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四章 清算
王都入り
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山狼としてのアドルフには新たな能力が加わっていた。威嚇としての遠吠え、『ハウリング』である。敵対モンスターとしてのハウリングは仲間を呼び寄せるものなのだが、テイムモンスターだからなのか、効果が変わっているようだ。
そのためアドルフより弱いモンスターは近寄って来なくなる効果が得られ、王都に入ることができたのは予定よりも三日ほど早い十日ほど後の、陽が暮れる少し前だった。
豊穣祭――新嘗祭と言うと米に重きがありすぎるが、収穫した作物を神に感謝し、食す。そんな愉快な祭を前に、夜通しでも賑わいを見せそうな王都の中を、馬車に揺られながら入っていく。時間が時間のため宿へ向かい、その日は食事と睡眠、次の日は侯爵家へ参じるに相応しい準備にあてることになった。俺たちの行動は事前連絡として侯爵家にある程度のことは伝えられているとは思うのだが、実際にこうして無事に到着したことや面会の日取りなどの調整もあって、ゆっくり身体を休める時間を得たのだ。
まあ、侯爵家へ向かうに相応しい恰好については冒険者と言うこともあって変に畏まった礼服など不要であると先に教えて貰えたものの、余りにみすぼらしいのも流石に失礼だと言うことで買い物に気を使ってしまい、会う前から気疲れはしたのだが。
結局、侯爵家へ向かうのは豊穣祭の空気が色濃くなる9月の頭になった。日数にして5日後。言付けを預かった使者からは「接点を持った後は今以上に周囲に気をつけなければならなくなるだろうから、今の内に観光などして王都を楽しんで欲しい」と言われた。
「はあ……行きたくねえ」
買い物をしている間はそこそこ楽しんでいたようだが、使者の話をすると、ロゼオは憂鬱さを隠しもせずにそう呟いた。
奴隷であり護衛でもあるギルや貴族の家に耐性のあるシズは兎も角、ロゼオとブルーノは侯爵家にまでついていく理由は弱い。招待状の文句も社交辞令として取れなくもないし、最初から二人は貴族云々については乗り気ではなかった。
まあ、俺も身分のことや所作の至らなさを思うと激しく胃が痛みそうなのだが、彼等としてはそのことよりも、やんごとなき身分の方々からの下々を見る目というものに激しい反発を覚えるために可能であるならば接触などしたくないのだ。その話はマギにいた頃にすでに聞いていたし、それでも王都へ来ることを決めたのは、俺の思惑は兎も角本人たちがついて来たい、ギルと離れたくないという気持ちがあって、そのことが俺の考えとうまく合致したために他ならない。
「そこまで気を張らなくても大丈夫だって。俺も何度も会ってるけど、邪魔にさえならなけりゃあの人はなんとも思わないし」
「その邪魔ってのがどういうことなのか分からねえから嫌なんだよ!」
ジンの頼りない慰めにロゼオは呆れ半分、苛立ち半分に語気を強めた。俺も同感である。
「俺もマナーなんて知りませんからね」
「だから大丈夫だって。家の中に入っちまえば人の目なんかあってないようなものだからさ」
敬語でさえ怪しいのにその上貴族の作法なんて、今からやったって付け焼き刃にすらならない。ジンに教えを乞おうとしても、大丈夫というばかりで取り合ってもらえないし。
「何か問題があったら全部ジンのせいにしますからね」
恨みがましく脅すようにそう言っても、ジンは肩を竦めるだけだ。
「そんな辛気臭いことよりも、面会まで王都を歩いて楽しもうぜ。流石に貧民街に突っ込むのはオススメしないが、立ち入り制限のある貴族の邸宅がある付近以外はどこにでもいけるからな」
「貧民街って……やっぱり治安が悪いんですか?」
「まあなあ……スリとか集団で囲まれて身ぐるみ剥がされたりはまだ可愛い方だな」
ジンがギルを見ながらしみじみと言う。ギルは何も言うつもりはないようで、黙ったままだった。いろいろ、思うところがあるのだろうか。
「そういう奴らはその場しのぎっていうかな……まあ、末端でさ。性質が悪いのは、悪いことを考えてる、力のある奴らも彼処に潜んでるってところなわけ。そう言うのに目をつけられると厄介なんだよなあ。違法奴隷とか娼館にブチ込まれたり、その前にいろいろ身体に仕込まれたり……薬も大量に隠してあって、まあ、二度とまともにゃなれない」
まともに生活できない、まともな生活には戻れない、ではなく、『まともにはなれない』。その言い方が含むものが広すぎて、俺は神妙に頷いた。
「分かりました。貧民街の方へはあまり近寄らないようにします」
「おう。ヒューイは特に外見が頼りないからな」
まあ、間違っても強そうには見えないだろうな。魔法使いっぽい格好もしてないし。
ただ、ウィズワルドにもらったアクセサリがあるから、魔法の威力は結構強いんだけど。でも、魔法を放つことを威嚇とするには些か燃費も悪いし、悪目立ちしすぎる。
「移動はリーオットさんにお願いできます?」
「ああ。祭りが終わる頃までは抑えてる」
「なら、基本は馬車での移動がいいでしょうね」
宿までも車に乗ったままだったが、特に問題はなかった。王都の大通りは極めて道が広い。しかも貴族が馬車を頻繁に使うためか、貧民街以外は馬車がすれ違う程度の道幅が確保してあり、舗装もされている。
面会までの5日間、楽しめる限りは楽しもう。王都の空気に触れた分だけ、緊張も解れる気がするから。
******
話し合った結果、朝は冒険者ギルドで依頼をこなすことになった。運動を兼ねているのもあるが、散財した分を取り戻したいというのが本音だ。しかもお祭りでまだまだお金を使いそうだし。
そういうわけで、王都にいる間、一時的にパーティを組むことになった。ギルやジンと比べるから悪いのであって、ロゼオとブルーノは戦えないわけではないのだ。回復要員であるシズと、一応初級魔法はカバーしている俺もいるから、モンスターを狩るだけならそんなに心配しなくてもいいだろう。
王都周辺のモンスターレベルはおよそ40前後。適正レベルはソロでも50だ。そもそも、ギルは王都出身。二人も王国領出身だから、一々口を出さなくとも充分力を発揮できるはずだ。幸い、二人は境遇のせいか自衛のためなら人を殺すこともやむなしと割り切っている。モンスター相手に遅れをとることもないだろう。
かくして、リーオットさんを御者に馬車で向かった冒険者ギルドは早朝にも関わらずなかなかの賑わいを見せていた。大人数で行くのもということで、代表として俺とジンが中に入る。目当ては特定の依頼というわけではなく、害獣駆除の様に常に掲示されている依頼だ。勿論、簡単にこなせそうなものがあればついでに受ける。
「人、多くないですか?」
「祭りの準備で街中で出来る依頼が張り出されてるんだ。大半は外に出ないから、俺たちと取り合いになることはないだろうな」
その言葉通り、討伐や採集の依頼が張り出されたコルク板の前にはほとんど誰もいなかった。そのお陰で、難なく手続きを済ませることができたのだが……日雇い依頼へ群がる人の様子を少し眺めていると、あることに気づいた。
「……あれ? 街中の依頼って受付を拒否されることもあるんですか?」
「ああ……街中の日雇い依頼は難易度が低くて依頼主や他の者と接触する分、文句を言われやすい。そりゃ、冒険者組合としては文句が出ない方が気分もいいし時間も取られないだろ? だから、単なる討伐とか採集とか、依頼主と顔を合わさない依頼の方が実は受けやすいのさ」
「へえ……」
「ヒューイはあまりああいう依頼は受けてなかったんだって? それも冒険者同士の軋轢を生まない良い配慮だと思うけど、君みたいに丁寧な仕事をする人はああいう依頼でも喜ばれると思うね」
「はあ」
そう言えば俺の情報って大半が筒抜けになってるんだよな。
思わず人の群れからジンへと視線を移し、まじまじと眺めてしまう。ジンは珍しく優しく微笑んでいた。どこかその表情は知的ささえ漂っていて、普段の彼との印象の違いにどきりとする。
「うん。君の仕事ぶりは調べてある。貼りっぱなしでなかなか片付かない依頼を片付けたりしていたとかね。そういうのは調べてやろうなんて思わなくたって、職員と良い関係を築けていれば自然と耳に入ってくるのさ」
「……評価は嬉しいですけど、依頼そのものはそこまで難しいものではなかったんですよ」
「だが、冒険者の多くは人と接するには気性が荒かったり、大雑把だったりする。脅しや威圧するような振る舞いや言動をすることも少なくはない。要は、行動につけ言動につけ、相手を軽んじている。だから依頼主も組合に苦情を持ち込んだりして、なかなか達成されない依頼がでてくるわけだ。
その点、君はモンスターを相手にできる力があって、人と接する際にも問題なしと思われてるんだから、職員にとってはありがたいだろうさ」
「それってそれこそ使い勝手のいい何でも屋ってことじゃないんですか?」
褒められて嬉しくないわけはないが、かといって便利屋と思われるのはあまり気持ちのいいものではない。斜に構えるつもりはないが、見ようによっては少なからず見下されているような感じが……って、もしかするとギルも、義賊として歓迎されていたことをそう思ったりしたのだろうか。
「だから、『ありがたい』と思ってるって言ったろ。冒険者ギルドは人を育てる場所じゃないからな。そう言う奴はどうしても少なくなっちまう。確かマギの孤児院じゃ青ランクの冒険者が育てることもやってるらしいが……まあ、大規模にやらない限り目に見えての改善は望めないってのは分かるだろ?」
「……まあ、はい」
教育水準の低さによる、冒険者の質問題。能力云々ではなく、生活環境の低さからくる話であるがゆえに、簡単には解決できない。
なぜなら、冒険者の大半が教養を身につける以前の生活を強いられているからだ。そんなものよりも、今日生きることが大切なわけだから、彼らにとっても優先順位は低い。教養などなくてもモンスターは倒せるし、人を殺すこともできる。貧民街に住む人々にも言えるだろうが、目に見えて分かる結果――極端に言うならスリに成功するか失敗するか、食べ物が得られるのかどうか――の方が彼らにとっては重要なのだ。そして、自分の生活圏を確保すること。殆ど生きるか死ぬかの問題に直結しているから、それを侵すものに対しては非常に攻撃的で、排他的になる。俺が最初に考えた信頼関係云々は衣食住が確保できた上での話であって、彼らはそもそもそこがクリアできてない。地盤が固まっていない上、騙し、騙されることに過敏になり、人を信用できない。
本来なら子どもを養い導くべき親もないまま、一人で、あるいは同じレベルで群れた結果が貧民街であり問題を起こしがちな冒険者の実態だ。奴隷として価値の低い者、職人にも商人にもなれず、ましてや学もなく、人々から持て余される者たちが集まっていった層。侮蔑的な表現をするなら社会の底辺、掃き溜めと言ったところか。
その部分を改善していくためにはそれこそ貴族や王が国を挙げてかかる必要がある。ジンがギルをスカウトしたいと思っていたように、個人のレベルでは行われているようだが……成り立ちのせいか実力主義の風潮が強い王国にあって、生まれ落ちた時から持っていた特権が奪われるのを嫌がる上流階級出身者もいるだろうことは想像に難くない。そして、上流階級でなくとも、彼らを見て蔑むことで日々の鬱憤を晴らしたり、溜飲を下げる市民たちもいる。冒険者たちが知識や教養を身につけることになればそう言う層の不満は本来向けられてしかるべき立場へ向くだろう。だから、冒険者の生活や教養のレベルが上がると、貴族たちは困るのだ。圧政を強いているならば特に。いつの世もそうだろうが、下克上を恐れている者はその辺りの調整を上手く行っているはずで、ガス抜きもしている。それとは別にしても、力の強弱は度外視するとして、モンスターの脅威と接する胆力のある人間が他の分野へ散ってしまうのは国としても避けたいだろう。
この問題は冒険者の育成だけでなく、力のある人間がよりモンスター討伐に意欲的になるような旨味――つまりは、身分を問わない『成り上がり』が可能であることが前提になければならない。冒険者稼業などせずとも日々の糧を得られるならばそちらへ、という人だっているはずだから。
その点で言えば、既に過去に外部からの圧力によって冒険者を守れなかった、という前例を作ってしまったことは組合にとっても国にとってもマイナスでしかない。真偽はともかく、非公式ながら国王が謝罪をしたという話が噂されてしまうのも頷ける。
ジンは言葉を続けた。
「君はマギの孤児院の依頼を受けて、無事完遂したんだろう? あれは乱暴者でなくて学があっても難しい依頼だった。何故なら経営者の二人は互いを愛しているからだ。彼らを受け入れることが出来なければ、どんな知識人であっても達成は無理だっただろう。……君のように実に『平坦な』物の見方が出来る人というのは冒険者でなくてもなかなかいないものなのさ。大抵偏見があったり先入観を持っていたりする。そうでなくても、特定の立場や誰かに入れ込んでいたりね。冒険者組合の職員でさえそうだ。ただ、彼らは冒険者出身で色んなものを飲み込んで来た分、表に出すことはあまり無い」
ジンの声にからかいの色は見えない。それどころかどこか真摯で、手放しで賛辞されているようなむず痒さを覚える。
「そんな風に持ち上げてもらっても、出せるものなんて何もないですよ。それに、俺だってそういう意識がないわけじゃないです」
「しかし、これまで依頼を請け負う際に、そういった部分を出さなかったのは確かだ」
社交辞令的にそっとジンの言葉に蓋をすると、ジンはそれ以上言葉を重ねてはこなかった。だが、彼の声がいつになく穏やかで他意のないもののように感じられた俺は、多分、今までよりはジンに対して構える度合いが低くなっているような気がした。……もしこれが意図的な流れだったとしたら、いよいよもって空恐ろしい。
じっとジンを眺めていると、彼の目が改めて俺を捉えた。
「ん? もしや俺の魅力に気付いちゃった?」
「いや、それはないですけど」
「それはそれでひどいなあ」
茶化す風にしたり顔をした彼に思わず否定を入れれば、あっという間に苦笑に変わる。めまぐるしい変化に、先ほどまでの空気はあっという間に消え去った。
「さ、早く戻ろう。君を独占してるとギルが怖い」
ジンが肩を竦める。俺も不機嫌なギルを相手にするのは勘弁なので、一つ頷いて即、足を動かした。
「熊は引き受けた! そっちに二匹任せる!」
「了解!」
近接武器での戦闘において重要なのはヒットアンドアウェイである。攻撃を入れた後はすぐに距離を取り、相手の攻撃をもらわないようにすること。魔法や遠距離攻撃が可能な武器を持った相手は、可能な限り真っ先に片付けておくのも大事なことだ。
王都周辺で出現するのは巨大ミミズっぽいワームテール、噛みつかれると毒をもらうことのあるビッグマウス、額に短くも鋭いツノを持つホーンラビットがメインだ。それに比べればやや低い出現度にはなるが、非常に攻撃的で、逃げても逃げてもしつこく追いかけてくるマッドベアや直ぐに遠吠えで仲間を呼ぶブルーウルフも出てくる。ブルーウルフはブラックウルフと毛の色以外はほぼ同じだが、ブラックウルフが単独なのに対して、ブルーウルフは基本的に群れで遭遇する点だろうか。
アドルフには最もレベルの高いモンスターを狙わせ、倒し終わって素材も剥ぎ取った後の死骸処理係となっている。リーオットさんの従える二匹のコカトリスと仲良く分け合っていて、賢くてなによりだ。
ジンとギルもアドルフと共に数減らしを優先させ、ロゼオとブルーノが低レベルモンスターを仕留める。俺とシズは後方支援で、タイミングを見計らって回復魔法や支援魔法で前線を支えるという具合だ。俺はアドルフへの指示もあるので、攻撃魔法は最小限に留めた。
「おらあっ!」
ブルーノがメイスを振りかぶり、二匹まとめてホーンラビットへ一撃。致命傷には至らなかったが、内一匹は角を折られ怯んだところをロゼオが鞭をしならせた。
パァン! と景気のいい音と共にホーンラビットが吹き飛ぶ。ロゼオはそのまま続けざまに二、三度打ち付けて止めを刺しにかかり、その間にブルーノがもう一匹の腹へメイスをぶち込んだ。……俺の部屋に来たのがロゼオだったら、もしや俺は鞭打ちに遭っていたんだろうか……いや、あまり考えないようにしよう。その場合俺はもっと寝込むことになっただろうが、それ以上にギルの制裁もあんな比じゃなかった筈だから。あれ以上の暴行の跡なんて想像するだけでも恐ろしい。
「……二人とも、あまり戦えないって言ってた割りに結構血なまぐさい武器だな……」
「元々盗賊狩りを主に行っていたんでしょう? 多分、対人戦を意識した結果じゃないですか?」
「そっか……まあ、そりゃあ人の方が怯みやすいとは思うけど……」
特にロゼオの鞭なんか、先制して武器を持つ手に当てることができればその後の戦闘も有利に運べるはずだ。盗賊なら重装備にはならないだろうから隙も多いだろうし。鞭は人間に対しては拷問にも使われたと言うし、処刑器具などとは異なり直ぐに死なないよう改良されてきたようだが、武器として用いる場合は刺が仕込んであったりもする。……だからその分、相手が死んでも構わないという気概で振るわれることを想像すると、かなり痛い。
ブルーノのメイスも杖の形状だが、先端はモーニングスターのように尖っていて、多分重くしてあるから、その重みのまま振り回せば結構な威力が出るはずだ。本来ならロゼオが怯ませた隙にブルーノがメイスである程度のダメージを与えるという連携なのだろう。
「モンスター相手だと決め手に欠けるけど、盗賊狩りの頃の役割を考えれば妥当か」
二人の武器の扱い方は中々堂に入っていて、及び腰になることもなく安定感がある。もしかするとギルがいるという安心感がそうさせるのかもしれない。俺は兎も角、シズの出番はなさそうだ。ないほうがいいのはいいのだが。
「ひゅ~っ やるねえ」
「腕は鈍ってなさそうだな」
あっさりとマッドベアを倒したらしい二人と一匹が声を上げた。死骸から売れる部位をサクサク剥ぎ取っている。ロゼオは自慢げに顔をつんと上げて見せ、ブルーノは少し照れくさそうに、しかし素直に笑った。
ズタボロになったホーンラビット二匹を、アドルフがばりばりと音を立てながらあっという間に平らげる。
「……食材の調達としては良いけど、皮とか素材の採集には向かない武器かな……」
それなりに戦えるはずの二人の貯蓄額が何故伸びないのか。その理由が分かった気がした。
そのためアドルフより弱いモンスターは近寄って来なくなる効果が得られ、王都に入ることができたのは予定よりも三日ほど早い十日ほど後の、陽が暮れる少し前だった。
豊穣祭――新嘗祭と言うと米に重きがありすぎるが、収穫した作物を神に感謝し、食す。そんな愉快な祭を前に、夜通しでも賑わいを見せそうな王都の中を、馬車に揺られながら入っていく。時間が時間のため宿へ向かい、その日は食事と睡眠、次の日は侯爵家へ参じるに相応しい準備にあてることになった。俺たちの行動は事前連絡として侯爵家にある程度のことは伝えられているとは思うのだが、実際にこうして無事に到着したことや面会の日取りなどの調整もあって、ゆっくり身体を休める時間を得たのだ。
まあ、侯爵家へ向かうに相応しい恰好については冒険者と言うこともあって変に畏まった礼服など不要であると先に教えて貰えたものの、余りにみすぼらしいのも流石に失礼だと言うことで買い物に気を使ってしまい、会う前から気疲れはしたのだが。
結局、侯爵家へ向かうのは豊穣祭の空気が色濃くなる9月の頭になった。日数にして5日後。言付けを預かった使者からは「接点を持った後は今以上に周囲に気をつけなければならなくなるだろうから、今の内に観光などして王都を楽しんで欲しい」と言われた。
「はあ……行きたくねえ」
買い物をしている間はそこそこ楽しんでいたようだが、使者の話をすると、ロゼオは憂鬱さを隠しもせずにそう呟いた。
奴隷であり護衛でもあるギルや貴族の家に耐性のあるシズは兎も角、ロゼオとブルーノは侯爵家にまでついていく理由は弱い。招待状の文句も社交辞令として取れなくもないし、最初から二人は貴族云々については乗り気ではなかった。
まあ、俺も身分のことや所作の至らなさを思うと激しく胃が痛みそうなのだが、彼等としてはそのことよりも、やんごとなき身分の方々からの下々を見る目というものに激しい反発を覚えるために可能であるならば接触などしたくないのだ。その話はマギにいた頃にすでに聞いていたし、それでも王都へ来ることを決めたのは、俺の思惑は兎も角本人たちがついて来たい、ギルと離れたくないという気持ちがあって、そのことが俺の考えとうまく合致したために他ならない。
「そこまで気を張らなくても大丈夫だって。俺も何度も会ってるけど、邪魔にさえならなけりゃあの人はなんとも思わないし」
「その邪魔ってのがどういうことなのか分からねえから嫌なんだよ!」
ジンの頼りない慰めにロゼオは呆れ半分、苛立ち半分に語気を強めた。俺も同感である。
「俺もマナーなんて知りませんからね」
「だから大丈夫だって。家の中に入っちまえば人の目なんかあってないようなものだからさ」
敬語でさえ怪しいのにその上貴族の作法なんて、今からやったって付け焼き刃にすらならない。ジンに教えを乞おうとしても、大丈夫というばかりで取り合ってもらえないし。
「何か問題があったら全部ジンのせいにしますからね」
恨みがましく脅すようにそう言っても、ジンは肩を竦めるだけだ。
「そんな辛気臭いことよりも、面会まで王都を歩いて楽しもうぜ。流石に貧民街に突っ込むのはオススメしないが、立ち入り制限のある貴族の邸宅がある付近以外はどこにでもいけるからな」
「貧民街って……やっぱり治安が悪いんですか?」
「まあなあ……スリとか集団で囲まれて身ぐるみ剥がされたりはまだ可愛い方だな」
ジンがギルを見ながらしみじみと言う。ギルは何も言うつもりはないようで、黙ったままだった。いろいろ、思うところがあるのだろうか。
「そういう奴らはその場しのぎっていうかな……まあ、末端でさ。性質が悪いのは、悪いことを考えてる、力のある奴らも彼処に潜んでるってところなわけ。そう言うのに目をつけられると厄介なんだよなあ。違法奴隷とか娼館にブチ込まれたり、その前にいろいろ身体に仕込まれたり……薬も大量に隠してあって、まあ、二度とまともにゃなれない」
まともに生活できない、まともな生活には戻れない、ではなく、『まともにはなれない』。その言い方が含むものが広すぎて、俺は神妙に頷いた。
「分かりました。貧民街の方へはあまり近寄らないようにします」
「おう。ヒューイは特に外見が頼りないからな」
まあ、間違っても強そうには見えないだろうな。魔法使いっぽい格好もしてないし。
ただ、ウィズワルドにもらったアクセサリがあるから、魔法の威力は結構強いんだけど。でも、魔法を放つことを威嚇とするには些か燃費も悪いし、悪目立ちしすぎる。
「移動はリーオットさんにお願いできます?」
「ああ。祭りが終わる頃までは抑えてる」
「なら、基本は馬車での移動がいいでしょうね」
宿までも車に乗ったままだったが、特に問題はなかった。王都の大通りは極めて道が広い。しかも貴族が馬車を頻繁に使うためか、貧民街以外は馬車がすれ違う程度の道幅が確保してあり、舗装もされている。
面会までの5日間、楽しめる限りは楽しもう。王都の空気に触れた分だけ、緊張も解れる気がするから。
******
話し合った結果、朝は冒険者ギルドで依頼をこなすことになった。運動を兼ねているのもあるが、散財した分を取り戻したいというのが本音だ。しかもお祭りでまだまだお金を使いそうだし。
そういうわけで、王都にいる間、一時的にパーティを組むことになった。ギルやジンと比べるから悪いのであって、ロゼオとブルーノは戦えないわけではないのだ。回復要員であるシズと、一応初級魔法はカバーしている俺もいるから、モンスターを狩るだけならそんなに心配しなくてもいいだろう。
王都周辺のモンスターレベルはおよそ40前後。適正レベルはソロでも50だ。そもそも、ギルは王都出身。二人も王国領出身だから、一々口を出さなくとも充分力を発揮できるはずだ。幸い、二人は境遇のせいか自衛のためなら人を殺すこともやむなしと割り切っている。モンスター相手に遅れをとることもないだろう。
かくして、リーオットさんを御者に馬車で向かった冒険者ギルドは早朝にも関わらずなかなかの賑わいを見せていた。大人数で行くのもということで、代表として俺とジンが中に入る。目当ては特定の依頼というわけではなく、害獣駆除の様に常に掲示されている依頼だ。勿論、簡単にこなせそうなものがあればついでに受ける。
「人、多くないですか?」
「祭りの準備で街中で出来る依頼が張り出されてるんだ。大半は外に出ないから、俺たちと取り合いになることはないだろうな」
その言葉通り、討伐や採集の依頼が張り出されたコルク板の前にはほとんど誰もいなかった。そのお陰で、難なく手続きを済ませることができたのだが……日雇い依頼へ群がる人の様子を少し眺めていると、あることに気づいた。
「……あれ? 街中の依頼って受付を拒否されることもあるんですか?」
「ああ……街中の日雇い依頼は難易度が低くて依頼主や他の者と接触する分、文句を言われやすい。そりゃ、冒険者組合としては文句が出ない方が気分もいいし時間も取られないだろ? だから、単なる討伐とか採集とか、依頼主と顔を合わさない依頼の方が実は受けやすいのさ」
「へえ……」
「ヒューイはあまりああいう依頼は受けてなかったんだって? それも冒険者同士の軋轢を生まない良い配慮だと思うけど、君みたいに丁寧な仕事をする人はああいう依頼でも喜ばれると思うね」
「はあ」
そう言えば俺の情報って大半が筒抜けになってるんだよな。
思わず人の群れからジンへと視線を移し、まじまじと眺めてしまう。ジンは珍しく優しく微笑んでいた。どこかその表情は知的ささえ漂っていて、普段の彼との印象の違いにどきりとする。
「うん。君の仕事ぶりは調べてある。貼りっぱなしでなかなか片付かない依頼を片付けたりしていたとかね。そういうのは調べてやろうなんて思わなくたって、職員と良い関係を築けていれば自然と耳に入ってくるのさ」
「……評価は嬉しいですけど、依頼そのものはそこまで難しいものではなかったんですよ」
「だが、冒険者の多くは人と接するには気性が荒かったり、大雑把だったりする。脅しや威圧するような振る舞いや言動をすることも少なくはない。要は、行動につけ言動につけ、相手を軽んじている。だから依頼主も組合に苦情を持ち込んだりして、なかなか達成されない依頼がでてくるわけだ。
その点、君はモンスターを相手にできる力があって、人と接する際にも問題なしと思われてるんだから、職員にとってはありがたいだろうさ」
「それってそれこそ使い勝手のいい何でも屋ってことじゃないんですか?」
褒められて嬉しくないわけはないが、かといって便利屋と思われるのはあまり気持ちのいいものではない。斜に構えるつもりはないが、見ようによっては少なからず見下されているような感じが……って、もしかするとギルも、義賊として歓迎されていたことをそう思ったりしたのだろうか。
「だから、『ありがたい』と思ってるって言ったろ。冒険者ギルドは人を育てる場所じゃないからな。そう言う奴はどうしても少なくなっちまう。確かマギの孤児院じゃ青ランクの冒険者が育てることもやってるらしいが……まあ、大規模にやらない限り目に見えての改善は望めないってのは分かるだろ?」
「……まあ、はい」
教育水準の低さによる、冒険者の質問題。能力云々ではなく、生活環境の低さからくる話であるがゆえに、簡単には解決できない。
なぜなら、冒険者の大半が教養を身につける以前の生活を強いられているからだ。そんなものよりも、今日生きることが大切なわけだから、彼らにとっても優先順位は低い。教養などなくてもモンスターは倒せるし、人を殺すこともできる。貧民街に住む人々にも言えるだろうが、目に見えて分かる結果――極端に言うならスリに成功するか失敗するか、食べ物が得られるのかどうか――の方が彼らにとっては重要なのだ。そして、自分の生活圏を確保すること。殆ど生きるか死ぬかの問題に直結しているから、それを侵すものに対しては非常に攻撃的で、排他的になる。俺が最初に考えた信頼関係云々は衣食住が確保できた上での話であって、彼らはそもそもそこがクリアできてない。地盤が固まっていない上、騙し、騙されることに過敏になり、人を信用できない。
本来なら子どもを養い導くべき親もないまま、一人で、あるいは同じレベルで群れた結果が貧民街であり問題を起こしがちな冒険者の実態だ。奴隷として価値の低い者、職人にも商人にもなれず、ましてや学もなく、人々から持て余される者たちが集まっていった層。侮蔑的な表現をするなら社会の底辺、掃き溜めと言ったところか。
その部分を改善していくためにはそれこそ貴族や王が国を挙げてかかる必要がある。ジンがギルをスカウトしたいと思っていたように、個人のレベルでは行われているようだが……成り立ちのせいか実力主義の風潮が強い王国にあって、生まれ落ちた時から持っていた特権が奪われるのを嫌がる上流階級出身者もいるだろうことは想像に難くない。そして、上流階級でなくとも、彼らを見て蔑むことで日々の鬱憤を晴らしたり、溜飲を下げる市民たちもいる。冒険者たちが知識や教養を身につけることになればそう言う層の不満は本来向けられてしかるべき立場へ向くだろう。だから、冒険者の生活や教養のレベルが上がると、貴族たちは困るのだ。圧政を強いているならば特に。いつの世もそうだろうが、下克上を恐れている者はその辺りの調整を上手く行っているはずで、ガス抜きもしている。それとは別にしても、力の強弱は度外視するとして、モンスターの脅威と接する胆力のある人間が他の分野へ散ってしまうのは国としても避けたいだろう。
この問題は冒険者の育成だけでなく、力のある人間がよりモンスター討伐に意欲的になるような旨味――つまりは、身分を問わない『成り上がり』が可能であることが前提になければならない。冒険者稼業などせずとも日々の糧を得られるならばそちらへ、という人だっているはずだから。
その点で言えば、既に過去に外部からの圧力によって冒険者を守れなかった、という前例を作ってしまったことは組合にとっても国にとってもマイナスでしかない。真偽はともかく、非公式ながら国王が謝罪をしたという話が噂されてしまうのも頷ける。
ジンは言葉を続けた。
「君はマギの孤児院の依頼を受けて、無事完遂したんだろう? あれは乱暴者でなくて学があっても難しい依頼だった。何故なら経営者の二人は互いを愛しているからだ。彼らを受け入れることが出来なければ、どんな知識人であっても達成は無理だっただろう。……君のように実に『平坦な』物の見方が出来る人というのは冒険者でなくてもなかなかいないものなのさ。大抵偏見があったり先入観を持っていたりする。そうでなくても、特定の立場や誰かに入れ込んでいたりね。冒険者組合の職員でさえそうだ。ただ、彼らは冒険者出身で色んなものを飲み込んで来た分、表に出すことはあまり無い」
ジンの声にからかいの色は見えない。それどころかどこか真摯で、手放しで賛辞されているようなむず痒さを覚える。
「そんな風に持ち上げてもらっても、出せるものなんて何もないですよ。それに、俺だってそういう意識がないわけじゃないです」
「しかし、これまで依頼を請け負う際に、そういった部分を出さなかったのは確かだ」
社交辞令的にそっとジンの言葉に蓋をすると、ジンはそれ以上言葉を重ねてはこなかった。だが、彼の声がいつになく穏やかで他意のないもののように感じられた俺は、多分、今までよりはジンに対して構える度合いが低くなっているような気がした。……もしこれが意図的な流れだったとしたら、いよいよもって空恐ろしい。
じっとジンを眺めていると、彼の目が改めて俺を捉えた。
「ん? もしや俺の魅力に気付いちゃった?」
「いや、それはないですけど」
「それはそれでひどいなあ」
茶化す風にしたり顔をした彼に思わず否定を入れれば、あっという間に苦笑に変わる。めまぐるしい変化に、先ほどまでの空気はあっという間に消え去った。
「さ、早く戻ろう。君を独占してるとギルが怖い」
ジンが肩を竦める。俺も不機嫌なギルを相手にするのは勘弁なので、一つ頷いて即、足を動かした。
「熊は引き受けた! そっちに二匹任せる!」
「了解!」
近接武器での戦闘において重要なのはヒットアンドアウェイである。攻撃を入れた後はすぐに距離を取り、相手の攻撃をもらわないようにすること。魔法や遠距離攻撃が可能な武器を持った相手は、可能な限り真っ先に片付けておくのも大事なことだ。
王都周辺で出現するのは巨大ミミズっぽいワームテール、噛みつかれると毒をもらうことのあるビッグマウス、額に短くも鋭いツノを持つホーンラビットがメインだ。それに比べればやや低い出現度にはなるが、非常に攻撃的で、逃げても逃げてもしつこく追いかけてくるマッドベアや直ぐに遠吠えで仲間を呼ぶブルーウルフも出てくる。ブルーウルフはブラックウルフと毛の色以外はほぼ同じだが、ブラックウルフが単独なのに対して、ブルーウルフは基本的に群れで遭遇する点だろうか。
アドルフには最もレベルの高いモンスターを狙わせ、倒し終わって素材も剥ぎ取った後の死骸処理係となっている。リーオットさんの従える二匹のコカトリスと仲良く分け合っていて、賢くてなによりだ。
ジンとギルもアドルフと共に数減らしを優先させ、ロゼオとブルーノが低レベルモンスターを仕留める。俺とシズは後方支援で、タイミングを見計らって回復魔法や支援魔法で前線を支えるという具合だ。俺はアドルフへの指示もあるので、攻撃魔法は最小限に留めた。
「おらあっ!」
ブルーノがメイスを振りかぶり、二匹まとめてホーンラビットへ一撃。致命傷には至らなかったが、内一匹は角を折られ怯んだところをロゼオが鞭をしならせた。
パァン! と景気のいい音と共にホーンラビットが吹き飛ぶ。ロゼオはそのまま続けざまに二、三度打ち付けて止めを刺しにかかり、その間にブルーノがもう一匹の腹へメイスをぶち込んだ。……俺の部屋に来たのがロゼオだったら、もしや俺は鞭打ちに遭っていたんだろうか……いや、あまり考えないようにしよう。その場合俺はもっと寝込むことになっただろうが、それ以上にギルの制裁もあんな比じゃなかった筈だから。あれ以上の暴行の跡なんて想像するだけでも恐ろしい。
「……二人とも、あまり戦えないって言ってた割りに結構血なまぐさい武器だな……」
「元々盗賊狩りを主に行っていたんでしょう? 多分、対人戦を意識した結果じゃないですか?」
「そっか……まあ、そりゃあ人の方が怯みやすいとは思うけど……」
特にロゼオの鞭なんか、先制して武器を持つ手に当てることができればその後の戦闘も有利に運べるはずだ。盗賊なら重装備にはならないだろうから隙も多いだろうし。鞭は人間に対しては拷問にも使われたと言うし、処刑器具などとは異なり直ぐに死なないよう改良されてきたようだが、武器として用いる場合は刺が仕込んであったりもする。……だからその分、相手が死んでも構わないという気概で振るわれることを想像すると、かなり痛い。
ブルーノのメイスも杖の形状だが、先端はモーニングスターのように尖っていて、多分重くしてあるから、その重みのまま振り回せば結構な威力が出るはずだ。本来ならロゼオが怯ませた隙にブルーノがメイスである程度のダメージを与えるという連携なのだろう。
「モンスター相手だと決め手に欠けるけど、盗賊狩りの頃の役割を考えれば妥当か」
二人の武器の扱い方は中々堂に入っていて、及び腰になることもなく安定感がある。もしかするとギルがいるという安心感がそうさせるのかもしれない。俺は兎も角、シズの出番はなさそうだ。ないほうがいいのはいいのだが。
「ひゅ~っ やるねえ」
「腕は鈍ってなさそうだな」
あっさりとマッドベアを倒したらしい二人と一匹が声を上げた。死骸から売れる部位をサクサク剥ぎ取っている。ロゼオは自慢げに顔をつんと上げて見せ、ブルーノは少し照れくさそうに、しかし素直に笑った。
ズタボロになったホーンラビット二匹を、アドルフがばりばりと音を立てながらあっという間に平らげる。
「……食材の調達としては良いけど、皮とか素材の採集には向かない武器かな……」
それなりに戦えるはずの二人の貯蓄額が何故伸びないのか。その理由が分かった気がした。
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