創作男女短編(R18)

宇野 肇

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処女にお清め(物理)エッチはハードルが高すぎる!

宇宙ステーション給仕班所属地球人女性と治安維持特殊部隊所属半機械人型種男性

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「こちら特殊救護班トキ-301・エーリヒ、F89012にて給仕班所属マナリを保護。彼女の暴露量が避難可能量を大幅に超えているため、現地にて緊急処置を行う」
 力が入らない。唯一身体に巻き付けていたバスタオルが剥ぎ取られる。直後、空間浄化剤が焚きしめられる音がした。かろうじて目を開ける。男性の眉尻が下がっているのが見えて、彼のゴーグル越しに目が合った。
「遅くなってすみません、マナリさん。ですが充分間に合う時間なので、どうか安心して」
 焦げ茶色の髪を短く整え、多くの装備品を身体から外しながら彼は――知っている、半機械人型種のエーリヒだ――マスクをずり下げて、安心させるように微笑んだ。

 けたたましく警報が鳴り、区域ごとの防火戸が落ちたのは数時間前のことだ。宇宙条例で移動が禁じられているウイルスが密輸物資の中に紛れていただけでなく、保管していた箱が破損しているのが発見され、その中身が大量に漏れてしまっていたのが判明したというのがその理由だった。
 警報と共に発せられたアナウンスによって、それが有機生命体にとって脅威であることも分かった。空気や水などに溶け、粘膜や経口摂取などしてしまうと神経が侵されて脳へと至り、簡単に言うと性衝動を極端に増幅する。そしてそれを取っ掛かりにして、性的興奮で宿主の頭がおかしくなっている間に脳を破壊し、良くて廃人、悪ければ死に至る危険なものだ。
 幸か不幸か、私のいるこの宇宙ステーション『ヲミナ』には有機生命体がそう多くない。何十人かの地球出身者たる人間しかいないし、それは全体の1%に満たないためだ。
 とはいえ、私を含めた人間が危機に瀕しているのは確かで、早急な対処が求められた。
 そこで投入されたのがヲミナに常駐している治安維持部隊所属の特殊救護班。彼らは様々な種族で構成されており、今回投入されたのは勿論有機生命体でない者たちだ。
 そして私の所へ来たのが、日頃からよく話をする間柄であるエーリヒだった。

 生活用水がウイルスに汚染されたと知らぬまま入浴を楽しんでいた私は、浴槽に浸かったまま身動きが出来なくなっていた。身体がじんじんとして、力が入らないのだ。
 おかしい、と思った頃の警報で、原因が急な病気などではなかったことにほっとしたのも束の間、全裸で発見され、今に至る。
 皮膜汚染を確認後、私は空間浄化剤が焚きしめられる自室で、ウイルスの除去のために専用の薬湯につけられた。汚染されたバスタブではなく、彼が設置したものだ。
 時間を計られ、丁寧に身体を清められた。その後、清潔なタオルで包まれ横抱きにされた私は、やはり彼が設置した医療用の拘束椅子に座らされた。優しく四肢を拘束される頃には、じくじくと淫靡な感覚が身体の奥から湧いてきていた。
「マナリさん、今からやるのは医療行為です。君と俺の間で行われたことは秘匿され、決して漏れることはありません」
「……」
「次は駆逐薬を飲んでもらいます。あと……性器周辺と内部を直接洗浄し、専用の回収装置で一網打尽にします。ウイルスは卵子や精子をエサにして、そこで繁殖する性質も確認されていますから、駆逐薬であえてそこに追い込むんです」
 悍ましい内容だった。
 身体は火照り、妙に敏感になっているのに彼の言うことはすっと頭に入ってくる。それも心と身体がちぐはぐになったようで怖い。
 浅い息を繰り返す私に、エーリヒは私と目を合わせ、私に話しているのだと分からせるように強い視線のまま続けた。
「原始人型種に対する知識は多少あるつもりです。こういった事態に特化した器具を用いることはできますが、女性器への挿入は痛みを伴い、場合によっては傷ついて子を望めない可能性もあると聞きますから、君の身体に合わせた『人道的な』やり方を用いることになります」
 エーリヒはそう言って、メロンソーダのような色の液体が入ったカプセルを口に含むと、歯でカプセルを潰した。ぷち、という音が私の耳にまで届き、その後直ぐに唇同士が触れ合う。
「んぅ……」
 彼の意図を察し、流れ込んでくるとろみのある液体をどうにか嚥下していく。半機械人型種である彼の身体は有機生命体と変わらないように見えるが、私たち人間とは異なるのだと教えてくれたのはもう随分前のことだ。
 彼から与えられる薬を、数回に分けて服用する。まるでディープキスのようだと考えてしまったのは、ウイルスのせいなのか、はたまた元々彼に抱いていた仄かな気持ちからくるものなのか分からなかった。
「んっ……、はぁ、ん、」
 唇が擦れるのが気持ちいい。彼の舌が私の口内にそっと差し込まれて、労るような丁寧な動きで薬液を渡されるのを、滅茶苦茶に舌先を動かして、必死に舐めとる。咳き込まないように気をつけながら全て飲み込む頃には、私の目からは涙が零れていた。
「もう症状が出てますね……。これから快感や、場合によっては絶頂することもありますが、それはウイルスの影響ですから。我慢しなくて大丈夫ですよ。いくらでも声を出して大丈夫ですし、感じてください。洗浄に悪影響はないですから」
 目尻から伝った涙を拭いながら、エーリヒが私に優しく告げる。彼の労る気持ちは充分伝わっているが、その内容は私の頭が駄目になるのが早まってしまいそうなほど刺激的だ。
「……よし。空間浄化剤規定時間散布完了。患者の皮膜上に汚染確認なし……」
 裸の私を自分の目から遮るように、エーリヒは災害用ブランケットを掛けてくれた。空気が肌を撫でる感覚にさえ、妙な気持ちになる。けれど、それが逆に頭を冴えさせているような気がした。
「えー、りひ」
「! マナリさん!」
 声が掠れた。でも、彼が来てくれてから初めて出した私の言葉を、彼は聞き逃さずに拾ってくれた。
「マナリさん、今から処置に入ります。麻酔で眠ってもらうことも可能ですが、……頑張れますか?」
 強張った顔……いや、真剣な顔でエーリヒが言う。途中言葉に詰まったのは、言おうとした内容を飲み込んだからだろうか。どちらにしても、無防備なまま意識を失うのは怖かった。彼が失敗することを恐れているわけではないけれど、こんな自分ではどうしようもない状態で死にたくはない。どうせなら最後まで意識を保っていたかった。
 こくり、と頷くと、少しほっとした顔で彼の表情が緩む。
「では、始めます」
 言って、彼が取り出したのは……どう見ても人間の男性器を模した形の、何か、だった。
「……、?!」
 私がぎょっとしたのが分かったのか、エーリヒが「大丈夫ですよ」と繰り返した。何が大丈夫なものかと言えれば良かったけれど、まるで注射器を扱うような仕草のあと、その先端からびゅっと白い液体が飛び出したのを見て、私はいよいよじっとしているわけには行かなくなった。
「な、なんですかっ、それっ」
「人間の男性器を模した注入器です。これをつかって君の中へ潜り込んだウイルスを回収して、症状を抑える薬を散布します。やはり硬く冷たく細いものでは患者の恐怖を和らげるのは難しいですし、中でそういったものをあれこれと動かすと子宮や膣を傷つけるリスクがあり……。その点これは中に薬を入れた上で傷つけることなく挿入できますし、俺のような半機械人型種なら腰に装着することで最悪患者の身体を支えたり押さえたりしながら処置が可能なので、かなり重宝するんです」
「はぁっ?!」
 それっぽい、と思ったが、そのものズバリだったようだ。そんなもの、この宇宙時代にあってもっと進化していて欲しいものだけれど、今この場でこれよりも最善がないのであれば私は飲むより他ない。問題なのは、『腰に装着する』などという不穏な言葉のほうだ。
「ご安心を。既に拘束しているということもありますが、君の身体を押さえつけるなどと乱暴な真似はしません」
 当然だ。
「地球人は抱擁することでストレスをかなり軽減できるようですからね。俺は地球人ではないですが、少しでも君の不安を拭えるよう努めます」
 彼はそう言うと、なんでも無いことのように薬液を入れたその……疑似ペニスを、寛げたズボンの隙間から下腹部へ差し込み、装着した。
 半機械人型種は身体の部位をパーツとして扱えると聞いたことがあるが、彼のそこから飛び出たペニスもどきはぷるんとして、なのに勃起した姿をしていて、私は唾を飲み込んだ。
「ほ、ほんとうに、『それ』じゃないと、だめなの」
「マナリさん、落ち着いて。これ以上問答するわけにはいかないんです」
 申し訳なさそうな顔をしながら、エーリヒは股間部から飛び出したそれに何かをまぶし、馴染ませるように片手で扱く。ちゅくちゅくと音を立てて、まるで最初から彼のものであったかのように、自然に。それが私の目にはとても卑猥に見えた。
「でも、でも、っ」
 エーリヒが姿勢を変え、腰を落として私の開いた足の間にある……最後の汚染部位にソレを擦りつけた。
「ひぅうっ♡」
 びくん! と身体が跳ねた。まだ先端を擦り付けられただけなのに、ぬるりとした感触に驚くほど快感を覚える。まるで彼の疑似ペニスを求めるようにそこがきゅんとして、求めているかのようだった。
 一人身体を慰めることがなかったなどとは言わない。けれど、だからといってこんな大きさのものを入れたこともなかった。荷が重い。彼の様子から、慣らされるということもなさそうだ。
「痛みはないようですね……このまま進めます」
 エーリヒが私に被さるように上半身を倒して、片手で注入器を支えながら腰を押し進めてくる。私の腰が押されて行かないよう、彼の両手がブランケット越しに私の腰を掴んで支えた。
 めりめり、みちみちと肉が開かれていく感覚。不安なのは、そこに痛みは一切なく、じわじわと快感が滲むことだった。
 あきらかにおかしい。おかしいのに、ぷるんとした疑似ペニスに貫かれる膣壁は柔らかくなっているようで、滞りなく入っていく。
「エーリヒ、っ……ま、待って……おねが、」
「すみません、できかねます」
「こ、こわいのっ! はじめてだから……!」
 どうにか言葉に出すと、一瞬、エーリヒの動きが止まった。でも、直ぐに再開されてしまう。
 当然だ。これは特別な行為ではない。私を救助するための処置にすぎないのだから。患者が痛みを訴えるからと言って、傷を放ってはおけない。これはそういうものと同じで、それ以上でも以下でもないのだから。
 エーリヒは手を放すと、そのまま優しく抱きしめるようにして私の腰を抱き直した。
「配慮が足りず申し訳ないです……口づけも必要でしたね」
「んっ……♡」
 違う。
 違うけれど、甘く唇に吸い付かれて、私は快感が花開くように身体に芽吹くのを感じた。
 一気に甘い痺れと、切ない、ときめきにも似た感覚が全身を奔る。口移しほどの刺激はないものの、ずっと唇を擦り合わせていたくなるような心地よさに、私はうっとりと目を閉じた。
 弛緩した様子を見てか、彼が悩ましい腰つきで作業を先に進めていく。見よう見まねといった感じで、ぎこちない律動にも、快感がぱちぱちと小さく爆ぜていくようだった。
「んぁあっ……♡♡ っん♡ あっ……♡ あぁんっ♡」
 緩いピストンと共に、少しずつ注入器が奥へ入ってくる。ずんずんと内臓を突くような感覚は、痛みとまでは行かなくとも重くて苦しささえある。
 なのに、口から漏れるのは嬌声だけだった。
 腰を抱かれているから、強制的に背中が反っているのもあるだろう。彼の胸板へ向かって胸を突き出すような体勢だ。まるでそこを触って欲しいとねだっているような錯覚に陥りそう。ブランケットに乳首が擦れて、じんじんと甘く疼くのも良くなかった。
「エーリヒ、っあん……っ♡」
「よし……根元まで入りました」
 間近で、エーリヒの精悍な顔がほっと緩む。彼に吐息があるのかと思って、それが思いのほか熱くて、私はソレにさえ感じてしまう。
「んっ♡」
「まずウイルスを回収します。注入器の奥に回収機構があって、そこに誘引剤がありますから、そこに仕舞います。今体内の汚染濃度を調べています。それが終われば、強制的に興奮させられている患部へ薬を注入して、一旦緊急処置は終わりますから」
「あ、あぁっ♡♡ やっ♡ ナカ、動いてっ♡」
「疑似ピストン機能ですね。中を押すようにして優しく刺激するものです。オーガズムの収縮を利用して薬液を奥へ放ちますから、必要なことなんです。不安かも知れませんが、感じて、とことん気持ちよくなってください」
「ひぁあんっ♡♡♡♡」
 きゅんきゅんと中が疼き、快感が溢れ出る。まるで鼓動のように私の身体の内側で響く感覚に、冴えていた頭から言葉が消える。
「あぁあっ♡♡♡ ナカ、おかしいっ、♡ へんっ、だめ、やだぁっ♡♡♡」
「回収している間に君がオーガズムに達することができるよう、刺激を与えています。だから……何もおかしくないです。大丈夫、大丈夫」
 優しく背を叩かれ、柔らかく吸い付くだけのキスが繰り返される。それがより一層頭を溶かしていくようで、私は頭を振って、彼の唇を振り払った。
「ひぅ、ん♡ やぁ……♡ イっちゃ、」
 こんなふうにされていたら、回収が終わる前にイってしまう。
 そう思ってのことだったのに、彼は私の耳に唇を寄せて甘く囁いた。
「いいですよ。いくらでも気持ちよくなってください」
「ぁ、っ……――~~っ♡♡♡♡♡」
 急にきゅうう、と中と足の裏がが冷たく収縮するような感覚の後、私は熱を持った快感が外へ向かって溢れ出していくような感覚を味わった。
 ガクガクと腰が淫らに揺れて、膝が笑う。エーリヒの下で悶えながら迎えてしまった絶頂に、息を震わせながらも必死に呼吸を繰り返す。
「上手ですよ。もうそろそろ回収率が100%に達します。そうしたら、ひとまずの危機は去ったと言い切ってもいいでしょう」
 相変わらずの柔らかな声で、彼が私の首筋にキスを落とす。それが妙に気持ちよくて、注入器を締め付けたのが分かった。
 ……恥ずかしい。いくら説明されても、私が性的快感を味わっている姿が彼に筒抜けになっているというのは、虚しさに近い悲しさがあった。ただの医療行為だと思えば思うほど、こんな機会はもうやってこないのだとうっすら理解する。
 半機械人型種の性欲は薄いと言われている。子孫を残すのに必要なのはデータ化した遺伝子を受け渡すという行為であって、人間のような肉欲はほぼないのだという。ほぼ、というのは彼らが他の種と寄り添いたいと思うことが稀にあるからだけど、基本的に穏やかな彼らが戦闘以外の激しい行為を好んですることはないとも聞く。
 きっと明日以降も、エーリヒは私と話をしてくれるだろう。私が彼に抱いている気持ちを見せなければ、この関係が終わることもない。
 しかし、けれど、だからといって。
 私の中にある好意が、今まさに進行中の行為によって肉欲と結びついてしまった。彼の手で開いたその花を、見せないでいることなど出来るだろうか? ……正直、自信はない。
 今なお注入器を受け入れているナカが、彼とセックスをしているように思ってしまう私の感情と結びついて、ひくひくと反応している。これが彼の感情を伴う行為だったら、どんなによかっただろう。
 ――否。きっとそうじゃなかったから、私は彼の処置を受け入れられているのかもしれない。すくなくとも、こんな風に快感に悶える以外で、平静ではいられなかっただろう。
「回収率98%……99……100! マナリさん、これで山は越えました」
 私を慈しむように、エーリヒの声が弾む。表情も嬉しそうに緩んで、私もほっと息をついた。
「……んっ♡」
「後もう少しです。回収機構には逆止弁がありますし、一旦俺の内部に取り込んで、万が一にも君がもう一度暴露しないようにしましたから。あと……もうひと踏ん張りです」
「ふぁっ♡ ぁんっ♡♡」
 彼が腰を揺らして、まるで急かすように私の中を擦る。少し落ち着いてきたと思っていた身体はあっという間に再び快感に浸された。
 先ほどよりもしっかりと身体を抱きしめられる。ブランケット越しにも肌が擦れて、足の間に納まる彼の体躯を太ももで挟もうとして、出来ないことがもどかしい。もっとねだるように、疑似ペニスを身体の奥へ求めるように、逞しい身体に絡みつきたい。
 腕だって、縋り付いて、彼の髪をかき乱してみたい。揺さぶられる度に私も腰を揺らして、もっともっとと、恥じらいを捨てて、処置なんて捨て置いて、彼が与えてくれる快楽を貪りたい。
 拘束椅子は、私の理性をつなぎ止める最後の砦のようだった。
「んぁあっ♡♡ きもち、いぃっ♡♡♡」
「うん、気持ちいいですね。あとちょっとです」
「あぁあっ♡♡♡♡」
 とんとんと一定のリズムで行われるピストンに、着実に絶頂が近づいてくるのを感じる。
「あっあっ♡ イっちゃ、イくっ♡♡」
「いいですよ……っ、ふ、ぅ……っ、ん、達して……っ」
「~~っ♡ あぁああっ♡♡♡♡♡」
 止まることのない律動に、さっきよりも激しく強い快感が迸った。一際大きく腰が跳ね、ぷしゅ、と勢いよく何かが漏れる感覚があった。
「ん、くっ……」
 エーリヒがそれをどうにか抑えようと腰をぐっと押しつけてくる。その上、彼は私の腰を自分の下腹部へ押しつけるように掴むものだから、それもまた今まで一切触れられなかったクリトリスを押しつぶして気持ちよくて、私は背と喉をのけぞらせて更によがってしまった。
「んぁあ――~~っ♡♡♡」
 腹部の圧迫感がじわじわと増える。薬剤の散布が進んでいるせいだと思うけれど、まるでたっぷりと射精されているかのような感覚にくらくらした。
「くっ……すみません、マナリさん。薬液ではないかと思いますが、何かが漏れて……」
「ちが、あっ♡ それ、へいき、だからっ♡♡ くすりじゃ、ない、からぁ♡♡♡ ぐりぐりしちゃっ……♡♡♡」
 経験はなかったけれど、多分潮吹きを呼ばれる現象だろう。そもそも膣からではなく尿道から出るものだし、彼が塞ごうとする動きは意味がない。私が気持ちいいだけだ。
「し、しかし」
「んぅうう♡ ……はぅ♡ ぅん……♡」
「本当に……?」
 珍しく狼狽えた様子の彼と反比例するように、私の方は薬液が効いているのか落ち着いてくる。彼を安心させるべく頷いて、未だ繋がったままの姿勢もそのままに、その現象について説明をしようと口を開いた。
 瞬間。
「……ぁっ♡」
 彼の身じろぎに合わせて、じわりと快感が滲む。多分、きっと、今なら何をされても快感を拾ってしまうのだろう。
 それほど高まり、敏感になっている身体に戸惑ったのは、私ではなく彼の方だった。
 眉をひそめて私の様子を窺ってくるその顔に私が違和感を覚える前に、彼が発言する。
「まだ感じますか? おかしいな……薬は即効性の高いものですし、そろそろ快感への反応が鈍くなってもいいはず……やっぱり先ほどオーガズムが強すぎて薬液が漏れたのかもしれません。マナリさん、確実に薬の効果を出すため、もう少し続けましょう」
「えっ……?!」
 未だ余韻のさめやらぬ中、告げられた言葉にぎょっとする。相変わらず下肢は拘束されていて、私の力では彼を物理的に止めることは不可能だ。
「あのっ、待って、違うの、これはまだ絶頂した後だからで、ぁっ……ん、ゃっ♡」
「本来なら絶頂の際の収縮にのって薬は勢いよく奥へ流れていくはずで、そもそも膣奥で子宮へ向けて打ち込むので逆流もほぼないはずなんですが……即効性のあるものなのに、まだ快感がのこっているのは見過ごせません。
 でも、信じてください。これは治るものです。既にウイルスの回収は終わっていますから、しっかり薬液を塗り込めましょう。もう一度薬液を充填します」
「だから違うってばぁ……! あっ♡」
 ぬるりと注入器がずらされて、くちゅ、と愛液か薬液か分からないものが音を立てたのが分かった。完全に抜かれることはなかったけれど、それがより恥ずかしい。
「動かないで、もっと薬が零れてしまいます。……よし。このまま、もう一度早急に奥へ広がるようにしますから」
 手際よく薬剤を追加し終わってしまった彼から、容赦のない言葉が告げられる。
「そ、それってつまり、っ♡ んんっ! やだ、やだやだ、かきまぜちゃ、ぁ♡」
 にゅぷ、と再び深くに挿入される。膣壁が擦れる快感にたまらず嬌声が出てしまう。
「あまり中を擦るのは負担でしょうから、疑似ピストンを先ほどより少し強くしましょう」
 言うや否や、彼に装着された『注入器』が中で動き始める。宣言通り、彼は少しも動いていないというのに、ヴヴヴ、と音を立てて小さく震えながら、私の中で注入器が奥を刺激するのを感じた。
 最奥で私の子宮の入り口を開こうと、何かがこちゅこちゅとそこを弄っている気がする。重たい衝撃が確かにあるのに、中で蠢いているから、感じやすいところも擦れて、気持ちいい。
「やぁああっ♡ やだ、イっちゃ、今敏感なのっ♡ またイっちゃ、う♡ からぁ……!」
「大丈夫です。オーガズムの後、薬の効果が出てくれば快感も引いて行くはずですから」
「ちがう、のにぃい……っ!」
 ちゅ、ちゅ、とエーリヒが私を落ち着かせようと何度もキスをしてくる。
 キス自体は嬉しいけれど、いかんせん、そうされると余計に彼に愛されているようで堪らなくなってくる。私と同じような柔らかな唇は余計に気持ちよくて、足が戦慄く。腰がまた蕩けたようになって、力が抜けていく。
「あっ♡ あっ♡♡ ぁんっ♡ だめ、だめぇ……♡♡」
「安心してくださいね。オーガズムまではウイルスの影響で気持ちよくてたまらないかも知れませんが、本来君が誰を受け入れたこともないのにこんなに濡れて、感じてしまうなんて考えにくい。君が感じなくなるまで、絶対に諦めたりしません」
 恐ろしいことを言う。
 快楽の責め苦が確定したところで、私は抗うことを諦めた。どうせこのまま苦しいほど気持ちよくさせられてしまうと言うのなら、彼を止めるよりも自分が辛くないように立ち回った方が良い。
「わ、わかったっ、わかったからぁ……♡ っん、ぁんっ♡♡ ん、ぁ♡♡♡ だ、だから、っ、そんな、強くしないで……っ♡ や、優しく……して……っ♡」
「……痛みがありますか? すみません、性急すぎたようです」
「ぁっ♡ あっ♡ ん♡ きもち、いぃ……っ♡」
 振動が弱まり、中を突くような動きがゆるゆるとしたものへ変わる。こりこりと良いところを引っかかれて、その度に快感が甘く広がる。
 ただでさえ感度が高まった後だ。このままエーリヒの言う薬の効果は現れないだろう。というか、薬は効いている。今私は、ただただウイルスの影響など関係なく感じているだけなのだ。
「あぁっ♡」
 ぐり、と浅いところを押し広げるように刺激され、膝ががくがくと揺れる。キュンキュンと身体の中が疼いて、甘イキが止まらない。気遣わしそうなエーリヒの顔に、一人乱れている自分があまりにも滑稽で、恥ずかしくて、哀れで……それがより一層いやらしさをかき立て、私の性感を煽る。
 さっきよりもずっと、快楽に夢中になっている自分がいる。もはや命の危機も去り、今彼の前で身悶えているのは患者ではない。ただ性欲に狂い、よがる雌だ。真摯な彼の気持ちを置き去りにして、理性で快楽を下すことができなかった獣。
「えーりひ、えーりひっ♡ も、たすけ……っ♡♡♡」
「はい、ここに。大丈夫です。助けますよ。また元の生活に戻れます。君は間に合ったんです」
 彼の名を呼びながら、ぴくんぴくんと快感に身体を跳ねさせて、ねっとりとしつこく、けれど優しく機械に中を暴かれ、何度もイく。
 呼吸を乱す私に、まるで見当違いなことを言って私を安心させようとする彼の手が私の頭を撫でた。突然の甘やかな触れ合いに、私の溶けきった頭は強烈な快感に突如絶頂へ向かう。
「~~っ♡♡♡♡♡」
 喉を引きつらせながら、最奥から溢れた快感の濁流にのまれる。
 溺れる、とイきながら息もままならなくなった私の唇に、彼のそれが触れた。口内を吸われるような、息を吹き込むような空気の流れを感じたけれど、確かではない。
 それが覚えている限りの、私と彼の『処置』の全てだった。

******

「本当にすみませんでした!!!!!」
「……えっと……」
 あの後。助け出された私はバイタルに問題がないことを確認後、給仕班として戻ることを許された。給仕班には何人か人間がいるし、食事というものが様々な理由で必要な種が大半を占めることから、皆私を心配して、気遣ってくれた。直属の上司からは暫く療養するように言われて、宇宙標準時間で一週間、休みをもらうことになった。
 それ以外で、後遺症などのチェックのためしばらく定期検診を続けるよう言い渡されたことを除けば特筆すべきことはない。エーリヒとの関係は……まあ、彼も特殊部隊の衛生兵だから、いろんな後始末への協力だのなんだのとあるのだろう。宇宙ステーションの治安維持に関わる部隊の人たちはそもそも皆忙しそうにしていて、誰とも直接話す機会がなかった。

 彼が私の前で『土下座』をしたのは騒動の当日から数えて三日後のことだった。
 突然防衛班のトップに呼び出されたかと思ったら、エーリヒが菓子折を持って入って来て、なんだろう? と疑問に思った直後のことだった。
 何度も練習したのか、迷いないその動作に目が白黒としてしまう。防衛班トップの執務室にあるソファで紅茶をいただいていた私は、エーリヒの行動になんの反応も示さない彼の上司――ローワン・アースという、地球出身の麒麟児だ――にも驚いたけれど、そこで漸く、呼び出しがエーリヒのためのものであったことに思い至った。
「か、顔を上げて、」
「できません……! 自分の不勉強のせいで、君にとんでもないことをしてしまったと、今日は謝罪の機会を設けていただいた次第です……!!!!」
 何のことを言われているのかわからない。
 どれだ……? と思っている空気が伝わったのか、ローワンが退屈そうに言葉を付け足した。
「彼は先日の緊急処置についてあなたに謝罪したいことがあるということで、自分一人ではあなたを怯えさせてしまいかねないと僕に付き添いを願い出た。今やっているのは、君のルーツである日本の、伝統的で最上の謝罪スタイルだと聞き及んでいる」
「は、はあ」
 聞きたいのはそこじゃない。そこじゃないが、私はひとまず頷いた。どうやらエーリヒが、原始人型種についての情緒的な情報に触れたらしいことは分かった。
 とすると、あの『処置』が殆ど性交であったことや、それを特別の愛情・信頼表現として用いることや……時に依存症となるほどに強い快感を伴うものであることなどを知ったのだろう。
「……すみません、ローワンさん。ここはあなたの執務室であることは承知の上で恐縮なのですが、……その、極めて個人の尊厳に関わる話になりますので、席を外していただいても?」
「構わない。部屋のすぐ外に待機していよう。ドアは少し開けておくが構わないだろうか?」
「はい、それで結構です」
 ローワンさんは落ち着いていた。私とエーリヒの間になにかのっぴきならないことがあったのだと分かるだろうに、緊急処置についての一切を秘匿し、患者の尊厳を守るという原則を遵守している。多分、今から私が話そうとしている内容についても、聞こえないように配慮してくれるだろう。
 土下座したまま動こうとしないエーリヒを見下ろしながら、私も多少動揺はあったものの、比較的落ち着いていると言える。
 ……ならば、きっと大丈夫だ。
「顔を上げて、エーリヒ。あなたはなにも間違ったことなどしていない。そうでしょう?」
「……処置に関して……対応は適切だったと考えています。しかし、地球人の……いえ、君の体内からウイルスを回収した後のことは、誤りだったと言わざるを得ません……!」
「あなたは私のために最善を尽くした事実が変わるわけではないわ。それに、地球のような辺鄙な場所なんて、そもそも知っている人自体少ない。そこの文化や、生命体としての特徴なんて知らない方が当然と言えるわ」
 エーリヒの身体は微動だにしていなかった。私はしゃがんで、彼の頭を撫でた。あの時できなかったことだけど、あの時とは状況も心情も異なっている。
「あなたは後から私が『あの行為』について特別視している文化圏にいたことに気づいて、でも公にすれば一層私の尊厳を傷つけると思って、こうしてローワンさんと一緒に私的な謝罪に留めた。公的なものでないことに対する謝罪も含んでの土下座ということね」
「……その通りです」
 まだ頭は上がらない。彼の後頭部は襟足を刈り込んで、首が露わになっている。電脳へのアクセスのために端子を差し込む穴が皮膚に埋もれているのが見えた。そこは彼にとって急所に近い。様々な情報をやりとりするための場所で、人間で言う……脳や性器のようなもの。
「……私があなたに聞きたいことがあるとすれば、一つだけ」
「はい」
「あなた、もし私が後遺症があったとして、それの治療にと他の誰かをあてがわれたら、嫌?」
 びく、と彼の身体が揺れた。
 そっと、頭に置いていた手を頬へ滑らせ、彼の顎に引っかけてゆっくりと引っ張る。抵抗もなく、恐る恐る上がってきた彼の顔を確認して、改めて両手でその頬を挟んだ。
 緊張で強張った顔色は、いいとは言えない。
 処置の時とは全く違うその表情に、私は心の奥が疼いた。
「……嫌かどうかでは、判断できません。誰がやるとしても適切に行われるべきだとしか……。ただ、」
 エーリヒが瞳を微かにゆらし、迷いながら言葉を紡ぐ。
「俺はもう知ってしまいました。あの行為の意味を。そして、もう親愛という言葉から逸脱する気持ちを、あなたへ抱いていることを」
 じっと私を見つめてくる瞳はどこまでも真摯だった。だから、私は彼を手招いて、そっと耳打ちを。
「あなたが好きよ。だから、次は『そのつもりで』しましょう」
「……!」
 はっと彼が顔を離し、まじまじと私を見る。それから、不意に顔を真っ赤にして、片手で顔を隠した。
「……快楽回路がおかしくなってしまいそうです」
 そうしてぽつりと呟かれた言葉に、私は今度こそ破顔した。
「今度は私に抱きしめさせてね」
「!!!」
 今まで一度も見たことのない彼の感情の揺れが嬉しい。もう少しだけ、と私からキスをすると、エーリヒはこれ以上ないまでに私を見ながらか細い声で「おかしくなるってば……」というものだから、いよいよ声を上げて笑ってしまった。
 無論、直後にローワンさんから用が済んだら出て行くようにと廊下へ放り出されたのは言うまでもない。
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