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甘味は強く
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ぶつかった痛みをこらえて、それを慰めるように柔らかな舌先で互いの口の中を撫であう。それは時折溢れる唾液を飲み下したり、零れないように吸うことで微かな音を漏らしていた。
ロビーを介さずに部屋に隠し連れ込んだという事実と、しっかりと俺に抱きついて離れない小さな体に熱が芽生える。トピアスの口や鼻から漏れる息と、声にたまらなく股間が反応した。でも、先を急ぐ気にはなれなかった。唇と舌を合わせ、絡ませて求め合う行為はいつまでもそうしていたいと思う位気持ちよかった。
膝の上で何度もトピアスが姿勢を変える。ここへ来た時には腹元にあった彼の荷物は早々にベッドへ投げられていた。
「ふっ……落ち着け、逃げないから」
最初に失敗したからか仕切り直しは俺からしたものの、トピアスは次第に体全部を俺に擦り付けるように動き始めた。少し性急にも思えるものの、つんとされるよりはずっといい。うっとりと俺を見つめて名前を呼んでくれるのが嬉しい。頬を赤くして、ぴったりとくっついた身体から彼の熱を感じる。彼の腰に手を回してしっかりとそこをくっつけると、布越しに硬くなったその感触がはっきりわかった。
「あっ……」
怯えたような声に、怖いかと尋ねる。
「触ってもいいか? ……大丈夫。トピアスが嫌だったら、しない」
俺は元々、単純に肌を合わせるのが好きな方だ。アベルとも殆どそうして抱き合うことが常だった。今からすれば彼はどこまでも俺に合わせてくれていたのかもしれないが、今の俺は違う。トピアスの、もっととろとろになった、可愛いところが見たいと思った。
キスで乱れた息を整えながら、トピアスはじっと俺を見つめた。赤くぽてっと濡れた唇から、小さく声が漏れる。
「……キャロが好きだと気づいてから、ずっと身体が暴れ出しそうなのを我慢していました。どこでも擦り寄って、押し付けてしまいそうで……っ、だから、あっ」
最後まで聞かず、彼の腰紐をほどいてシャツをたくし上げる。
「なんだ。トピアスは俺よりずっと大人だったんだな」
自分の気持ちを自覚することもそうだし、その早さも。
「じゅっ……獣人は、人間とは違う、から……すぐに体が反応してしまうから……!」
「うん。すごく熱くなってるな」
俺たちの着る服は寄付だとか、上級生から着れなくなったものをもらったりだとかで新品はまずない。獣人なら特にそうだ。尻尾の穴の微調整のために、ズボンの後ろ側はボタンで調整できるようになっている。
トピアスも例外ではなく、着回された服はよれよれで柔らかくなっていて、スラックスの上からでも彼の熱が分かった。
優しく触れると彼の身体が跳ね、気持ち良さそうな声が漏れた。汚さないうちにと下着ごと取り払う。トピアスは俺が脱がせやすいように自分で動いてくれたからそう難しくはなかった。尻尾が痛くないようにボタンを外して、ウエストを緩める。もともと彼には大きなそれは脱がしやすい。脱がしきる際にトピアスの靴を床に落とした。
俺の膝上にまたがって靴下とシャツだけを身に纏い、勃起したペニスがシャツの裾を被って頭だけを出している姿はいやらしくて、ずっと見ていたいような、もっと先に進みたいような気持ちになった。
「……獣人は匂いに敏感ですから、キャロからあの文官の匂いがした時、ショックでした。ユーゴさんから直接聞くまで、キャロはユーゴさんが好きなんだと思っていて、ぼくはあなたからユーゴさんの匂いがしないかと、そればかり考えて……なのにずっと、キャロにぼくの臭いをつけたくて」
ユーゴにそんなことを聞いたのかと尋ねると、昨日俺が倒れてから医務室でそういうことを言われたそうだ。
トピアスの急な変化は、それを我慢しなくて良くなったから……で、いいんだろうか。
「いいぞ、好きなだけつけても。……でも、今はお前のこっちが先」
一番側にいた獣人がユーゴで、あっちからはまったくそういう事を聞かなかったからトピアスがどんな思いをしていたかは分からない。ただ、彼が俺と同じ『好き』という気持ちを持ってくれているのだけを噛み締める。ここが一番大事だと思った。
手で直接、トピアスのペニスに触れる。彼の両手が所在無さげにあちこち触れてくる。俺よりまだずっと小さな手は気持ち良くて、自分で先にシャツのボタンを外した。
サスペンダーを外してシャツの前を開き、彼も同じようにする。
「寒くないか?」
「……暑いくらい、です」
とはいえ、靴下だけ履いているというのも心許ないだろうと俺はそのままトピアスの肌に触れた。味わうようにじっくりと滑らせて、腕の中に収まる温もりの柔らかさを堪能する。遠慮がちに俺に触れてくるトピアスに気持ちいいことを伝えると、少し充血した、水気の多い目が俺を見つめた。
「今まで、ごめんなさい」
しょげつつも今している行為のせいで色気を孕んだ顔に、俺が言えるのは一つだけだ。
「今こうしていられるから、もういい」
右手で背中を撫でて、左手で彼のペニスを愛撫する。唇は唇同士仲睦まじく触れ合って、俺に応えようとする彼のそこをたっぷり可愛がった。
キスの合間に名前を呼ぶ度に今までの態度の謝罪と俺が好きだと言ってくれる声がたまらなく嬉しい。腰が揺らめき、息は今一度荒くなり、俺を呼ぶ声量を殺した声は甘く濡れて、俺の胸の中をぐずぐずに溶かした。
トピアスのペニスは俺よりも小さくて、俺の手の中で生き物のように控えめに動いていた。気持ちいいからだろう、そうしてぴくんとする様子はトピアスそのもののようでいて、もう一人トピアスがいるようだった。大切に、丁寧に、でも、存分に撫でくりまわす。
夢中になってトピアスのペニスを扱いていると、彼の表情は快感に歪んで、声は切羽詰まったように高くなった。
「ぁ、……い、っちゃ、」
「いいよ、だして」
「っ、あ……!」
敏感な亀頭とカリを散々撫でた後、仕上げとばかりに竿を素早く追い立てると、トピアスは身体全部に力を入れ、小さく呻いて精液を吐き出した。それを直接腹で受け止め、絞るように手を動かして、目を閉じて快感に浸る彼の頬や鼻先にキスを送る。
落ち着くまで抱きかかえていると、不意にトピアスの方からキスがきた。直後、俺の股間に彼の手が這う。驚いて息を詰めると、唇を離したトピアスが至近距離で俺と目を合わせながら囁いた。
「ぼくも……したい」
イったから余裕が出てきたのか、キャロは俺の腹に出した自分の精液をそのまま、軟膏のように塗り広げた。
「おっ おい?」
「……さっき、匂いつけてもいいって」
確かに言った。言ったし、トピアスの行動に驚いてあげた声の中に、もしかしたら咎めるような響きがあったかもしれないのは謝る。別に嫌なわけじゃないし。
だから、泣きそうな顔をするのはやめて欲しい。
どうにかキスを繰り返して宥める。獣人がこういう時どういうことを望むのかは全く未知数で、それは一つ一つ教えてほしいというと、どうにかぐずりだす寸前だったトピアスの涙は収まりを見せた。
その手が俺のスラックスへと延びる。腰を浮かせて協力すると、下着ごとはぎ取られた。興奮で頭をもたげている俺のペニスが顔を出す。恥ずかしくなるものの、このままだとトピアスが落ちそうだと靴を脱いで完全にベッドへ乗り上げた。壁を背に、スラックスをずらすと、トピアスが丁寧に脱がせてくれた。期せずしてお揃いの格好になったものの俺がやっても俺は楽しくもないし興奮もしない。
丁寧に俺のスラックスと下着を畳んだトピアスは、嬉々として俺の股座に入り込んだ。大人しく膝を折って足を広げ、それを受け入れる。そのままトピアスの小さな手が俺のペニスに伸びるものだとばかり思っていた俺は、おもむろに頭を下げた姿にまた驚いた。その隙にトピアスはあっさりと俺の亀頭を舌で舐め、その感触も含めて、俺は腰が揺れるのを止められなかった。
「っちょ! まっ……!」
ろくに言葉も出せないままトピアスの肩を押しやり、既にぱっくりと咥えている俺のものを出させる。彼は最初こそ俺のを放そうとしなかったが、俺の必死の抵抗を受けて渋々顔を上げてくれた。その態度と同じように、俺を見上げてくる顔は不満そうだ。
「ちっ、ちが、嫌なんじゃなくて! 俺、身体洗ってねーからっ」
「構いません。……この方が、キャロの匂いが強くて好きです」
トピアスは言いたいことはそれだけかとばかりに再び俺の股間に顔を突っ込んだ。今度はもう離さないとばかりにペニスを嬲られ、俺はその気持ち良さに翻弄されてしまう。熱いトピアスの口の中。ぐちゅぐちゅとうがいでもするかのような音が漏れ、中で彼の唾液と舌に揉まれているのを感じる。時折吸い上げられて、泣いたときのような声が漏れた。
こんなのは知らない。アベルとは本当に触れ合うだけで、舐めると言っても胸にキスをしたりとか、そういう程度だ。知識としては知っていても、実際にやったこともされたこともなかった。
動揺から逃げるように後ずさりをしたくても上手く行かず、ただ上半身が後ろに倒れただけだった。肩が壁にぶつかり、トピアスが何をしているのかがはっきりと見えてしまう。
トピアスの口淫は激しいようでいて丁寧だった。洗ってないと言ったのに、まるで汚れを落とすように上から順番に唾液で濡らして舌で舐めていく。手で竿を支えて付け根を舐める舌がいやらしく光って、ぴちゃぴちゃとこれ見よがしに音を出していた。見せつけられていると分かるのは、トピアスが俺のを舐めながらこっちを見るからで。
「キャロ、耳まで真っ赤ですよ」
敏感な場所で笑われてぞくぞくと鳥肌が立つ。かわいい、と筋を舐め上げられて、気持ち良さに尻に力が入った。お前がそんなことするから、と小さく反抗すると、双眸を細めて嬉しそうに笑う。頬に当たりそうなくらい近い俺のがなければ、トピアスの唇が怪しく濡れ光ってなければ、もっと可愛かったのに。
状況を忘れるには程遠く、彼の笑みは俺の身体を熱くさせただけだった。自分の鼓動が煩い。恥ずかしさが勝って仕方が無い。だが、トピアスの頭の向こうに見える尻尾が忙しなく振られているのを目の当たりにして、そのことに胸がくすぐったくなった。喜んでいるのをやめさせるのもどうかと思ってしまう。本当に、俺は彼には甘い。
二の句がつげない俺を余所に、トピアスはまた俺のを咥え込んだ。頭を激しく動かして、捻じるような動きさえ混ぜながら俺を追い込んでくる。慣れた動きによくわからないショックを受けつつ、快感に流される。
「く、ぁ……!」
頭を休めていても、舌先で先端を、胴体は手で引っ切り無しに刺激され続けて、俺は腰を揺らしてしまう。そうするとトピアスは俺のを弄びながら、からかうように俺へ視線を寄越す。それでまた恥ずかしくなって、俺の目にも涙が浮かんだ。
「はっ……ん、トピ、とぴあ、あっ」
シーツを掴んで快感に腰を揺らしていると、トピアスの左手が俺の右手を包むように覆い被さった。右手をひっくり返してトピアスに触れようとすると、彼の手が俺の手を優しく撫でた。それだけでそこから気持ち良さが泡立ち、震えてしまう。逃げ惑うように跳ねた手は絡め取られて、俺はシーツの代わりにその小さな手を握りこんだ。
トピアスが俺の顔を確認しながら、ペニスのあちこちへ舌と指を這わせていく。玉を咥えて袋を引っ張られて、小さな口の中で転がされる感覚に吐息が漏れた。袋の中央の縫い目をそっと舌先で触れられ、むずむずするような気持ち良さに手に力が籠る。そしてその舌先が袋からさらに下へと移動し、その、尻の穴の上を優しく愛撫した。そんなところが気持ちいいなんて、知らない。
「……キャロのお尻の穴、今ひくってなりましたよ」
トピアスは嬉しそうに俺の下肢を押して、そこを指先でなぞった。
「っだ、だめだ、そこはっ き、汚すぎるから絶対やめろ!」
慌てて強く抗議すると、トピアスは少しむすっとした声ながらも分かってます、と手を離した。それに安心して力を抜くと、その隙にと言わんばかりのタイミングでペニスへの愛撫が再開される。
「ん……!」
トピアスの唾液でべたべたになったそこは、手で触れられるとぬめって滑って、むちゃくちゃに手を動かして欲しくなるほど気持ちいい。
舌を硬くして鈴口をこじ開けるように弄られて腰が浮く。濡れた唇から出ている赤い舌が妙にいやらしく感じられて、俺は息を詰めた。
「我慢しないでください」
我慢してるわけじゃない、と言いたいところだが、それは出来なかった。優しく言い聞かせるような声色に反して、我慢など許さないとばかりにトピアスの手が早くなったからだ。俺の顔を見るのをやめたトピアスは一気に俺のペニスを扱きながらその先に吸い付き、俺は急速に高まった衝動のまま射精の気持ち良さに身を投じた。
「っ……ぁ、あ、あっ」
トピアスの頭を離す余裕さえなかった。自分でやるのとは全く違う気持ち良さ。射精した後の愛撫は止まらず、ゆっくりとした動作で竿を舐められ、可愛がられる。俺はその気持ち良さのまま小さく、しかしいやらしく腰をくねらせた。何も考えてなかった。
快感が広がるにつれ、その強さも薄まってくる。一つ大きく息を吐いて俺の呼吸と興奮が落ち着くころには、トピアスは俺のペニスを綺麗に舐めつくしていた。それだけならまだしも、俺の出したものさえ全て飲みこんだようで、トピアスは満足そうな笑みを浮かべて俺の胸にぴったりくっついてきた。
「……っ、マズイ、だろ……そんな、そんなの」
「美味しくはないですけど、でも、キャロのだし」
弾んだ声でトピアスが俺の首筋に舌を這わせてくる。鎖骨を撫でられ、そのままシャツを脱がされた。これで靴下以外何も着てない状態になる。
寒くは無い。ただ、一区切りついた所為かこのままトピアスと肌を合わせたまままどろみたくなった。
そんな俺の気持ちを吹き飛ばしたのは、俺にくっ付く彼の言葉だった。
「じゃあ、今から順番に……ぼくの匂い、キャロにつけていきますね?」
「え」
精液を腹に塗りたくったのは違うのかと聞くより先に彼は動き始めていた。右側から順番に、肩、二の腕、肘、と指先へ向けて丁寧に舐められ、キスをされる。指先なんかは一本一本丁寧に口の中に咥えて、舌で舐られた。それだけなのに、さっきの口淫を思い出してむずむずしてくる。しかしトピアスはそれ以上俺を煽るようなことはせずに指から口を離すと、今度が俺の腕を上げさせて腕の内側や腋を舐めはじめた。
「っ、ちょ、ぶふ、くすぐったいっ……」
堪えきれなくて身をよじりながらもがくと、トピアスは俺が嫌がってないのが分かるのか、くすくすと笑いながらじっとしていてください、とこぼした。
「だってくすぐってーよ」
「くすぐったい所って性感帯らしいですよ」
さっきと違って執拗にそこばかり狙われるわけでもないから、何とか笑い死にそうになるのは避けられた。あばらを辿って真ん中に来たトピアスから、からかうような目が向けられる。俺はトピアスの口から洩れたその内容に言葉を詰まらせた。
「……なあ、その、口で舐めたのもそうだけどさ、お前、そういうのどこで覚えてきたんだ?」
授業の中に人間や獣人の体について学ぶものはあるが、トピアスは三年だ。流石にこっちの知識は授業で明け透けに習うものでもないから、友達から聞いたり、あるいは……上級生から教わったりする、のがここでは一般的だ。獣人であれば、身体を明け渡したりすることもある。
俺の言いたいことが分かったのか、トピアスは苦笑した。
「別に誰かに教わったわけじゃないです……人づてに聞いた話だとか……自分で触って気持ち良かったことをしただけですよ」
臭いをつけたいのは獣人特有らしいですけど、とトピアスは言いながら、俺の胸にある色の変わったそこを舐めた。
「そこも……?」
「気持ち良くないですか?」
上目遣いで聞いてくるが、そんなに特別に気持ちいい感じはしない。それが顔に出ていたんだろう。トピアスは右側を口で、左側を指先で弄りだした。優しく触られていると、その内、そこがじんじんと響き始めた。乳首がぷくりと勃ちはじめ、そこから小さな刺激が下へ響いてくる。
「ん……あ、なんか、……気持ちいい、かも……?」
トピアスにされてるっていうのも大きいと思うが、撫でるというにも微かな感触に肌が粟立つ。うん、気持ちいい。気持ちいいけど、それ以上にトピアスの手と息と、舌の暖かさが心地いい。
力が抜けてきて目を閉じると、トピアスがようやく乳首から離れた。ヘソに舌を突っ込まれて、それもまたむずむずとする。手がわき腹を滑って、また笑ってしまった。身をよじっても、よじった場所からトピアスの舌が襲う。舐めて、舐めて、ひたすら舐めて、時折柔らかい唇で吸い付かれてちゅ、と音が漏れる。優しくもどこかその気になるようないやらしさで肌を撫でていく両手。はぁ、と湿った吐息がかかり、思いもよらない場所で快感が肌から生まれ、身体の奥へ潜っていく。
俺はそれから逃げるようにしながらいつの間にか俯せになって、背面を存分に味わわれていた。腰から背骨を伝って舌が這い上がり、耳を唇で挟まれ、舐められた。耳の形に添って柔らかな舌先が小さく動きながら俺のそこを蹂躙する。間近で聞こえる吐息と舌と熱と、水音。快感が耳から腰へ落下して、思わず肩をすくめた。
「ひっ」
小さく頭を反らして後ろを向くと、頬にトピアスのキスが来る。吐息と共に耳へ名前を吹き込まれて、ぞわぞわと落ち着かない感触に身もだえする。散々耳を弄ばれて息が上がってきたところで、トピアスがくす、と笑って下へ移動した。尻たぶにべったりと手の平が触れ、知らずそこに力が入る。それが分かったからなのか、トピアスは両手でそのまま左右に俺の尻を開いて、俺さえも知らない場所を暴いた。
「っ……あ、そこはっ」
「大丈夫です。舐めません。……でも、キャロのここ、ひくひくして誘ってるみたいです」
「……ばかやろ」
開かれたそこに、トピアスの息がかかって恥ずかしくて仕方ない。ただでさえイってからもあちこち舐められて触れられて、また身体が疼いてるのに。
どうにもならずに枕に顔を埋めると、その開かれたところにぴったりと熱が当てられた。トピアスが動きだし、それに合わせてベッドが微かに軋んだ。
「っ、なに、してっ」
「んっ……僕の匂い、つけてもいいんですよね?」
腰を掴まれ、そのまま、……そのまま、トピアスは彼のペニスを俺の尻の谷間に擦り付けた。押し付けるように動かれ、俺のもベッドに擦れて、快感が生まれる。
トピアスの息が荒くなって硬さが増すのが分かる。押し付けられているだけのそれが、まるでもっと先のことをされているような錯覚さえして眩暈を覚えた。
「くっ……だめ、だ」
快感と焦りから呻くように声を絞り出す。不満そうな声が上がるが、それを振り切るようにして力を使って彼の身体を少しだけ浮かせて身体を反転させ、直ぐに彼の身体を抱きしめた。横向きになって、驚いた顔に申し訳ない気持ちになりつつ、しっかりとその腰を引き寄せる。
「……俺も、もう一回出したいから。ベッドが汚れるだろ?」
そういうのはせめて準備してからにしようというと、トピアスは俺の胸に抱かれながらも、俺と同じように腰に手を回してきて、そのまま腰を擦り付けてきた。
もどかしくもはっきりとした刺激に、自然と足を絡めて、お互いのペニスを合わせあう。
俺の意図が分かったらしいトピアスと唇でも求め合い、夢中で快感を追いかける。二人が思い思いに動くせいで、さっきよりもベッドから出る音が大きなものになる。
名前を呼びあいながら、吐息を肌にかけながら、お互いが興奮していることを教え合う。抱きしめる手に力が籠り、引き攣ったような声が漏れた。ペニスから溢れる先走りの量が増えるにつれ、強く密着した場所から内緒話よりずっと小さな水音が出始め、滑らかになるそこの摩擦が気持ち良さを高めていく。
もどかしさに耐えきれなくなったのはほとんど同時で、トピアスの手と下肢に力が入ると同時に、俺も腕に力を込めて身体を転がした。俺は仰向けに、トピアスはうつ伏せになって、絡めた足をほどき、馬の背に飛び乗ったかのような体勢でトピアスが激しく腰を動かした。
「ん、んんっ、ぁ、それっ……やばい、……イく、ぁ、イ、く、ぅ……!」
囁き程の声で伝える。切なげな響きはペニスへ伝わって、更に感度を高めるようだった。下腹部で重なり、挟まれている二本のペニスが脈打ち、跳ねる。
「ぼく、もっ……あ、イくっ」
瞬間、縋りつくように一番強く抱きしめあった。肌が粟立ち、お互いの身体の間に精液が出ていく。暖かいそれを感じながら、気持ち良さが静まるまでゆっくりと、淫らに腰を動かして余韻に浸った。
――さて。俺はこれで終わりだと思っていたのだが、トピアスは違ったらしい。
股間が落ち着くとしばらくはキスをしたり身体に優しく触れたりしていたのだが、彼の手が俺の胸に這い出したあたりで雲行きが怪しくなった。
散々優しい手つきでいじられたそこは触れられるとじんじんして、俺はその刺激に僅かながら反応するようになっていた。
「んっ……トピアス、それ、やだって……気持ちいいから……」
やんわりと肩を押しても、トピアスは楽しげに俺の胸を弄ってばかりで俺の言うことを聞き入れるような素振りはない。
あれ、と思ってもすでに遅く、俺は最終的に許しを乞うほど全身を、足の先に至るまで舐め尽くされた。下の毛に至っては毛づくろい並みに手で、舌で整えられたし、精液も搾り取れるだけ搾り取られた。挙句至る所で射精され、出したものを塗り込まれて、結局シーツを汚した上に尻の穴までトピアスのペニスでぐりぐりと押されて、彼が満足する頃には、放課後は随分過ぎているようだった。
慌てて狭いシャワールームで泡にまみれつつシーツを足で踏み洗いながら、まだ足りなそうに俺のソコを解そうとするトピアスと攻防を繰り広げつつ、後始末が終わる頃には日の傾きも随分なものとなっていた。石鹸で匂いが消えるのをいやがられたものの、流石に精液臭くてはどこにも行けない。そうして身体を洗い、シーツを干す頃には俺は体力を使い果たしていた。
これでは研究室に行って話を聞いても頭に入らないに違いない、とため息をついたものの、俺に髪を乾かしてくれと無邪気にねだるトピアスを見ているうちにまあいいかと思えてくるから不思議だ。
突っぱねるどころかこっちがそうしても離れる様子がない彼に安心し、抱きしめる。頬ずりをするように彼の頭が動くのが心地いい。頭を撫でると俺の手に沿って耳がぺったりと横たわった。
ちなみに、休日明けの放課後に先生達のところへ向かう前にとユーゴの元へ顔を出すと、しかめっ面で「臭い!」と叫ばれて部屋を叩き出された。たった一回の行為ではあったものの、すでに俺には獣人にしかわからない強い匂いがついているらしく、俺とトピアスの関係が深くなったことはすぐに寮中に知れ渡ることになった。
ロビーを介さずに部屋に隠し連れ込んだという事実と、しっかりと俺に抱きついて離れない小さな体に熱が芽生える。トピアスの口や鼻から漏れる息と、声にたまらなく股間が反応した。でも、先を急ぐ気にはなれなかった。唇と舌を合わせ、絡ませて求め合う行為はいつまでもそうしていたいと思う位気持ちよかった。
膝の上で何度もトピアスが姿勢を変える。ここへ来た時には腹元にあった彼の荷物は早々にベッドへ投げられていた。
「ふっ……落ち着け、逃げないから」
最初に失敗したからか仕切り直しは俺からしたものの、トピアスは次第に体全部を俺に擦り付けるように動き始めた。少し性急にも思えるものの、つんとされるよりはずっといい。うっとりと俺を見つめて名前を呼んでくれるのが嬉しい。頬を赤くして、ぴったりとくっついた身体から彼の熱を感じる。彼の腰に手を回してしっかりとそこをくっつけると、布越しに硬くなったその感触がはっきりわかった。
「あっ……」
怯えたような声に、怖いかと尋ねる。
「触ってもいいか? ……大丈夫。トピアスが嫌だったら、しない」
俺は元々、単純に肌を合わせるのが好きな方だ。アベルとも殆どそうして抱き合うことが常だった。今からすれば彼はどこまでも俺に合わせてくれていたのかもしれないが、今の俺は違う。トピアスの、もっととろとろになった、可愛いところが見たいと思った。
キスで乱れた息を整えながら、トピアスはじっと俺を見つめた。赤くぽてっと濡れた唇から、小さく声が漏れる。
「……キャロが好きだと気づいてから、ずっと身体が暴れ出しそうなのを我慢していました。どこでも擦り寄って、押し付けてしまいそうで……っ、だから、あっ」
最後まで聞かず、彼の腰紐をほどいてシャツをたくし上げる。
「なんだ。トピアスは俺よりずっと大人だったんだな」
自分の気持ちを自覚することもそうだし、その早さも。
「じゅっ……獣人は、人間とは違う、から……すぐに体が反応してしまうから……!」
「うん。すごく熱くなってるな」
俺たちの着る服は寄付だとか、上級生から着れなくなったものをもらったりだとかで新品はまずない。獣人なら特にそうだ。尻尾の穴の微調整のために、ズボンの後ろ側はボタンで調整できるようになっている。
トピアスも例外ではなく、着回された服はよれよれで柔らかくなっていて、スラックスの上からでも彼の熱が分かった。
優しく触れると彼の身体が跳ね、気持ち良さそうな声が漏れた。汚さないうちにと下着ごと取り払う。トピアスは俺が脱がせやすいように自分で動いてくれたからそう難しくはなかった。尻尾が痛くないようにボタンを外して、ウエストを緩める。もともと彼には大きなそれは脱がしやすい。脱がしきる際にトピアスの靴を床に落とした。
俺の膝上にまたがって靴下とシャツだけを身に纏い、勃起したペニスがシャツの裾を被って頭だけを出している姿はいやらしくて、ずっと見ていたいような、もっと先に進みたいような気持ちになった。
「……獣人は匂いに敏感ですから、キャロからあの文官の匂いがした時、ショックでした。ユーゴさんから直接聞くまで、キャロはユーゴさんが好きなんだと思っていて、ぼくはあなたからユーゴさんの匂いがしないかと、そればかり考えて……なのにずっと、キャロにぼくの臭いをつけたくて」
ユーゴにそんなことを聞いたのかと尋ねると、昨日俺が倒れてから医務室でそういうことを言われたそうだ。
トピアスの急な変化は、それを我慢しなくて良くなったから……で、いいんだろうか。
「いいぞ、好きなだけつけても。……でも、今はお前のこっちが先」
一番側にいた獣人がユーゴで、あっちからはまったくそういう事を聞かなかったからトピアスがどんな思いをしていたかは分からない。ただ、彼が俺と同じ『好き』という気持ちを持ってくれているのだけを噛み締める。ここが一番大事だと思った。
手で直接、トピアスのペニスに触れる。彼の両手が所在無さげにあちこち触れてくる。俺よりまだずっと小さな手は気持ち良くて、自分で先にシャツのボタンを外した。
サスペンダーを外してシャツの前を開き、彼も同じようにする。
「寒くないか?」
「……暑いくらい、です」
とはいえ、靴下だけ履いているというのも心許ないだろうと俺はそのままトピアスの肌に触れた。味わうようにじっくりと滑らせて、腕の中に収まる温もりの柔らかさを堪能する。遠慮がちに俺に触れてくるトピアスに気持ちいいことを伝えると、少し充血した、水気の多い目が俺を見つめた。
「今まで、ごめんなさい」
しょげつつも今している行為のせいで色気を孕んだ顔に、俺が言えるのは一つだけだ。
「今こうしていられるから、もういい」
右手で背中を撫でて、左手で彼のペニスを愛撫する。唇は唇同士仲睦まじく触れ合って、俺に応えようとする彼のそこをたっぷり可愛がった。
キスの合間に名前を呼ぶ度に今までの態度の謝罪と俺が好きだと言ってくれる声がたまらなく嬉しい。腰が揺らめき、息は今一度荒くなり、俺を呼ぶ声量を殺した声は甘く濡れて、俺の胸の中をぐずぐずに溶かした。
トピアスのペニスは俺よりも小さくて、俺の手の中で生き物のように控えめに動いていた。気持ちいいからだろう、そうしてぴくんとする様子はトピアスそのもののようでいて、もう一人トピアスがいるようだった。大切に、丁寧に、でも、存分に撫でくりまわす。
夢中になってトピアスのペニスを扱いていると、彼の表情は快感に歪んで、声は切羽詰まったように高くなった。
「ぁ、……い、っちゃ、」
「いいよ、だして」
「っ、あ……!」
敏感な亀頭とカリを散々撫でた後、仕上げとばかりに竿を素早く追い立てると、トピアスは身体全部に力を入れ、小さく呻いて精液を吐き出した。それを直接腹で受け止め、絞るように手を動かして、目を閉じて快感に浸る彼の頬や鼻先にキスを送る。
落ち着くまで抱きかかえていると、不意にトピアスの方からキスがきた。直後、俺の股間に彼の手が這う。驚いて息を詰めると、唇を離したトピアスが至近距離で俺と目を合わせながら囁いた。
「ぼくも……したい」
イったから余裕が出てきたのか、キャロは俺の腹に出した自分の精液をそのまま、軟膏のように塗り広げた。
「おっ おい?」
「……さっき、匂いつけてもいいって」
確かに言った。言ったし、トピアスの行動に驚いてあげた声の中に、もしかしたら咎めるような響きがあったかもしれないのは謝る。別に嫌なわけじゃないし。
だから、泣きそうな顔をするのはやめて欲しい。
どうにかキスを繰り返して宥める。獣人がこういう時どういうことを望むのかは全く未知数で、それは一つ一つ教えてほしいというと、どうにかぐずりだす寸前だったトピアスの涙は収まりを見せた。
その手が俺のスラックスへと延びる。腰を浮かせて協力すると、下着ごとはぎ取られた。興奮で頭をもたげている俺のペニスが顔を出す。恥ずかしくなるものの、このままだとトピアスが落ちそうだと靴を脱いで完全にベッドへ乗り上げた。壁を背に、スラックスをずらすと、トピアスが丁寧に脱がせてくれた。期せずしてお揃いの格好になったものの俺がやっても俺は楽しくもないし興奮もしない。
丁寧に俺のスラックスと下着を畳んだトピアスは、嬉々として俺の股座に入り込んだ。大人しく膝を折って足を広げ、それを受け入れる。そのままトピアスの小さな手が俺のペニスに伸びるものだとばかり思っていた俺は、おもむろに頭を下げた姿にまた驚いた。その隙にトピアスはあっさりと俺の亀頭を舌で舐め、その感触も含めて、俺は腰が揺れるのを止められなかった。
「っちょ! まっ……!」
ろくに言葉も出せないままトピアスの肩を押しやり、既にぱっくりと咥えている俺のものを出させる。彼は最初こそ俺のを放そうとしなかったが、俺の必死の抵抗を受けて渋々顔を上げてくれた。その態度と同じように、俺を見上げてくる顔は不満そうだ。
「ちっ、ちが、嫌なんじゃなくて! 俺、身体洗ってねーからっ」
「構いません。……この方が、キャロの匂いが強くて好きです」
トピアスは言いたいことはそれだけかとばかりに再び俺の股間に顔を突っ込んだ。今度はもう離さないとばかりにペニスを嬲られ、俺はその気持ち良さに翻弄されてしまう。熱いトピアスの口の中。ぐちゅぐちゅとうがいでもするかのような音が漏れ、中で彼の唾液と舌に揉まれているのを感じる。時折吸い上げられて、泣いたときのような声が漏れた。
こんなのは知らない。アベルとは本当に触れ合うだけで、舐めると言っても胸にキスをしたりとか、そういう程度だ。知識としては知っていても、実際にやったこともされたこともなかった。
動揺から逃げるように後ずさりをしたくても上手く行かず、ただ上半身が後ろに倒れただけだった。肩が壁にぶつかり、トピアスが何をしているのかがはっきりと見えてしまう。
トピアスの口淫は激しいようでいて丁寧だった。洗ってないと言ったのに、まるで汚れを落とすように上から順番に唾液で濡らして舌で舐めていく。手で竿を支えて付け根を舐める舌がいやらしく光って、ぴちゃぴちゃとこれ見よがしに音を出していた。見せつけられていると分かるのは、トピアスが俺のを舐めながらこっちを見るからで。
「キャロ、耳まで真っ赤ですよ」
敏感な場所で笑われてぞくぞくと鳥肌が立つ。かわいい、と筋を舐め上げられて、気持ち良さに尻に力が入った。お前がそんなことするから、と小さく反抗すると、双眸を細めて嬉しそうに笑う。頬に当たりそうなくらい近い俺のがなければ、トピアスの唇が怪しく濡れ光ってなければ、もっと可愛かったのに。
状況を忘れるには程遠く、彼の笑みは俺の身体を熱くさせただけだった。自分の鼓動が煩い。恥ずかしさが勝って仕方が無い。だが、トピアスの頭の向こうに見える尻尾が忙しなく振られているのを目の当たりにして、そのことに胸がくすぐったくなった。喜んでいるのをやめさせるのもどうかと思ってしまう。本当に、俺は彼には甘い。
二の句がつげない俺を余所に、トピアスはまた俺のを咥え込んだ。頭を激しく動かして、捻じるような動きさえ混ぜながら俺を追い込んでくる。慣れた動きによくわからないショックを受けつつ、快感に流される。
「く、ぁ……!」
頭を休めていても、舌先で先端を、胴体は手で引っ切り無しに刺激され続けて、俺は腰を揺らしてしまう。そうするとトピアスは俺のを弄びながら、からかうように俺へ視線を寄越す。それでまた恥ずかしくなって、俺の目にも涙が浮かんだ。
「はっ……ん、トピ、とぴあ、あっ」
シーツを掴んで快感に腰を揺らしていると、トピアスの左手が俺の右手を包むように覆い被さった。右手をひっくり返してトピアスに触れようとすると、彼の手が俺の手を優しく撫でた。それだけでそこから気持ち良さが泡立ち、震えてしまう。逃げ惑うように跳ねた手は絡め取られて、俺はシーツの代わりにその小さな手を握りこんだ。
トピアスが俺の顔を確認しながら、ペニスのあちこちへ舌と指を這わせていく。玉を咥えて袋を引っ張られて、小さな口の中で転がされる感覚に吐息が漏れた。袋の中央の縫い目をそっと舌先で触れられ、むずむずするような気持ち良さに手に力が籠る。そしてその舌先が袋からさらに下へと移動し、その、尻の穴の上を優しく愛撫した。そんなところが気持ちいいなんて、知らない。
「……キャロのお尻の穴、今ひくってなりましたよ」
トピアスは嬉しそうに俺の下肢を押して、そこを指先でなぞった。
「っだ、だめだ、そこはっ き、汚すぎるから絶対やめろ!」
慌てて強く抗議すると、トピアスは少しむすっとした声ながらも分かってます、と手を離した。それに安心して力を抜くと、その隙にと言わんばかりのタイミングでペニスへの愛撫が再開される。
「ん……!」
トピアスの唾液でべたべたになったそこは、手で触れられるとぬめって滑って、むちゃくちゃに手を動かして欲しくなるほど気持ちいい。
舌を硬くして鈴口をこじ開けるように弄られて腰が浮く。濡れた唇から出ている赤い舌が妙にいやらしく感じられて、俺は息を詰めた。
「我慢しないでください」
我慢してるわけじゃない、と言いたいところだが、それは出来なかった。優しく言い聞かせるような声色に反して、我慢など許さないとばかりにトピアスの手が早くなったからだ。俺の顔を見るのをやめたトピアスは一気に俺のペニスを扱きながらその先に吸い付き、俺は急速に高まった衝動のまま射精の気持ち良さに身を投じた。
「っ……ぁ、あ、あっ」
トピアスの頭を離す余裕さえなかった。自分でやるのとは全く違う気持ち良さ。射精した後の愛撫は止まらず、ゆっくりとした動作で竿を舐められ、可愛がられる。俺はその気持ち良さのまま小さく、しかしいやらしく腰をくねらせた。何も考えてなかった。
快感が広がるにつれ、その強さも薄まってくる。一つ大きく息を吐いて俺の呼吸と興奮が落ち着くころには、トピアスは俺のペニスを綺麗に舐めつくしていた。それだけならまだしも、俺の出したものさえ全て飲みこんだようで、トピアスは満足そうな笑みを浮かべて俺の胸にぴったりくっついてきた。
「……っ、マズイ、だろ……そんな、そんなの」
「美味しくはないですけど、でも、キャロのだし」
弾んだ声でトピアスが俺の首筋に舌を這わせてくる。鎖骨を撫でられ、そのままシャツを脱がされた。これで靴下以外何も着てない状態になる。
寒くは無い。ただ、一区切りついた所為かこのままトピアスと肌を合わせたまままどろみたくなった。
そんな俺の気持ちを吹き飛ばしたのは、俺にくっ付く彼の言葉だった。
「じゃあ、今から順番に……ぼくの匂い、キャロにつけていきますね?」
「え」
精液を腹に塗りたくったのは違うのかと聞くより先に彼は動き始めていた。右側から順番に、肩、二の腕、肘、と指先へ向けて丁寧に舐められ、キスをされる。指先なんかは一本一本丁寧に口の中に咥えて、舌で舐られた。それだけなのに、さっきの口淫を思い出してむずむずしてくる。しかしトピアスはそれ以上俺を煽るようなことはせずに指から口を離すと、今度が俺の腕を上げさせて腕の内側や腋を舐めはじめた。
「っ、ちょ、ぶふ、くすぐったいっ……」
堪えきれなくて身をよじりながらもがくと、トピアスは俺が嫌がってないのが分かるのか、くすくすと笑いながらじっとしていてください、とこぼした。
「だってくすぐってーよ」
「くすぐったい所って性感帯らしいですよ」
さっきと違って執拗にそこばかり狙われるわけでもないから、何とか笑い死にそうになるのは避けられた。あばらを辿って真ん中に来たトピアスから、からかうような目が向けられる。俺はトピアスの口から洩れたその内容に言葉を詰まらせた。
「……なあ、その、口で舐めたのもそうだけどさ、お前、そういうのどこで覚えてきたんだ?」
授業の中に人間や獣人の体について学ぶものはあるが、トピアスは三年だ。流石にこっちの知識は授業で明け透けに習うものでもないから、友達から聞いたり、あるいは……上級生から教わったりする、のがここでは一般的だ。獣人であれば、身体を明け渡したりすることもある。
俺の言いたいことが分かったのか、トピアスは苦笑した。
「別に誰かに教わったわけじゃないです……人づてに聞いた話だとか……自分で触って気持ち良かったことをしただけですよ」
臭いをつけたいのは獣人特有らしいですけど、とトピアスは言いながら、俺の胸にある色の変わったそこを舐めた。
「そこも……?」
「気持ち良くないですか?」
上目遣いで聞いてくるが、そんなに特別に気持ちいい感じはしない。それが顔に出ていたんだろう。トピアスは右側を口で、左側を指先で弄りだした。優しく触られていると、その内、そこがじんじんと響き始めた。乳首がぷくりと勃ちはじめ、そこから小さな刺激が下へ響いてくる。
「ん……あ、なんか、……気持ちいい、かも……?」
トピアスにされてるっていうのも大きいと思うが、撫でるというにも微かな感触に肌が粟立つ。うん、気持ちいい。気持ちいいけど、それ以上にトピアスの手と息と、舌の暖かさが心地いい。
力が抜けてきて目を閉じると、トピアスがようやく乳首から離れた。ヘソに舌を突っ込まれて、それもまたむずむずとする。手がわき腹を滑って、また笑ってしまった。身をよじっても、よじった場所からトピアスの舌が襲う。舐めて、舐めて、ひたすら舐めて、時折柔らかい唇で吸い付かれてちゅ、と音が漏れる。優しくもどこかその気になるようないやらしさで肌を撫でていく両手。はぁ、と湿った吐息がかかり、思いもよらない場所で快感が肌から生まれ、身体の奥へ潜っていく。
俺はそれから逃げるようにしながらいつの間にか俯せになって、背面を存分に味わわれていた。腰から背骨を伝って舌が這い上がり、耳を唇で挟まれ、舐められた。耳の形に添って柔らかな舌先が小さく動きながら俺のそこを蹂躙する。間近で聞こえる吐息と舌と熱と、水音。快感が耳から腰へ落下して、思わず肩をすくめた。
「ひっ」
小さく頭を反らして後ろを向くと、頬にトピアスのキスが来る。吐息と共に耳へ名前を吹き込まれて、ぞわぞわと落ち着かない感触に身もだえする。散々耳を弄ばれて息が上がってきたところで、トピアスがくす、と笑って下へ移動した。尻たぶにべったりと手の平が触れ、知らずそこに力が入る。それが分かったからなのか、トピアスは両手でそのまま左右に俺の尻を開いて、俺さえも知らない場所を暴いた。
「っ……あ、そこはっ」
「大丈夫です。舐めません。……でも、キャロのここ、ひくひくして誘ってるみたいです」
「……ばかやろ」
開かれたそこに、トピアスの息がかかって恥ずかしくて仕方ない。ただでさえイってからもあちこち舐められて触れられて、また身体が疼いてるのに。
どうにもならずに枕に顔を埋めると、その開かれたところにぴったりと熱が当てられた。トピアスが動きだし、それに合わせてベッドが微かに軋んだ。
「っ、なに、してっ」
「んっ……僕の匂い、つけてもいいんですよね?」
腰を掴まれ、そのまま、……そのまま、トピアスは彼のペニスを俺の尻の谷間に擦り付けた。押し付けるように動かれ、俺のもベッドに擦れて、快感が生まれる。
トピアスの息が荒くなって硬さが増すのが分かる。押し付けられているだけのそれが、まるでもっと先のことをされているような錯覚さえして眩暈を覚えた。
「くっ……だめ、だ」
快感と焦りから呻くように声を絞り出す。不満そうな声が上がるが、それを振り切るようにして力を使って彼の身体を少しだけ浮かせて身体を反転させ、直ぐに彼の身体を抱きしめた。横向きになって、驚いた顔に申し訳ない気持ちになりつつ、しっかりとその腰を引き寄せる。
「……俺も、もう一回出したいから。ベッドが汚れるだろ?」
そういうのはせめて準備してからにしようというと、トピアスは俺の胸に抱かれながらも、俺と同じように腰に手を回してきて、そのまま腰を擦り付けてきた。
もどかしくもはっきりとした刺激に、自然と足を絡めて、お互いのペニスを合わせあう。
俺の意図が分かったらしいトピアスと唇でも求め合い、夢中で快感を追いかける。二人が思い思いに動くせいで、さっきよりもベッドから出る音が大きなものになる。
名前を呼びあいながら、吐息を肌にかけながら、お互いが興奮していることを教え合う。抱きしめる手に力が籠り、引き攣ったような声が漏れた。ペニスから溢れる先走りの量が増えるにつれ、強く密着した場所から内緒話よりずっと小さな水音が出始め、滑らかになるそこの摩擦が気持ち良さを高めていく。
もどかしさに耐えきれなくなったのはほとんど同時で、トピアスの手と下肢に力が入ると同時に、俺も腕に力を込めて身体を転がした。俺は仰向けに、トピアスはうつ伏せになって、絡めた足をほどき、馬の背に飛び乗ったかのような体勢でトピアスが激しく腰を動かした。
「ん、んんっ、ぁ、それっ……やばい、……イく、ぁ、イ、く、ぅ……!」
囁き程の声で伝える。切なげな響きはペニスへ伝わって、更に感度を高めるようだった。下腹部で重なり、挟まれている二本のペニスが脈打ち、跳ねる。
「ぼく、もっ……あ、イくっ」
瞬間、縋りつくように一番強く抱きしめあった。肌が粟立ち、お互いの身体の間に精液が出ていく。暖かいそれを感じながら、気持ち良さが静まるまでゆっくりと、淫らに腰を動かして余韻に浸った。
――さて。俺はこれで終わりだと思っていたのだが、トピアスは違ったらしい。
股間が落ち着くとしばらくはキスをしたり身体に優しく触れたりしていたのだが、彼の手が俺の胸に這い出したあたりで雲行きが怪しくなった。
散々優しい手つきでいじられたそこは触れられるとじんじんして、俺はその刺激に僅かながら反応するようになっていた。
「んっ……トピアス、それ、やだって……気持ちいいから……」
やんわりと肩を押しても、トピアスは楽しげに俺の胸を弄ってばかりで俺の言うことを聞き入れるような素振りはない。
あれ、と思ってもすでに遅く、俺は最終的に許しを乞うほど全身を、足の先に至るまで舐め尽くされた。下の毛に至っては毛づくろい並みに手で、舌で整えられたし、精液も搾り取れるだけ搾り取られた。挙句至る所で射精され、出したものを塗り込まれて、結局シーツを汚した上に尻の穴までトピアスのペニスでぐりぐりと押されて、彼が満足する頃には、放課後は随分過ぎているようだった。
慌てて狭いシャワールームで泡にまみれつつシーツを足で踏み洗いながら、まだ足りなそうに俺のソコを解そうとするトピアスと攻防を繰り広げつつ、後始末が終わる頃には日の傾きも随分なものとなっていた。石鹸で匂いが消えるのをいやがられたものの、流石に精液臭くてはどこにも行けない。そうして身体を洗い、シーツを干す頃には俺は体力を使い果たしていた。
これでは研究室に行って話を聞いても頭に入らないに違いない、とため息をついたものの、俺に髪を乾かしてくれと無邪気にねだるトピアスを見ているうちにまあいいかと思えてくるから不思議だ。
突っぱねるどころかこっちがそうしても離れる様子がない彼に安心し、抱きしめる。頬ずりをするように彼の頭が動くのが心地いい。頭を撫でると俺の手に沿って耳がぺったりと横たわった。
ちなみに、休日明けの放課後に先生達のところへ向かう前にとユーゴの元へ顔を出すと、しかめっ面で「臭い!」と叫ばれて部屋を叩き出された。たった一回の行為ではあったものの、すでに俺には獣人にしかわからない強い匂いがついているらしく、俺とトピアスの関係が深くなったことはすぐに寮中に知れ渡ることになった。
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