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二章 Walk, and Reach.
キャラバン(3)
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アルカディアにはモンスターがいる。どこからともなく湧いて出るそれらの脅威は、戦う力も術もない者からすれば絶望にも等しいだろう。野生動物でさえ威嚇の時点で既に恐怖を感じるのだ。動物と異なり、こちらに敵意があろうとなかろうと襲いかかってくるモンスターと共存することはできない。スキルであっても、全てのモンスターを統べることは出来ないのだから。
一方で、見方を変えるとモンスターという存在は、狩ることさえできれば無限に湧き出る資源である。野生動物が狩りつくされることがないのもモンスターによるところが大きい。モンスターは動物を襲うことがなく、人類――ヒトを含む、森の民のエルフ、鍛冶に秀でた地下の番人ドワーフなど、二足歩行ができて言葉を話せる者たち――のみを敵視するために、資源を貪りつくせる存在に世界が絶えてしまわぬよう神が遣わした御使いであるとみなされることもあるくらいだ。
とはいえ、神の使いであろうが誰しも死ぬのは嫌というものだ。
城郭都市であれば襲撃などは物理的に跳ね除けられるし、そうでなくとも各都市ごとにある神殿が、モンスターの持つ悪意――『魔』を遠ざけると言われている。その力は強いが、各都市の規模の大きさも相俟って、効力が届くのは城壁の周辺までが精々だ。
では、格差によって城壁を取り囲むように暮らす人々はともかく、ある程度離れた場所で村を形成している人々はどうか。
実は村ごとに神々を祀る祠があり、村を囲むようにしてモンスターを避けている。神々の力、そのものズバリ『神力』は人々の祈りによって強化されるため、アルカディアの住人にとって祈りを捧げることは生活に根ざした、とても近しい行為なのだ。
と、いうようなことを教えてもらった。
エルフたちも贄を捧げたり、食物に感謝の祈りを捧げたりしていたが、人間の信仰の形とは少し違っていたから祠もなかったし、清めた魔晶石で『魔』避けを行うだけだった。
ゼクスシュタインへ向かう途中に立ち寄った村々では俺が起きる以上に村人達は早く起きて活動していたから気づかなかったようだ。小さな村ばかりだったし、祠は墓石なのかと思っていた。そういえばアルカディアの弔いってどうするんだろう。幸いまだ誰かの死に立ち会う機会も予定もないが、独特のものがあるのなら知っておいた方がいいかもしれない。
まあ、今は旅の途中だからそんな話を自分から振るような真似はしないけど。
「ヒューイってほんと、びっくりするぐらい知らないこと多いよね」
悪意のないシズの声にため息が漏れた。俺が知っていることは『Arkadia』のシステムや世界観であって、現地人の常識だの文化だのには全く明るくない。イベントでそういうことに触れる機会はあるのだが、俺は生憎、遺跡に潜ってお宝を探したり、ダンジョンを踏み荒らしてボスと戦いまくったりと、樹生と一緒に暴れまくっていた。2年も遊んでいたが、俺たちの興味は大体がよりプレイヤースキルを磨き腕を上げることであり、上級スキルの発見であり、大技をぶっ放して脳汁を垂れ流すことに絞られていた。モンスターをさくさく倒したり、一網打尽にする爽快感は、繊細なガラスの彫刻にハンマーを振り下ろすような、トランプタワーを思い切り崩すような、そんなたまらないゾクゾクをもたらしてくれるのだ。そしてそれは、レベル上げという努力によって確実に得られるのである。やらないわけはない。
「面目無い」
ゲームの遊び方なんてユーザーそれぞれだ。だからプレイヤーとしては何もおかしくはないのだが、ここが”現実”である以上、俺はただの社会不適格者である。ある意味ならず者以下だ。ギルは聞いたことについてはきちんと答えてくれるけど、あれもこれもと喋るタイプじゃないし、先回りをして教えてくれるタイプでもない。普通、常識なんてものは周囲の環境から自分の中に蓄積されて行くものであるから、一定の共通認識があって然るべきであり、そんなものをわざわざ教えてやろうという人間の方が少数だろうから、別に恨んでるとかそういうことはない。
2年分の知識は魔法技術以外空回っており、ゲーム用語なんかぽんぽん出したって現地人からすれば妄言でしかないため、俺は徹底して無知であることを強いられていた。辛うじてモンスターの識別や弱点、倒し方のコツ、世界中の都市の特徴といったことは知識として披露出来たが、"実際に"対峙したことや行ったことは無かったからか、箱入りというレッテルを貼られるのは避けられなかった。『都会に憧れている田舎者』とならなかったのは俺の所作がそこそこ上品であることと、それよりなにより常識に欠けるという点があったからだ。初めてアルカディアで接触したのがエルフだったのも、今無知を露呈している要因の一つだろう。
エルフに世話になっていたことくらいは話していても問題はないから、俺が人間のことをよく知らないのはそのせいである、ということにさせてもらった。実際フィズィにあれこれと教えてもらったことは殆どエルフとしては出来て当たり前のことばかりだったし、エルフは他の種族との交流を積極的には持たないから、エルフ色に染まっているというのは嘘ではない。
だが、俺はエルフではなく人間だ。人間である以上、人間に則した感覚や常識を持っていると思われるのは当然である。そこに俺の事情は関係ないのだ。
ゆえに、恥を忍んで教えを請う必要があるわけで、人間の――特に一般人の持つ――常識を知り、身につけることは急務だった。
「はい、1オボルスね」
「……ん」
差し出された手のひらに小銀貨をのせる。綻ぶシズの顔は愛らしいが、その分だけ自分の常識のなさを痛感させられる。
祠の件を皮切りに、シズはあれこれと俺を試し始めた。シズの常識的な質問に答えられなければ1オボルスを払い、それを情報料としてあれこれ教えてもらうゲーム染みた流れが出来ていた。
単語帳をめくるような感覚と金銭のやり取りが発生することによる適度な緊張感は俺の集中力を嫌でも高め、自分でも驚くほど吸収率は良かった。塵も積もれば山となる。身ぐるみを剥がされるのは勘弁願いたいという一心だった。
シズからあれこれテストされるのは休憩時間だけだし、稼ぎからすれば微々たる支出だが、社会に適応するための必要経費が何故か痛い。
人間とは社会的動物である。他者からどう見えるかはともかく、実際のところ俺はただの小市民であり、社会不適格者として生きる覚悟もない。
これは人間として生きるための通過儀礼だ。そして、今まで『Arkadia』で楽しく暴れまくり魔法をぶっ放し、脳汁垂れ流して快楽主義を貫いてきたツケを払っているだけなのだ。ケツで払わなくていい分マシだと思わねばなるまい。
そう念じながら、時折かかる冒険者たちからの冷やかしの声にも負けずにシズに挑み続けた。
隊商に参加して良かったと思うと同時に、今までの日々の中で、密に人と関わり合うことがなかったのを思い知らされたのは言うまでもない。マギに着いたら、もう少し街中での依頼に目を向けてみるのも良いかもしれない。モンスターを倒して稼ぐ方が遥かに実入りはいいけれど、探し人がいる以上ハブられるのは困る。
人間、痛い目を見なければ見えてこないことがある。そういうことにしておこう。
その日最後の休憩時間……という名の野営準備と、夕食中行われた怒涛の質問が終わってティーピーに潜り込む。シズは日中にあれこれ俺を試した日は、夜は休むことにしたようだ。性にまつわるあれこれも、教えたからには覚えているか試すとばかりの質問リストに盛り込まれた。搾り取られるのは精液だけで十分なんだが……全く、アルカディアの人々は強かだ。ギルの集りでさえ咎めない俺の方が悪かったのではという気になる。
生きるために貪欲であることは恥じることではない。そういうことなのだろう。
「金を溶かすような時間だったな」
アドルフは外に待機させ、久々の二人きりの空間にほっとしていると、ギルがそう呟いた。無駄遣いと言いたいらしい。ドブに捨てるって奴だ。
「……とことん俺が世間ずれしているのが今の段階で分かったのは良かったと思うけど」
「あいつを買うのか?」
シズは、今のところ俺たちの求めるものを持ってはいない。まだ15だから能力的に伸び代はあるだろうが、俺もギルも、物を教えることに向いているかどうかは全く未知数で、やって覚えろと放置するタイプのように思える。
しかし、シズがなにくれとなく世話をしてくれるから助かっていることも事実だ。そういう意味では彼は有能であり、買うこともプラスになるかもしれない。即戦力は欲しいが、俺やギルが伏せておきたい事情を漏らさないような信頼できる人は直ぐには見つからないし、そんな関係は直ぐには築けない。だったら奴隷を育てた方が安心はできる。奴隷に掛けられた隷属魔法は、購入者と奴隷商の間で強度やオプションを設定できるのだ。俺たちの場合なら秘密厳守とか。
これは反抗すれば即座に隷属魔法による罰が与えられる条件の設定でもある。買主に暴力を振るわない、など基本的な部分は皆同じだが、個別に命令された場合はこの限りではないという文言を追加することもできるようだ。犯罪奴隷の場合はそういう自由度はぐんと下がり、がちがちに行動制限されるようだが、買主を守るために暴力を振るうことは見逃されているようだ。隷属魔法は対象の肉体は勿論、場合によっては心を支配する物であり、その心や目的によって、いくらかの例外がある。その例外も、隷属魔法を受けた者の心に反応することによって生まれる物であり、下心や反抗心があると意味がないため、実質、穴はない。その心の方も、実際に行動として現れない限りはセーフだそうで。隷属魔法はスキルの中にも幾つかあったが、奴隷用のような持続性があって、時間や条件で解けない類のものは王に認可された者以外の行使は許されていない。ここは奴隷商と同じだ。
シズを得ることでリスクが増すことはない。金貨がいくらか飛んで行き、その後の生活費がかかるくらいか。家事全般を任せるのもアリといえばアリ。
つまり、結局は俺がシズに対し責任を負うことをためらっているに過ぎない。シズの場合、ギルが奴隷になるのとは違って、そこから解放することもできる。だが、シズに一人で生きていけるだけの力を持たせる必要があるだろう。それが人としての責任というものだろうし。それに、奴隷のままであっても、俺やギルは明日どうなるか分からない身だ。そして俺は、自分の実力がこの世界でどんな風に位置付けられるのがまだ知らない。金銭的にではなく、奴隷を買う余裕があるのかどうか、客観的な判断ができない。
俺個人としては、俺自身に余裕がないから気が進まない。
【宵朱】としてはどうか。というと、結論は出ている。シズを買うのはなんのためなのか? 必要なのか? その問い掛けには、特に必要はない、と答えられる。二人と一匹で十分やっていけているからだ。
前向きに検討したいと言ってしまったのはやはり、情が移ったからとしか言いようがない。
「ギルは? どう思う?」
「持っていて悪いってことはないだろうな。要は何をさせるかだ」
「だよね……ギル、何かシズに仕込んでやれるようなことってある?」
「戦い方は俺じゃ参考にならねえだろうな」
そっか。ギルの戦闘能力ってそもそもギフト補正かかってるんだった。
「他にもなくはないが……その仕込みをするなら、まずお前からがいい」
「え?」
ギルの手が伸び、引き寄せられる。強制的に寝具を一つに纏められて、ダブルベッドのような広さの布団の上で、俺の身体はギルによって絡め取られた。ギルは胡坐をかくような体勢で、俺はその股座に捕らえられる。
……シズの話からどうしてこうなった?!
「え、ちょ、ギル?」
「俺が他に心得があるのは盗みと騙しと殺しと……あとは教えられるってことなら、俺の誘い方くらいだな」
ギルは俺を腕の中に囲いながら、慣れた手つきで腰元から手を潜らせてきた。暖かくて大きな手が背中を撫で始める。
「シズはもうそういうのは覚えてたみたいだしっ それにギルに限定するなら意味ないんじゃ」
「前三つはお前嫌がるだろ。最後は俺も、そもそもお前じゃないと意味ないしな」
「……つまり?」
「何もない」
ギルにしては珍しい遠回りな発言は、俺をからかったようだ。くすりと笑みを零した後は、すぐにキスで唇を塞がれた。
久しぶりの二人きりでの空気に、甘く胸が疼き出す。まだキスなのに、ギルから香る匂いと暖かさだけに集中出来てしまうからか、一気に身体が熱くなる。でも、何処か気持ちは穏やかだ。唇の柔らかな感触に下腹部にちりちりと熱が篭っていくのに、先に進みたいと突き上げてくるような欲求は湧いてこない。
ずっとこのまま、この心地よさを味わっていたいと思う。だから自然と、俺からも唇をくっつけた。
ギルも俺を煽るようなことはしてこない。俺の後頭部を包むように右手を添え、左手は頬へ。右は緩やかにうなじへ滑らせつつも、メインはあくまでキスで、優しく、甘く唇に吸い付いつくのに集中する。
俺も顔の角度を変えながら、鼻先をこすり合わせた。手はギルの肩に置いていたが、首に回して距離を縮めた。そっと力を込めて密着する。ギルの吐息と俺のものが混じって、このまま一つになって溶けるようなイメージが頭の中を巡り、抜けて行った。
時折漏れてしまう声はくぐもっていながらも甘えるようで、ギルにはどう聞こえているのだろうと考える。自分が餌をねだる雛鳥になったような気さえして、ギルに寄りかかった。
「ふ……」
呼吸を整えるためか、言葉を発するためか。どちらともなく離れた唇を、名残惜しそうな息が追いかけた。ほう、と出たそれはため息にも似て、しっかりと目を開けると、ギルが……色気と優しさの滲んだ、とでも言えば良いのか、甘ったるい顔をして俺を見つめていた。優しいだけじゃない。色っぽいだけじゃない。どちらをも含んだその表情は、俺の中に穏やかに溜まった温もりを沸騰させるには十分だった。
幸い瞬間的に沸いただけで済んだけれど、まさかギルがこんな顔をするとは思わず、胸が一気に早鐘を打つ。
「……ギル?」
「いや。……シズの件だが、お前がしたいようにすればいい。俺はどっちでもいい」
額がこつんとぶつかり、そのまま、まるで動物が挨拶するみたいに頬同士をすり合わせ、鼻先を当ててくる。唇が肌を掠めて行くが、キス未満のそれは俺の胸を刺激することはなく、俺は爆発しそうな心臓を宥めることができた。
「……でも、何をさせるか、」
「あいつ基準で考えなくてもいいだろ。お前は人を使うことを覚えた方がいい。そのための訓練として買えばいい。なんでも一人で出来るってのは都合がいいが、一人でやるにも限界があるだろ」
俺の頭を優しく両手で包んでそう言ったギルに、俺は不思議とそれもそうか、とはっとした。
確かにここは"現実"で、実際に目の前に迫った盗賊たちや、同業者の武勇伝、シズが奴隷商の補足付きながらも聞かせてくれた奴隷制度の話を聞いてすっかり入れ込んでしまったが、ゲームのシステムが生きているのだ。もしそれがここでも生きているのであれば……スキルを、覚えることも可能だ。
購入し資産とした奴隷たちにはいろんな仕事を割り振ることが出来る。向き不向きはあるが、長く続けさせれば自然と熟達していくのだ。そしてその果てに、技能を会得する。
ゲームほど軽くは考えられないが、それでも重く受け止めなくてもどうにかなるかもしれない。
「お前が嫌なら、戦わせなくてもいい。定住しなくてもさせられることはあるだろ」
「……うん」
「マギには、伝手になりそうな奴がまだいるかどうかを確認しにいくんだったな。その後は決めてるのか」
「ゼクスシュタインと同じで、依頼をしながら金を稼いで、あと出来れば図書館で本が見たい。その後は……一度≪ミズ≫まで足を伸ばすつもり」
≪ミズ≫はプレイヤーにとって始まりの街だ。ゲームを始めてプレイする際のスタート地点となる。城郭都市ほどの規模はないが、長閑で、コンクリートジャングルで育った人間には癒しになるだろう田舎情緒溢れる場所だ。街並みも小綺麗で、各組合、武器屋、防具屋、道具屋など、最低限の店が揃っている。どんなことをしたいかで装備品は随分と変わってしまうが、初期に必要になるものは全てミズで揃えることが出来るのだ。適正レベルも1~10とかなり低く、シズを守りながらであっても余裕で歩ける。
俺がこの世界に来て既に一年が経とうとしているから、樹生がそこにいる可能性は無に等しい。あいつは俺と違ってリアルに冒険心があるからな。でも、もし居たとしたら、その痕跡は見つかるかもしれない。
「そうか。あの辺りのモンスターはそう強くなかったな。シズを旅慣れさせるにはいいか」
マギからミズへは、歩いて一週間から二週間ほどかかる。立地としては、マギの西。ミズを挟んで更に西へ行くと、闘奴や冒険者たちが腕ならしに参加できる円形闘技場を持つ武闘都市≪マルスィリア≫がある。勝敗で賭博することも盛んに行われており、試合の観戦には金持ちの貴族や商人も集まる。闘奴はオークション方式で売買されているのもあり、莫大な金の動く場所だ。街全体も血気盛んというのか、そこいら中で喧嘩が行われていたはずだ。酒が入るととんだ乱痴気騒ぎになる。
流石にそっちにまで足を伸ばすつもりは今の所はない。ギルも嫌だろうし、飽くまで目的地はミズだ。
俺は『Arkadia』では村や集落へは立ち寄らず進むことが多かったから場所は把握していないが、点在するそれらを経由すれば負担も少ないだろう。
「今決めてるのはそこまでかな。それ以降のことはその時に決める」
「分かった。……腕磨きをするわけじゃないなら、一人くらい増えてもいいだろ。奴隷だったら都合もいい」
ギルがそう言いながら、俺に唇を押し当てるだけのキスを繰り返す。それを無抵抗で受けながら、俺も頷きを返した。
「懐いてくれるから情が移ったっていうのかな。こういうのもやり出すと切りが無いから自重した方が良いんだろうけど……コツとかある?」
本当に肌を寄せ合っているだけなのに、心地がいい。雪が降り積もるように静かに降ってくる眠気に抗うこともないまま、徐々にギルの腕の中で力が抜けていく。
くつり、と、ギルが喉元で笑った。
「?」
「お前が懐いてるの間違いだろ」
柔らかな呆れを帯びた声とその言葉に虚を突かれ、は、と素の声が飛び出た。
「……俺?」
確認のため囁きほどの大きさでそう尋ねると、ギルは短く肯定して俺の頭を撫でる。
……だめだ、気持ちいい。眠い。
「気づいてなかったのか?」
優しい声に瞼が落ちる。指先で頬をくすぐられて憤ると、ギルはそっと俺を放し、横たえてくれた。毛布がかけられるのを感じたが、それが限界だった。
一方で、見方を変えるとモンスターという存在は、狩ることさえできれば無限に湧き出る資源である。野生動物が狩りつくされることがないのもモンスターによるところが大きい。モンスターは動物を襲うことがなく、人類――ヒトを含む、森の民のエルフ、鍛冶に秀でた地下の番人ドワーフなど、二足歩行ができて言葉を話せる者たち――のみを敵視するために、資源を貪りつくせる存在に世界が絶えてしまわぬよう神が遣わした御使いであるとみなされることもあるくらいだ。
とはいえ、神の使いであろうが誰しも死ぬのは嫌というものだ。
城郭都市であれば襲撃などは物理的に跳ね除けられるし、そうでなくとも各都市ごとにある神殿が、モンスターの持つ悪意――『魔』を遠ざけると言われている。その力は強いが、各都市の規模の大きさも相俟って、効力が届くのは城壁の周辺までが精々だ。
では、格差によって城壁を取り囲むように暮らす人々はともかく、ある程度離れた場所で村を形成している人々はどうか。
実は村ごとに神々を祀る祠があり、村を囲むようにしてモンスターを避けている。神々の力、そのものズバリ『神力』は人々の祈りによって強化されるため、アルカディアの住人にとって祈りを捧げることは生活に根ざした、とても近しい行為なのだ。
と、いうようなことを教えてもらった。
エルフたちも贄を捧げたり、食物に感謝の祈りを捧げたりしていたが、人間の信仰の形とは少し違っていたから祠もなかったし、清めた魔晶石で『魔』避けを行うだけだった。
ゼクスシュタインへ向かう途中に立ち寄った村々では俺が起きる以上に村人達は早く起きて活動していたから気づかなかったようだ。小さな村ばかりだったし、祠は墓石なのかと思っていた。そういえばアルカディアの弔いってどうするんだろう。幸いまだ誰かの死に立ち会う機会も予定もないが、独特のものがあるのなら知っておいた方がいいかもしれない。
まあ、今は旅の途中だからそんな話を自分から振るような真似はしないけど。
「ヒューイってほんと、びっくりするぐらい知らないこと多いよね」
悪意のないシズの声にため息が漏れた。俺が知っていることは『Arkadia』のシステムや世界観であって、現地人の常識だの文化だのには全く明るくない。イベントでそういうことに触れる機会はあるのだが、俺は生憎、遺跡に潜ってお宝を探したり、ダンジョンを踏み荒らしてボスと戦いまくったりと、樹生と一緒に暴れまくっていた。2年も遊んでいたが、俺たちの興味は大体がよりプレイヤースキルを磨き腕を上げることであり、上級スキルの発見であり、大技をぶっ放して脳汁を垂れ流すことに絞られていた。モンスターをさくさく倒したり、一網打尽にする爽快感は、繊細なガラスの彫刻にハンマーを振り下ろすような、トランプタワーを思い切り崩すような、そんなたまらないゾクゾクをもたらしてくれるのだ。そしてそれは、レベル上げという努力によって確実に得られるのである。やらないわけはない。
「面目無い」
ゲームの遊び方なんてユーザーそれぞれだ。だからプレイヤーとしては何もおかしくはないのだが、ここが”現実”である以上、俺はただの社会不適格者である。ある意味ならず者以下だ。ギルは聞いたことについてはきちんと答えてくれるけど、あれもこれもと喋るタイプじゃないし、先回りをして教えてくれるタイプでもない。普通、常識なんてものは周囲の環境から自分の中に蓄積されて行くものであるから、一定の共通認識があって然るべきであり、そんなものをわざわざ教えてやろうという人間の方が少数だろうから、別に恨んでるとかそういうことはない。
2年分の知識は魔法技術以外空回っており、ゲーム用語なんかぽんぽん出したって現地人からすれば妄言でしかないため、俺は徹底して無知であることを強いられていた。辛うじてモンスターの識別や弱点、倒し方のコツ、世界中の都市の特徴といったことは知識として披露出来たが、"実際に"対峙したことや行ったことは無かったからか、箱入りというレッテルを貼られるのは避けられなかった。『都会に憧れている田舎者』とならなかったのは俺の所作がそこそこ上品であることと、それよりなにより常識に欠けるという点があったからだ。初めてアルカディアで接触したのがエルフだったのも、今無知を露呈している要因の一つだろう。
エルフに世話になっていたことくらいは話していても問題はないから、俺が人間のことをよく知らないのはそのせいである、ということにさせてもらった。実際フィズィにあれこれと教えてもらったことは殆どエルフとしては出来て当たり前のことばかりだったし、エルフは他の種族との交流を積極的には持たないから、エルフ色に染まっているというのは嘘ではない。
だが、俺はエルフではなく人間だ。人間である以上、人間に則した感覚や常識を持っていると思われるのは当然である。そこに俺の事情は関係ないのだ。
ゆえに、恥を忍んで教えを請う必要があるわけで、人間の――特に一般人の持つ――常識を知り、身につけることは急務だった。
「はい、1オボルスね」
「……ん」
差し出された手のひらに小銀貨をのせる。綻ぶシズの顔は愛らしいが、その分だけ自分の常識のなさを痛感させられる。
祠の件を皮切りに、シズはあれこれと俺を試し始めた。シズの常識的な質問に答えられなければ1オボルスを払い、それを情報料としてあれこれ教えてもらうゲーム染みた流れが出来ていた。
単語帳をめくるような感覚と金銭のやり取りが発生することによる適度な緊張感は俺の集中力を嫌でも高め、自分でも驚くほど吸収率は良かった。塵も積もれば山となる。身ぐるみを剥がされるのは勘弁願いたいという一心だった。
シズからあれこれテストされるのは休憩時間だけだし、稼ぎからすれば微々たる支出だが、社会に適応するための必要経費が何故か痛い。
人間とは社会的動物である。他者からどう見えるかはともかく、実際のところ俺はただの小市民であり、社会不適格者として生きる覚悟もない。
これは人間として生きるための通過儀礼だ。そして、今まで『Arkadia』で楽しく暴れまくり魔法をぶっ放し、脳汁垂れ流して快楽主義を貫いてきたツケを払っているだけなのだ。ケツで払わなくていい分マシだと思わねばなるまい。
そう念じながら、時折かかる冒険者たちからの冷やかしの声にも負けずにシズに挑み続けた。
隊商に参加して良かったと思うと同時に、今までの日々の中で、密に人と関わり合うことがなかったのを思い知らされたのは言うまでもない。マギに着いたら、もう少し街中での依頼に目を向けてみるのも良いかもしれない。モンスターを倒して稼ぐ方が遥かに実入りはいいけれど、探し人がいる以上ハブられるのは困る。
人間、痛い目を見なければ見えてこないことがある。そういうことにしておこう。
その日最後の休憩時間……という名の野営準備と、夕食中行われた怒涛の質問が終わってティーピーに潜り込む。シズは日中にあれこれ俺を試した日は、夜は休むことにしたようだ。性にまつわるあれこれも、教えたからには覚えているか試すとばかりの質問リストに盛り込まれた。搾り取られるのは精液だけで十分なんだが……全く、アルカディアの人々は強かだ。ギルの集りでさえ咎めない俺の方が悪かったのではという気になる。
生きるために貪欲であることは恥じることではない。そういうことなのだろう。
「金を溶かすような時間だったな」
アドルフは外に待機させ、久々の二人きりの空間にほっとしていると、ギルがそう呟いた。無駄遣いと言いたいらしい。ドブに捨てるって奴だ。
「……とことん俺が世間ずれしているのが今の段階で分かったのは良かったと思うけど」
「あいつを買うのか?」
シズは、今のところ俺たちの求めるものを持ってはいない。まだ15だから能力的に伸び代はあるだろうが、俺もギルも、物を教えることに向いているかどうかは全く未知数で、やって覚えろと放置するタイプのように思える。
しかし、シズがなにくれとなく世話をしてくれるから助かっていることも事実だ。そういう意味では彼は有能であり、買うこともプラスになるかもしれない。即戦力は欲しいが、俺やギルが伏せておきたい事情を漏らさないような信頼できる人は直ぐには見つからないし、そんな関係は直ぐには築けない。だったら奴隷を育てた方が安心はできる。奴隷に掛けられた隷属魔法は、購入者と奴隷商の間で強度やオプションを設定できるのだ。俺たちの場合なら秘密厳守とか。
これは反抗すれば即座に隷属魔法による罰が与えられる条件の設定でもある。買主に暴力を振るわない、など基本的な部分は皆同じだが、個別に命令された場合はこの限りではないという文言を追加することもできるようだ。犯罪奴隷の場合はそういう自由度はぐんと下がり、がちがちに行動制限されるようだが、買主を守るために暴力を振るうことは見逃されているようだ。隷属魔法は対象の肉体は勿論、場合によっては心を支配する物であり、その心や目的によって、いくらかの例外がある。その例外も、隷属魔法を受けた者の心に反応することによって生まれる物であり、下心や反抗心があると意味がないため、実質、穴はない。その心の方も、実際に行動として現れない限りはセーフだそうで。隷属魔法はスキルの中にも幾つかあったが、奴隷用のような持続性があって、時間や条件で解けない類のものは王に認可された者以外の行使は許されていない。ここは奴隷商と同じだ。
シズを得ることでリスクが増すことはない。金貨がいくらか飛んで行き、その後の生活費がかかるくらいか。家事全般を任せるのもアリといえばアリ。
つまり、結局は俺がシズに対し責任を負うことをためらっているに過ぎない。シズの場合、ギルが奴隷になるのとは違って、そこから解放することもできる。だが、シズに一人で生きていけるだけの力を持たせる必要があるだろう。それが人としての責任というものだろうし。それに、奴隷のままであっても、俺やギルは明日どうなるか分からない身だ。そして俺は、自分の実力がこの世界でどんな風に位置付けられるのがまだ知らない。金銭的にではなく、奴隷を買う余裕があるのかどうか、客観的な判断ができない。
俺個人としては、俺自身に余裕がないから気が進まない。
【宵朱】としてはどうか。というと、結論は出ている。シズを買うのはなんのためなのか? 必要なのか? その問い掛けには、特に必要はない、と答えられる。二人と一匹で十分やっていけているからだ。
前向きに検討したいと言ってしまったのはやはり、情が移ったからとしか言いようがない。
「ギルは? どう思う?」
「持っていて悪いってことはないだろうな。要は何をさせるかだ」
「だよね……ギル、何かシズに仕込んでやれるようなことってある?」
「戦い方は俺じゃ参考にならねえだろうな」
そっか。ギルの戦闘能力ってそもそもギフト補正かかってるんだった。
「他にもなくはないが……その仕込みをするなら、まずお前からがいい」
「え?」
ギルの手が伸び、引き寄せられる。強制的に寝具を一つに纏められて、ダブルベッドのような広さの布団の上で、俺の身体はギルによって絡め取られた。ギルは胡坐をかくような体勢で、俺はその股座に捕らえられる。
……シズの話からどうしてこうなった?!
「え、ちょ、ギル?」
「俺が他に心得があるのは盗みと騙しと殺しと……あとは教えられるってことなら、俺の誘い方くらいだな」
ギルは俺を腕の中に囲いながら、慣れた手つきで腰元から手を潜らせてきた。暖かくて大きな手が背中を撫で始める。
「シズはもうそういうのは覚えてたみたいだしっ それにギルに限定するなら意味ないんじゃ」
「前三つはお前嫌がるだろ。最後は俺も、そもそもお前じゃないと意味ないしな」
「……つまり?」
「何もない」
ギルにしては珍しい遠回りな発言は、俺をからかったようだ。くすりと笑みを零した後は、すぐにキスで唇を塞がれた。
久しぶりの二人きりでの空気に、甘く胸が疼き出す。まだキスなのに、ギルから香る匂いと暖かさだけに集中出来てしまうからか、一気に身体が熱くなる。でも、何処か気持ちは穏やかだ。唇の柔らかな感触に下腹部にちりちりと熱が篭っていくのに、先に進みたいと突き上げてくるような欲求は湧いてこない。
ずっとこのまま、この心地よさを味わっていたいと思う。だから自然と、俺からも唇をくっつけた。
ギルも俺を煽るようなことはしてこない。俺の後頭部を包むように右手を添え、左手は頬へ。右は緩やかにうなじへ滑らせつつも、メインはあくまでキスで、優しく、甘く唇に吸い付いつくのに集中する。
俺も顔の角度を変えながら、鼻先をこすり合わせた。手はギルの肩に置いていたが、首に回して距離を縮めた。そっと力を込めて密着する。ギルの吐息と俺のものが混じって、このまま一つになって溶けるようなイメージが頭の中を巡り、抜けて行った。
時折漏れてしまう声はくぐもっていながらも甘えるようで、ギルにはどう聞こえているのだろうと考える。自分が餌をねだる雛鳥になったような気さえして、ギルに寄りかかった。
「ふ……」
呼吸を整えるためか、言葉を発するためか。どちらともなく離れた唇を、名残惜しそうな息が追いかけた。ほう、と出たそれはため息にも似て、しっかりと目を開けると、ギルが……色気と優しさの滲んだ、とでも言えば良いのか、甘ったるい顔をして俺を見つめていた。優しいだけじゃない。色っぽいだけじゃない。どちらをも含んだその表情は、俺の中に穏やかに溜まった温もりを沸騰させるには十分だった。
幸い瞬間的に沸いただけで済んだけれど、まさかギルがこんな顔をするとは思わず、胸が一気に早鐘を打つ。
「……ギル?」
「いや。……シズの件だが、お前がしたいようにすればいい。俺はどっちでもいい」
額がこつんとぶつかり、そのまま、まるで動物が挨拶するみたいに頬同士をすり合わせ、鼻先を当ててくる。唇が肌を掠めて行くが、キス未満のそれは俺の胸を刺激することはなく、俺は爆発しそうな心臓を宥めることができた。
「……でも、何をさせるか、」
「あいつ基準で考えなくてもいいだろ。お前は人を使うことを覚えた方がいい。そのための訓練として買えばいい。なんでも一人で出来るってのは都合がいいが、一人でやるにも限界があるだろ」
俺の頭を優しく両手で包んでそう言ったギルに、俺は不思議とそれもそうか、とはっとした。
確かにここは"現実"で、実際に目の前に迫った盗賊たちや、同業者の武勇伝、シズが奴隷商の補足付きながらも聞かせてくれた奴隷制度の話を聞いてすっかり入れ込んでしまったが、ゲームのシステムが生きているのだ。もしそれがここでも生きているのであれば……スキルを、覚えることも可能だ。
購入し資産とした奴隷たちにはいろんな仕事を割り振ることが出来る。向き不向きはあるが、長く続けさせれば自然と熟達していくのだ。そしてその果てに、技能を会得する。
ゲームほど軽くは考えられないが、それでも重く受け止めなくてもどうにかなるかもしれない。
「お前が嫌なら、戦わせなくてもいい。定住しなくてもさせられることはあるだろ」
「……うん」
「マギには、伝手になりそうな奴がまだいるかどうかを確認しにいくんだったな。その後は決めてるのか」
「ゼクスシュタインと同じで、依頼をしながら金を稼いで、あと出来れば図書館で本が見たい。その後は……一度≪ミズ≫まで足を伸ばすつもり」
≪ミズ≫はプレイヤーにとって始まりの街だ。ゲームを始めてプレイする際のスタート地点となる。城郭都市ほどの規模はないが、長閑で、コンクリートジャングルで育った人間には癒しになるだろう田舎情緒溢れる場所だ。街並みも小綺麗で、各組合、武器屋、防具屋、道具屋など、最低限の店が揃っている。どんなことをしたいかで装備品は随分と変わってしまうが、初期に必要になるものは全てミズで揃えることが出来るのだ。適正レベルも1~10とかなり低く、シズを守りながらであっても余裕で歩ける。
俺がこの世界に来て既に一年が経とうとしているから、樹生がそこにいる可能性は無に等しい。あいつは俺と違ってリアルに冒険心があるからな。でも、もし居たとしたら、その痕跡は見つかるかもしれない。
「そうか。あの辺りのモンスターはそう強くなかったな。シズを旅慣れさせるにはいいか」
マギからミズへは、歩いて一週間から二週間ほどかかる。立地としては、マギの西。ミズを挟んで更に西へ行くと、闘奴や冒険者たちが腕ならしに参加できる円形闘技場を持つ武闘都市≪マルスィリア≫がある。勝敗で賭博することも盛んに行われており、試合の観戦には金持ちの貴族や商人も集まる。闘奴はオークション方式で売買されているのもあり、莫大な金の動く場所だ。街全体も血気盛んというのか、そこいら中で喧嘩が行われていたはずだ。酒が入るととんだ乱痴気騒ぎになる。
流石にそっちにまで足を伸ばすつもりは今の所はない。ギルも嫌だろうし、飽くまで目的地はミズだ。
俺は『Arkadia』では村や集落へは立ち寄らず進むことが多かったから場所は把握していないが、点在するそれらを経由すれば負担も少ないだろう。
「今決めてるのはそこまでかな。それ以降のことはその時に決める」
「分かった。……腕磨きをするわけじゃないなら、一人くらい増えてもいいだろ。奴隷だったら都合もいい」
ギルがそう言いながら、俺に唇を押し当てるだけのキスを繰り返す。それを無抵抗で受けながら、俺も頷きを返した。
「懐いてくれるから情が移ったっていうのかな。こういうのもやり出すと切りが無いから自重した方が良いんだろうけど……コツとかある?」
本当に肌を寄せ合っているだけなのに、心地がいい。雪が降り積もるように静かに降ってくる眠気に抗うこともないまま、徐々にギルの腕の中で力が抜けていく。
くつり、と、ギルが喉元で笑った。
「?」
「お前が懐いてるの間違いだろ」
柔らかな呆れを帯びた声とその言葉に虚を突かれ、は、と素の声が飛び出た。
「……俺?」
確認のため囁きほどの大きさでそう尋ねると、ギルは短く肯定して俺の頭を撫でる。
……だめだ、気持ちいい。眠い。
「気づいてなかったのか?」
優しい声に瞼が落ちる。指先で頬をくすぐられて憤ると、ギルはそっと俺を放し、横たえてくれた。毛布がかけられるのを感じたが、それが限界だった。
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