異世界スロースターター

宇野 肇

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二章 Walk, and Reach.

淫ら満つる昼下がり

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 ユンフェミオさんの紹介で足を運んだ【白猫の額】は時計塔を中心とした広場に面していて、五階建ての、白塗りの綺麗な宿だった。ユンフェミオさんの名前を出すと、快く応対してくれて、『紹介』という者の力の強さを実感した。
 宿は内装も控えめながら、家具などは塗料とニスが塗られて重厚な感じ。飾り彫りが施されていて、和風な印象だ。使い古された美しさはあっても、メンテをきちんとしているのだろう、ボロさのようなものなどは全くない。
 宿の敷地は広く、裏手にはモンスター用の小屋も併設されていたため、アドルフはそっちへ移動させた。マギに入るまでに遭遇したモンスターの肉を食べさせているから餌やりは必要ない。水を欲しがるだろうから水の手配だけ頼んでおいた。

 そして、古くから営業しているマギ自慢の宿ですよ、と部屋を案内してくれた女の子に相槌を打った時までは、自分の中に燻るものから目を逸らしていられた。
「食事ですが、朝だけはこちらでお出ししてます。でも、食堂を開ける時間は六時から八時までですからお気をつけて。鍵は宿帳に記入していただいたお二人のサインから魔紋で認証しておりますので、ノブを握っていただければ開きますし、閉まるときは自動で閉まります。そのため、夜間の外出は制限しておりませんが、宿の中ではお静かにお願いします。なにかご不明な点があれば受付カウンターまでお越しくださいね。では、どうぞごゆっくり」
 にっこり笑ってお辞儀をした女の子に会釈をして、ギルがドアを閉めた。その辺で、ちょっと雲行きの怪しさを感じないわけではなかったけど、ふと装備だの荷物だの外套だのを置いて室内に目を向けると、良い景色が飛び込んできた。
 部屋は四階で、窓は時計塔の広場に面していた。大きな窓からはゼクスシュタインでは見かけにくかった空や、広々としたマギの街並みが見える。大きい建造物は学院や図書館、研究施設だ。
 吸い寄せられるように窓の方へ足を進め、軽く眺めを楽しむ。透明度の高いガラス窓の外側には木製の雨戸があった。レースのカーテンはどうみても遮光性はなく、雨戸は光を遮る他に、ガラスの保護も兼ねているのだろうと考える。
「ねえ、ギルもこっちに」
 来て、見てみなよ。
 そう言いたかった言葉は、思ったよりもずっと距離を詰めてきていたギルへの驚きで喉の奥へ引っ込んでしまった。びっくりするあまり肩が跳ねて、視線が上がる。
 しまった、と思ったときにはもう遅くて、俺を見下ろすギルと、ばっちり目があってしまった。
 ずく、と、痛みにも似た感覚が俺の中で生まれる。胸が跳ねるような、きゅっと縮まるような、そうなっているのはもっと、俺の中の奥まった部分のような。
「……耳、」
 読めない表情で、ギルが俺の耳の先に触れる。それにびくびくしながらも、うまく逸らせていたものが再び鎌首をもたげ始める。
 気持ちが凪いでいたのは少しの間だけ。今はまだ、水面が震えるくらいでしかないけど、きっと、すぐに時化のように荒れてしまう。
「もう赤くなってるな」
 笑みを帯びたギルの声と、指先がしきりに触ってくる耳先の感触と。優しそうにも、意地悪そうにも見える細まった双眸に、少しだけ上がった口角。その全てが俺の胸を甚振ってくる。

 そんなこと言われても、どうしていいか分からない。

 まだなにも始まっていないはずなのに、もうイきたくてたまらないほど気持ちは急いていた。
 今まではこうなる前にギルにされていたからなんとも思わなかったけど、する前からこんな風に……欲情、するなんて。
 腰に手を回され、引き寄せられる。もともと距離らしい距離もなかった俺たちの隙間は完全になくなった。そうして、いつも武器を収めたベルトやジャマダハルが既に外されていることを知る。
 や、ヤる気満々だ……!
 視線が下がる。密着した下腹部からギルの熱がじわりと俺に届く。……俺と、同じ。
「ヒューイ」
 名前を呼ばれて、ギルが俺を覗き込む。身じろぎしつつ視線を合わせようとすると、重なった場所が擦れて切ない快感が走った。
 多分、そのせいで情けない顔をしていたと思う。感じてる顔を見られるのはいつまでも慣れなくて、逃げるように顔を逸らした。
「……顔、すげえな」
 ギルの唇が顎を辿る。猫背になって、頑なに股間はくっつけたままで、俺の服を少しずつ脱がせていく。
「な、なにが」
「可愛すぎ」
 間髪入れずに返ってきた答えに毛穴が開くような思いがした。
「……抑えが利かなかったら、悪い」
「ん、んっ」
 緩やかにギルの腰が動く。どんな思考よりも真っ先に気持ち良さが勝って、俺はそのキスにあっさりと陥落した。

 もっと欲しい。したい。

 こみ上げてくる衝動に、自分からも腰をくねらせ、擦りつける。
「っ……ギル、ここ、じゃ……外から、見える……」
 キスの合間になんとかそう言うと、ギルは右手を俺の服の中に滑らせて乳首をこねながら楽しそうに口角を吊り上げた。
「見られるかも知れねえ方が燃えるか?」
「やっ…… べ、ベッド……」
 こんな真っ昼間からってこと自体が目眩がするほど信じられないのに、見せつけるように窓辺で、なんて上級者すぎやしないだろうか。
 ゼクスシュタインでは完全に個室だったから少なくとも人の『目』は気にしなくてもよかったけど、マギはそういうわけにはいかない。
 四階であるとは言っても、視力が良ければ十分見える。地上からでなくても、周辺の建物だって二階建てだったり三階建てだったりするのだ。どういう建物なのかまではチェックしなかったけど、人がいることは間違いない。見ようとしなくたって、見えてしまうこともあるだろう。
 尻たぶを勢いよく揉まれ、飛び出たのははしたないほどの嬌声だった。何時ものギルよりも少し乱暴かな、と思えるその力にさえぞくぞくしてしまう。――……激しくされたい、なんて。
 羞恥だけではなく身体が熱くなる。ギルの背後にある、窓がある壁面に閉口して置かれたベッドが遠い。三歩も行けば直ぐなのに。
「ギル……」
 最早縋り付きながら名前を呼ぶと、ギルが俺越しにレースのカーテンを閉めた。



 靴を脱ぐこともしないまま、膝から上をベッドに預け、押し倒される。早々に剥かれた上半身をまじまじと見下ろされて、俺は顔を覆い隠してしまいたかった。
「あ、あんまり見ないでくれない……」
「明るいとよく見えていいな」
 ギルはどこか楽しそうだ。今更なはずなのに、俺の身体を丁寧に眺め、愛撫していく。
 余裕があるうちにと浄化はしたから気兼ねすることはないが、お互い暗闇の中でも目が見えるとは言え、やはり明るい中で肌を晒すというのはなんとも言えない恥ずかしさがあった。
「ん……っ」
 それでも抵抗せずに、ギルの全てを受け入れる。拒絶なんてできるはずもない。俺の方がもう、されたくて仕方が無いんだから。
 俺からもギルの服に手をかける。ゼクスシュタインで服を新調した俺と違い、ギルの服装はあまり変わってない。元々は白かったのだろう、ゆるいYシャツに、ベスト。装備品の大半が収まっている、ホルスターと一体型の太いベルト。チノパンと、太ももにジャマダハル。足元は軍靴のような、しっかりした黒のショートブーツだ。
 チノパンの腰元はもうゆるめたが、Yシャツのボタンがなかなか外せない。固いのだ。
 ギルも、そんなのより集中しろとばかりにキスを仕掛けてきて、愛撫も相俟ってその気持ち良さに力が抜ける。思考までとろんとしてしまって、結局、半分も外せないまま股間を露出させられ、扱かれた。
「ああっ……」
 気持ち良くてどうしようもない。
 ギルのキスと舌で上半身さえも翻弄されて、じんじんと快感を生み出す乳首と下腹部が快感を共有して、あっという間に息が上がる。
「あ、……っぁ、ああ、ギル……」
 全部をギルに委ねて、されるがまま快感を受け止める。
「あぅ、イ……ぃ、くっ」
 信じられないほどの早さで射精への坂を駆け上がった俺は、下腹部に走る快感に酔い痴れた。二、三度びくびくと身体を震わせて、過ぎ去っていくものの余韻を味わい、息をつく。
 今までであったなら、ここで満足出来た。気怠さの中に冷静さが戻ってきて、頭を切り替えることが出来ていた。……のに。
「ギル……」
 緩く俺を扱いて残滓まで出してくれているギルに呼びかけると、何度か軽くキスをされた。吸盤が離れるときみたいに、唇が引っ張られる。舌で舐められて、軽く歯を立てられる。それが気持ち良くて、興奮は全然収まらない。
 ……むしろ、射精したことで欲しかった快感がはっきりと分かり、そこを擦って欲しくて仕方が無かった。
 射精だと直ぐに終わってしまうその快感は、中から擦られると、その分だけ気持ちいい。終わりがない。
「……どうされたい?」
 意地の悪い囁きにも、恥じらうより先に言葉がついて出た。
「中……うしろ、から……入れて……擦って……」
 間近にあるギルの顔。一瞬目を合わせるも、言う内に恥ずかしさがこみ上げてすぐに外してしまった。
「分かった」
 ギルの吐息が熱い。くすぐられた首元からぞわぞわとしたものがこみ上げて身をすくめていると、ころんとうつ伏せに転がされた。
 膝から下はまだベッドの外だ。上からクレーンゲームみたいに持ち上げられて、膝を付くように言われる。
 腕に引っかかった服のせいで身動きが取れない。
 下も、膝よりもわずかに上までズリ下げられただけで、一定以上足が開かない。
 縛られているわけじゃないのに似たような状況になっていて、俺はひくつく窄まりをギルに突き出すようにして四つん這いになった。
 ギルの手が尻たぶに当てられて、両手の親指が俺の穴を解すように何度も押し当てられる。それが時折窄まりを暴くように左右へ動くから、ひくりと力んで、動かしてしまう。
 ふ、ふ、と浅い呼吸を繰り返し、ギルの指を待つ。浄化はまとめてしたから大丈夫だ。
「っ! ああっ」
 しかし、門に触れたのは指じゃなかった。
 ぬるぬるして、暖かくて。柔らかく門に触れながら、時折力強く突き入れようとしてくる。――舌だ。
「やだっ、汚いって……!」
 分かった瞬間に腕をついて勢いよく上半身を起こし、下半身を引き上げようとしたが、出来たのはそこまでだった。
 湿ったギルの指が追いかけるようにして入り込んできて、摩擦を生む。
「んやあっ」
 やっと入ってきたものに身体が喜び、背がしなる。
 ずくりと差し込まれた指はそのままに、もう片方の腕が腹へ回され、そのまま、またベッドの縁まで戻されてしまった。
「逃げるなよ。いたぶりたくなる」
 何かを押し殺したような声に、ギルの指を咥え込んだ場所がきゅっと疼いた。
「だ、て……汚い……」
「汚くねえよ」
 ギルが微かに笑ったのが分かった。同時に、ゆっくりと指が抜き差しされる。解すような動きが焦れったく、駄々を捏ねる子どもみたいな声が出た。
 焦ったさにあられもなく腰をくねらせ、お尻を振りながら先を待つ。ギルの指がジェルを絡めながら二本、三本と増えて行き、時折引き抜かれて舌が入ってくる。ぬるりとした舌のくすぐるような動きは俺の羞恥心を煽るには十分で、ぬるりとした感触に足の付け根が引き攣って何度もわなないた。
 でも、舌は指のもたらす摩擦ほど長さはなくて、指は俺の中の良い場所を押してくるが、まるで足りなかった。
 気持ち良くない、わけじゃない。でも、もっと……ぼこぼこした、脈打つ、熱い杭が欲しい。
 卑猥な音を立てて拡張される穴はいい加減解れただろうに、ギルはそれでも念入りに指を動かしていた。
 そろそろ指がふやけてるんじゃないだろうか、なんてふと冷静さが戻ってきて、きゅっと、ギルの指を締め付ける。
「も……もう、いいからっ……して……」
 精一杯振り返ってそう言うと、ギルは俺の中から指を引き抜いた。
「……入れて直ぐに出しても文句言うなよ?」
 確かに笑みを乗せた声は、捲し立てるような速さで紡がれた言葉のせいで余裕の欠片もないことがよく分かった。
 柔らかくなったそこに、ギルの硬いものが当たり、直ぐに入ってくる。その質量の違いに快感がほとばしり、俺はあまりの刺激の強さに身体がふっと浮いたような気がした。
「ああああーっ!」
 ぱちゅん、とギルと俺が一つになって、肉がぶつかる。その拍子に、俺の奥で生まれたびりびりとした快感が頭まで突き抜けていった。
「ぅぐ、あ、あ、」
 頭の中がじんじんして、下腹部はお風呂の湯くらいの熱がゆっくりと染み渡るように広がっていく。そのどちらもが気持ち良くて、ギルの大きさに漸く満たされる。
 絶頂の後の余韻に浸っていたのは、俺だけじゃなかったらしい。
「はっ……お前の中、最高」
「おれ、も……っ ギルの、きもちい、っあ」
 ギルが腰を引き、ずるりと抜け出ていくそれにゾクゾクする。俺の中で既に一度目を出し切ったらしいギルの熱は、どくどくと胎動するように自己主張をしながら、一向に収まる気配がない。
 尻たぶを揉むように掴まれて、ギルが自分の腰の動きに合わせて俺を引き寄せる。高さが丁度いいのか、動くのは楽そうだった。
 がつがつと中を掘られて、嬌声を垂れ流す。門が押し広げられると驚くほど鋭い快感が生まれて、きゅうっとそこが締まる。
 多分体勢が悪いのだろう、中は上手く当たってなくて、手をつき上半身を持ち上げる。と、ちりちりとしたもどかしい快感が中でも花開き、俺の腰から支える力を奪う。
 まだ自分でどうにかできる範囲だから、自分から腰をくねらせ、一番良い位置を探る。
「絶景だな」
「んっ……んん、ぁ、あっ」
 ギルが俺を見下ろして、肩から背中、そして尻たぶまでをさっと撫でる。その手に合わせ、俺の背は波打つように蠢いた。
 服の上からじゃもどかしくて脱いでしまいたいけど、今起き上がればギルを締め付けてしまうのは明白だ。
「ギル、ふく、ぬぎたい」
「ん……その前に、もう一回抜く」
「え? っ、あ、ぁんっ」
 引き寄せられ、硬く猛るそれで貫かれる。そのまま強くお尻を掴まれて、されるがままに犯された。
「ああんっあっあっああっまっ……ああああっ待って、えぅっ、あああああんっ」
 がくがくとギルの動きに翻弄され、上半身、そして頭が揺れる。
 ギルが腰を打ち付ける音が強い。
 今までになく荒い動きに痛みが混じり、怖さが湧いて出る。だが、それよりも、そうされて興奮している自分に驚いた。
 ……どれだけ欲求不満だったんだ!
「ふああっ、あんっあっあっあっ、あっ、あぅ、」
「悪ぃ……も、っ出る……!」
「あああ……っ!」
 揺さぶられるまま、容赦無く快感を拾う自分の身体を叱咤すれば良いのか、感謝すれば良いのか。
 門だけでも気持ち良くて、俺はぐっと膨張して深く突き刺さったギルの鼓動を感じながら、漏らしそうな快感に一度、力を抜いた。
 少しの間、息遣いだけが部屋に満ちる。

 先に息を整えたのはギルだった。
 ひくついて、放したくないとばかりにギルを締め付けているだろう俺の門から、ゆっくりと熱の引き掛けたそれを抜く。硬さの取れたそれは、硬い時とは違った感じで門を擦って、俺のそこから、名残惜しそうに出て行った。
 ふるる、とギルからは分かるかどうかというラインで身体が震える。その間にまたクレーンゲームよろしくひょいと持ち上げられ、そのまま引っくり返された。見上げると、さっきまでの勢いを思わせるような空気はなくて、平時ほどではなくても幾分か落ち着いたギルが見えた。
「ぎ、んむ」
 名を呼ぶより先に、唇を塞がれる。くちゅ、と水音が響いた後は、優しく舌で口内を愛撫された。その動きの遅さに、荒々しさは微塵もない。
 ギルの手が俺の肩にかけられ、そのまま服を引っ掛けて二の腕へ落ち、上を脱がされる。それが終わると今度は靴を脱がされた。ズボンも脱がされ、一糸纏わぬ姿になる。
 足を引いて漸く身体全部をベッドへ上げることが出来た。
 自分で脱ごうとするギルを止めて、今度こそ俺がきちんとギルの服を脱がせていく。靴はベッドの上からでは無理があったが、チノパンを膝下までずらすと、ギルは自分で靴を脱いで、豪快な動きで足を脱ぎ去り、ベッドへ上がってきた。そして俺の顔を覗き込み、唇を押し当てる。
 全裸になったギルの芯は、一応の収まりを見せていた。熱を装填するには時間が要るだろうと、そっと、優しくギルの下腹部に触れる。初めは柔らかな姿でぶら下がるそれを撫でていたが、折角だからとその悔しいくらい豊かな黒髪を、指先で梳くように撫で下ろす。
「はっ……ん、痒い」
 微笑ましそうなギルの声が俺たちの間に落ちる。それでも止めずにいると、乳首を触られた。
「は、んっ」
 ぴくんと跳ねた肩に、俺の手が止まる。でも負けじと直ぐに手を動かす。ざりざりと、縮れた毛を梳いて、そのままぶら下がった肉を優しく撫で摩る。
 唇をべとべとにして舌を絡ませ合いながら、お互いにもう一度身体を焚きつける。
 その技術は、どうやらギルの方が上だったようだ。
 俺はギルの愛撫に前を滾らせ、唇に負けず劣らず、袋ごと持ち上がったそこを濡らしていた。
「も、あ、ギル、俺……」
「俺はいいから、もう一回、ちゃんとやらせろ。さっき大して良くなかったろ」
 ゆっくり押し倒されつつも、どうして分かるのかと思ったのが顔に出ていたらしい。ギルは手の甲で俺の頬を撫でた。
「声で分かる」
 そして、ギルが脱ぎ散らかした服や装備品から取り出したのは、軟膏タイプの傷薬だった。それをさっき瓶半分ほど空けたジェルと絡め俺の股座へその手を潜らせる。足を上げると、またそこへ指が差し込まれる。丁寧に塗り込まれて声を上げると、ちらっと見えたギルの股間がまた起き上がり始めていた。
「もうならさなくても大丈夫だって」
「そうか? こっちを触ってやるより良い声だがな」
「ふあ!」
 くりくりっ、と指先で膨らんだ先の首周りを弄くられて足を閉じる。と言ってももう上手く力がないらないから、弱々しく膝を寄せただけだ。
 ギルに当たらないように高く上げた足先。そのせいで簡単に膝裏を掴まれて、そっと開かれる。膝を軽く曲げてベッドに足裏をつけると、ギルが軽く自分のを扱いて、俺のぐちゃぐちゃになってるだろうそこへ先端を当てた。
「んぁっ……」
 既にギルの大きさに慣れたそこは、あっさりと飲み込んでいく。さっきよりも穏やかな快感は、けれど、中を擦る強さのせいで俺の中を溶かしていく。
「はあっ……ん、んん、ぁ……ぁ、あっ」
 三歩進んで二歩下がるような動きで中を探られ、いい所にギルの先が当たる度に声が漏れる。ひくひくと動くのは腹筋なのか尻穴なのか、それとも中なのか、もう分からない。
 ゆっくりとしたピストン。両手を絡めて、俺の様子を伺いながら腰を動かすギルを見上げる。揺らされる都度ふわふわした感じに包まれているようで、でも痺れるように生まれる快感が眠るよりも性欲を優先するように俺を叱りつける。
 ギルの股間と俺のお尻がぴったりと重なると、ギルは俺を抱き寄せて、そのまま抱っこするようにして起き上がらせた。瞬間、自重で深々とギルのものが俺の中に収まって最奥に触れ、脳味噌まで快感の槍が突き刺さるような感覚に見舞われた。
「っ、ふ、ぁあああああっ」
 ずん、と当たるそれが気持ちよすぎて、泣き叫ぶような声が出ていく。第一波が過ぎ去り顔を下へ向けると、だらしなく精液を漏らす自分のものが見えた。
「そう、その声だ……」
「ふゃんっ」
 下から突き上げられ、あまりの快感の強さに意識さえ奪われそうになる。
「あ、ああ、あ、ギル、だめだ、おれ、おれっ」
「良いんだろ? っ……全然違う、なっ」
「ああうっ、ああっはあああんっ」
 力が入らなくて、ギルに抱きしめて貰ってないとくずおれそうだった。ギルをぎゅっと締め付けて喜んでいるはずなのに、快感が生まれているまさにそこでは弛緩しきっているような。
「ああっ……は、んん、ぁ、すご、ふっ……か、い」
「奥……良いんだったよな」
「ひあ!」
 自分の足で踏ん張れなくて、目一杯ギルに体重を預けてしまう。その状態で優しく、小さく腰を突き上げられ、上下に揺さぶられて目の奥がちかちかした。
「あ、あう、」
 あまりの感覚に、ほとんど反射でどうにかして逃げようとするのに、ギルはしっかりと俺の腰を掴むから腰をぎくしゃくとくねらせるしかなくて、どう動いても気持ち良くて、目元が熱くなった。熱い涙を、ギルが舌で舐めとっていく。奥でギルに突つかれて喜んでいる場所が仕切りに彼を締め付けている気がする。それで擦れているみたいで、また気持ち良くて。
「う、ふあっ、あ、もうっ、も、っく、ぅん! ……は……おわっ、てえ……っ」
 切なくて、イきたくて、イきそうで。
 足の付け根が何度も足を閉じるように痙攣して、そうすると快感が走って力を緩めてしまう。その繰り返し。
 最高に気持ち良くて、イけなくて苦しい。でも、欲しかった快感が得られたことが嬉しすぎて、まだこのままでいたい気持ちもあって、胸が張り裂けそうだった。
 狂ってもいいから、どうにかなりたい。そう思うほど強烈な刺激。
「どうされたい?」
「おくっ……もっと、あてて……! んっんっ、うごい、て……なか、こすって……っ」
 囁かれた言葉に対して、真っ先に出たのは素直な欲求だった。恥ずかしいとか、いやらしいとか、そんなことはもう捨て置いて。
 気持ちいい。気持ちいいけど、もっと欲しい。
 子どもをあやすようなギルのキスを受け止めながらそう言うと、抱きかかえられたまま、またころんと寝かされた。わざと大きな音を立てて唇をしゃぶられ、背中と腰に回っていた両手は乳首を引っ掻いて身体が大きく飛び跳ねた。
「ひあああっ」
 枕に頭を預けて、ギルの手を追いかける。大きくて黒い両手は、俺の腰、骨が出っ張っているあたりで止まると、今度は腰が動き始めた。
「んゃあ……」
 ギルの膨らんだ先が、俺の中にある良い場所を引っ掛けて出て行く。出て行った後はまた入ってきて、今度はごりごりと押すようにして中へと突き進んでいく。
 ゆっくりだったのは一、二回だけで、そこから徐々に早められていく律動は、まるで発電するみたいにして俺の快感を生み出した。
「あっあっあっあっ、っあ、ああっ、は、はあっん、あ、ああ!」
 前を触る余裕もなく、触らなくても中だけで、後ろだけで快感の波が、より大波になるべく引いていく。
 足裏がやけに熱く感じられ、一方でどこか冷えていくような感覚を覚えた。
「あ、ああぁああぁあぁあ……っ、あ、っくる、いく、イくっ」
 ぎゅっとその感覚が強まり、そして一気に熱となって俺の身体へ広がる。
「い、っぁ、あ、――っ!!!!」
 快感がほとばしる。波打ち際に寝転んでるみたいに下腹部から頭の上へ、何度も快感が抜けていく。それに合わせて肌が粟立っていくのが止まらない。
 そして、止まらないのはギルも同じで。
「ああああっ、んゃあああっ」
 絶頂の最中に更に突き荒らされて、俺は声を出すことでしか快感を逃がせなかった。
「やああっあああっ、ぎる、ぎ、ぁ、ああああっだめ、またっ……ぁ、いく、いっ……あ、ああああああ……!」
 揺さぶられ、再び大きな快感の波に飲まれる。下半身が溶けてなくなったみたいに気持ち良くて、熱い。
「やっ……、も、もあああああっとま、とまんな……いっ、ひ、ぁあああああああっ」
 がつがつと快感が俺にぶつかってくる。腰から下に力が入らない俺は、ぶつかってくるギルの勢いに押し流されて、そのまま、なにもかも溢れるような感覚を覚えながら一番大きく、うねる荒波の中に溺れた。
「  、 、   」
 自分の声が遠くてよく聞こえない。いや聞こえているけど分からない。寒気にも似た鳥肌が止まらない。頭の中も外もぞわぞわして、気持ちいい。
「    ……、  、  、  っ」
 ギルの声も遠い。
 でも、ギルの声の後に快感が強くなって、俺は固く目を閉じた。

「      ――!」

 一際強く突かれて、ギルの動きが止まる。
 俺の鼓動とギルの鼓動が俺の中で重なって、そこから流れてくるように身体の隅々まで広がる優しい熱に、ほう、とため息が零れた。
 目を開くと、熱と快感に、どこか宙に浮いているようだった思考が戻ってくる。
 ギルは最後に少しだけ腰を怪しく動かして、俺の中から出て行った。
「……すごかった……」
 未だ完全に思考が回らないままそう呟くと、ギルが少し笑った。
「大丈夫か?」
 俺を覗き込んでくるギルの眼差しは柔らかくて、こっくりと頷きだけを返す。でもまだ力が入らないと言うと、横抱きにされて風呂場へ連れて行かれた。
 値段も相応の宿には小さいながらも浴室が備え付けられていて、多分ゼクスシュタインと同じく循環式になっているのだろう、見た目だけは掛け流しのように見える浴槽に浸けられた。当然、ギルも一緒に。
 身体を現れ、心地の良い手つきにうとうととし始めた頃、ギルの右手の指が散々使った俺の穴へ伸びた。
 く、と息を詰めると、左手で宥めるように腹部を叩かれる。
「後始末は必要だろ?」
「……んなの、魔法で……」
「生憎俺は魔法とは縁がない」
 何やらとんでもない爆弾発言をされた気がする。
「魔法ダメなの?」
「ああ。生まれつき使えないな」
 そうなのか。じゃあ、今まで後処理とかいろいろ俺がしてたのって、別にギルがやるのを渋ってたとかじゃないのか。
 胸の中で複雑に絡んでいる糸が、一つほどけた。
「んぅ……はっぁ、やだぁ……」
「染みるか?」
「ちが……ふぁああっ」
 ギルの指があっさり中へ潜り込み、ほじるように動く。丁寧に掻き出されているせいで、また甘い快感が俺を突き刺し、溶かしてくる。
「やあん……っ、ギル、も、いいからぁ……」
 際限なく熱を持つ身体に窮しながらも口だけで抵抗する。力が入らないからそうするしかないのだ。
 それでも抵抗より嬌声の方が割合を占める俺の声など、ギルにとっては火に油でしかない。ギルは黙ったまま石鹸を取り、それを俺に塗りつけた。
「やああああっ! もう無理だって……!!」
「嘘つけ、後ろならまだまだイけんだろ」
 口先だけの抵抗に効力は皆無で、俺はそのまま風呂場で更にギルに鳴かされることになった。
 いくら溜まっているとは言っても、ギルが出すのはもう四回目だ。三回目でさえあんなに長かったのに、四回目なんて……!
 そう危惧した通り、風呂場での秘め事は三回目よりもずっと長くて、どうにか風呂から上がり身体が動くようになる頃には、日没はもうすぐそこまでやってこようとしていた。
 ギルは、溜めさせちゃダメだ。
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悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!? ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。 「お父様とお母様本当に仲がいいね」 「良すぎて目の毒だ」 ーーーーーーーーーーー 「僕達の子ども達本当に可愛い!!」 「ゆっくりと見守って上げよう」 偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。

転生したら、ラスボス様が俺の婚約者だった!!

ミクリ21
BL
前世で、プレイしたことのあるRPGによく似た世界に転生したジオルド。 ゲームだったとしたら、ジオルドは所謂モブである。 ジオルドの婚約者は、このゲームのラスボスのシルビアだ。 笑顔で迫るヤンデレラスボスに、いろんな意味でドキドキしているよ。 「ジオルド、浮気したら………相手を拷問してから殺しちゃうぞ☆」

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