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功績
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「そろそろ、その薬を飲むの、やめにしましょう?」
アドルフの指に、そっと白い指が絡み、愛してやまないふっくらとした唇が添えられた。カテリーナの言葉にアドルフは、ついにこの時が来たのかと、血の気が引く思いがした。アドルフは、エカテリーナから向けられる、物憂げな視線に気が付いていたからだ。
「もう私はいらないと……?」
「そうじゃないの。貴方と触れ合う時間は、私にとっても大事だわ。ただ、私は体を大事にして欲しいの。最近、その薬の効果が切れる時間になると、貴方、異常に汗をかくじゃない。年齢を重ねることによって、体の負担になってきているんじゃないの?」
エカテリーナは、アドルフの持っていた薔薇色の液体の入った小瓶を奪い取り、中身を全て床に零してしまった。
「……それに、こんなものに頼らなくても、私、幸せな気持ちになれるのよ」
アドルフはエカテリーナの言葉に驚きを隠せなかった。魔物化したアドルフに抱かれることに拘っていた、エカテリーナの言葉とは思えなかったからだ。
エカテリーナはアドルフの頬を手で包み、顔を近づけると、小鳥が啄むように優しいキスをした。繰り返し重ねられるエカテリーナの唇の感触は、アドルフの欲望に火を付けた。
「エカテリーナ……」
アドルフはエカテリーナを、もっと深く味わいたくなった。エカテリーナの、折れそうなほど細い腰に両手を回し、抱き寄せた。
そして、舌を絡め合わせるような、情熱的なものへと、変えていった。
エカテリーナは唇を放すと、アドルフの瞳を見詰めた。アドルフの瞳には、涙を溢れさせるエカテリーナが映っていた。
「アドルフが私を変えてしまったのよ……ペニスを挿れてもいないのに、こんなキス1つで満たされるだなんて……、以前の私だったら想像も出来なかったでしょうね」
エカテリーナは、アドルフにとって掴みどころのない女だった。手に入れたと思っても、するりと抜け出していってしまう。
ずっと欲しくて、欲しくて、たまらなかった。
それが急に、今なら手に届くのではないだろうかという感覚に陥った。何時になく、しおらしいエカテリーナの告白に、アドルフは指でエカテリーナの涙を拭うと、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「エカテリーナ……。私、長年の功績により、子爵から伯爵に陞爵することになりました」
「まぁ……! 凄いじゃない。子爵になっただけでも凄いのに、伯爵になるだなんて……。陛下の信頼が年々厚くなっている証拠ね。……伯爵になってもまだ奴隷商人は続けるの?」
エカテリーナは手の平を合わせて、祝福をした。それもそのはず、陞爵なんて滅多にない。没落した貴族の末裔ではあったとはいえ、領地すら持っていなかった、ただの奴隷商のアドルフが伯爵まで上り詰めるなど、かつてない、異例の大抜擢だった。
アドルフの指に、そっと白い指が絡み、愛してやまないふっくらとした唇が添えられた。カテリーナの言葉にアドルフは、ついにこの時が来たのかと、血の気が引く思いがした。アドルフは、エカテリーナから向けられる、物憂げな視線に気が付いていたからだ。
「もう私はいらないと……?」
「そうじゃないの。貴方と触れ合う時間は、私にとっても大事だわ。ただ、私は体を大事にして欲しいの。最近、その薬の効果が切れる時間になると、貴方、異常に汗をかくじゃない。年齢を重ねることによって、体の負担になってきているんじゃないの?」
エカテリーナは、アドルフの持っていた薔薇色の液体の入った小瓶を奪い取り、中身を全て床に零してしまった。
「……それに、こんなものに頼らなくても、私、幸せな気持ちになれるのよ」
アドルフはエカテリーナの言葉に驚きを隠せなかった。魔物化したアドルフに抱かれることに拘っていた、エカテリーナの言葉とは思えなかったからだ。
エカテリーナはアドルフの頬を手で包み、顔を近づけると、小鳥が啄むように優しいキスをした。繰り返し重ねられるエカテリーナの唇の感触は、アドルフの欲望に火を付けた。
「エカテリーナ……」
アドルフはエカテリーナを、もっと深く味わいたくなった。エカテリーナの、折れそうなほど細い腰に両手を回し、抱き寄せた。
そして、舌を絡め合わせるような、情熱的なものへと、変えていった。
エカテリーナは唇を放すと、アドルフの瞳を見詰めた。アドルフの瞳には、涙を溢れさせるエカテリーナが映っていた。
「アドルフが私を変えてしまったのよ……ペニスを挿れてもいないのに、こんなキス1つで満たされるだなんて……、以前の私だったら想像も出来なかったでしょうね」
エカテリーナは、アドルフにとって掴みどころのない女だった。手に入れたと思っても、するりと抜け出していってしまう。
ずっと欲しくて、欲しくて、たまらなかった。
それが急に、今なら手に届くのではないだろうかという感覚に陥った。何時になく、しおらしいエカテリーナの告白に、アドルフは指でエカテリーナの涙を拭うと、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「エカテリーナ……。私、長年の功績により、子爵から伯爵に陞爵することになりました」
「まぁ……! 凄いじゃない。子爵になっただけでも凄いのに、伯爵になるだなんて……。陛下の信頼が年々厚くなっている証拠ね。……伯爵になってもまだ奴隷商人は続けるの?」
エカテリーナは手の平を合わせて、祝福をした。それもそのはず、陞爵なんて滅多にない。没落した貴族の末裔ではあったとはいえ、領地すら持っていなかった、ただの奴隷商のアドルフが伯爵まで上り詰めるなど、かつてない、異例の大抜擢だった。
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