魔物は絶滅危惧種になり、貴族の間で性奴隷として高値で売買されるようになりました。【完結】

ちゃむにい

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こぼれ話(後編)

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「ちょっと意地悪しすぎたかな……? ごめんね、僕、好きな人間は、どうしても虐めたくなってしまうんだよ。……気分を損ねないでおくれ。オーガは、お金に糸目はつけないから、エカテリーナの誕生日に間に合うようにしてね。出来るだけ状態の良いものを頼むよ」

クリストフはアドルフを見た。エカテリーナに良く似た蜂蜜色の瞳で、困ったような顔をして見られるのは苦手だった。

「……なぜ、そんな情報を教えて下さるのですか?」
「人間の足搔きを見せて欲しいからさ。常々、僕は思っているんだ。魔物は弱体化して人間の思う侭になったけど、依然として脅威なんじゃないかって。現に、いい女は魔物と楽しんでいるだろう? 僕たち人間の男は、見向きもされない。それに、女のように魔物に抱かれる男もいる。僕も、この見た目だからね。誘われたことは2度や3度じゃないよ。享楽的に生きる結果として、貴族の子供は減るだろう。魔力を持つ者は貴族に多いことを考えると、国家存亡の危機だね。君は、その一端を担ってるわけだ……」

奴隷商として魔物を売買しているが――そんなこと考えもしなかった。国家を滅ぼす気などない。愛国心はあるし、貴族向けに最上の娯楽を提供しているぐらいの気持ちだった。

クリストフの言葉に、アドルフは顔色を変えた。

「僕はアドルフを気に入っているけど、エカテリーナを孕ませるのは別に君でなくてもいいんだよ。ただ、条件を満たす代役を見つけるのが面倒でね。今までの男たちは気に入らなくてゴブリンの餌にしたよ。……せいぜい、エカテリーナのご機嫌取りに精を出すことだね」

巷で耳にするエカテリーナの噂は酷い物だった。夫がいるのに、既婚未婚問わずに男を咥え込む性悪な女。だが、その噂は半分当たりで半分外れだった。
性に奔放ではあったが、その瞳は純粋無垢で穢れなく、性格は大らかで優しかった。まるで棘の無い大輪の薔薇のようだった。堅物のアドルフでさえ恋に落ちるような、魅惑的な女性だった。おそらくは男爵令嬢がエカテリーナを妻の座から蹴落とすために真実に嘘を混ぜ入れて、流布したのだろう。そして、その噂をクリストフは捻じ曲げて利用した。エカテリーナはクリストフと結婚する前、求婚者が山の様にいたというのは有名な話だから、アドルフのようにエカテリーナに興味を抱く人間を減らすためなのかもしれない。

「それと言動には注意を払ってね。じゃないと、君を殺したくなるかもしれないからね。僕は彼女を愛しているから手放す気はない。君は、ただの種馬さ。何しろ僕は、その気になれば姦通罪で告発も出来るんだからね。そうすれば、いくら財力があったとしても、君は終わりさ。……だけど、僕は有能な君を信用している」

クリストフは寝酒として用意された葡萄酒のグラスを傾けて、芳醇な香りを楽しみながら、そう言った。

「今までいろんな人間が僕を裏切ってきたんだ。――でも、君は裏切らないよね? アドルフ」

クリストフは葡萄酒を飲み干すと、アドルフの手を握りしめた。人を人と思っていない冷淡な笑顔に、戦慄する。美しい瞳からは、狂気が滲み出ていて、緊張で手がじっとりと汗ばむのを感じた。




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