28 / 32
寵愛
しおりを挟む
ルークスは困っていた。
なるべく王子と2人きりにならないように気を付けていたが、体調がすぐれなかった。犬小屋を見に行く前にお茶をした後から、どうにも具合が良くない。
(体が、熱い……。なんでこんな……。媚薬でも盛られたのかな……?)
最近は、なるべく王子を避けるようにしていたから、機嫌を損ねていたのは間違いない。マリオンを1人にするのが心配だったが、今にも倒れそうなほどだったので、仕方なく、別室で体を休めることにした。それでも、体調が良くなることはなく、体の熱さがルークスを蝕んでいった。
(媚薬……ではなさそうだ。もしかして、毒だった……? 私、死ぬのでしょうか……)
お茶は変な味も匂いもしなかったが、いきなり体調が悪くなる原因が、他に考えられなかった。
まるで走馬灯のように、兄弟や、妻や幼い子供たち、そして飼育している蝶人間の顔が思い浮かぶ。
けれど、最後に、ブラッド王子の笑顔を思い出してドキリとした。きっとルークスの体調を悪くした張本人だろうに、なぜ思い浮かんだのか。ルークス自身も、不思議でならなかった。
(手のかかる子ほど可愛いというか……。なぜか嫌いになれないんですよね……)
むしろ気に入っていると言ってもいいぐらいだった。だからこそ、色々と手ほどきをしたりして構っていたのだから。
意識朦朧としながら、荒い呼吸を繰り返すルークスの視界に、「これ、本当に大丈夫なの!? ルークスが死んだら、許さないよ! もし死んだら、お前の家族も皆殺しにするからね!?」と慌てた様子で医者に聞く王子の姿が見えた。
「ルークス、これ薬だから飲んで」
「んっ……んぅ……!?」
王子が口移しで、苦い液体をルークスの口の中に入れた。ゴクリ、とルークスが飲むのを確認してから、王子はルークスの耳元で囁いた。
「……俺に抱かれたら、その苦しみも楽になるらしいよ? 抱いて欲しいって言ってごらん」
「今日は……、弟の付き添いで来ただけなので……、またの機会に……お願いしますね」
きっと最初から、王子はルークスを抱くつもりだったのだろう。薬の量を間違えたか、何かしら手違いがあっただけで、やっぱり犯人は王子だったか、と苦々しく思いながら、ルークスは、その申し出を拒否した。
「……冷たいね。俺の気持ちだって、知っている癖に」
王子はルークスの頬に手を触れて、口付けようとしてきたが、気敏いルークスにさりげなく躱された。
「元気になってきたの? 良かったね。……でも、そんなことをして俺の気分を損ねたら、どんなことになるか分からないほど馬鹿じゃないよね。……俺が怖くないの?」
「……怖いですよ。貴方と遊ぶと……、私の妻が嫉妬して、家に入れてくれないんですよ……」
「そんな女、離婚すればいいだろ? 俺が、妃として娶ってやるから」
「妃って……。私、男ですよ?」
「父様に性転換の秘薬を貰ったんだ。さっきお茶に混ぜて、ルークスに飲ませたけど、思ったより体に負担がかかるみたいで……。こんなに苦しませるつもりはなかったんだよ、ごめんね。……でも綺麗だよ、女のルークスも」
王子はルークスの髪を一束掴んで口付けた。
ルークスの笑顔は凍った。秘匿されてはいるが、秘薬の存在は噂として聞いたことがある。実在していることも知っている。
何代か前の王妃が、性転換した男だったはずだ。歴代の国王は、男を好む傾向にあり、高貴な血を絶やさないために、魔女に依頼して作られた代物だと聞く。
(まさか、ブラッド王子が王位継承者……?)
だが、それは国宝であり、譲り受けるには国王の許可がいるはずだ。その貴重性から、秘薬を使用できるのは、王位継承者のみに限られていたはずだった。
なるべく王子と2人きりにならないように気を付けていたが、体調がすぐれなかった。犬小屋を見に行く前にお茶をした後から、どうにも具合が良くない。
(体が、熱い……。なんでこんな……。媚薬でも盛られたのかな……?)
最近は、なるべく王子を避けるようにしていたから、機嫌を損ねていたのは間違いない。マリオンを1人にするのが心配だったが、今にも倒れそうなほどだったので、仕方なく、別室で体を休めることにした。それでも、体調が良くなることはなく、体の熱さがルークスを蝕んでいった。
(媚薬……ではなさそうだ。もしかして、毒だった……? 私、死ぬのでしょうか……)
お茶は変な味も匂いもしなかったが、いきなり体調が悪くなる原因が、他に考えられなかった。
まるで走馬灯のように、兄弟や、妻や幼い子供たち、そして飼育している蝶人間の顔が思い浮かぶ。
けれど、最後に、ブラッド王子の笑顔を思い出してドキリとした。きっとルークスの体調を悪くした張本人だろうに、なぜ思い浮かんだのか。ルークス自身も、不思議でならなかった。
(手のかかる子ほど可愛いというか……。なぜか嫌いになれないんですよね……)
むしろ気に入っていると言ってもいいぐらいだった。だからこそ、色々と手ほどきをしたりして構っていたのだから。
意識朦朧としながら、荒い呼吸を繰り返すルークスの視界に、「これ、本当に大丈夫なの!? ルークスが死んだら、許さないよ! もし死んだら、お前の家族も皆殺しにするからね!?」と慌てた様子で医者に聞く王子の姿が見えた。
「ルークス、これ薬だから飲んで」
「んっ……んぅ……!?」
王子が口移しで、苦い液体をルークスの口の中に入れた。ゴクリ、とルークスが飲むのを確認してから、王子はルークスの耳元で囁いた。
「……俺に抱かれたら、その苦しみも楽になるらしいよ? 抱いて欲しいって言ってごらん」
「今日は……、弟の付き添いで来ただけなので……、またの機会に……お願いしますね」
きっと最初から、王子はルークスを抱くつもりだったのだろう。薬の量を間違えたか、何かしら手違いがあっただけで、やっぱり犯人は王子だったか、と苦々しく思いながら、ルークスは、その申し出を拒否した。
「……冷たいね。俺の気持ちだって、知っている癖に」
王子はルークスの頬に手を触れて、口付けようとしてきたが、気敏いルークスにさりげなく躱された。
「元気になってきたの? 良かったね。……でも、そんなことをして俺の気分を損ねたら、どんなことになるか分からないほど馬鹿じゃないよね。……俺が怖くないの?」
「……怖いですよ。貴方と遊ぶと……、私の妻が嫉妬して、家に入れてくれないんですよ……」
「そんな女、離婚すればいいだろ? 俺が、妃として娶ってやるから」
「妃って……。私、男ですよ?」
「父様に性転換の秘薬を貰ったんだ。さっきお茶に混ぜて、ルークスに飲ませたけど、思ったより体に負担がかかるみたいで……。こんなに苦しませるつもりはなかったんだよ、ごめんね。……でも綺麗だよ、女のルークスも」
王子はルークスの髪を一束掴んで口付けた。
ルークスの笑顔は凍った。秘匿されてはいるが、秘薬の存在は噂として聞いたことがある。実在していることも知っている。
何代か前の王妃が、性転換した男だったはずだ。歴代の国王は、男を好む傾向にあり、高貴な血を絶やさないために、魔女に依頼して作られた代物だと聞く。
(まさか、ブラッド王子が王位継承者……?)
だが、それは国宝であり、譲り受けるには国王の許可がいるはずだ。その貴重性から、秘薬を使用できるのは、王位継承者のみに限られていたはずだった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
絶倫彼は私を離さない~あぁ、私は貴方の虜で快楽に堕ちる~
一ノ瀬 彩音
恋愛
私の彼氏は絶倫で、毎日愛されていく私は、すっかり彼の虜になってしまうのですが
そんな彼が大好きなのです。
今日も可愛がられている私は、意地悪な彼氏に愛され続けていき、
次第に染め上げられてしまうのですが……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話
もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。
詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。
え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか?
え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか?
え? 私、アースさん専用の聖女なんですか?
魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。
※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。
※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。
※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。
R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。
未亡人メイド、ショタ公爵令息の筆下ろしに選ばれる。ただの性処理係かと思ったら、彼から結婚しようと告白されました。【完結】
高橋冬夏
恋愛
騎士だった夫を魔物討伐の傷が元で失ったエレン。そんな悲しみの中にある彼女に夫との思い出の詰まった家を火事で無くすという更なる悲劇が襲う。
全てを失ったエレンは娼婦になる覚悟で娼館を訪れようとしたときに夫の雇い主と出会い、だたのメイドとしてではなく、幼い子息の筆下ろしを頼まれてしまう。
断ることも出来たが覚悟を決め、子息の性処理を兼ねたメイドとして働き始めるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる