僕の白い蝶【完結】

ちゃむにい

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成長

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おそるおそる自分の体を見て、ルークスは驚愕した。あるべきものがなくなり、代わりに大きな胸のふくらみがある自分の体に、ルークスは戦々恐々とした。胸を触ってみても、それは偽物ではなく、しっかりと体に根付いているようだった。

「私……が、女に……? まさか、こんなことが……」

心なしか、声も高くなっている気がした。

「ルークスが悪いんだよ。俺が愛しているって言っても、本気にしてくれないんだから」

拗ねたように囁く王子に、ルークスはギッと睨んだ。

「……例え女になったとしても、私は妻を愛しています」
「ふん。ルークスが本当に愛しているのは、この俺だよ。これから、たっぷり鳴かして、過去の女なんて忘れさせてやる」

王子は、不敵な笑顔を浮かべていた。王族らしい傲慢さが、その表情には垣間見られた。

「ルークス。それだけ元気そうなら、夜伽も出来るよね。こんな部屋じゃなくて、俺の部屋に行こうか。今夜は記念すべき初夜だからね。……あぁ、ルークスの処女を貰えるだなんて、感激だなあ」

ルークスは王子に抱き上げられると、王子の部屋の大きくて豪奢なベットに連れ込まれた。

危機的な状況なのに、ルークスは(私を抱き上げる事が出来るほど、大きくなられたのですねぇ……)と、まるで他人事のように、その成長を喜ばしく思いながら、ぼんやりと事の成り行きを俯瞰した。

「逃げられるとか思わないでね?」

「逃げるほどの元気は、ありませんよ」実際ルークスは、まだ体が怠くて、腕を動かすのも億劫だった。「あまり無理はさせないから……」王子は、ルークスの言葉を聞いても、その手を止めるつもりはないようだった。

鎖付きの首輪でベットの端に結ばれ、両手首を手枷で拘束されて、ルークスは観念した。

(今まで色々な人を泣かせてきましたもんね。天罰でしょうか……)

最後に最悪な男に捕まってしまったが、中々楽しい人生だった。刺激を求めて、結婚してからも恋愛を楽しんだ。妻はそんな自分を受け入れて愛してくれた。

ここまで用意周到に準備していたとなれば、王子はルークスを帰す気はないだろう。もう逃げることは出来なさそうだ。

(あぁ、こんな日が来るんじゃないかとは思っていましたが、女の体にさせられるだなんて……)

王子の寵愛が深すぎることに、懸念はしていた。

「あの……。せめて妻のクローディアに手紙を出すことを許して貰えないでしょうか?」
「だめだ。俺のルークスを盗った女なんか大嫌いだ。あんな女、不幸になればいい」
「……クローディアとその子供に何かあったら、私は貴方を嫌いになります。もう2度と口をきくことはないでしょう」
「それは困るな。俺はルークスに愛されたいのだから……。仕方ない、あの女と子の処遇は、後で考えてやろう」
「……ご配慮、痛み入ります」

まだ幼い王子に性行為を教えたのはルークスだった。そこには恋愛感情などはなく、当時付き合っていたエドワード王子との性行為を見られて、興味を示したブラッド王子に、仕方なく体を許しただけだ。行為が終わった後、「明日もしたい」と、当然のようにルークスに2度目を求めてくるから「ブラッド殿下は、男だけではなく、女も知るべきですよ」と言って、ルークスは経験豊富な美女を紹介した。
彼女はルークスが知る中で、最も良い女だった。様々な技術を駆使して、男を骨抜きにする。これでルークスを求めることはなくなるだろう。そう思っていたけれど、ブラッド王子は「ルークスのほうがいい。何で兄様は良くて、俺はダメなんだ?」と言って迫ってきた。

やっと王子が他の男に興味を示し、これでお役御免かと思ったけれど、手酷く振られて「死にたい」と言ってくるようになった。仕方なく相手をしたが、そこから寵愛がさらに深くなったような気がする。マリオンの侍従を宛てがってみたけれど、興味を示したのは最初だけで、「ルークスを抱きたい」と言われるようになった。王子のルークスへの独占欲は日を追うごとに強まり、ルークスは身の危険を感じるようになって、王子を避けるようになると「こんなに俺はルークスが好きなのに、どうしてルークスは俺を避けるんだ。他に男が居るのか? いるなら殺してやる」と脅されるようになった。

最近になってからだ、王子の言葉が熱を帯びてきたのは。

「ルークス、愛している」

激しく腰を打ち付けられ、中に出されて、耳もとで愛を呟かれ、ゾクリと背筋が粟だった。この王子に抱かれたのは1度や2度ではない。ルークスの良いところも全て知っている。

「――はっ、あっ、あぁっ……! もう、やめてください、ブラッド……!」
「俺の子を孕め、ルークス。そうすれば名実ともに、お前は俺の妃だ」

ルークスはブラッド王子に監禁、幽閉され、激しく愛された。後日、ブラッド王子の子を懐妊すると共に、正式にルークスは第三王子の妃となり、マリオンを震撼させることになったのだった。
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