな。むしろ、強引に普通の魔法使いとかを使ったんじゃないのか?守り神がいると他の魔法使いは生まれにくい。戦闘を考えるなら、ただの魔法使いが無理やり召喚したってのが現実的だな。」 

王「まぁ。守り神がそう何人も生まれる方が恐ろしいか…」

ア「たしかにな!」

ゲラゲラと桜の方を見てわざとらしく笑うアルゼン。

桜「その憎たらしい顔を焼いてもいいですか?」

ア「おい!隣国の国王だぞ!」

桜「私は守り神ですが?」

ア「たく、本当におっかないやつだな。陛下にもしっかり教えた方がいいんじゃねぇの?」

桜「いらない情報吹き込まないでください。」

王「まあまあ。とりあえず、私たちは対応を会議するために、1度ここを出るよ。ありがとう。守り神殿。青凰様にも、伝えてくれ。」

桜「はい。一刻も早い解決をお願いします。」


こうして、国王陛下とアルゼン陛下は「桜樹泉」を出たのであった。
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