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しおりを挟む下腹部からの鈍痛で目が覚めた。痛みを和らげようと、腹部を撫でようとすると、柔らかな素肌に触れる。そのまま手を下に滑らせてみても、太ももの辺りまで布の感触がなかった。代わりに、ぬるりとした液体が指に触れる。
裸。
裸だ。
なぜ、と思うより早く、得体のしれないものが体の中で蠢いて、変な声が出た。
「ひッ、やッ、あぁ!?」
思わず出てしまった、甲高い声に混乱する。嗚咽混じりの泣き声が聞こえた。左手で口を塞いでから見上げると、はらはらと大粒の涙を零す、国王が見えた。
状況が飲み込めない。
不測の事態に、目を大きく見開いた。彼の泣き顔に、胸が詰まって窒息死するのではないかと思うほど息苦しくなる。
そして、今まで経験をしたことがない、狂おしいまでの快楽が脳髄に伝わり、己が異常事態に陥っていることに気が付いた。
(な、んだ、これ……!?)
異物が、とんでもない場所に侵入している。震える手を叱咤して、彼と私のカラダの結合部に這わせると、思いがけないものがあった。
それは、ぬるぬるとしており熱く、恐ろしいほど膨張している。
彼は、それを杭のように、誰も触れた事のない場所に埋めていた。彼の肉棒が私の体内に入っていることを確認したが、信じることができなかった。
「良かったぁ……。目が、覚めたんですね……」
「あっ……あぁぁ!!」
左手を剥ぎ取られるように絡め取られ、深々と串刺しにされる。
止めたくても、腕を動かすのも億劫で力が入らない。抱きしめられ、どくんどくんと心臓の音が聞こえる。彼の涙が雨のようにボタボタと落ちてきた。
この泣き虫は、間違いなくあの国王陛下だが、まるで別人のようだ。
上半身は傷だらけで、鍛えられた身体が逃げられないように抑え込むようにして私をベットの上に縫いつけた。
「ッ……ん、ぁッ!!!」
あの、人も殴れない優男と見下していた男が、まるで獣のように私のカラダを貪る。足の指先がつりそうなほど、白い身体が仰け反った。
いったい、どのくらいの時間、彼と繋がっていたのだろう。慣れていないはずの身体なのに、抵抗らしい抵抗はなく、いとも容易く蹂躙される。とめどなく溢れる愛液の中を彼の肉棒は、めりこむように押し入っては、ズルリと引きぬく。
濃厚な交わりの匂いに、私は絶望で真っ青になった。
「やめ、あっ、ぁあ!!」
彼の行為を止めようとするも、力づくで組み敷かれ、よりいっそう彼の動きが力強くなった。ずぶずぶと、彼のものが入ってくる。漏らすまいとしても喘ぎ声が、自然と唇の端から漏れてしまった。自尊心が痛く傷つく。
(なんで彼が、私、を……!?)
ぐるぐると、そのことばかり考えるが、考えがまとまらない。先ほどまで死闘を繰り広げていたはずの彼が、全裸で私を組み敷く。
「いやだっ、ぬっ、抜け!! ……ぁあっ」
猛った肉棒が私の中を裂くように抽挿を繰り返す。内壁に己自身を擦りつけ、欲望をすべて叩き込むように打ちつけられる。
膣が、彼の精液を搾り取るかのように、びくびくと収縮する。
淫蕩な水音が耳に届いた。
言葉にならない喘ぎ声が口から飛び出る。荒々しく私を抉る彼に、目を背けたくなるが、その淫靡な光景を作りだしているのは、間違いなく自分だ。身体が、熱くなる。
(なぜッ、私が、彼としているのだ!?)
確認したくはないが、彼が吐きだしたと思われる精液らしきモノが太ももに、垂れているのがわかる。これでも女だ。避妊しなければ、とうぜん妊娠は免れまい。あまりのことに再び意識が遠くなりそうだった。
「ひぁッ!?」
蹴り飛ばそうと思うにも、完全に組み敷かれた状態で、私が動こうとしたために、その肉棒が中を強く擦った。ゾクゾクと快感が走る。
強すぎる感覚に、全身がバラバラになってしまいそうだった。
「僕だって……」
不明瞭にしか聞こえない、彼の独白を聞くどころではなかったが、彼があまりにも痛切な顔をしていたので見入った。
「僕だって、したくなかった……僕のことを好きになってもらってから、いちゃいちゃして……指輪を渡して……盛大な結婚式をあげてから……らぶらぶで素敵な初夜にしたかった……のに……今、しないと貴方が、死ぬって…………」
悲しげな表情。
どうやら彼なりに、初夜にはこだわりがあったらしい。ピンク色の彼の妄想が駄々漏れだが、気にしない。
気にしたら負けだ。苛々してくる。
(つまり今の今まで、童貞だったということか……)
彼の年齢は、私と同じ。つまり24歳である。私が処女なのはともかく、国王が24歳になるまで性体験が無いとは、驚くべきことだ。
この乙女思考の男のことだ。
パトリシアを初夜の相手として見定めていたのだろう。
(それが私で童貞を捨てることになってしまった、というわけか……)
よりによって私を抱く羽目になって哀れなことだ、とは思う。
しかし、私が死ぬことと、どうして今、こんなふざけたことになっているのかが、繋がらなかった。しかし、どうやら、彼の口ぶりからすると他者の入れ知恵であるような予感がした。
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