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伯爵令息・シリル=バーネット様は次男でありながら非常に優れたお方だった。嫡男でこそないが、有事の際に家督を継げる心づもりのある方で、その振る舞いは侯爵令息・クリシュナ=ライアン様からも一目置かれるほどだった。
ゆくゆくは兄を支えるのだと語るシリル様は凛として、子息だけであるこの学び舎にあっても目を奪われるような、そんな方だ。
俺はと言えば、親の希望もあって幼い頃よりバーネット家にどうにか取り立てていただけないかとシリル様の周囲をうろつくしがない子爵家の息子。シリル様が原則として善良な者、あるいは自身がかくあれかしと在るように公明正大な者を好まれる傾向にあることを察知してからは、極力そのように努めている。……と言えば、俺の中身がたいしたことがないことはすぐに分かるだろうか。まあその甲斐あってか覚えがめでたいのはよいことだ。
バーネット家の収める土地は国の中でも北方に位置しており、過酷な環境だが国を防衛する上でなくてはならない領土でもある。土地を求めて南下してくる少数民族と、時に折り合いをつけ、時に小競り合いをしながら国を守っている。夏は涼しく避暑地として人気があり、冬は厳しい寒さに見舞われる。だが山や川が多く、豊かな土壌は動植物をよく育み、人に恵みをもたらす重要な土地だ。
まあ、それは勢力争いに巻き込まれまいとする我がコナー家からすれば、あまり重要ではないのだが。
バーネット家は王都から遠い。そして貴族の権力の競り合いにあまり干渉しない中立派だ。土地は広大で、領土を持たず上流階級に仕えるしがない子爵家としては、なにか貴族間の諍いの煽りを受けても、そちらにコネがあれば伝手を頼って助けて貰えるかも知れないと、そう言う下心があるわけだ。長男と言えども、彼と俺とでは抱えるものや負うものには雲泥の差があった。
ぱっとしない俺だが、シリル様を知ってからはあれこれと感銘を受けて、自分を律することに関してはそれなりにできたと思う。勉学も励むようになったし、シリル様に目をかけていただけるような、そしてお側に侍るからには見合った男になりたいと思って奮起した。癖のない銀髪に、灰簾石のような深い青紫の瞳。白い肌。薄く淡い色をした慎ましい唇。シリル様は見目も麗しい人だったからだ。
どうやら俺のやる気は上手く作用してくれたようで、見た目以外は上々の出来だった。見た目はまあ、凡庸な明るめのブルネットに、ぱっとしない緑の目、そもそも骨格や顔立ちからして特別悪くはないものの美しくもないのだから気を遣うにしても限界はある。それでもシリル様の覚えもめでたく、お側にいても何も言われない程度には上手くやれていた。まあ、今よりもずっと子どもの時分だったこともあって、俺は自分にそれなりの自負があった。
ただ、それはクリシュナ様にお目通りがかなった際に木っ端微塵になったが。
5年前、シリル様が目に見えて柔らかく微笑み、心を開く姿を初めて見た。クリシュナ様はシリル様とは別方向の端整な顔立ちをしている。切れ長のグレーの瞳や通った鼻筋、整えられた眉や少し癖のある黒髪は艶やかで、幼い頃より気品と色気をお持ちだった。そしてなにより、非常に怜悧な方だった。侯爵家嫡男という立場に応えるだけの資質が既に目に見えて分かるような、威厳さえも備えていた。
ああ、シリル様はクリシュナ様を見て育たれたのだ。俺はすぐに理解した。
クリシュナ様を前にすればその他など有象無象だろう。そう思えるほどに分かりやすく、シリル様は彼を慕っていた。それがどんな感情だったのかは、俺には分からない。
ただいつかに開かれた茶会の席以降、シリル様のきらきらとした表情はそっと、麗しいかんばせの奥へと仕舞い込まれてしまったのだった。
今思えば、聡いクリシュナ様のことだ。全てを見透かした上でシリル様との心の距離を離そうとしたのだろう。その目論見は成功した。
「結婚しようとも貴方ほど愛せる人はいまいよ」
「そういうことは好いた女に言うのだな。男同士で寒気がするわ」
俺は知っている。シリル様が弾む心のままに転がした愛の言葉を、クリシュナ様が辟易とした様子で一笑に付したときの、シリル様の顔を。
ゆっくりと、けれどごく自然な表情と間で、シリル様の顔から温かなものが失われていったのを見た。傍目にはなんでも無い軽口の応酬に見えたことだろう。俺は会話に入ることも出来ず、静かにシリル様が遠くなるのを感じた。
後にも先にも、シリル様がそんな風に振る舞われたのはあの時だけだ。クリシュナ様は幼い頃から老若男女関係なくあらゆる人間から言い寄られていただろうから、心底うんざりしていたのだろう――そう取られるように振る舞った。周囲の貴族たちもそれとなくその場を取り繕い、話は別の場所で教育を受けている令嬢や、将来の婚約者の話へ移っていったが、俺は暫くシリル様から目が離せなかった。シリル様の姿は、令嬢が恋心を自分で殺したかのような、そんな風に思えたのだ。
シリル様の言葉は冗談ということにされた。そして、はっきりと拒絶を示された。そうしてシリル様は失恋した。
そう理解したのは多分、俺だけだ。
誰も何も言わないし、気づいた者が多いとも思わない。しかし、あれ以来クリシュナ様を見るシリル様の顔からは確かに艶やかな――色香めいたものがなくなっていた。
ああ、隠されてしまったのだ。その時そう思ったことを今でも覚えている。
シリル様さえも綺麗に『なかったこと』にしてしまったその心を慰めることはできなかった。ましてや、曝くような真似など。
その他大勢でしかなかった俺には、ただシリル様にとって常に変わらぬ存在でいることしかできそうになかった。常にいる取り巻きの一人。名前も顔も覚えてもらってこそいたが、それだけの、幼い頃から付き合いのある男。友達と言うには遠く、それ以上近づくのは難しいのに、吹けば飛ぶように離れることは容易にできるような。
しかし代わりなどいくらでもいる立場の男ではいけなかった。有能は難しくとも、有用であるなら。側に居ることが不自然でないのならば、俺はずっとそうやって彼の近くにいたいと思った。それが俺個人が一心に努める、何よりの理由になったのだ。
貴族の子息たちが一所に集められ教育を受ける学び舎で18歳ともなれば、婚約の話の一つや二つではきかなくなる。しかしシリル様にはそう言った『浮いた』話は一切なく、本人もどこかのらりくらりとして水を向けられてもはぐらかすばかりだった。
そうなると姉や妹などを彼の婚約者にと近づく者たちも痺れを切らす。それだけが目的だったとでも言うかのように多くの生徒がシリル様の周りに集まっては消えていった。
残ったのは堅実にバーネット家そのものと繋がりを持とうとしている者か、シリル様個人を慕う者、ゆくゆくはバーネット家のような辺境で騎士として身を立てようと思っている者、既に家族ぐるみで付き合いのある家の者か――学生の間の遊び相手として、下心を持っている者か、だ。
子息ばかり集められ、教師も同性ばかりのこの学び舎で、性的な関係を持つことは珍しくなかった。ある種の伝統と言っても差し支えないほどには。だがそれは本当にこの学び舎に、そして寮にいる間に限られ、卒業すれば自然となくなる、いわばここでだけ存在する特殊なスキンシップの形と言えばいいだろうか。
シリル様はその誘いの全てをはっきりと断ってきたが、何度か『思い出が欲しい』と懇願されているのは知っていた。いわゆる辺境伯の家に育ったシリル様は自分の身を守る術も心得ているため、無理矢理手込めにされたり、と言うようなこともない。
12歳の頃にシリル様に会い、13歳で彼が心を閉ざしたのを見た。だからずっと、次にこの方が心を許す者がいたら、それは一体どんな御仁なのだろうかと思っていた。
「平民が編入?」
その一報がもたらされたのは、シリル様の背が伸び、整った顔立ちはそのままに立派に成長された頃のことだった。
「どうやらそうらしい。ゆくゆくは平民の富裕層にも門戸を開いていくそうだから、試験的にな」
「しかし、一人というのはあまりにも妙ではないでしょうか」
「はは、市井で育ったがその身体には高貴な血が流れているのかもしれんぞ」
珍しくゴシップまがいのことを軽く口に乗せるシリル様に、おやめくださいと返事をする。シリルさまの実家の権力は相当なものだが、それでも場合によっては不敬に当たるかも知れないのだ。――平民にどこかの王族の血が流れていたならば、同じ王族であっても時として罰される可能性もある。
「この学び舎の中に限っては、生徒は生徒でしかないだろう」
「表向きはそう――いえ、シリル様やクリシュナ様のような方がそう思っていても、俺のような者には、とてもそんな風には思えないものです」
「そんなものか」
「はい」
シリル様は鷹揚で、また寛容だ。知的好奇心も旺盛で、そのために誰とも気兼ねなく話をする。クリシュナ様も鷹揚だが侯爵家嫡男とあって相手を威圧する技術が圧倒的で、特に畏敬を持って接する生徒が殆どだ。
そんな中に、たった一人平民が入ってくる。
「どんな者か楽しみだな」
俺はちっとも楽しみなどではありません。
そう言えればどれほど良かっただろうか。しかし、シリル様の顔が本当に心のまま楽しみにしているのだと分かってしまっては、水を差すようなことを口にするのは憚られた。よほど平民の暮らしぶりや文化に興味があるのだろう。俺達には縁遠い世界だ。
あるいは、クリシュナ様であれば波乱も楽しむ度量があるのだろうが。俺は哀れにも生け贄のように選ばれてしまったというその平民に、僅かばかり同情した。
そいつがシリル様の御心を慰めることになるなど、想像もしていなかった。
ゆくゆくは兄を支えるのだと語るシリル様は凛として、子息だけであるこの学び舎にあっても目を奪われるような、そんな方だ。
俺はと言えば、親の希望もあって幼い頃よりバーネット家にどうにか取り立てていただけないかとシリル様の周囲をうろつくしがない子爵家の息子。シリル様が原則として善良な者、あるいは自身がかくあれかしと在るように公明正大な者を好まれる傾向にあることを察知してからは、極力そのように努めている。……と言えば、俺の中身がたいしたことがないことはすぐに分かるだろうか。まあその甲斐あってか覚えがめでたいのはよいことだ。
バーネット家の収める土地は国の中でも北方に位置しており、過酷な環境だが国を防衛する上でなくてはならない領土でもある。土地を求めて南下してくる少数民族と、時に折り合いをつけ、時に小競り合いをしながら国を守っている。夏は涼しく避暑地として人気があり、冬は厳しい寒さに見舞われる。だが山や川が多く、豊かな土壌は動植物をよく育み、人に恵みをもたらす重要な土地だ。
まあ、それは勢力争いに巻き込まれまいとする我がコナー家からすれば、あまり重要ではないのだが。
バーネット家は王都から遠い。そして貴族の権力の競り合いにあまり干渉しない中立派だ。土地は広大で、領土を持たず上流階級に仕えるしがない子爵家としては、なにか貴族間の諍いの煽りを受けても、そちらにコネがあれば伝手を頼って助けて貰えるかも知れないと、そう言う下心があるわけだ。長男と言えども、彼と俺とでは抱えるものや負うものには雲泥の差があった。
ぱっとしない俺だが、シリル様を知ってからはあれこれと感銘を受けて、自分を律することに関してはそれなりにできたと思う。勉学も励むようになったし、シリル様に目をかけていただけるような、そしてお側に侍るからには見合った男になりたいと思って奮起した。癖のない銀髪に、灰簾石のような深い青紫の瞳。白い肌。薄く淡い色をした慎ましい唇。シリル様は見目も麗しい人だったからだ。
どうやら俺のやる気は上手く作用してくれたようで、見た目以外は上々の出来だった。見た目はまあ、凡庸な明るめのブルネットに、ぱっとしない緑の目、そもそも骨格や顔立ちからして特別悪くはないものの美しくもないのだから気を遣うにしても限界はある。それでもシリル様の覚えもめでたく、お側にいても何も言われない程度には上手くやれていた。まあ、今よりもずっと子どもの時分だったこともあって、俺は自分にそれなりの自負があった。
ただ、それはクリシュナ様にお目通りがかなった際に木っ端微塵になったが。
5年前、シリル様が目に見えて柔らかく微笑み、心を開く姿を初めて見た。クリシュナ様はシリル様とは別方向の端整な顔立ちをしている。切れ長のグレーの瞳や通った鼻筋、整えられた眉や少し癖のある黒髪は艶やかで、幼い頃より気品と色気をお持ちだった。そしてなにより、非常に怜悧な方だった。侯爵家嫡男という立場に応えるだけの資質が既に目に見えて分かるような、威厳さえも備えていた。
ああ、シリル様はクリシュナ様を見て育たれたのだ。俺はすぐに理解した。
クリシュナ様を前にすればその他など有象無象だろう。そう思えるほどに分かりやすく、シリル様は彼を慕っていた。それがどんな感情だったのかは、俺には分からない。
ただいつかに開かれた茶会の席以降、シリル様のきらきらとした表情はそっと、麗しいかんばせの奥へと仕舞い込まれてしまったのだった。
今思えば、聡いクリシュナ様のことだ。全てを見透かした上でシリル様との心の距離を離そうとしたのだろう。その目論見は成功した。
「結婚しようとも貴方ほど愛せる人はいまいよ」
「そういうことは好いた女に言うのだな。男同士で寒気がするわ」
俺は知っている。シリル様が弾む心のままに転がした愛の言葉を、クリシュナ様が辟易とした様子で一笑に付したときの、シリル様の顔を。
ゆっくりと、けれどごく自然な表情と間で、シリル様の顔から温かなものが失われていったのを見た。傍目にはなんでも無い軽口の応酬に見えたことだろう。俺は会話に入ることも出来ず、静かにシリル様が遠くなるのを感じた。
後にも先にも、シリル様がそんな風に振る舞われたのはあの時だけだ。クリシュナ様は幼い頃から老若男女関係なくあらゆる人間から言い寄られていただろうから、心底うんざりしていたのだろう――そう取られるように振る舞った。周囲の貴族たちもそれとなくその場を取り繕い、話は別の場所で教育を受けている令嬢や、将来の婚約者の話へ移っていったが、俺は暫くシリル様から目が離せなかった。シリル様の姿は、令嬢が恋心を自分で殺したかのような、そんな風に思えたのだ。
シリル様の言葉は冗談ということにされた。そして、はっきりと拒絶を示された。そうしてシリル様は失恋した。
そう理解したのは多分、俺だけだ。
誰も何も言わないし、気づいた者が多いとも思わない。しかし、あれ以来クリシュナ様を見るシリル様の顔からは確かに艶やかな――色香めいたものがなくなっていた。
ああ、隠されてしまったのだ。その時そう思ったことを今でも覚えている。
シリル様さえも綺麗に『なかったこと』にしてしまったその心を慰めることはできなかった。ましてや、曝くような真似など。
その他大勢でしかなかった俺には、ただシリル様にとって常に変わらぬ存在でいることしかできそうになかった。常にいる取り巻きの一人。名前も顔も覚えてもらってこそいたが、それだけの、幼い頃から付き合いのある男。友達と言うには遠く、それ以上近づくのは難しいのに、吹けば飛ぶように離れることは容易にできるような。
しかし代わりなどいくらでもいる立場の男ではいけなかった。有能は難しくとも、有用であるなら。側に居ることが不自然でないのならば、俺はずっとそうやって彼の近くにいたいと思った。それが俺個人が一心に努める、何よりの理由になったのだ。
貴族の子息たちが一所に集められ教育を受ける学び舎で18歳ともなれば、婚約の話の一つや二つではきかなくなる。しかしシリル様にはそう言った『浮いた』話は一切なく、本人もどこかのらりくらりとして水を向けられてもはぐらかすばかりだった。
そうなると姉や妹などを彼の婚約者にと近づく者たちも痺れを切らす。それだけが目的だったとでも言うかのように多くの生徒がシリル様の周りに集まっては消えていった。
残ったのは堅実にバーネット家そのものと繋がりを持とうとしている者か、シリル様個人を慕う者、ゆくゆくはバーネット家のような辺境で騎士として身を立てようと思っている者、既に家族ぐるみで付き合いのある家の者か――学生の間の遊び相手として、下心を持っている者か、だ。
子息ばかり集められ、教師も同性ばかりのこの学び舎で、性的な関係を持つことは珍しくなかった。ある種の伝統と言っても差し支えないほどには。だがそれは本当にこの学び舎に、そして寮にいる間に限られ、卒業すれば自然となくなる、いわばここでだけ存在する特殊なスキンシップの形と言えばいいだろうか。
シリル様はその誘いの全てをはっきりと断ってきたが、何度か『思い出が欲しい』と懇願されているのは知っていた。いわゆる辺境伯の家に育ったシリル様は自分の身を守る術も心得ているため、無理矢理手込めにされたり、と言うようなこともない。
12歳の頃にシリル様に会い、13歳で彼が心を閉ざしたのを見た。だからずっと、次にこの方が心を許す者がいたら、それは一体どんな御仁なのだろうかと思っていた。
「平民が編入?」
その一報がもたらされたのは、シリル様の背が伸び、整った顔立ちはそのままに立派に成長された頃のことだった。
「どうやらそうらしい。ゆくゆくは平民の富裕層にも門戸を開いていくそうだから、試験的にな」
「しかし、一人というのはあまりにも妙ではないでしょうか」
「はは、市井で育ったがその身体には高貴な血が流れているのかもしれんぞ」
珍しくゴシップまがいのことを軽く口に乗せるシリル様に、おやめくださいと返事をする。シリルさまの実家の権力は相当なものだが、それでも場合によっては不敬に当たるかも知れないのだ。――平民にどこかの王族の血が流れていたならば、同じ王族であっても時として罰される可能性もある。
「この学び舎の中に限っては、生徒は生徒でしかないだろう」
「表向きはそう――いえ、シリル様やクリシュナ様のような方がそう思っていても、俺のような者には、とてもそんな風には思えないものです」
「そんなものか」
「はい」
シリル様は鷹揚で、また寛容だ。知的好奇心も旺盛で、そのために誰とも気兼ねなく話をする。クリシュナ様も鷹揚だが侯爵家嫡男とあって相手を威圧する技術が圧倒的で、特に畏敬を持って接する生徒が殆どだ。
そんな中に、たった一人平民が入ってくる。
「どんな者か楽しみだな」
俺はちっとも楽しみなどではありません。
そう言えればどれほど良かっただろうか。しかし、シリル様の顔が本当に心のまま楽しみにしているのだと分かってしまっては、水を差すようなことを口にするのは憚られた。よほど平民の暮らしぶりや文化に興味があるのだろう。俺達には縁遠い世界だ。
あるいは、クリシュナ様であれば波乱も楽しむ度量があるのだろうが。俺は哀れにも生け贄のように選ばれてしまったというその平民に、僅かばかり同情した。
そいつがシリル様の御心を慰めることになるなど、想像もしていなかった。
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