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玩具
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マリオンは、第三王子に直談判をした。
「あの男は、もう十分罰は受けたと思うので、開放してもらえないでしょうか?」
「……へぇ? 君は、ルークスに聞いていた通り、心の優しい人間なんだね。……あの男が犯した罪は、きっと君が思っている以上に、重いよ。身の程をわきまえずに、主人の所有物に手を付けるなんて、許される行為じゃない。あれでも生温いぐらいだと思うな」
それはマリオンも同感であった。ただ、セリーヌと生活を共に過ごす内に、考えが変わってきた。あの男にも親がいて、子と連絡がつかないことに心配をしていた。
つい先日、セリーヌはマリオンの子を出産し、マリオンは赤子の父親になったばかりだ。その赤子は、マリオンにとって、何よりも愛おしい存在だ。
親になったからこそ、あの男の父親の気持ちに、思いを馳せるようになってきたのだ。
「許してはいません。ただ、心境の変化がありまして、別の形で贖罪して欲しいと思っているのです」
「まだ無罪放免になるのは早いと思うけどな。形式上では、彼は俺の使用人だ。もう君は、彼と無関係だろう? 彼が生きようが死のうが、口出し無用だよ。俺は、あの男が壊れたって構わないと思っているから、死ぬまで犬と性行為をさせるよ。死んだあいつの遺体を犬に抱かせるのもいいね。想像するだけでゾクゾクするよ。今から楽しみでならないんだ」
(だめだ……。狂ってる……)
ルークスが「あまりマリオンは、王子に近寄らないほうがいい」と忠告してくれた意味が、やっと分かったような気がした。
「……なんなら、代わりに君が犬とやってみる? 癖になるかもよ」
王子の言葉に、犬に犯される己の姿を想像してしまって、マリオンは笑顔を引き攣らせた。今回の訪問は、交渉事の得意なセリーヌを連れて行きたかったが、産後間もないし、第三王子と接点を持たせたくなかったため、屋敷に置いてきた。
その代わりに、王子と親しく、その扱いを熟知しているはずの、兄ルークスを頼ったのだが、先ほど体調不良で別室に行ったので、自分の力で交渉するしかなかった。
「他に選択肢はないんですか?」
「ないね。だって、あいつはルークスがくれた、俺のオモチャだもん。ほんっといい声で鳴くんだから」
王子は口笛を吹いた。その音が合図になったのか、魔犬はさらに激しく腰を振った。「んぎぃぃい!!」と、男の悲鳴のような嬌声が響き渡った。
(これは酷い……。はやく手を打たないと)
それは、聞くに堪えない声で、マリオンは思わず耳を手で塞いだ。このまま、侍従を王子のところに居させたら、長くは持たないだろうと、マリオンは感じた。
「……ブラッド殿下……。蝶人間に興味はありませんか?」
「蝶人間? あぁ、エドワード兄様が飼ってるやつか。あれいいよね、羽根が綺麗だから、何匹か欲しいなと思って温室を作ってみたんだけど、エドワード兄様が全て買い上げてしまって、未だに飼えていないんだ。もしかして、君、飼っているのかい?」
仕方なく、マリオンは己が持つ最強のカードを餌に交渉をする事にした。第三王子は前のめりで食いついた。第三王子が蝶人間に興味を示していることは、兄ルークスから聞いていた。
きっと、蝶人間の話題を出せば、食いつくだろうと思っていた。仕立て屋としての仕事が忙しく、蝶人間の孵化や飼育にまで手が回っていないが、メラとニーナの子は育てていた。
メラとニーナの子は、いずれ奴隷商に売るつもりだったが、その美貌から、おそらく高く売れるだろうなと思っていた。
マリオンとしては、奴隷商に売るか、王子に直接売るかの違いなだけだ。
後日、マリオンは王子を屋敷に招待し、メラとニーナの子を見せた。
「……これは欲しいね」
実際に、その目で見れば、きっと、王子も欲しくなるはずだと思っていた。
その目論見は正しかった。
第三王子が気に入った子は、世にも稀な両性有具だった。
「……この子を、可愛がってくれないなら、引き取りに来ますからね? 飽きても侍従のように犬小屋に入れないでくださいよ? 定期的に確認しに来ますからね?」
ただ、飼育環境が不安になり、念を押すマリオンに、第三王子は目を丸くした。
「当たり前だろう? こんな可愛いのに、どうやったら飽きたりするんだ?」
第三王子は目を輝かせて、蝶人間を見た。
その後、侍従は開放され、自由の身となったが、犬が通り過ぎるだけでもガタガタと全身を震わせるため、日常生活に支障が出て、外を1人で出歩くことが出来るようになるまで、かなりの時間を要したらしい。
「あの男は、もう十分罰は受けたと思うので、開放してもらえないでしょうか?」
「……へぇ? 君は、ルークスに聞いていた通り、心の優しい人間なんだね。……あの男が犯した罪は、きっと君が思っている以上に、重いよ。身の程をわきまえずに、主人の所有物に手を付けるなんて、許される行為じゃない。あれでも生温いぐらいだと思うな」
それはマリオンも同感であった。ただ、セリーヌと生活を共に過ごす内に、考えが変わってきた。あの男にも親がいて、子と連絡がつかないことに心配をしていた。
つい先日、セリーヌはマリオンの子を出産し、マリオンは赤子の父親になったばかりだ。その赤子は、マリオンにとって、何よりも愛おしい存在だ。
親になったからこそ、あの男の父親の気持ちに、思いを馳せるようになってきたのだ。
「許してはいません。ただ、心境の変化がありまして、別の形で贖罪して欲しいと思っているのです」
「まだ無罪放免になるのは早いと思うけどな。形式上では、彼は俺の使用人だ。もう君は、彼と無関係だろう? 彼が生きようが死のうが、口出し無用だよ。俺は、あの男が壊れたって構わないと思っているから、死ぬまで犬と性行為をさせるよ。死んだあいつの遺体を犬に抱かせるのもいいね。想像するだけでゾクゾクするよ。今から楽しみでならないんだ」
(だめだ……。狂ってる……)
ルークスが「あまりマリオンは、王子に近寄らないほうがいい」と忠告してくれた意味が、やっと分かったような気がした。
「……なんなら、代わりに君が犬とやってみる? 癖になるかもよ」
王子の言葉に、犬に犯される己の姿を想像してしまって、マリオンは笑顔を引き攣らせた。今回の訪問は、交渉事の得意なセリーヌを連れて行きたかったが、産後間もないし、第三王子と接点を持たせたくなかったため、屋敷に置いてきた。
その代わりに、王子と親しく、その扱いを熟知しているはずの、兄ルークスを頼ったのだが、先ほど体調不良で別室に行ったので、自分の力で交渉するしかなかった。
「他に選択肢はないんですか?」
「ないね。だって、あいつはルークスがくれた、俺のオモチャだもん。ほんっといい声で鳴くんだから」
王子は口笛を吹いた。その音が合図になったのか、魔犬はさらに激しく腰を振った。「んぎぃぃい!!」と、男の悲鳴のような嬌声が響き渡った。
(これは酷い……。はやく手を打たないと)
それは、聞くに堪えない声で、マリオンは思わず耳を手で塞いだ。このまま、侍従を王子のところに居させたら、長くは持たないだろうと、マリオンは感じた。
「……ブラッド殿下……。蝶人間に興味はありませんか?」
「蝶人間? あぁ、エドワード兄様が飼ってるやつか。あれいいよね、羽根が綺麗だから、何匹か欲しいなと思って温室を作ってみたんだけど、エドワード兄様が全て買い上げてしまって、未だに飼えていないんだ。もしかして、君、飼っているのかい?」
仕方なく、マリオンは己が持つ最強のカードを餌に交渉をする事にした。第三王子は前のめりで食いついた。第三王子が蝶人間に興味を示していることは、兄ルークスから聞いていた。
きっと、蝶人間の話題を出せば、食いつくだろうと思っていた。仕立て屋としての仕事が忙しく、蝶人間の孵化や飼育にまで手が回っていないが、メラとニーナの子は育てていた。
メラとニーナの子は、いずれ奴隷商に売るつもりだったが、その美貌から、おそらく高く売れるだろうなと思っていた。
マリオンとしては、奴隷商に売るか、王子に直接売るかの違いなだけだ。
後日、マリオンは王子を屋敷に招待し、メラとニーナの子を見せた。
「……これは欲しいね」
実際に、その目で見れば、きっと、王子も欲しくなるはずだと思っていた。
その目論見は正しかった。
第三王子が気に入った子は、世にも稀な両性有具だった。
「……この子を、可愛がってくれないなら、引き取りに来ますからね? 飽きても侍従のように犬小屋に入れないでくださいよ? 定期的に確認しに来ますからね?」
ただ、飼育環境が不安になり、念を押すマリオンに、第三王子は目を丸くした。
「当たり前だろう? こんな可愛いのに、どうやったら飽きたりするんだ?」
第三王子は目を輝かせて、蝶人間を見た。
その後、侍従は開放され、自由の身となったが、犬が通り過ぎるだけでもガタガタと全身を震わせるため、日常生活に支障が出て、外を1人で出歩くことが出来るようになるまで、かなりの時間を要したらしい。
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